「本気のユーザーサプライズファースト」を追い求めて。「mixi2」の開発で描く成長軌跡

- 久野 文菜
- 学生時代に独立行政法人情報処理推進機構の未踏IT人材発掘・育成事業に参加し「未踏スーパークリエータ」に認定される。アルバイトとしてサロンスタッフ予約アプリ「minimo」のiOSアプリ開発に関わった後、2021年にミクシィ(現MIXI)に新卒入社。現在は開発本部 たんぽぽ室 たんぽぽグループで「mixi2」の開発に携わる。社外では、Flutterに関するカンファレンス「FlutterKaigi」の運営スタッフとして活躍中。
開発本部のたんぽぽ室に在籍する新卒4年目の久野 文菜。2024年12月にリリースされた「今を共有でき、すぐ集える」ソーシャル・ネットワーキング サービス(SNS)「mixi2(ミクシィツー)」の開発に携わってきました。若くして大規模プロジェクトのメンバーに抜擢された久野が得た学びや、社外での活動、そして「真のユーザー目線」を追求する想いを語ります。
新機能の追加やお問い合わせへの対応。メンバーたちの技術力に刺激を受ける日々
部署横断型のエンジニア組織として、技術で各プロジェクトを推進していくたんぽぽ室 たんぽぽグループの久野が、現在関わっている「mixi2」関連の業務について語ります。
「『mixi2』は『今を共有でき、すぐ集える』を軸とした、手軽でリアルタイムなコミュニケーションができる場の提供をめざしています。私は、『mixi2』プロジェクトの立ち上げ時にたんぽぽグループから派遣され、今も関わっています。まずはどの言語を使い、どのようなアプリを作っていくかという土台づくりから始まり、開発を進めてきました。リリースされた今では、こんな機能を増やそう!みたいな話し合いをして、コーディングして作り上げて世に出しているのと、ユーザーからのお問い合わせにも対応しています」
職場では週に2日出社して、ミーティングに参加したり、メンバーとアイデアを出し合ったりしています。
「ミーティングでは、アクティブユーザーはこんな感じだよねとか、次はこんな施策をやろうかなどと話し合っていますね。みんなコミュニケーションが大好きだから、出社した日は職場がにぎやかになって、チーム全員でランチに行くことも多いです。『mixi2』のことも話しますし、それ以外の雑談もたくさんします。そういう雑談からいろいろなアイデアが生まれたりするんですよね。たとえば、『mixi2』のリアクション機能で新年であれば『あけおめ』以外にどんなものがあったら楽しいコミュニケーションにつながるかな、ということも話して、実際にそこから出たアイデアが追加されたりしました。
リモートワークの日は、基本的に一人でコーディングしつつ、相談したいことがあればチャットツールを活用したり、オンラインミーティングをしたりしています」
仕事ではすべてのメンバーが自走し、それぞれが責任を持って業務を進めています。その中で、メンバーたちの仕事ぶりには感化されることが多いとうなずく久野。
「とくに、私の隣の席にいる先輩は何でもできる人なんです。もともとリレーサーバーの研究やネイティブの開発をメインでやっていていろいろな知識が豊富な上、『mixi2』の開発でFlutterを初めて触り始めたのに、もう深いところまで読み込んで理解していてびっくりしました!普段から尊敬している方で、私も将来こういう人になれたらなと思っています。
先輩たちに限らず、後輩にも『すごいな』と思う瞬間はよくあって。年齢や職種を問わず、周りの人たちの技術レベルの高さや習得のスピードにはいつも驚かされますし、たくさんの刺激を受けています」
社外活動にも積極的に参加。背景にあるのは「業界の発展に貢献したい」という想い
MIXIで4年間働いてきた久野の中には、ある価値観が芽生えてきたと言います。
「アプリの作り手として、とにかくユーザーのことを第一に考えたいと思っています。学生の頃には、アプリを作ってユーザーから反応がもらえると嬉しくて、受けた要望をそのまま反映させて修正することが多かったのですが、MIXIに入り、それではユーザーの期待を超えられてはいないよねって気づいて。ユーザーはなぜこういうお問い合わせを送ってきたんだろうという理由を深掘りした上で、本質的なニーズを把握し、他のユーザーも含めてみんなが嬉しい解決策を見つけるようにしています」
この考え方の転換には、過去の経験が大きく影響しています。
「『mixi2』の前に、二つの新規事業を経験しました。それぞれ事業の立ち上げ時や、立ち上げ直後から関わっていたのですが、残念ながらどちらもサービス終了となってしまい…。その経験から、ユーザーの本質的な要望は何なのか、真の課題は何なのかをきちんとかみくだいて考えるよう、これまで以上に意識するようになりました」
