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2018/12/27

マーケティング領域の執行役員が登壇! 「宣伝会議サミット2018」登壇レポート

11月14日(水)に開催された「宣伝会議サミット2018」にて、マーケティング領域の執行役員である根本が登壇しました。

(左)若原様 (右)根本

今回は『右手に理論を、左手に感性を。チャレンジする企業のマーケティング機能を考える』というテーマで、コクヨ株式会社 ワークスタイル研究所所長、consulting & more 代表の若原様と弊社根本のトークセッションです。事前登録も満員、講演も満席のセッションでした。その様子をレポートします。
※当日は若原様がモデレーター兼スピーカーでしたため、レポートでは、主に根本がお話した内容の一部をご紹介させていただきます。

 

セッションスタート

マーケティング機能を組織の中に根付かせ、本質的に機能させるためにはどのようなポイントが重要になるのか、それぞれの知見から、マーケティング組織の成長過程についての実例も交えながら、対談は進みました。

セッションは、まず若原様からの「ご来場の皆さまの中で、自社内で、『マーケティング〇〇』という組織がある方、どの程度いらっしゃいますか?」という質問からスタート。会場の約半数の方が挙手されていました。

時に宣伝をはじめとするプロモーションに偏りがちなマーケティングを、本登壇では4P(Product、Promotion、Place、Price)すべてを対象とすることを定義づけされ、トークセッションは進みました。

 

トークテーマ

1.導入期 マーケティング機能という「ヨコ串」の通し方
2.育成期 「魚群探知機(理論)」vs「漁師のカン(感性)」
3.成熟期 イノベーションにマーケティングは邪魔?

 

1. 導入期 マーケティング機能という「ヨコ串」の通し方

若原様:最近、根本さんのお立場も変わり、担当する領域が広くなったとお聞きしています。まずはその辺りからお話いただけますか。

根本:ミクシィでは、今年の4月にマーケティング本部を新設しました。今までマーケティングの組織が無かったわけではないのですが、会社全体の横串となるマーケティング組織はこれが初めてとなります。以前のマーケティング部はPR・プロモーションを中心に、「モンスターストライク」(以下、モンスト)などのプロダクトに寄り添った組織でした。昨今、急速に事業領域が広がったこともあり、それに合わせてモンストをはじめとするデジタルエンターテインメント事業以外の領域のマーケティング組織として昇華させる流れになりました。

いまミクシィはデジタルエンターテインメント、ライブエクスペリエンス、スポーツ、ウェルネス、メディアの5つの領域にて事業を展開しています。現状のフェーズでは各事業領域のオーナーに、不足しているケイパビリティをヒアリングするところが重要だと捉えています。例えば、弊社のマーチャンダイジング部(以下、MD)においては商品企画や流通・販路などは部で完結できており、マーケティング本部の横串として支援すべきは、商品の魅力やファクトを消費者へどう伝えるのかといった、PR機能であり、新商品の発表時期は各担当が膝を突き合わせて考えていく…。といったような具合です。

ミクシィはモノづくりが強いのが特長です。それは強みでもありますが、プロダクトがある程度の完成に近づいた時に「記者発表などをやりたい、PRして欲しい、Web出稿したい」という下流工程のセパレートした相談がくることもしばしば。もちろんそこは支援していくのですが、マーケティングメンバーがプロモーションやPRのアクションプランを検討していく中で、プロダクトにおいて「言語化されていない・明文化されていない価値」などを紐解いたり、再定義していく工程が発生したりすることもあります。

改めて考えると変な話ですが、マーケティング理論の4Pのひとつは「プロダクト」なのに、関わる部分は「プロモーション」だけになっていることが弊社に限らず色々な会社で起きている事象だと思います。マーケティングの戦略としてプロダクトに対して、例えばマクロ/ミクロ調査やSTPの設計、ペルソナ設定など、プロダクト設計の上流工程から支援、仮説検証、カスタマージャーニーの設計など、できることがさまざまあると考えています。
それに伴い、まずはマーケティング本部はもちろん、社内のマインドセットを変えていくところから始めていくことが肝要だと思っています。とはいえ、まだ新設組織のためリソースが潤沢にあるわけでもないですし、スキルセットやケイパビリティがよりどりみどりでもありません。ですが、そもそもリソースファームにするつもりもありません。
事業の優先順位に沿って適正を取っていく必要がありますが、実際バランスは難易度が高く、どう采配していくかはケースバイケースなのが現状です。

 

若原様 必要なものは事業によりそれぞれ違うものということですね。

根本 事業フェーズや、新規・既存で課題が異なるため、それに応えられるスキルやマインド、寄り添い方など試行錯誤中ですが、最近では少しずつマーケティング本部の機能が浸透しだしていると実感しています。プロダクトのオーナーやPMから「ターゲットから一緒に考えて欲しい」というオーダーなども出てくるようになっています。PRやリサーチ、デジタルマーケティングなど、専門性の高さが求められるものなど含め、どのように課題を解決していくか一緒にナレッジをシェアしながら対話が始まっています。

若原様 社内ではあるが、ある種クライアントに向き合う姿勢に似ているということですか?

