2018年9月、エンジニアを目指す学生やIT業界に携わる若手エンジニア向けのテックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が開催されました。
※昨年の様子はコチラから
そのBIT VALLEYがバージョンアップし「BIT VALLEY 2019」として今年も開催予定です。
渋谷のIT企業であるミクシィ、サイバーエージェント、DeNA、GMOインターネットが、渋谷をIT分野における世界的技術拠点にすることを目的に開始したBIT VALLEYプロジェクト。今年はテクノロジーにとどまらず、モノづくりに関わる全ての人が楽しめるカンファレンスになるそうです。
ミクシィグループがなぜ「BIT VALLEY 2019」を開催し、カンファレンスを通して何を伝え、何を実現しようとしているのか。ミクシィグループの想いと、先日サイバーエージェントさんの新しいオフィスで行われた共催4社代表による対談インタビューの模様をお伝えします。
“体験”を提供していく
まずミクシィグループが「BIT VALLEY 2019」の方針に賛同し、他3社と一緒に盛り上げていくことになった背景を当社CTOの村瀬から。
そもそも、ミクシィグループは、“コミュニケーションを通じた体験”をサービスとして提供しています。それは私たちの強みでもありますが、ユーザーの皆様に体験していただいて初めてサービスを提供する意味があります。今回のBIT VALLEYを通して若手クリエイターやエンジニアの方々にも色々なことを同様に体験してもらいたいと考えています。私たちの作るサービスのポリシーを少しでも体感してもらうためです。これはネタばれになるのであまり詳しくは言えないのですが、参加者同士でコミュニケーションをとりながら体験してもらうようなコンテンツも考えています。
また、渋谷の街をテクノロジーやクリエイティブの力で進化させていきたいという意図もあります。もちろん自社のPRもありますが、渋谷で創業し渋谷の街で事業を展開してきましたから、渋谷のイベントに参加させていただくこと自体が喜ばしい。
そして、共催4社の事業ドメインは似ているものの、それぞれ異なるビジョンのもとに事業展開する4社が一緒になってイベントを実施すること自体、面白いと思いませんか。それは、若手クリエイターやエンジニアのキャリア、地方創生、街の活性化など、様々な課題に4社が共感しているから、解決に向けて取り組んでいけるのだと思います。オープンイノベーションと同様に共創するという文化形成に、4社とも意思表示をしているわけですから。
次に、4社代表インタビューの様子。昨年に引き続き今年も実施することになった背景や、カンファレンス全体で何を提供していくのか。4社の運営代表者(サイバーエージェント 長瀬氏、GMOインターネット 稲守氏、DeNA 小林氏、ミクシィ 村瀬)に聞いてみました。
左からミクシィ 村瀬、左奥サイバーエージェント 長瀬氏 、右奥DeNA 小林氏、右手前GMO 稲守氏
テックカンファレンス→モノづくりカンファレンスへ
━━━━改めてBIT VALLEYについて教えてください。
サイバーエージェント(以下CA) 長瀬:渋谷のIT企業4社と渋谷区が一緒になり、若い人材を盛り上げていこうと立ち上げたものです。昨年は学生含めて約1000人がカンファレンスに集まりました。前回は#0の位置づけでしたが、今年は#1でより本格的なイベントにしたいと思っています。
DeNA小林:おかげでメディアに多数取り上げてもらいましたし、カンファレンスの認知そのものや裾野は広がったかと思います。エンジニア以外の職種からもフィードバックをもらう機会もありましたし。
GMOインターネット(以下GMO)稲守:交流などのきっかけづくりとしては良かったかと思います。様々なフィードバックもいただきましたし、我々も新しい取り組みにもつながっていますので。
ミクシィ村瀬:盛り上がりましたよね。開催したことで、課題もいくつか見えましたし。例えば、またイベントをやるのか、ビットバレーの活動全体をどの方向に向けていくのか。などを考えるきっかけにもなったと思います。
DeNA小林:一つ課題にあったのが、渋谷の企業だけしか参加できないのはいいんだっけという議論です。渋谷にこだわらず日本全体を盛り上げていこうよって。
ミクシィ村瀬:渋谷を中心として、みんなを巻き込んでいこうというイメージですね。
CA長瀬:ものすごく期待されているというのを、ひしひしと感じましたね。
GMO稲守:そういえば、若い人にとってインターネットって空気と同じで、あるのが当たり前。その視点から「社会インフラに貢献していきたい」という意見をいただけて嬉しかったですね。
ミクシィ村瀬:あと、この規模の会社が集まってあれだけ短い準備期間でスピーディーにゴールに向かって実現できたのは素晴らしいと思いましたね。
━━━━今年のコンセプトは、「モノづくりは新たな領域へ」です。この背景は。
