10月末、「ADDMe Tech」というイベントが開催されました。
”ADDMe”は、「アカツキ(A)」「ドリコム(D)」「Donuts(D)」「ミクシィ(M)」4社の頭文字と、登壇する「エンジニア(e)」を組み合わせたもの。ゲームを制作する4社が集い、ゲーム業界を志す学生に対して、現場の話を色々とぶっちゃけて話そう、と実施されました。会場はDonuts社のオフィスをお借りして、全編オンラインで配信されました。#000としてスタートを遂げた今回のイベントの様子を、各社のコメントとともにご紹介します。
「エンタメ×テクノロジー領域でゲームを軸としたIPプロデュースカンパニー」を標榜する「株式会社アカツキ」からは、きたばやしあでぃ氏、『みんゴル』『ダービースタリオン』などのゲームを制作する「株式会社ドリコム」からは伊藤氏、自社IPも所有し『D4DJ Groovy Mix』などのタイトルを有する「株式会社Donuts」からは今田氏が登壇。そして、ミクシィからは『モンスターストライク(以下モンスト)』のクライアント開発を担当する中田が登壇し、人事のチャンが会の進行を務めました。
▲配信中のスタジオの様子
▲イベントはDonuts社のオフィスの一角をお借りして行われました
パネルディスカッション
参加者の皆さんが2016年入社、ということもあり、4年前の話からスタート。学生時代とプログラミングの話が中心になりました。
チャン 学生の時にゲーム開発の経験がないと就職は難しいのかな、と思っている学生も多いと思うのですが、実際いかがですか?
きたばやし 一切やっていないくてもOK!とは胸を張っては言えませんが(笑)。ゲーム業界に行くと決めた時にどれだけちゃんと勉強するぞ!と思えるかどうかがすごく重要な気がしますね。
チャン なるほど。お三方はいかがですか?
伊藤 私はもともと高校生の時にゲームのシナリオを書いていて、ゲームの専門学校にシナリオの科もあったので、そこに進んでみたらプログラムの学習も必修で。学びはじめてみたら面白くて、今プログラム書いてますね(笑)。
今田 15,6歳の時からプログラミングはやっていて、HSPとか簡単なものを使ってゲームを作ったりはしていました。正直、私は就活を甘く見ていた部分があったので(笑)。かなり動き出しは遅かったんですけど、情報系の基礎勉強はやっていたので、決め打ちするような形でなんとか就職できましたね。
中田 ゲーム制作の経験でいうと、僕は小学生の頃で…。
一同 早い(笑)。
中田 本格的に始めたのは高専に行ってからで、クラブ活動でやってました。その時にゲームを作ってて気づいたことがあるんですが、僕は技術先行型でエンジンを作るのは好きだけどステージ作るのは飽きちゃう、みたいな(笑)。ちゃんとした制作経験はないですけど、周辺技術などとずっと触れ合ってはいたので、できるかなって気持ちはありましたね。
チャン じゃあ、結論めいたことをいうようですが、「がっつり作れます!」みたいな経験がなくても挑めるということですね。それぞれのゲームづくりの発端を振り返ったところで、入社後の話に。
今田 最初に携わったプロダクトは、入社当初プロトタイプレベルで、私が4人目のエンジニアだったんですけど、結構大規模な開発が進んでいて。
チャン では、就活を甘く見ていた今田さんからすると…?
今田 結構やるな、みたいな(笑)。Unityとかもほとんど触ったことなかったんですが、やりながらキャッチアップしていきましたね。難しかったのは3Dの描画周りとかですかね。当時は今ほどインターネットに情報もないので、英語で書かれた本だったり、もともとプロダクトにいた先輩から学んだりしながら、やるしかなかったですね。やったことがないことが出てきた!くらいの気持ちでいました。
きたばやし 私がプロダクトに携わって感じたのは、個人で制作するゲームと考慮する範囲が全然違うんですよね。数倍、数十倍のレベルで。リリース前、リリースの段階でもたくさんの人が待ってくれていたりして、スタンスが変わった部分は大きかったですね。
チャン 作る側として認識が強まったのは、技術的な観点だとどんなところですか?