根本 近いものがありますが、パートナーのような向き合い方やマインドセットが重要だと思います。それは社外関係者に対しても同等ですが、言葉は悪いですが下請けのようなマインドセットになると働くスタッフのモチベーションも変わってしまいます。新しい組織の機能の在り方とメンバーとのマインドセットは両輪で回らないとパフォーマンスに繋がらないと考えています。

What’s “culture code”?

私たちの理念は「ユーザーサプライズファースト」。サービスの先にいる顧客(ユーザー)に対して常に真摯に応えるはもちろんのこと、さらに想像や期待を超える価値を「コミュニケーションサービス」を通じて提供していこう、という想いを込めたワードです。時に組織は安定志向でコンサバティブになりがちですが、自社内ではそういった部分に対してカウンターになっていると捉えています。
日々の業務の中で、上にお伺いたてなくても拠り所になるようなマインドセットを、マーケティング本部として何か出せないかと模索しています。

新体制になると共に、ミクシィとしての新たなステートメント、ミッション、バリューの再定義が必要となっています。「ユーザーサプライズファースト」はもともとモンストを生んだXFLAGブランドから派生して、現在は全社的にも浸透しているワードなので、必要な要素だと思っています。

ビジョナリーなメッセージは社員を同じ方向を向かせることに大きな役割を果たしますが、日々の業務での行いや振る舞いと少し遠い場合があるかなとも思っています。
ですので、より日々の業務に寄り添ったものにブレイクダウンしたものがあっても良いかな、と思っており、日本ではそれ程の事例がないですが「カルチャーコード」の導入を全社的に検討しています。取り急ぎまずはこの冬から試験的にマーケティングのメンバーに対してテストマーケティングをしてみる予定です。
※企業文化の理想像を言語化し、日々の行動指針として明文化したもの。

企業文化は現状だと口伝や雰囲気での伝承が多く、そのカルチャーを知るには個人差はあれどそれなりの時間を要するため、そこを時短するという意味でも言語化や体系化は重要です。
表層的な部分だけでなく、所属意識や各人の想いも踏襲しながら「ミクシィらしさ」を体現していくのがそれぞれの社員だと思いますので、目線を合わせながら進めていきたいと思っています。

2. 育成期 「魚群探知機(理論)」vs「漁師のカン(感性)」

若原様 トピックを変えて、マーケティング機能が導入された後、どういう風に組織で育っていくのかということですが、このトピックの例えは面白いですね。このように例えられた理由について教えていただけますか?

根本 直感的な思考とロジカルな思考を持った人、どちらかが強い部署はどのような会社でも存在します。フレームワークなど現状に即して話すと分かりにくいかと思い、今回はこのように例えました。

I want to catch lots of fish.:

 

文字通り”たくさんの魚を獲りたい”ということですが、最終的な企業のゴールである企業の成長や、モノをたくさん売りたい、顧客が増えてほしい、というニュアンスを意味しています。ご参加されている皆様もなにか企画を通す際に「それは本当に売れるのか?」「ニーズがあるのか?」と経営陣を含めて聞かれることはよくあるはずです。
このような問いかけに答えるエビデンスとして、当たり前ですがマーケティングのロジックは非常に重要です。未来のことは誰にも分からないのですが、過去をファクトに仮説を立てて、”ここに張るべきだ”、つまり”この漁場に釣り糸を垂らすべきだ”と例えた場合、マーケターは魚群探知機に近いと言えないかなと。

漁師は釣ることがとても上手いですが、それはつまり「どこに漁場があるのか」=「ニーズがあるのか」や、「そこにターゲットとする消費者がいるのか」ということのロジックが、長年の勘や経験値などから組み立てられていて、それが社内の慣習になっているようなこともよく聞きます。
マーケティング側はそのような「言語化できていない・明文化されていない」などの悩みを抱えていることを感じる印象です。

そのような中でも言えることは、双方の共通のゴールが「たくさんの魚を獲りたい」ということではあるので、対峙から対話が必要になってくると思っています。
長年の勘=「直感で魚を釣りにいく」ことを否定するわけではなく、勘では補えない部分についてマーケティング機能を上手く利用、もしくはその勘の答え合わせとして「ここに釣り糸を垂らすべきだ」という話が双方で出来れば良いと考えています。

では、マーケティングとは何なのか。
弊社では「マーケティングは”顧客である”」と定義しています。
それを決める背景として、「魚はどこにいて・どのような魚で・どのように売って・どのように料理して・どのようにお客さまが体験するか」、そこまでのストーリーを作っていくことが大事だと思っています。理想としては、体系化されたマーケティングとしてモノづくりの人たちと実施していくことだと思います。
まとめると、漁師と魚群探知機の両者は、行き来して互いに得意分野で補完するイメージです。

例えば、直感を活かすアイデアマンがいて、先ほどの理論で言うと「直感なだけだ」の対峙で終わらせずに、対話の中でアイデアマンの頭の中を紐解き、言語化されていないロジックを見つけていくことが重要だと思います。実は「利用する人の体験まで設計」できているのに、周囲には表層的なアイデアとしか見えないこともあるので、それを引き出すことが横串のマーケティング組織の役割でもあると考えています。

3. 成熟期 イノベーションにマーケティングは邪魔?