DeNA小林:現在、様々な勉強会やカンファレンスが各地で開催されています。BIT VALLEYで同じようなテックカンファレンスをやっても仕方ない、BIT VALLEYならではを実現したい、というのが前提にあります。プロダクトやサービス開発においては、テックだけではなく、デザインを含めいろんな要素が関わっています。サービスづくりに関わる全ての人たちに何らかのインプットを受け、成長につながるようなモノづくりカンファレスにしたいと思いました。ITの力で既存産業をよりドライブしていけるように貢献したいですし、ひいてはそれが日本全体のモノづくりの底上げにつながるような活動になればと思っています。
ミクシィ村瀬:各社、単純なインターネットサービスや技術だけという企業ではなくなってきています。弊社もスポーツやウェルネスの領域などにも進出していますし、企業によってはハードウェアの開発やイベント開催などもやっています。そのようなモノづくりにおいて、技術、デザイン、AI、アートなど様々な要素を並列に進める必要があると考えています。
CA長瀬:例えば、クリエイターといってもイラストを専門としている人もいれば、番組を作る人、音声技術に長けた人など職種の専門性が広がっています。
GMO稲守:加えていうとサービスやプロダクトにおいて、エンジニアが0→1を担うケースは多いかもしれません。しかしそこからグロースさせる場合は、色んな才能が集まってできていますよね。また、エンジニアがデザインしたり、デザイナーがエンジニアリングに関わったりと業界も職種もボーダレスになっている潮流もあります。たまたまかもしれませんが、4社とも色んな事業を展開しているからこそ、そのような発想になるのかも知れませんね。
DeNA小林:このようなコンセプトや背景があったからこそ、BIT VALLEY 2019のキービジュアルのデザインもそれらを表現しました。縦と横のラインを入れ、テックとデザインの交差をイメージしています。
━━━━となると、モノづくりに関わる全ての人が参加できると。
DeNA小林:そうですね。特に来場者と想定しているのは学生や若手、地方在住のエンジニアやクリエイターですね。学生向けに検討している交通費や参加費の補助なども、地方の学生や若手にも参加してほしいと考えているからです。自分の専門性を高めながらクリエイティブにチャレンジしたいと考えている方に是非参加して欲しい。特に日本人はグローバルに活躍するケースが少ないので、若い頃時からプロの視点を感じてもらいたいです。
━━━━ちなみにどのようなコンテンツがあるのでしょうか。
DeNA小林:コンテンツに関しては発表前なので詳しくは言えませんが、登壇予定者には技術者だけでなく、ミュージシャン、デザイナー、ナレッジマネジメントの方など、モノづくりの視点で多種多様なゲストを想定しています。そのため、最新の技術をキャッチアップできるだけでなく、モノづくりの色んな要素を知ることができると考えています。また、来場者が参加できるワークショップも開催予定です。そして双方向の情報のやりとりができるカンファレンスを実現するため、学生がピッチコンテストで情報を発信するようなコンテンツも考えています。どのような内容を提供するかは今まさに検討しているところではありますが、各社の強みを活かした様々なコンテンツを分担して進めています。また、現地でのライブ感を感じて欲しいので、地方在住の方も参加しやすいように、一定の基準をクリアした学生には、交通費の支援を行えるように検討しています。
CA長瀬:参加者の方には、コンテンツを通してTOPプレイヤーの方々と直にふれあい、有意義な時間を過ごして欲しいですね。またカンファレンスで生まれた情報は、二次利用等でたくさんの方に伝えていきたいと考えています。
DeNA小林:今回のイベントは我々だけでなく、多数の企業さんにもスポンサードとして協力いただく予定です。そのためスポンサー企業も来場者と交流しやすい設計を考えています。例えば、企業ブースを見たり登壇者と交流したりできるようにセッションとセッションの間に30分ほどの時間を設け、会場内コンテンツをじっくり堪能できるようにセッションスケジュールを考えています。また、来場者の多くを学生と想定していますので、若手との接点が多く生まれる場所にもなるかと思います。というのも、人材の流動性が激しくなっている現在、技術やデザインなどに理解のある会社で働きたい、という傾向が見られます。来場者と直接お話をしていただくことで、そういった企業文化や思考などを伝えることができ、活躍する場所としての魅力につながるのではないでしょうか。
CA長瀬:来場者とスポンサード企業のコンタクトポイントについては議論を重ねている最中ですが、納得いただける内容に仕上げる予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちください。
BIT VALLEYは進化する
━━━━各社BIT VALLEYにどのような想いを込め、BIT VALLEYで何を実現していくのでしょうか。
DeNA小林:渋谷の企業ではありますが、渋谷にとらわれることなく日本全体のモノづくりを良くしていきたいという発想があります。ゴールとしては、世界中で利用される日本発のプロダクト・サービスが生まれるきっかけとなることですね。