きたばやし いわゆるチート対策の部分とかですね。個人で制作しているゲームの範囲だとあまり意識する部分ではないので。どういう穴があって、そこにどう対策を講じるのか、といったアクションを通じてあらためてユーザーの多様性に気づく部分はありました。
中田 僕はインゲームのストライクショットの実装から入って、裏側のシステムやりつつUIを手伝う…とか色々な部分をツアーするようにキャッチアップしてましたね。ある程度出来上がった状態にジョインしたので、このコードについて聞きたいと思っても担当者がもうチームにいない、とかで困ったことはありましたね。コードリーディングの量が学生の頃と比べて膨大でしたね。実装の数も多いし、かなり手が加わっていることもあって、まずは読み解くところからはじめるのは大変でした(笑)。
伊藤 私は最初にIPを選ばせてもらったあとで、「このコード渡すのでとりあえず作ってみて」というかたちで好きに書かせてもらって、この機能どうですかーと先輩に提案することをしていましたね。学生の頃だと、自分だけがわかればよかったのですが、チーム内にもわかりやすく書くコツとかを教えてもらいました。長期的に運用することを考えると、自分がいなくなったあとにも使いやすいものでないといけないですからね。
チャン たしかに、チーム内はもちろんプロダクトやその会社にとって使いやすいものであるかって点は、学生時代とは大きく違うのかもしれないですね。
今田 広く浅くやっておいてよかったなと思いますね。一通りやっていて、すこしアルゴリズムに詳しいかなくらいのものだったんですけど、すごく技術的に深堀りしている人たちを横目に見られていたのはよかったかもしれないです。そうして好奇心を刺激されることだったり、とりあえず手を伸ばして触ってみるほうが、あとあと面白い役立ち方をするのかなと思います。
チャン あー、なるほど。そこは意外と真面目ですね(笑)。
伊藤 専門学校ではC++をメインにやっていたんですが、他にはどんな技術があるんだろう?とUnityとかUnreal engineとかの勉強会に参加してました。並行して小説を書いていたんですけど、たまたま行った勉強会で「Unityの本の執筆を手伝ってくれないか」って声をかけられることもあったり(笑)。どんどん積極的に探しにいこうって姿勢もありましたね。
中田 今田さんと同じような感じなんですけど、私は先輩に「T字の学習」を薦められたことがあって。
チャン 「T字の学習」?
中田 なにかひとつ深く知っていることがあれば、そこから他の分野も枝分かれして見渡せるよ、ってことです。興味のあることに手を出していく適応力も大事ですし、自分の得意とする柱のようなものもあると更にいいなと思いますね。
今田 (広く知っていると)直接役に立つことって少ないんですけど、間接的に役に立つ時が来ると思いますね。アルゴリズム力というか(笑)。
きたばやし 行動として「知りたい」で止めないこと。どうやったらできるんだろう?とひたすら試行錯誤していくこと、それだけ打ち込めることを見つけることは意識してたかなと思いますね。私の場合はそれがゲームだった、という感じです。
チャン 具体的な技術がどう、というより、好奇心で止めずに周りに聞いたり自分から勉強してみることの方が大事、ということですね。
次は、学生から寄せられた質問に4社で回答していく質疑応答の時間に。当日に回答した質問からいくつか抜粋してご紹介します。
一人でやるより、友だちとか数人とやることですね。モチベーションを自分のものだけにせず、外に置くことはとても重要だと思います。
パネルセッションとQ&Aの大きな二部構成で、約2時間にわたるセッションは終了。それぞれのキャリアを参照にしながら、今ゲームエンジニアとしてどのように働いているのか、学生の頃からどうすればいいのか…4社の話は尽きませんでした。一貫していたのは、どのような技術を学べばよいのかではなく、まずは自身の”熱量”を大事にすること。そして、好奇心のままに、まずは学んでみる、触ってみる、作ってみることがゲームエンジニアへの第一歩、といったメッセージだったのでは、と思います。
次回開催について
「ADDMe Tech」では、今後も未来のゲームエンジニアに向けて情報を発信していくとのこと。ちなみに次回は、12月3日(木) 18:00~ 開催予定です。
イベント内容はコチラ
Webサイトからチェックして、ぜひ次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。