社内のプロジェクトで重要な気づきを得る一方、社外活動にも積極的に関わっている久野。その一つがFlutter関連の情報共有と、エンジニア同士のコミュニケーションの深化を目的としたカンファレンス「FlutterKaigi」です。
「日本語でカンファレンスを開いてくれるのはありがたいなと感じて参加し、次からは絶対、登壇者や運営スタッフとして関わりたいと手を挙げました。実際にスタッフとして活動する中でFlutterの知識を吸収できるのはもちろん、社会人として自発的に動くことの大切さを学ぶことができましたし、登壇者と直接やりとりできるアドバンテージを活かして人脈も広げられて、とても多くの収穫がありましたね」
熱心に活動する背景には「業界全体の発展に貢献したい」という想いがあると明かします。
「学生時代に、独立行政法人情報処理推進機構の未踏IT人材発掘・育成事業に参加し、『未踏スーパークリエータ』の一人に認定されました。そのコミュニティに入った時、周りの人たちが技術を丁寧に教えてくれて、その姿がとてもかっこよく見えたんです。そういう人たちのおかげで後輩が育ち、その後輩たちがまた次の世代に教えることで技術は発展していくのだと実感し、私もその循環の中で貢献していけたらと思いました。
また、MIXIの中でも上司や先輩が『新入社員向けにFlutterの研修を開いてよ』とよく声をかけてくれるんです。こうして皆さんがいろいろなチャンスを与えてくれて、視野が広がっていくことに感謝しています」
業界の発展に関連して、「技術について自ら発信していく姿勢も大切」と強調する久野。
「フレームワークを使う中で、フォントの文字化けや日本語キーボードの入力バグが起きても、日本語ユーザーは世界では圧倒的に少ないため、フレームワークを作っている人たちに気づかれず修正されないことが多いんです。『困っている』ということをまずは発信することで、バグが直って日本の皆さんが使いやすくなり、ひいてはよりよいアプリの誕生につながればと願っています」
新卒2年目で大規模プロジェクトのメンバーに。与えられた裁量の大きさに感じたやりがい
MIXIの採用ポリシーは「チャレンジする人にはチャンスがある」。久野にとって最大のチャンスは、「mixi2」のプロジェクトに立ち上げ時から参画できたことだったと語ります。
「きっかけは、Flutterをテーマにしたハッカソンが社内で開かれることになり、エンジニアとして参加したことです。私は3人チームのメインサーバーエンジニアとして臨み、Flutterをチーム内のFlutter初心者の方に教えながら進めました。
それを知った当時のCTO(最高技術責任者)が、アイデアを出して形にする力や、他にも新規事業の経験があることを評価して『久野さんをプロジェクトにいれたらどう?』と提案してくれたことからでした。新卒入社2年目で『mixi2』という大きなプロジェクトを担当させてもらえるなんてびっくりしましたし、とても嬉しかったです。チャンスはどこに転がっているか、わからないなと思いました。
プロジェクトでは、こんなに規模の大きい想定のアプリを立ち上げるという重要なフェーズでも、経験の浅い私にアプリ作りを任せてくれました。大きい会社でアプリを世の中に配信する際に必要な登録作業は、事業責任者あたりの人しかできないと思っていたので、『本当にこの登録ボタンを押してもいいの?そんなに大きな裁量がもらえるの?』という驚きと、やりがいを感じました」
実は、「mixi2」は開発の過程においてめざす方向性が変わり、リリースが延期になったことがありました。久野は当時の想いを率直に口にします。
「もともとは2024年12月ではなく、その数カ月前にリリースする予定でした。ところが、当時のSNSの状況を考慮し、当初の目標であった『MIXI』らしい『みんなで使える優しいコミュニケーションのアプリ』にするため、リリースの延期をする判断に。後ろ倒しになってしまったことは残念でしたが、ユーザーのことを第一に考えた結果、この決定が下されたのだと思ったんです。その後、社内リリースで『エモテキ』やイベント機能を追加し、社内からフィードバックを受けながら細部にまでこだわりを持たせていき、これらを通じて広い視野を持って考えることの重要性を学びました。
それからは、私も『コミュニティの招待をフォロワーから選択して送信できた方がよいのでは?』『ここにバッジをつけると悪目立ちするかな』など、一層ユーザーの目線を大切にしながらアイデアを出していきました。リリースした現在、ユーザーには私たちが思い描いた通りに使っていただけているようで、ほっとしています」
反響の大きいプロジェクトを経験したことで、自身が吸収したことも多かったと振り返ります。
