生成AIの最前線を走るやりがいと情熱──スタートアップへの出向で彩るキャリアパス

2025.04.14
沖 勇作
学生時代の2008年に移動販売カフェを起業。12年、街コンイベントを運営するコンフィアンザを共同創業し、13年、同社がミクシィ(現MIXI)にグループイン。16年にミクシィに入社し、XFLAGデザイン戦略室やIDペイメント事業部、次世代エンタメ本部 事業開発部を経て、投資事業推進本部でオートレース専門アプリ「競単」の事業支援に従事。位置情報共有アプリ「whoo your world」を提供するLinQへの出向に続き、2024年5月から現在までpiconに出向中。
萩原 稜太
2022年、新卒でミクシィ(現MIXI)入社。株式会社WOWOWとの共同事業「FANUP」にてプロデューサーを務めた後、AIチャットサービス「AIチャットくんLINE」の責任者としてPM業務を担当。新規事業の立ち上げからグロースまで、幅広いフェーズでプロダクト開発を手がけている。
山口 翔誠
株式会社picon CEO。2016年に大学中退後、同社を創業。SNSやコミュニケーション領域で複数のプロダクトを開発。現在は生成AIの領域で「AIチャットくん」、「AIイラストくん」を始めとする複数の事業を展開し、累計750万超のユーザーを抱える。24年5月、子会社としてMIXI GROUPに参画した。

2024年、MIXI GROUPに子会社として参画した株式会社picon(以下、picon)。同社へMIXIから出向しているのが沖 勇作と萩原 稜太です。対話型AIサービス「AIチャットくん」などpiconの事業をプロジェクトマネージャーとして支える二人が、スタートアップで革新的な事業に携わるやりがいや、出向者ならではのキャリア面のメリットについて、同社CEOの山口 翔誠を交えて語ります。

世界的にサービスの正解が見つかっていない領域。仮説検証を繰り返して最前線で戦う

MIXIの事業開発部 新事業開発グループ AIビジネスチームに所属するリーダーの沖と、メンバーの萩原。二人は現在、子会社のpiconに出向中で、チームとしての役割などを沖が話します。

:AIビジネスチームの全員がpiconに出向しています。piconにはホームラン級の大ヒットプロダクトの開発をめざす新規チームと、既存プロダクトを育てるグロースチームがあり、私たちは後者を支援しています。piconの「AIチャットくん」などを、日本で圧倒的に支持されるサービスに育てていくのが目標ですね。

主力プロダクトの一つである「AIチャットくん」は、LINE版では登録者数が350万人(※)を突破し、他社の同種のプロダクトを大きく引き離しています。その他にAIチャットくん含む複数のアプリサービス(以下、アプリ版)を展開しており、国内App Storeの仕事効率化カテゴリにおいてランキング上位を争う実績を誇っています。「あなたと身近な人の日常を支える、日本人に寄り添う相棒」をコンセプトとして、AIを一度使って挫折した人や「流行しているから使ってみたい」という初心者向けに、簡単に使えるような体験を提供しています。
※ 2025年2月19日時点

二人の具体的な仕事内容についても、それぞれに説明します。

萩原:「AIチャットくん」のLINE版の責任者として、サービス全体の戦略を検討した上で、具体的にどのような機能を開発するか、またどのような施策を実施するかの内容を練っています。その際、日々進化するAI分野の最新情報をキャッチアップし、それをどのようにサービスへ落とし込めばユーザーの利益につながるのかを常に意識しています。
:私はpiconの既存プロダクト全体を支援する立場として、事業全体の収益に責任を持っています。主に予算管理や事業計画の策定、目標設定、組織づくり、チームマネジメントに携わり、各事業のプロセスの改善などにも関わっています。私がこれまで担当してきたアプリ版の支援については、別のメンバーに引き継いでいるところです。
現在piconの支援にコミットしているメンバーたちは各領域において一流プレーヤーなので、彼らが自分の力を100%発揮できるような環境の整備に力を注いでいます。たとえばステークホルダーとのコミュニケーションや契約関連、ツール導入時の決済、リーガルチェックなどは私が引き受け、メンバーにはそれぞれの力を活かせる業務に集中してもらい、必要に応じてリソースの拡充も進めています。
チームには兼務や業務委託などさまざまな形態のメンバーが在籍しており、チーム全体の足並みがそろった状態でスピード高く開発が推進できているかどうかを日々意識して見るようにしていますね。

