新たなステージで、これからも日本に”新しい文化”を生み出す。 代表取締役社長 木村 弘毅 <後編>

新たなステージで、これからも日本に”新しい文化”を生み出す。 代表取締役社長 木村 弘毅 <後編>

ミクシィグループには、2020年現在、6名の社内取締役がいます。各役員のキャリア、仕事観、事業ビジョン、組織体制など赤裸々に語るコンテンツとしてシリーズでお伝えしていきます。

今回は、代表取締役社長の木村 弘毅。後編では、スポーツビジネスへの参入の背景と、6月末にリリースした新規サービス『TIPSTAR(ティップスター)』についてロングインタビューを実施。コミュニケーションをビジネスの軸として歩んできてこれからどのような未来に向かうのか、思いの丈を語ってもらいました。

 

※前編はコチラ

 

新しい文化を根付かせていきたい

ミクシィがスポーツビジネスをスタートした理由

私が考えるビジネスの鍵は、「モチベーションが湧く(事業としてやっていきたい領域か)」「ミクシィがもっとも得意(これまでの実績やノウハウが活かせるか)」「経済循環に繋がる(収益性が見込めるか)」この3つの条件を満たすコトです。これまで、SNS『mixi』、アプリ『モンスターストライク(以下モンスト)』とミクシィはコミュニケーションにこだわってビジネスを展開してきた実績があります。これは顧客にコミュニケーションへのニーズが潜在的にあるのではないかとも考えてきたからです。そのようなポイントを総合的に考え、3条件を満たす次のコミュニケーション領域でのビジネスはどこにあるのか。

スポーツのエンターテインメントは「点が入った、とられたで一喜一憂する」「どっちが勝つのかと、勝負のせめぎ合いを見て興奮する」とみんなでワーっと盛り上がるコミュニケーションの場として、そしてミクシィがモチベーションの湧くテーマとしても親和性が高いのではないかと考えています。上手くできるのかという観点では、これまでXFLAG PARK といったリアルイベントの実績があり、参加者が盛り上がれる空間を作ってきました。これまでのスポーツビジネスは、野球、サッカー、公営競技など、競技そのものにフォーカスされがちでした。しかし、スポーツの場は、来場したお客さん同士でワイワイ盛り上がれるように、コミュニケーションの場と定義できるのではないか、とも考えています。経済循環でいえば、まだまだオンラインが進んでいないスポーツ・競技がありますから、オフラインからオンラインに転換するだけでも大きな市場が作れるはず。高いポテンシャルを持つ市場と思っています。

そう考えている背景を説明しましょう。例えば、公営競技の分野で見ると、競馬などは成長していますが、同じ公営競技である競輪は、最盛期2兆円にせまる売上がありましたが、ここ数年は少し伸びてきているものの、最盛期の半分以下に減少しています(※公益財団法人JKAより「年度別車券売上額・入場者数」のデータより参照)。

競輪に、「年配の方のみが趣味で楽しまれている」というイメージを持っている方も少なくはないでしょう。しかし、私たちの若者向けに提供するコンテンツノウハウを活かせば、リバイブが可能だと思っています。減少傾向にある市場ですから、これからアップサイドへの転換ができれば、事業投資としてもチャレンジしがいがある。マーケットが減少傾向にあるとは言いましたが、経済規模は6000億円以上と魅力的ですから、スポーツビジネスの最初の立ち上げとしても良いマーケットと考えています。

 

日本の文化を作り、イケてる日本へ

まだこれは構想段階ではありますが、公営競技を今の時代に見た目も楽しみ方も合った、ファッショナブルかつスタイリッシュなエクストリームスポーツへと進化させることができると信じています。昔のゲームのマーケットといえば、一部のマニア層だけだったと思いますが、スマートフォンの登場で飛躍的にUI/UXが向上し、その結果、社会受容性も増加しています。それによって、エンタメのど真ん中にきて、マーケットも変わっていった。優秀なクリエイターがどんどん参入してきましたよね。同じようなムーブメントを起こせれば、公営競技の進化が可能ですし、友人や知り合いとワイワイ楽しむことができるコミュニケーションの空間を新たに生み出すことができる。それは、新しい日本の文化に繋がるはずです。