「これほど多くのユーザーが利用するアプリに関わるのは初めてでした。リリースから数日で、登録者数が120万人を突破するという想定を上回る状況になりましたが、ベテランのエンジニアがその規模に耐えられるサーバーを設計していて、さすがだなと。その様子を間近で見られただけでも大きな価値があったと思っています。
また、どんな端末でも作動するようなアプリの開発についても学びました。先輩は『親のiPhoneを譲り受けて使ってる人もいるかもしれない。そんな昔のiPhoneを使っていても、操作がスムーズにできるように』ときめ細かな配慮をしていて、私はそこまで考えられていなかったなとたくさんの気づきがありました。
アクセシビリティに関しても、頭では『対応しないと』とわかっていましたが、対応が後回しになってしまい、ユーザーからご指摘を受けたこともあります。『いろいろな人に使ってもらえるアプリを作るぞ』って言っていたのに、全然考えられていなかったなと思って、ショックで。先輩たちのユーザーと真摯に向き合う姿を見てMIXIの技術力を実感したと同時に、私ももっと成長していきたいと強く思ったプロジェクトでした」
建設的な考えと優しさを持つ人たちに囲まれて。つくりたいのは「誰もが使えるアプリ」
久野が入社した頃から強く共感していたというのが、企業理念のPMWV(※)の一つである「ユーザーサプライズファースト」。ただ、実際の業務を進める中で、その本質的な意味を理解するには少し時間がかかったと言います。
「以前は、ビジネスモデルとして確立させて収益化できるようにしないとサービスを続けられないという考えから企画を出したり、自分の技術力の制限から実装ファーストに傾いてしまったりすることがありました。しかしそこから、『mixi2』の事業責任者である笠原 健治さん(取締役ファウンダー)やベテランエンジニアがユーザーにとことん寄り添う姿を間近で見る中で、『本気のユーザーサプライズファースト』を思い知らされたんです。
『どんな人でも使えるアプリを作ろう』とよく言いますが、これからはどんな国籍の人も、目の不自由な人もというように、『どんな人』の解像度をもっと上げていきたいと思っています」
そして、「MIXIの好きなところ」や「MIXIらしさ」について問われると、久野は「優しい人が多い」と即答します。
「優しいというのは、答えをすぐに教えてくれるような意味ではなくて。以前サーバーダウンを起こしてしまった時に、周りの先輩方は私を責めるのではなく『どの仕組みが悪いからこうなったのか』と一緒に原因を考えてくれたんです。バグを起こした際も、レビューした先輩が『こちらが見落としていた。チェックがあまくてごめん』と謝ってくれて。誰かのせいにせず、仕組みを改善していこうという建設的な考え方と優しさを持つ人たちばかりです。
そんな優しい人たちに囲まれて働いているから、私も今、自然と同じような考えを持って仕事ができているんだなと感じています」
今後の道のりを見据え、まずは「mixi2」の課題を解決していきたいと話す久野。
「アクセシビリティの面ではまだ万全な状態ではなくて、ユーザーからもご指摘をいただいています。たとえば目で見えなくても振動で伝わるような機能など、あらゆる可能性を考え、すべての人があたたかみを感じながらコミュニケーションをとれるようなSNSに成長させていきたいです」
さらに「mixi2」以外にも目を向け、国境を越えたアプリ開発に意欲を見せます。
「将来的には、新たなアプリの海外展開にも関わっていきたいですね。海外で勤務したことがある人から、『海外の人に使ってもらうためには言語を変換するだけではダメだよ』と教わって。国特有の文化をきちんと理解した上で、一人ひとりに寄り添った、本当の意味でいろいろな人に使っていただけるアプリを作れるようになりたいと思うようになりました。
『新規事業で頼られるエンジニアになりたい』という入社当初の目標も、変わらずに持ち続けています。『具体的にどういう面で頼られたいか』の解像度も上がりましたね。たとえば、アプリの作り方や権限の付与の仕方、CI/CDなど最初の環境構築、社内テストの仕方というイメージです。
頼られるためには、これまで関わることの多かったiOSだけでなく、Androidについてももっと勉強していきたいですし、サーバーエンジニアを経験したことで関連技術を磨いていきたいとも思っています。やりたいことが本当に多いですね。一歩一歩着実に階段を上って、これからも自らを高め続けていきたいです」
※PMWV……MIXIの企業理念。PURPOSE「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」MISSION「『心もつながる』場と機会の創造。」MIXI WAY「ユーザーサプライズファースト」VALUES「発明・夢中・誠実」
※ 記載内容は2025年2月時点のものです