一方でpiconのCEO山口は、事業自体の魅力や同社でものづくりをするおもしろさについて、このように語ります。

山口:事業としては「AIチャットくん」をはじめ、「AIイラストくん」「AI占いくん」など生成AIを活用したプロダクトがいくつかあって、合わせて約730万ユーザーを抱えています。とくに「AIチャットくん」はリリース1カ月で100万ユーザーに達していて、世界中に生成AIが広がる中、多くの人たちに使われるサービスを運営できるのはとてもチャレンジングだと思います。自分たちが開発した機能が明日には何万人ものユーザーのもとに届きますし、世界的にサービスの正解が見つかっていない領域で日々仮説検証を繰り返せるのは、とても楽しいです。
また、piconならではの“ものづくり”のおもしろさもあると思います。「AIチャットくん」は、社員が私と共同創業者の渋谷 幸人と二人だった時にリリースしているように、少人数でもスピード感を持ってプロダクトを展開できるのが当社の強みです。さらに、今は生成AIをフル活用することで、少人数でも新しいアイデアをどんどん実験的に試していけるカルチャーがあります。

piconの「信頼と自走の文化」に受けた衝撃。大事なプロダクトを引き継いで支援へ

萩原と沖は、自身がpiconに出向したきっかけや当時の想いを話します。

萩原:翔誠さんや渋谷さんに誘われ、2024年の10月から出向しています。私としても二つの理由からぜひジョインしたいと思いました。一つはAIという事業ドメインへの興味です。AIは日常生活から産業構造にまで変革をもたらすようなインパクトの大きい領域であり、そういった市場での事業展開に強い興味がありました。

もう一つは、piconのビジョンとプロダクトへの共感です。piconは、最先端のトレンドに関心のある人だけでなく、そうでない人々の日常にもAIを広め、根づかせることに挑戦しています。単にそれをビジョンとして掲げるだけでなく、実際のプロダクトを通じて実現している姿に感銘を覚えました。

併せて、実は出向前からpiconには関心があって、とくにXで翔誠さんの投稿はよく見ていました。翔誠さんは、私にはない発想でたくさんのプロダクトを生み出していて、ものづくりの天才だなと日頃からリスペクトしていてます。大学時代から今に至るまでtoC(一般消費者向け)のプロダクトを作ってきた私にとって、翔誠さんはスターのような存在です。

:私は2024年の5月から出向しています。別の出資会社への出向が終わる時期に、上長からpiconの話を聞いたのがきっかけですね。私自身、かつてM&AでMIXI GROUPにジョインした経験があって、スタートアップで仕事するのは大好きなのでぜひチャレンジしたいと伝えました。

piconのホームページにも「なんかへんな会社」と書かれていて、どういう意味なんだろうと(笑)。COOの渋谷さんと共にTo Cサービスにこだわり、さまざまなプロダクト作りを9年間も続けているようで、それが要因なのかな、などと「へん」の理由を徐々に探っていくような感じでした。

出向中の二人に対して山口は「自分たちの背中を預けたい」と信頼を寄せ、期待していることを語ります。

山口:一番期待するのは、今のサービスを何倍にも伸ばしてほしいということですね。piconはこれからも新規事業にフルスイングでチャレンジしていきたいと考えています。そのためにも、「AIチャットくん」などの既存事業をもっと成長させていきたいです。10を100にするようなことはMIXIでさまざまな事業に携わってきた二人の方が得意だと思うので、私たちには実現できないような成長を託したいなと。それが、piconがMIXI GROUPに参加した理由の一つでもあります。

また、彼らと共にスタートアップとハイブリットなカルチャーで会社を育てていきたいという想いもありますね。上場企業であるMIXIからスタートアップに出向した場合、おそらく働き方などに違いを感じると思います。それをうまくコミュニケーションをとりながら埋めていき、互いに働きやすく、成果を出しやすいカルチャーをつくる上で、沖さんにはすごく助けていただいていますし、いいチームになってきていると実感しています。私たちも今までのpiconではなく、MIXIと一緒になったpiconとして、新しいカルチャー、働き方でサービスを伸ばしていきたいです。

piconで働くようになり、感じたギャップや驚きを率直に口にする萩原と沖。

萩原:piconは発明家の集うアトリエのような職場でした。とにかくものづくりが大好きな人たちが集まっていて、いつも楽しみながら純粋にプロダクトと向き合っている。新しい技術やto Cのサービスへの感度も非常に高く、それらの情報を積極的にキャッチアップし、ものすごいスピードでプロダクトに反映させていく。個人的にこういったカルチャーのある環境で働くことができて幸せを感じています。