若原様 マーケティングが組織に根付き、成熟していくことにより、イノベーションの邪魔をすることも出てくるのではないか、ということを最後に私から話したいと思います。

製造業などではよくあることですが、自社で扱っている商材に対するマーケティング機能が、既存の商品カテゴリーに特化し過ぎて、そのカテゴリーに収まらないモノが新たに出た際、その良し悪しが判断できないことが企業のなかで昨今起こっているのではないかと思っています。

ここで一つ、考えてきた川柳を紹介します。

新ジャンル これで売れるか わからない(既存マーケの限界について)
新ジャンル 社内会議は 通らない(「イノベーション疲れ」について)

つまるところ、日本企業のイノベーションは、新たな種を生み出すことに加えて、その生まれ出た種を社内で正しく評価して、そこに投資をして育てていく、ということがなかなかうまくできてないのではと思っています。これをうまくやるには、一度の企画会議ですべてを決めようとせずに、小さいトライアルをたくさん繰り返し、学びの機会を最大化する、それには質の高い失敗を小さく沢山して、成長する必要があります。

この文脈において、社内ではうまく判断できないイノベーションのタネを、SXSW®※のような外のイベントを活用して評価しているケースも現れ始めています。パナソニックさんが取り組まれているGame Changer Catapultなどはその代表例かと思います。新しいものを生み出すために、マーケティングプロセスを社内会議に閉じこめず、企画の途中であっても必要に応じて社外の声をオープンに取り入れる、というやり方は今後ますます重要になっていくと思います。

根本 インプットはするけれど、日々の業務に追われてなかなかアウトプットが少ないことをよく聞きますが、既存の概念を壊していくことが大切であり、それが出来ない会社ではイノベーションは起きにくそうですよね。
現在、ミクシィの横串組織はマーケティング本部以外にデザイン本部と開発本部も存在します。まだ構想段階ですが、横串同士で新規事業の種を生み出すラボのようなことをできたらいいねと話しています。

※SXSW®(South by Southwest®) Conference & Festivals(サウス・バイ・サウスウエスト)は、毎年アメリカ・オースティンで行われる大規模なイベント。1987年に音楽祭として始まり、現在は音楽に加え、映画やインタラクティブ(双方向)をテーマとする技術、芸術、メディアなど大規模なフェスティバルとして開催。

おわりに

「乱暴な言い方にはなりますが、最終的にマーケティング機能のデリバー組織はいらないと思っています。」という根本の言葉が印象的でした。その背景として、「マーケティングの守備範囲が広い中で、全てを網羅することは難しく、モノづくりをする人たちの中にマーケティング思考がインプットされ、マーケティング戦略が組み立てられるのであれば、マーケティング組織がなくとも問題ないと考えているから」とのことです。

また、「将来的には、機能としての宣伝・PRの専門領域はあるべきですが、現場だけでなく経営層も巻き込んで、「基本全員マーケター」のような状況をつくっていきたいと考えています。まずはまだ道半ばですので、マーケットインの思考を啓発しながらモノづくりを支援し、組織として企業として強くなっていければ。」というミクシィグループの組織体制の説明もありました。根本の記事にもあるように、社のマーケターの組織のこれからにも注目いただければ嬉しい限りです。

根本 悠子(ねもと ゆうこ)
広告制作会社、株式会社NHN Japan(現 LINE株式会社)等を経て、2007年5月株式会社ミクシィに入社。Find Job!でコンテンツ企画・プロモーションに従事。2008年8月SNS mixiのプロモーショングループに異動。以降SNS mixiのユーザーコミュニケーションに携わるユニットのプロダクトオーナーを経て、2014年4月育休より復職しモンスターストライクのマーケティングを担当。 2017年5月モンスト事業本部マーケティング部部長就任。モンスターストライクに関わるマーケティング全般を統括。2018年4月、当社執行役員マーケティング領域担当、マーケティング本部長。(現任)
若原 強 (わかはら つよし)
2011年コクヨ株式会社中途入社。社内マーケティング改革、アジアフラッグシップショールーム構築、オフィスレイアウト自動化システム構築等を経て、現在はワークスタイル研究所 所長として、新しい働き方・暮らし方の創出、およびそれを支えるプロダクト・サービス開発に従事 。
2017年からはコクヨとの”複業”としてconsulting & more 代表も務め、コクヨ中途入社以前のキャリアを活かしてマーケティングコンサルタントとしても活躍中。

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