エンターテインメントのコンテンツの視点であれば、韓国は世界に通用するようなヒットコンテンツを生んでいますし、欧州ならサッカーの盛り上がりをご存知でしょう。欧州の自転車競技は、競技を”見る”だけではなく、映像演出や音楽で盛り上がる、食事やドリンクで会話を弾ませるなど、楽しみ方もスタイリッシュです。日本の独自の文化を公営競技にミクスチャーした世界観を作り出し、それを新しい文化として世界に向けて打ち出していきたいですね。外国人が日本に遊びに来たら、「ケイリン見なきゃ!」「ジャパン、クール」と呼ばれるようなエンタメコンテンツを作り出して新しい文化を作るのが理想です。

大人の嗜みとしてもおもしろそうじゃないですか、公営競技。選手各々にドラマがありますから、それを想像しながら、誰が勝つのか予想して賭けるってワクワクしませんか。ただ、どの選手が勝ちそうか予想するのは、とても難しい。勝負事は私も得意ではありません。全く予想できないほど(笑)。初心者の方にとっても、それは同じだと思いますから、そのあたりに改善の余地もあるだろうとも考えています。

プロジェクトの進め方については、インターネットサービスのようにクイックにリリースしてみてマーケットの反応を試してみる、というわけにはいきません。スポーツ一つとっても、選手がいて関わるスタッフがいて、業界団体や監督省庁もいらっしゃいます。スポーツの商業化には、パートナーとしっかりスクラムを組んで、様々な課題を一つひとつ丁寧にクリアしていけるように心がけています。

 

スポーツビジネスの切り札

コミュニケーションをサービス軸にした動画プラットフォーム

2020年6月末、新規サービス動画プラットフォーム『TIPSTAR(ティップスター)』をリリースしました。動画サービスと聞くと、サービス上で色んな動画を楽しむ動画配信を想定される方もいるかもしれませんが、『TIPSTAR』は動画をコミュ二ケーションツールとして利用しながら、友人同士でワイワイできる空間や体験を楽しんでもらうサービスです。

ライブで競輪のレースをみながらのベット(何が勝つか予想し賭ける)や、レースの着順予想を手伝ってくれる演者の視聴など、それらはあくまで機能として用意していますが、一番のサービス価値は友人と”ワイワイする体験を楽しんでもらうこと”。例えば、カラオケボックスでは、歌ったり、歌を聞いたり音楽コンテンツで楽しむかと思いますが、会社の同僚、知り合い、友人などとワイワイ騒いで楽しむことがメインのはずです。これがイメージとして近いかと。構想しているエンタメの世界観を実現するためには、まだ多数の障壁がありそうですが、世の中の情勢や時代の変化とともに柔軟にアップデートしていきたいと思います。

 

コミュニケーションを取り戻せ

ある時モバイルのユーザー動向をリサーチしていたことから、『TIPSTAR』のサービス構想のヒントを得ました。モンストのユーザーがなかなか増加しないという現象から、他のゲームやアプリのシェアが伸びていると仮説をたてました。しかし、さらにリサーチするとそうではなかった。理由は何か。『YouTube』や『TikTok』など、動画サービスにユーザーが流れていっていたんですね。その背景には通信規格が4Gになっていて、ユーザーが動画コンテンツを消費しやすい環境になっていたからです。ゲームやアプリは、インタラクションを求められますが、動画だと受け身で楽しめるため、サービスを消費できる。となると、動画は一つ事業のテ―マになるなと。動画配信サービスを見回すと、全てがオンデマンドです。既存の動画サービスは、ユーザーの見たい志向性に合わせて時間、手段、コンテンツをコーディネートしている。ある動画配信サービスは、レコメンドエンジンに数千億規模の投資をしているぐらいです。それって、人と人とのコミュニケーションの分断化になりかねません。

これまでユーザー同士のコミュニケーションを楽しめる場を提供してきた私からしたら、一大事なわけです。人々のコミュニケーションを取り戻さなければ。実はこれはモンスト誕生の時と似たような構造です。スマホアプリが充実してきた時代、一人で遊べるゲームが量産されつつありました。「みんなで楽しめるアプリがまだない、じゃ、ミクシィの出番じゃないか」と。