:萩原さんが言ったような状況を私も日々、目の当たりにしています。piconのVALUESは「信頼、自走、実験、誠実」で、とくに信頼と自走の文化にはカルチャーショックを受けましたね。伸びに伸びて世間から注目されている大事なプロダクトを、「沖さんのやりやすいように進めてください」とまさに背中を預けるような形で引き継がせてもらったのは、ある意味で衝撃的でした。引き継いだ後はやるべきことを自分で考えて動いていったのですが、「これは完全に自走しないとpiconのペースに追いつけないぞ」と覚悟したことを今でも覚えています。

走りながら学んで痛みを感じ、少しだけ成長する。まるで「筋トレ」の繰り返し

piconで働く中で印象に残っていることや、やりがいについてこのように語る二人。

萩原:日々圧倒的なスピードで進化を遂げていく市場環境の中で、そのタイミングごとにユーザーにとってベストな体験を届けていけるか。それを実現するのは難しさもありますが、同時にやりがいも感じます。単に新しい技術を提供するだけではなく、常にユーザーの視点に立ち、本質的な課題やニーズをしっかりと把握した上で、具体的なユースケースに沿ったソリューションを提供していけるか。その挑戦は非常におもしろいです。

たとえば、現在は学生をターゲットに、彼らの勉強をサポートするための機能開発を行っています。この取り組みでは、単純にOpenAIの最新モデルをそのまま活用するのではなく、学生のリアルな悩みや課題を深く理解し、具体的にどのような形でAIを活用すればそれらを解決できるのかを検討しながらチューニングを進めています。

このようにユーザー目線を徹底的に追求し、ユーザーが本当に必要とするものを見極め、それを実現するための最適なソリューションを緻密に設計するプロセスに、大きなやりがいと意義を感じています。

:流星のごとく現れた生成AIについて、私たちは生成AIのモデル開発ではなく、既存のLLM技術を活用し、いかにユーザーへ革新的なAI体験を提供できるか、そのモデルケースを追求してきました。piconのサービスをご利用いただいている方が初心者中心だとわかってからは、ユーザーに合わせたチューニングにも力を入れています。

その中で翔誠さんから「これだけユーザーがいるんだから、積極的に実験したらいいのでは」というアドバイスをもらったのは大きな学びの一つになりました。ABテストを繰り返し、 その反応を見て走りながらチューニングの方法を考えるような。以前まではチーム内で壁打ちをし、確度の高い打ち手を模索した上で実行に移していた私にとって、走りながら学んで痛みを感じ、少しだけ成長するという、まるで「筋トレ」の繰り返しでしたね。

山口:沖さんに助言させてもらったのは、こんな想いからです。新規の事業や機能開発ってほとんどうまくいかないというのが定説で、10回打って1回当たればいいと思っています。大きな組織でやるのと違い、せっかくpiconでやるのなら、承認をとるべき人は私ぐらいしかいないので、スピード感を活かして思いついたことをどんどんやってほしいと伝えました。

萩原も、piconで大きな学びを得たと言います。

萩原:プロダクトの作り方に加え、組織のつくり方に関して大きな学びを得ました。piconには「発明でセカイを明るく照らす」というPURPOSEや、「信頼、実験、誠実、自走」というVALUEがあるのですが、これらは全社員に深く浸透しています。もはや意識するというよりも、自然に体現している状態にまで到達しており、メンバー一人ひとりがその信念にもとづいた行動をとっています。その背景には自然にカルチャーが育まれる仕組みが数多くあり、学ぶべき点が多々ありました。

また、自分たち自身が心から楽しみ、夢中になってプロダクト開発に取り組む姿勢や、よりよい価値や体験を生み出すために、立場にとらわれないフラットなコミュニケーションが活発に行われていることも大変刺激的でした。

スタートアップ、中でもpiconだからこそ得られるキャリア面のメリットもあると、二人は話します。

:世間では、出向というと特別なケースと見られることが多いかもしれませんが、MIXIでは重要な成長機会と捉えています。出向先ではチームの成長に応じてリソースが与えられ、適切な評価もなされ、成果を出せばMIXIの中で部として認められます。