ミクシィ村瀬:ローカルとグローバルの二つの視点があると考えています。ローカルの観点ですと、渋谷の街を巻き込んだプロジェクトもできるかと思います。それを成功事例に他の都市でも採用される仕組みなども作れたらいいですね。それをグローバルにアピールできるでしょうし。あとはBIT VALLEYから何かが始まって、モノづくりが好きな方たちがコミュニティの輪を広げながら、渋谷の街を変えていくというのもいいですし、生まれ故郷を変えていくなどもいいでしょう。
BIT VALLEY自体をカンファレンスイベントとだけ捉えるのはでなく、BIT VALLEYで新しい体験を得て、BIT VALLEYを起点に新しい取り組みが生まれるようになってほしい。次につながるモノづくりを得てもらうのがいいですね。イベント規模が大きくなるのも良いことですが、モノづくりのブースターのような役割にもなりたいと思っています。
GMO稲守:参加者に高い視座と広い視野を持つきっかけになって欲しいし、前回の開催が私たちの今回の活動のきっかけにもなりましたが、今度は参加者の方々の何らかの活動のきっかけになるような、場づくりをしたい。きっかけを作るためのPDCAを実行しているイメージですね。願わくば、IT業界に興味を持ってもらい日本の産業のアップデートを一緒にやっていけたらいいですけど。
CA長瀬:IT業界はこの先もしばらく、成長産業であるでしょう。一方で、今後はIT関連の深刻な人材不足も予想されています。そんな中、若い人たちがどのようにテクノロジーに触れて未来を創造していくのかが、非常に大事になるでしょう。。そして、このIT業界の面白さを伝えることは、私たちの使命でもあると思っています。その共通の想いがあった3社にお声がけをしてBIT VALLEYをスタートさせました。想いは引き続き持ち、今年はモノづくりという、より広義の意味になりましたが、様々なプロフェッショナルと出会う機会を作って、参加者によりワクワク楽しんでもらいたいと思っています。
ミクシィ村瀬:テーマが広がったので、本当に色々な考えや経験を持った方が集まると思います。せっかくイベントに参加するのであれば、参加者全員と会話をするような体験をしてみても面白いのではないでしょうか。それだけで次につながると思いますし。もちろん、様々な人達との会話から視座を上げたり視野を広げてもらうのもいいですね。参加者同士で良い出会いがあったら、すぐに手を動かして作ってしまう、そんな出来事が起こるようなイベントにしていきたいです。
DeNA小林:カンファレンスでは、業界TOPのクリエイター陣が登壇します。その方々も後進を育成するという使命感を持って参加してくれています。TOPクリエイターのこれまでの経験や体験といった生の声を聴けるまたとないチャンスです。是非、様々な多くの方に集まっていただきたいと思います。
最後に
今年はテーマも会場も拡大するBIT VALLEY。セッションやワークショップなどのコンテンツについてはまだ検討中とのことですが、どのように進化していくのか。昨年も参加していた筆者としても、あっと驚くようなコンテンツに期待しています。なお、イベントに関する最新情報は、今後、サイトやTwitterにて発信されていくそうですので、お楽しみにお待ちください。
株式会社ミクシィ 執行役員(技術領域)CTO 村瀬 龍馬(@tatsuma_mu)
2005年に株式会社イー・マーキュリー(現:株式会社ミクシィ)に入社。SNS『mixi』の開発に携わる。2009年に1度退職し、ゲーム会社の役員や京都のゲーム会社でエンジニアなどを経験。2013年に株式会社ミクシィに戻り、別部署を経て『モンスターストライク』の開発部署に異動する。現在はXFLAG開発本部 本部長としてXFLAGのエンジニア全体を統括。2018年4月、執行役員(技術領域)に就任。同年10月にCTOに就任。
株式会社サイバーエージェント 取締役(技術管轄)長瀬 慶重(@lionbaby )
通信業界での研究開発を経て、2005年、サイバーエージェントに入社。「アメーバブログ」やコミュニティサービス「アメーバピグ」、ソーシャルゲーム、コミュニティサービスなどのサービス開発を担当。「AbemaTV」の開発本部長を務めるほか、「技術政策室」の室長としてエンジニアの組織戦略や採用、技術力をさらに向上するための評価制度などの環境づくりにも注力。
株式会社ディー・エヌ・エー 常務執行役員 CTO システム本部 本部長 小林 篤(@nekokak)
2011年に入社。Mobageおよび協業プラットフォームの大規模システム開発・運用を担当。現在はシステム本部にてシステムの開発責任者を務め、エンジニアの組織体制構築に従事。その他、一般社団法人Japan Perl Association 代表理事を兼務しPerlの普及・振興の為、YAPCや各種イベントを企画実施。
GMOインターネット株式会社 稲守 貴久
2006年にGMOインターネット株式会社へ入社。 ブログメディア「ヤプログ!」でクリエイティブディレクターを担当。その後、 GMOクリック証券でウェブマスターとして従事し、2009年にはFX専業の子会社立ち上げに参画。2010年からはGMOインターネットに戻り、次世代システム研究室でグループ各社のサービスや新規事業の技術支援を行いながら、2019年からは事業本部 ディベロッパーリレーションズチームで同社の技術PRや若手エンジニアの採用、育成にも取り組んでいる。