マネジメントの理想は“なにも管理しなくていい”状況をつくること 〜クリエイターリーダーシップ論〜

マネジメントの理想は“なにも管理しなくていい”状況をつくること 〜クリエイターリーダーシップ論〜

デザイナーやディレクターをはじめ、ミクシィには様々なクリエイターが所属しています。「リーダーシップ論」は、活躍するマネージャー/リーダーに仕事へのこだわりを聞くシリーズ。
今回インタビューを行なったのは、モンスト事業本部のサウンドグループマネージャーを務める安井。この部署は、『モンスターストライク』(以下モンスト)に関わるサウンドの制作・ディレクションを手掛ける部署です。4名のメンバーをまとめるマネージャーとして活躍する安井が、どのようなキャリアを辿り、どのようなことを心掛けてマネジメントを行なっているのかについて語ってもらいました。

 

“マネージャーの仕事”が分からず、迷走した一年

━━まずは安井さんのこれまでのキャリアについて聞かせてください。

安井 音楽関連の専門学校を卒業後、音楽制作会社に入社しました。ガラケーの着メロ制作やカラオケのデータ制作、インディーズのCD制作などを手掛けていたんです。そこから26~27歳くらいで限界を感じるようになり、他業種へ転職しました。次に転職したのは不動産業。中古住宅や新築住宅、土地の仲介などの営業を行なっていました。一年ほど働いた後、再度転職し、音楽制作ソフトやイベント音響用機材のカスタマーサポート、作曲ソフトを使ったスクールのコーチなどを担当しました。その後は、IT業界へ。データセンターに常駐して、サーバを利用する既存・新規顧客に対する窓口対応を行なっていました。営業とエンジニアの間に立って、お客様との納期調整などを手掛けていたんです。

━━ミクシィへの入社の決め手はどこでしたか?

安井 専門学校時代の先輩がミクシィで働いていて、声をかけていただいたのがきっかけです。実はちょうどその頃、在職していた会社で課長昇格の話もあったので、ここでキャリアを積むか、自分の興味のある分野で働くか…という葛藤がありました。悩みぬいた末、ミクシィを選んだのは、転職のタイミングとしてはラストチャンスだと思ったから。また、妻から「悩んだ気持ちのまま、今の仕事を続けられるの?新しい道を選ばなかったことを後悔するなら、選んで後悔したら?」という一言にも、背中を押されましたね。

━━エンタメ業界とは離れたところで働かれていたからこそ、一歩を踏み出すには大きな覚悟が必要ですよね。

安井 そうですね。悩みながらも前向きにやってみようと、2017年6月にミクシィに入社しました。現在はモンスト事業部のサウンドグループに所属しています。このグループは、『モンスト』というIPにサウンドで貢献することがミッション。ゲーム内では、コラボのSE制作、版元からいただいたBGMをゲームに実装できる形にコンバートする作業や、グッジョブスタンプのボイス加工などを行なっています。ゲーム外では、新キャラのPVにおけるBGMやSEのディレクション・制作が中心。チームメンバーとしては、サウンドディレクター1名、サウンドクリエイター2名、オールラウンドに対応してくれているメンバー1名という4名のメンバーで構成されています。

━━安井さんがマネージャーになられたのはいつですか?

安井 2018年4月にマネージャーになりました。でも当時は、マネージャーというのは何をすべきか全然分からなくて。入社後はサウンドディレクター的な動きをしていたので、マネージャーという仕事はディレクションをしながら予算を見て、メンバーの勤怠管理をする、くらいの捉え方だったんですよ。マネージャーとして何をすべきか。悩みに悩んで、ようやく一年後くらいに自分のやるべきことが見えてきました。

━━というのは?

安井 事業本部の目標、各部署の目標、各グループの目標、という風に本部からブレイクダウンされてきた目標に対して、僕らは何をすべきかをきっちり提示していくことが、マネージャーとしての仕事だなと理解できるようになったんです。

━━ただ単に目の前の仕事をこなすのではなく、目標にどうコミットしていくかを踏まえると、アウトプットも変わってくるものですか?

安井 成果物よりも先に、メンバーの行動が変わると思っています。その他にも実際にそれをやってみて正しかったかどうかを振り返る基軸になります。しっかり目標が打ち出せていると、この仕事は事業に貢献できているか、というのを振り返ってアップデートできますが、それがないと振り返りようがないですよね。それだと結局、自画自賛で終わってしまう。「自分はすごく頑張ったぞ」という人に対しては、客観的な意見が言えなくなってしまうので評価しづらい。だからこそ、目標を踏まえて何をすべきかを伝えていくことは重要だと考えています。

━━なるほど。例えば、目標に対して「やり切った」ケースと「ユーザーのためにもっと改善できた」と後悔が残るケースがあるかと思います。安井さんはどちらの態度を評価されるんでしょうか?

