事業のゴールを、自分のゴールに。それがスキルを広げる近道 ~クリエイターリーダーシップ論~

事業のゴールを、自分のゴールに。それがスキルを広げる近道 ~クリエイターリーダーシップ論~

デザイナーやディレクターをはじめ、ミクシィには様々なクリエイターが所属しています。「クリエイターリーダーシップ論」では、オーナーシップを持って仕事に向き合うクリエイターにこだわりを聞いていくシリーズ。今回登場してくれたのは、デザイン戦略室で、組織開発として活躍する・遠藤です。元々、デザイナーとして入社した遠藤ですが6年程の現場経験を経て、現在はデザイナーに関わる組織開発、人事・採用、広報などを手がける部署に異動。これまでの仕事経験、役割を変えてきたから見えてきたもの、彼女が実践してきた“リーダーシップ”について、語ってくれました。


事業を成功させたい、よりデザインの幅を広げたい

──現在は組織開発として活躍されていますが、元々遠藤さんはデザイナーとして、新卒入社したとお聞きしました。

はい、そうです。2013年にデザイナー職として新卒で入社しました。これまでさまざまなサービスと関わってきて、具体的にはフォトブックアプリや年賀状アプリ、マッチングアプリなどのUI/UXデザイン、あと『CHAROP(チャロップ)』という新規アプリの立ち上げも経験しました。

──学生時代から、しっかりデザインの勉強をされていたんでしょうか?

実はそんなことなくて…学生時代は専攻が情報デザインだったので、目に見えるグラフィック的なデザインというよりは、「ユーザーや世の中の情報を整理・分析して、人が使いやすいインタフェースや仕組みをデザインすること」について学んでいました。

──具体的にどのような勉強なのでしょうか?

たとえば、実社会における問題の提起から解決までを取り組む「プロジェクト学習」というものでは、1年間かけて外国人向けの函館の観光サイトをゼロから作りました。留学生にアンケートを取って使いにくいところや分かりにくいところをヒアリングして、システム改修したり、デザイン変更したり…。専攻が異なる仲間とチームを組み、協力しながら課題解決をしていくような勉強をしていましたね。

──面白い授業!すぐ実務に活かせそうですね。ミクシィに入社を決めたのも、学生時代に学んだ“情報設計に基づいたデザイン”をやりたくて?

そうです、でも、私が就職活動をしていた2012年頃って、UI/UXデザイナーとして募集をしている企業はまだそう多くなくて。デザイナーというとグラフィックかWEBデザイナーの募集がほとんどでした。サービスを作る過程に関わりたい、特にアプリのUIデザインやってみたい、と思っていたので、それらは少し違うかなと。いろいろ探している中で、ミクシィに出会いました。ミクシィに入社してからは、とにかくサービスを作るのが面白くて、もっと事業を成長させたい、そのためにもデザインの幅を広げたいと日々思っていましたね。

──「サービスを作る面白さ」とは、具体的に何でしょうか?

いろいろあるんですが、マッチングアプリを提供するグループ会社に異動して、“コミュニケーション設計”について触れたとき、難しいけどやっぱり面白い、と感じましたね。異動してすぐ、私がある画面のリニューアルの案を出したことがあったのですが、それを見た先輩が「全部UIデザインとして合ってると思う。けど、面白くないよね」と一言。そのサービスをもっと使いたくなるか、が足りてないと言われてしまったことがあったんです。

──それは、“ワクワクするか”ということでしょうか。

そうです。マッチングアプリの前に私が手掛けていたフォトブックや年賀状アプリは、ユーザーがタスクをスムーズに完了できることがゴールだったので、感情の動きとかの優先度はそこまで高くはなかった。分かりやすさ、使いやすさ、シンプルさが重要だったのに対して、マッチングアプリは違っていたんですよね。

──たとえば?

マッチングアプリの機能で、男性側は自分をお気に入りしてくれた女性のリストが見られるんですが、女性の顔写真がモザイク表示される仕様でした。「なぜですか?」と聞くと「男性はモザイクのほうがドキドキして見たくなるじゃん」って言われて、とても納得しました(笑)。モザイクなしの顔写真や詳細なプロフィール見るためには、ポイント購入が必要という仕組みなので、見たくなる、タップしたくなるってすごく重要なんですよね。これが例としてふさわしいかは微妙ですけど…でも、私の中ではとても理解が深まった出来事でしたね。

──なるほど!良く分かりました(笑)

そんな経験をいくつも経て、ユーザー同士のコミュニケーションに向き合うサービスを作りたい、新規事業にチャレンジしたいと思うようになったんです。その後、mcc*で新規事業の部署に異動、好きなモノの#(ハッシュタグ)でつながる『CHAROP』というSNSアプリの企画から関わることになりました。プロダクトオーナー、エンジニア、デザイナーの私の3人チームでのスタートでしたね。

*「ミクシィ・キャリア・チャレンジ制度(mixi carrer charange、通称mcc)」の略。部署毎に求人を掲載し、メンバーは所属上長への相談や許可がなくても求人に応募でき、条件に合致すれば社内異動が実現する

 

▲『CHAROP』のバナーと使用イメージ

 

事業のゴールは、その事業にかかわる全員のもの

──新規事業とはいえ、3人だけで進めるのは想像以上に大変そうですね。

そうですね。初めて取り組むことの連続でした。アプリの世界観を作るブランディングや、ユーザーを集めるためのマーケティングにもチャレンジさせてもらいました。カスタマーサポートなど、デザインとは関係ない業務もありましたね。