そしてpiconのように、すぐに意思決定して翌日には実行できるようなスピード感の中でチャレンジを続けられることは、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにもつながるはずです。たとえ失敗してもチャレンジしたことが賞賛されるという環境なので、大胆に挑戦できます。

萩原:AIという急成長中の市場において、サービス責任者として裁量権を持ち、事業を推進できることは大きな魅力です。急激に変化する市場環境では、瞬間ごとの意思決定がプロダクトの未来を左右します。こうした環境で経験を積むことは、今後どのようなキャリアを歩んでも必ず活きる貴重なビジネス経験になると考えています。

生成AIの恩恵を多くの人に受けてほしい。「日本の大きな課題」の解決に向けた想い

山口と沖は将来に目を向け、piconとして取り組んでいきたいことを話します。

山口:「AIチャットくん」に関して言うと、もっと多くの日本人に使われ、多くの人の生活や仕事を豊かにするようなサービスにしていきたいと思っています。
生成AIは世界的に注目され、総務省が2024年に発表した情報通信白書によると中国やアメリカではおよそ5割の人が使っている一方で、日本は1割にも満たないんです。このギャップは日本の未来を考えた時にかなりのディスアドバンテージになるんじゃないかと。だからこそ私たちが、多くの日本の人たちにとってわかりやすく、使いやすいサービスを生み出すことで、多くの人がAIの価値を感じ、AIで新しい日常をつくってもらえたらと思っています。

:やはり、生成AIの国内普及率の向上に貢献できるようなサービスに育てていきたいです。それと共に、「AIチャットくん」でないとできない体験、オリジナリティのある機能も盛り込んでいきたいと思っています。LINE版だとLINEというプラットフォームの特性を活かした戦い方が求められるでしょうし、アプリ版では競合との差別化が必要です。将来的には、コミュニケーションサービスを持ち味とするMIXIのカルチャーを融合させたAI体験を提供できるようなチャレンジもしていきたいですね。

萩原と沖はMIXIの企業理念であるPMWV(※)にも触れ、日々の仕事にどう還元しているかを語ります。

萩原:piconの理念と通じる部分も多いのですが、PMWVのうちVALUES「発明・夢中・誠実」は日頃から強く意識しています。とくに「発明」ではユーザーにとっての本質的な価値を掘り下げ、それを「AIチャットくん」にどう反映させるかを考えながらプロダクトを作るようにしていますね。

:いつも念頭に置いているのは「ユーザーサプライズファースト」です。そもそも生成AIの体験自体がサプライズなものである中、最新技術を取り入れながらも、AI初心者の方にも受け入れられるよう配慮し、”半歩先”を見据えたサプライズな体験を提供できるよう日々模索を続けています。

自らの今後に想いをはせ、挑戦したいことや思い描くキャリアについて話す二人。

萩原:将来的にはこれまでの経験を活かした上で、人々の合理的な価値だけでなく、精神的な価値までも最大化できるようなプロダクトを作っていきたいです。たとえばMIXIが提供している子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」は、子どもの写真を通して父方や母方の祖父母も含めて親族全員がつながり、写真だけでなく感情を分かち合えるような世界を実現していて、そういった世界を生み出していくことが私の理想です。

:私は、生成AIドメインの中でキャリアを築いていきたいと考えていて、そのチャンスに恵まれている今、まずはできていないことをいかに実現するかに集中しています。生成AIの恩恵を多くの人に受けてもらうという日本の大きな課題解決に向け、チャレンジしていくのが最初のステップ。ユーザーがつまずくポイントを改善するなど、皆さんが使い続けられるような体験をサポートしていきたいです。その先に、生成AIによって生まれる余暇を豊かに過ごすような部分にもpiconのプロダクトは寄り添いたいと思っていて、コミュニケーションがいっそう充実するサービスの提供をめざしていきます。

私がpiconに出向したのは、「ゼロイチ」で成果を残してきたメンバーと一緒に働くことでノウハウやプロダクトへの向き合い方を学べるから。それらの学びを活かし、ゆくゆくは自らサービスを生み出すことにもチャレンジしたいと思っています。

※ PMWV……MIXIの企業理念。PURPOSE「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」MISSION「『心もつながる』場と機会の創造。」MIXI WAY「ユーザーサプライズファースト」VALUES「発明・夢中・誠実」

※ 記載内容は2025年2月時点のものです

 

 

 

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