安井 僕はどちらの態度も評価すべきだという考えです。「やり切りました」と言い切れるのはすごいこと。その場合は、何をどうやり切れたのかをしっかり聞くように意識しています。かたや後悔が残ったとしても、振り返ったときに「次はこういうチャレンジをしたい」「これをやったらもっと面白くなるんじゃないか」と、やり切れなくても結果として振り返るものが見えたこともすごい、と思うんですよ。それよりも、例えばさまざまな部署のメンバーを巻き込んで挑戦してみたら成果が出た、というように、自分個人の活動より周りにどのような影響を与えたかという点を見るようにしています。あとはモンスト事業に対して、どれだけ貢献できたかは一つの指標になるかと思いますね。

 

妻から学んだ、“マネジメントに必要なこと”

 

━━安井さんがマネジメントする上で大切にしていることは、どんなことですか。

安井 プラス思考でいる、ということでしょうか。僕の中ではネガティブ思考は持たないようにしています。ネガティブというのは例えばですが、「あの人がやってくれない」とか「あの人の言い方が嫌だ」とかですね。物事には良い面も悪い面もありますが、僕は良い面を積極的に捉えるようにしています。基本的に僕は性善説を信じているのですが、性悪説だと悪い方向に考えが進んでパフォーマンスが落ちると思っているから。もちろん、さまざまな人間関係の中で仕事をしているので、やりづらさを感じることもあるでしょう。そのときは、「なぜその人はそういう行動をしているのか?」を考えてほしい。おそらくその人は周りの人をわざと傷つけたり、困らせたいわけではないはずですから。

━━なるほど。そういった考えは、どこで養われたんですか?

安井 ちょっと恥ずかしいんですが、うちの妻ですね(笑)。僕は世の中で一番、妻を尊敬しているんです。もともと妻とは一緒に仕事をしていたこともあって、そのときにリスペクトできる仕事の仕方をしていました。「この製品・サービスは誰のために作るもので、誰が幸せになるのか」という一貫した考えを持っていて、「こうすればたくさんの人が幸せになるはずだ」という視点で仕事に取り組んでいたんです。僕もこうなりたいな、と思っていたんですよ。ブレない軸を持つ――これはマネジメントやリーダーシップにも紐づく話だと思いますね。

━━尊敬している人がパートナーの方というのは素晴らしいですね!

安井 これまでマネジメントやリーダーシップに関するセミナーに参加したり、動画を見あさったりしたのですが、結局のところ“信念や言動が一貫している”ということが一番重要なんだなと。一貫しているということは、一方で頑固なリーダーにも見える可能性がありますが、それを否定する気はありません。それはその人の価値観なので。そうなってくると、組織としてはその人の力がきちんと活かされているだろうか?を考えるべきだと思うんですよね。より良い結果になるよう、その人の価値観に適したプロジェクトにアサインするか、あるいは、同じ組織の中できちんと役割を分けることが必要なんじゃないかなと思いますね。

━━他にも安井さんがマネジメントで心掛けていらっしゃることはありますか?

安井 メンバーの“健康状態”が見える環境作りですかね。今、グループの中でいいなと思っているのは、終わったプロジェクトや案件を振り返る時、みんな「ここが良くなかった」「次はこういう観点で考えて、挑戦してみます」と正直に話してくれるところです。僕は絶対に失敗したことに対して、責めることありません。失敗したとしても案件をやり切ってくれたことには感謝していますし、かつ次を見据えてくれていることも感謝でしかないので。正直に話してくれる環境は、メンバーの健康状態が良く見えるんですよね。隠しちゃうと分からないじゃないですか。病気と一緒で、末期まで進行して手に負えないという状況になることもある。そうなるくらいなら、日頃から自覚できる組織を作ることが重要だなと。

━━確かにそうですね。

安井 「あの人、調子悪いな」と思ったら、周りがサポートする環境を用意することもできると思うんですよ。もちろん中には、言い出しにくい雰囲気のチームもあるでしょう。言い出しやすい環境と言い出しづらい環境の差というのは、突き詰めていくと信頼関係にあると思っています。例えば、自分が失敗したときに、「これを言ったら叩かれるかもしれない…」と思ったら言えないですよね。何でも言える状態をどうやって作るか。これもマネージャーの仕事です。マネージャーの仕事はよく、“人・物・金・時間の管理”だと言われますが、僕が理想としているのは何も管理しなくていい状況。いちいち「これ、どうなってる?」と聞くのではなく、勝手に情報が入ってくる状況が一番いい。「今、不健康ですよ」ということをちゃんと言ってもらえる状態を作るというのが、マネージャーのやるべきことだと思っているし、メンバーの方もそこに共感してくれると嬉しいですね。

━━マネージャーとして働く醍醐味は、どういうときに感じますか?