──正直なところ、デザインに関係ない仕事を任されたとき私はデザイナーなのに…という気持ちにはならなかったですか。

それは、ならなかったですね。あ、でも昔の自分ならなっていたかも…(笑)。というのも、実は過去に別の部署にいたとき、上司に仕事に対する不満をもらしたことがあったんです。その時に「不満だけを言うのは楽だよね。遠藤さんには、それを解決するための行動を自ら起こしてくれることを期待しているよ」と言われたことがあって。その時に本当にそうだよな、と感じました。

──なるほど。遠藤さん自身の考え方が変わったきっかけでもあるんですね。

はい。何か新しい仕事を任されたとき、これはデザイナーの仕事じゃないから、と言ってしまうのは簡単かなと。でも、それだとなかなか仕事の幅は広がらなくて。できること、やれることも一向に増えていかない。つまりスキルアップしていないってことだと思うんです。まずは何でもやってみよう、自分から行動してみようって思えるようになりましたね。あと、『CHAROP』の場合、新規事業ということも大きかったですね。

──どういうことでしょうか?

新規事業を成功させるためだったら何でもやろう、と思っていました。このサービスを通じてどんな体験を届けたいのか、どういう世界を作りたいのか、チームメンバーと一緒にゴールの共通認識を作る。そして、ゴールを目指すために必要なことは、お互いになんでも言うし、なんでもやる。役割とか立場とか関係なく議論を繰り返して、解決案を出していく。もともと“言いたがり”な性格でもあったので、新規事業ならではの規模感やスピーディーさが合っていたのかもしれません。とにかく真剣に向き合わないと、新規事業は立ち上がらないし、喜んでもらえるサービスにならないと思っていたんです。

──事業のゴールを“自分ごと”として捉えていたんでしょうか?

そうだと思います。事業のゴールは、プロダクトオーナーだけのものではなくて、その事業にかかわる全員のものだと考えています。デザイナーである私もしっかり理解していることが何よりも大事で、その理解があるかでアウトプットの質も全然変わってくることを経験しましたね。

 

本気で向き合ったサービスがクローズ。自分に足りないものが見えてきた

──事業のゴールは、事業に関わる全員のもの。まさに、今回のテーマでもある“遠藤さんのリーダーシップ論”ですね。

そんな大きな声で語れるようなものではないですが…でも、私は自分が少しでも関わるサービスは自分のサービスという気持ちで向き合ってきたように思います。『CHAROP』は、まぎれもなく“私の事業”だったんですよね。だから、オーナーシップを持って、本気で向き合った『CHAROP』がクローズすることになったときは、本当に悲しかったし、悔しかったです。

──ゼロから作ったサービスであればなおさらだと思います。自分の子供のような存在ですよね。

本当にそうでした。そして同時に、自分の力不足を痛感したんです。自分が面白いと感じた“ユーザー同士のコミュニケーション設計”をいくら作りこんだとしても、その先にサービスとしてのグロースや収益がなければ事業として意味をなさない。視野の狭さ、視座の低さ含めて、事業成功を導くデザイナーとしての力が圧倒的に足りていないことを痛感しました。

──デザイナーから、組織開発に異動されたのにもそんな理由があるのでしょうか。

はい、力不足のまま、デザイナーとしてまたサービスに関わっていくのは違うような気がして。デザイナーに関わる組織開発、人事・採用、広報などを手がける部署なら、“事業を作ること”に対して、デザインとは違った視点のインプットが得られるのでは…と興味を持ちました。サービス作りが大好きだったから本当に悩みましたが、これまでとは全然違う環境で新しい力をつけてからサービス作りに戻ってこよう、と思い、異動することに決めました。

──なるほど。実際に異動されてみてどうですか?

思っていた通りで、新しい学びが多いですし、自分の足りない部分に気づかされることも多いです。デザイナーとは違った筋肉が鍛えられている感じです(笑)。部室長やマネージャーといった方々と接する機会も多く、事業を作る人の思考を知りたい、理解したい、という異動当初に思っていたことが、少しずつですが叶えられているように感じます。その他にも、これまで関わりのなかったデザイナーの方や人事や広報の方々から刺激を受けることも多く、デザインとは違ったところで視野を広げられていると思います。

──遠藤さん自身、リーダー・マネジャーという仕事についてはどう思われていますか?やってみたい仕事ですか?

いろいろな経験を経て、今はチャレンジしてみたい仕事です。以前は、リーダーやマネージャーになるというのは、デザインの現場を離れることだと思っていました。でも、今の部署に来てから、それは違うと感じるようになりました。事業のゴールに向かって、たくさんの力を集めることができる。一人での仕事とは比べ物にならないほど大きな仕事ができて、世の中に大きな影響を与えることができる。今は、そんな風に思っています。

組織開発で視野を広げ、また事業デザイナーとしてサービスを作りに携わっていきたいと思っています。その中で、仲間やチーム、そして事業を引っ張っていく存在になりたいですね。

 

遠藤 茜
公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科を卒業後、2013年ミクシィに新卒入社。デザイナーとしてアプリのUIデザインを中心に活躍。新規事業立ち上げも経験し、現在はデザイン本部 デザイン戦略室に在籍、キャリア支援・広報活動を担当。

 

 

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