また、スポーツって、よく筋書きのないドラマって言われるかと思いますが、本当にその通りだと思います。仮にレース一つとってもルールや条件は毎回同じだとしても、勝敗結果は毎回異なるでしょう。選手の体調やマインドの状態、対戦相手や気候や場所によって、異なるドラマが生まれる。経営の観点からすると、試合やレースが毎回新しいドラマとなって生み出され、顧客を飽きさせないわけですから、魅力的なコンテンツです。

「動画」×「コミュニケーション」×「コンテンツ」といったキーワードを総合的に考え、ライブエンターテインメントとして『TIPSTAR』を構想しました。コミュニケーションを促進する動画サービスはまだないですからね、大きなチャンスだと捉えています。あとこれは補足ですが、モンストのヒットによって「ミクシィはゲームが当たった」と誤解されるケースが多々ありました。「ミクシィはゲーム屋じゃない。コミュニケーション屋なんだ」という証明をしたい想いが個人的にありますから。

サービスの成長性の観点で説明すると、様々な施策の実行を検討していますが、短期間で急拡大というよりも、積み上げ型で少し時間を要するかなというのが正直な予測です。というのも、コロナといった外部要因を鑑みつつ、柔軟な施策を実行していく必要があるかと思いますし、スポーツというリアルビジネスとネットを融合させたサービスのため、ネット単一のサービスと比較すると時間を要するかなという見解です。

 

ケアも全力で

「◯◯勝負、負けたほうは罰ゲームね」友人と罰ゲームを賭けて勝負事をしたって経験、ありますよね。そのほうが盛り上がるし、燃えるし。その興奮もコミュニケーションの楽しみ方の大事な要素だと思っています。とはいえ、展開するサービスでは、実際のお金を賭けるため、使い過ぎてないか、やり過ぎてないかといったケアも全力でサポートしたいと思います。例えばですが、生活水準が著しくおちたり、お金を使いすぎたりすれば独自のシステムやテクノロジーを駆使してケアできる体制を構築していきたいと考えています。これまで、ゲーム依存やネット依存に関する啓発活動を行ってきた実績もあります。また、ギャンブルへのイメージを良くないものと思っている方も多いかと思いますので、様々な対策を施しながら、コミュニケーションを介在させ質の高い娯楽へと進化させていくのが、サービス提供者としての使命だと考えています。

 

ミクシィで働くということ

「ユーザーサプライズファースト」これはミクシィの理念ですが、どんなサービスを提供しようと、顧客の期待値を超えるサービスで驚きを世の中に提供していくことに、これまでもこれからも変わりはありません。世の中に豊かなコミュニケーションを創出していく、本来あるべき失われたコミュニケーションを取り戻す、そのミッションを実現し続けていく。

これらの会社のスタンスは顧客にももちろん、ミクシィで働く従業員の皆さんにも実現していくとお約束します。経営の立場からすると、従業員も顧客ですからね。人生の大半の時間を仕事にかけるわけですから、仕事が人生を左右するといっても過言ではない。

だからこそワクワク働いてほしい。特に2020年は、新型コロナウイルスの発生で働き方を考えさせられるきっかけになりました。働き方にリモートワークという選択肢がでてきましたが、こちらも単純に家で働くだけではなく、色んな働き方といった多様性を個人によって使い分けるのが理想だと思っています。例えば、冬の寒い時期は沖縄で数ヶ月働く、通勤ラッシュを避けるため、朝は自宅でデスクワークをして昼過ぎに出勤、など。もちろん、働き心地がよいオフィスをフル活用してもOKなど。他にも選択肢はあるかと思いますので、まだ何も決まってはいませんが会社としてもルールを整備しつつ、会社と従業員のみなさんと一緒になって色んな働き方を模索していきたいと思います。

代表取締役社長 木村 弘毅

電気設備会社、携帯コンテンツ会社等を経て、2008年株式会社ミクシィに入社。ゲーム事業部にて『サンシャイン牧場』など多くのコミュニケーションゲームの運用コンサルティングを担当。その後『モンスターストライク』プロジェクトを立ち上げる。 2014年11月、当社執行役員就任。2015年6月、当社取締役就任。2018年4月、当社取締役執行役員(スポーツ領域担当)就任。2018年6月、当社代表取締役社長執行役員(スポーツ領域担当)就任。2020年4月より、当社代表取締役社長。
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