安井 僕が大切にしているプラス思考が、メンバーの動きから伝わってきたときは嬉しいです。そういう光景を見ると、「同じことに向かおうとしている仲間だ!」って思うんですよね。僕が発信したことに影響を受けてくれているのであれば、めちゃくちゃ嬉しいです。また、僕が気づけなかったことに気づいて、「良くしていこう」「これってどうでしょう」と提案してくれるのは、すごくワクワクします。それを聞いたときに、マネージャーだからというのではなくて、同じ仲間として純粋に「いいね!」と思うんですよ。

━━同じ思いを共有できる仲間と働くのは、確かに嬉しいですよね。安井さんはミクシィに入社して良かったと思いますか?

安井 そうですね。信頼できる仲間と働けているし、自分も成長することができたかなと思います。例えばまたカスタマーサポートの仕事をすることになっても、全然違う成果を出せる自信がありますね、今は。なぜ成長できたかというと、濃い経験を積めたからだと思います。レイヤーが上がったことにより、上司の考え方をインプットできたことが大きいかな。視野が広がって、今自分が考えている問題が実はそれほど大きな問題ではないと気づけたので。そうすると、余裕が出るんですよね。さっきの“一貫する”という話にも通じますが、『モンスト』で世の中をどうするのかという考えに立ち返って課題を解決しようとすると、今まで悩んでいたことはそんなに大きな問題じゃないというか。多少問題が起きたとしても取り返せるという自信にはつながりましたね。

 

世界平和に貢献したい。そのために何ができるか

━━最後に。安井さんの今後の展望を教えてください。

安井 ミクシィの中で成したいことというよりも、僕自身が単純に「生涯これを掲げて生きていこう」という指標が一つあります。恥ずかし気もなく言いますが、「世界平和」を実現したいと思っています。とにかくピースにしたいという思いがあって、定年を迎えて現役をリタイアした後も、住んでいる地域貢献のために働きたいと思っています。

今は色々なことが起きている時代ですよね。ITの変革のスピードは速いですし、特に今年は新型コロナウィルスの流行もありました。世の中のスピード感や情勢の中で、世界平和のために何ができるかというと、たくさんの人にプラス思考を持ってもらうためにはどうしていくべきかを考え、伝えることだなと思っているんですよ。まずは身近なところから僕の考え方に興味を持ってもらって、その考え方がみんなの行動として表れてきたら世界平和につながるだろうと。そうなると、『モンスト』という枠だけには収まらないなと。世界平和を実現していくために、自分が得なければいけないスキル、知識、経験を蓄積して、世の中に貢献していきたいと思っています。

━━目の前で起きていることだけでなく、もっと大きな世界平和に向けて、動いていきたいと。

安井 僕の持論では世界平和を実現できれば、『モンスト』にも貢献できるし、ひいてはミクシィにも貢献できると思っています。ただ僕一人だけでは実現できないので、みんなにプラス思考の考え方などに少しでも興味を持ってもらって、それが行動として返ってきたらいいなと思っているんですよね。

━━なるほど。壮大な目標ですね。ご自身のキャリアパスについてはいかがですか?

安井 僕は世界平和に向けて貢献していきたいと思っているので、それに向けて自分のスキルアップ、経験値の蓄積ができるような道を進みたいと考えています。それはミクシィにいるか否かに関わらずです。とにかく今は時代の動きが早くて、一年後に何が起きているか分からない状況です。必要なのは情報収集で、世の中がどういう風に動いているのかを正しくキャッチアップしておくことかなと。仮に突然新しいことが起きてもいいように、変化に強い状態を作っておくことを意識しています。

━━状況を見ながら、進むべき道を選択していくということですね。

安井 一年後、サウンドの仕事があるかないか、というのは常に考えています。音の価値が見直されたら、分からないじゃないですか。コロナもいいきっかけだと思うんですよね。根底を覆されるような変化が起きたので。そういう状況の中で、自分たちがどうスキルや経験をもってして貢献できるのかを、考え続けることは重要かなと思っています。

安井 聡史 (やすい さとし)
2017年6月に中途入社。サウンドディレクション業務の担当などを経て、2018年4月よりサウンドGのマネージャーに就任。旧オフィス、新オフィスにおけるスタジオ構築への参画なども経験し、現在、実務の部分はメンバーに支えてもらいながら、マネージャーとしてチームを牽引する。

 

 

 

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