ユーザーインタビューで本音を聞くコツって?「UXリサーチ勉強会」を開催しました

2021.04.22

3月末、社内で「UXリサーチ勉強会」が開催されました。

プロダクトの枠を超えて、『モンスターストライク』『minimo』『みてね』のUXデザインに携わる有志のデザイナーで集まって企画され、当日は約90名を超える視聴者が集うオンラインイベントとなりました。実際にイベント内で発表されたプログラムはこちら。

モンストデザイン組織のUXデザイン最初の一歩 ~既存プロセスに合わせつつ社内ユーザーテストを実施するまでの道のり
(モンスト事業本部 デザイン室 UI/UXデザイングループ 板倉)
ユーザーの潜在ニーズを引出そう〜 ユーザーインタビューの実践&改善事例
(Vantageスタジオ minimo事業部 デザイングループ 萩原)
みてねGPSのUXデザイン 〜わりと基本に忠実に、低コストですすめる設計フロー
(Vantageスタジオ みてね事業部 デザイングループ 西山)

今回は、萩原の登壇を取り上げながら、当日発表された内容を紹介してまいります。

発表の様子

サロンスタッフ直接予約アプリ『minimo』の萩原からは、「ユーザーインタビューの実践&活動事例」といった内容で発表が行われました。

まずは、『minimo』事業部で行われているUXリサーチについて。『minimo』のUXリサーチにはユーザーインタビューやユーザビリティテスト、アンケート調査などの複数の方法があるとのこと。もともとユーザーリサーチを大事にしようというカルチャーがあり、さらにユーザーの声を詳細に聞くためにユーザーインタビューを行っている、と説明。

今回は、デザイン組織で取り組んでいるユーザビリティテストとユーザーインタビューの中でも、「ユーザーインタビュー」に焦点を絞っての解説。

ここでは、一般的なUXリサーチとminimoで実践されているUXリサーチの違いについて。特徴は、プロトタイプを使って行う機能検証/価値検証型ではなく、主にストアリリースしたverを用いて.、現行verの課題抽出や潜在ニーズの抽出を主眼にした発見型のリサーチだ、とのこと。

概要を紹介しながら、「実際のユーザビリティテストではインストールから初回予約までを使ってもらい、課題があるとすればどこなのかを観察していきます」と説明。

続いて、実際に改善事例を取り上げながら紹介していきます。

インタビューにおける課題のひとつは「ユーザー(被験者)の率直な意見が引き出せない」こと。質問しても、抽象度が高い回答や建前的な回答しか引き出すことができず、なかなかアプリの改善につながる意見を引き出せないことが課題のひとつだと説明。

ここには二つの要因があるのでは、と仮説を唱えます。

これらを慣れや場数ではなく、プロセスを改善することで解消できないか?と頭を抱えたそう。

従来の取り組みとしては、ユーザーテストのあとにインタビュー時間を設け、大枠の質問だけ設定しておき、あとは会話の流れに応じて深堀りするポイントや広げる話題などを変える「半構造化インタビュー」で行っていたと説明。「しかし、このやり方はかなりインタビュワ―の力量に結果が左右されてしまいます」と、安定した結果を出せない課題を洗い出します。

こうした課題への解決策として、インタビューを実施する前にユーザーにアンケートを実施。聞き手も掘り下げるポイントが想像でき、ユーザーとしても考える時間をもって取り組めるためにインタビューが行いやすくなるのでは?と、ユーザビリティテストの前に「アンケート記入」の時間を設けたそう。

こうした取り組みの結果、事前に質問に回答してもらうことで、聞き手は“必ず聞いておきたい質問”を取りこぼすことなく、他の回答内容から質問を掘り下げるうえでのひとつの指針ができ、会話もしやすくなったとのこと。さらに、話し手も“何を聞かれるのか”想像がつくために、従来よりもリラックスした状態で会話に応じることができるようになったのでは、と話し「お互いにメリットがある方法なので、ぜひ利用してほしいフローです」と説明。

しかし、必ず「アンケートを記入してもらう」必要があるわけではない、と続けます。「大事なことは、話し手と聞き手双方が同じ情報を見られる状況です」と説明します。アンケートの他にも感情曲線やカスタマージャーニーマップなどを目の前で書きながらインタビューするなどの手法も可能だと語ります。

続いて、「ユーザーにインタビューに答えてもらいやすくする工夫」も紹介。

当日の流れを説明しながら、各ポイントを整理していきます。

・会社に訪問してもらう際、なるべく親しみやすい雰囲気で接する
・アンケートシート記入中も、BGMを書けたり機材をセッティングしたり、“待っている感”を緩和するための場作りを行う
・「思考発話法」を用いてテストを行ってもらうが、慣れていない被験者も多いため、先に聞き手が実演することで実際に行ってもらう作業を高い再現度で伝えることも大事
・事前インタビューと、実際のユーザーの動きが大きく異なることもあるため、その行動の差分にも注目する。そうすることで、サービスの機能不足のせいなのか、インタビュー時の価値基準が率直な意見でなかったのか、と検証の材料にも出来る

と、各ポイントを端的に紹介しました。

そして、インタビューを成功させるポイントを整理します。

「まず〈パイロットテストで設計確認&練習〉では、実際にユーザーとのテスト&インタビューに挑む前に、社内のメンバーで必ずリハーサルを行い、質問の内容やフローの設計をブラッシュアップして挑みます。次に、〈話しやすい場作りを意識すること〉。インタビューを行ううえでは、これが最も重要なのではないか、と思います。できるだけ笑顔でいたり、発言を遮らないように相槌を打つなど、態度で雰囲気を作っていくことが大事です。最後に、〈インタビューの内容を広く共有すること〉。事業部内でインタビュー内容を共有するのは「ユーザーへの理解を深める」「チームで共通のユーザー像を持つ」ためであり、また、当日のインタビューをモニタリングできなかったメンバーにも結果を知ってもらうためでもあるのので、届きやすい場所にファイルを置いておくなどの工夫も必要です」と説明し、インタビューの前後において大事なことにも言及しました。

そして、最後のトピック。

「なぜ定期的にユーザーインタビュー&ユーザビリティテストを行うのか」。

〈サービス体験の一貫性が崩れていないか定期的に確認できる〉では、機能の増減によりユーザーからサービス全体への印象が変わっていないのか、を確認するため。〈リアルなユーザー像を定期的にインプットできる〉ことのメリットは、事業部内のメンバーとユーザーでは属性も美容への関心度合いも違いがあるため、定期的にユーザーのリアルな声を聞くことで自身の感覚とユーザーの違いを自覚し、バイアスを軽減し、客観的な視点に近づくことができる、と説明しました。

最後に、ユーザーインタビューを行う意味について萩原はこう語りました。

「作り手として毎日プロダクトに触れていると、新規ユーザーだとつまづくような違和感に慣れてしまったり、自分の想像と実際のユーザー像にずれが生じたりすることは、誰にでもあると思います。客観的な視点を取り戻すため、チーム内でユーザー理解を深めたり、ユーザー像への共通認識を持つためにも、定期的なインタビュー実施はおすすめです!」

当日を振り返って

こうして、萩原のセッションを終了し、ディスカッションタイムの後、イベントは終了しました。初の開催となった「UXリサーチ勉強会」。会を振り返って、萩原はこう語ります。

この記事ではお見せすることができない部分ですが、外部向けの勉強会では話せない「リサーチの具体的な内容や結果」にまで踏み込んで話すことができたのは社内勉強会だからこその良さだと思います。一言にUXリサーチと言っても、どんな手法を採用するべきかは課題によって様々ですし、既存のフレームワークも上手く機能させるためにはそれぞれのチームで工夫を加える必要があります。だからこそ、こうした事例共有の場を通じて、UXリサーチの担当者や関心のある人たちが繋がり、相互にサポートしあえるようなきっかけになれば良いなと考えています。

プロダクトを飛び越えるかたちで、共通の業務領域のノウハウを共有するこのイベント。参加者は皆UI/UXに関わるデザイナーに限らず、サービスプランナーやディレクターをはじめ、様々な職種のメンバーが参加するにぎやかな会となりました。ミクシルでは、今後もこうした社内の勉強会についてレポートを続けてまいります!

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