みてねにとって「家族」とは?デザイングループの担当者に家族社会学の視点から考える取り組みを聞いた

みてねにとって「家族」とは?デザイングループの担当者に家族社会学の視点から考える取り組みを聞いた

家族アルバム みてね(以下みてね)』のデザイングループでは、国内外の認知度や顧客ロイヤリティの向上を目指し、2022年 ブランディング・プロジェクトを立ち上げました。現在は、グローバル展開やサービス拡大における課題解決に、一つひとつ取り組んでいる最中です。

なかでも大きな課題としてメンバーが捉えていたのは、新しい価値観へのアップデート。環境の変化とともに人々の価値観も変化しており、『みてね』の価値観をアップデートしていくため、この度、グループ内で家族観ワークショップを実施。プロジェクトを担当したデザイングループの渡辺(写真左)、西山(写真右)に話を聞きました。

『みてね』らしさを考えるブランディング・プロジェクト

━━まず『みてね』デザイングループの組織体制やミッションについて教えてください。

渡辺 デザイングループはプロダクトデザインチームとプロモーションデザインチームという2つのチームで構成されています。プロダクトデザインチームは主にアプリや商品に対する企画やデザインを手掛けており、プロモーションデザインチームはいわゆるユーザーコミュニケーションの部分、例えばアプリの新機能や商品をユーザーに魅力的に伝えていく、そして新しいユーザーを獲得していくという役割を担っています。

西山 『みてね』事業部全体で掲げているミッションは、「世界中の家族のこころのインフラをつくる」ということです。

『みてね』のミッションやビジョンを浸透させていく中で、それをデザインでも表現できているか見直す必要性を感じていました。改めて『みてね』らしさとは何か?を考えてみようというブランディングプロジェクトがデザインチーム内で立ち上がったんです。

渡辺 自然的にチーム全体共有の課題として挙がり、プロジェクトが立ち上がった感じでしたよね。

西山 これまでチーム各自が大事にしていることがあったからこそ、今の『みてね』があると思っていて、それをちゃんと言語やデザインに落とし込んだところからはじめていこうというのがブランディング・プロジェクトの狙いでした。

━━そのプロジェクトの中で、「家族観ワークショップ」を開催した背景は何ですか?

西山 ブランディング・プロジェクトを進めていくうえで、私たちは誰に向けてサービスを作っているのか?を考える必要がありました。ミッションで掲げている「家族」とは何だろう?という疑問は以前から出ていましたが、人によって捉え方や感じ方が違うものなので、とても難しい課題でした。

さらには、家族にはシングルペアレントやステップファミリー、LGBTQ+のご家庭など多様な形があるなかで、『みてね』が追いついていないのではないか?という課題もありました。そこでまずは「家族とはなにか?」家族の多様性を知ることから始めようと、ワークショップを実施することになりました。

━━チーム内のディスカッションではなく、講師を外部から招いたのには理由がありますか?

西山 家族というのは、主観的に各自の意見を集めて語るには難しい、複雑な背景があるテーマで、自分たちで考えると偏りが出てしまう気がしたので、専門家の方にご相談して、家族社会学的観点から家族について知ることから始めることにしました。石井クンツ昌子先生(お茶の水女子大学 理事・副学長、名誉教授 / 家族社会学、ジェンダー研究)にお願いしたのは、大学で家族社会学について教えていらっしゃっており、さらに拠点が日本とアメリカにありグローバルな家族観もお持ちだったので、『みてね』にピッタリだということで依頼しました。

「家族観に当たり前はない」を再認識できた

━━ワークショップはどのような流れで進めたのでしょうか?

西山 まずは「自分の感じる家族という枠組みを描く」ところから始まりました。大きな家のイラストのなかに、自分が家族だと思うメンバーを自由に書いていきます。例えば、自分とパートナーは一緒に住んでいるから家族で、他の親族については家の外に心の距離に応じて、という書き方をしている方もいれば、ペットを家族に加えている人もいました。

渡辺 数世帯同居で育ったメンバーは、おじやおばのような親族も子どもの頃から家族感覚という話をしていましたね。

西山 住んでいる場所は離れているけども、自分にとっては家族ということで、家のなかにさらに家を描く人もいました。表現の仕方は本当に自由だったので、それぞれが誰をどんな理由で家族だと考えているかの違いが確認できて面白かったです。ほとんどの人が何らかの形で生まれたときに家族に所属し、家族とともに生きてきているので、改めて人との違いについて知る機会はほとんどないもの。こういった家族観の違いに触れるのは家族とはなにか考える入り口になりました。
渡辺 家族観ワークショップで一番大事なことは、「当たり前がないことを再認識するということでしたよね。当初、『みてね』のデザイングループは家族観を定義したいと思っていたのですが、家族は多様なもので、各自思い思いの家族像があり、そこが始まりだというのは実感として持つことができました。

━━多様な家族観を「見える化」したんですね。

西山 そうですね。自分の家族について自分はどう感じるか?ということを起点に、他の人の家族観を知る内容のワークでした。このワークの後に、石井先生から講義として家族社会学の基本について教えていただきました。例えば、家族の範囲についてや、情緒的な家族観と家族社会学から見た家族の機能の比較、家族に終わりがあるのかなど。家族社会学のポイントを重点的に教えていただき、学問的な観点から家族とは何か?をあわせて考えることができたので、理解がさらに深まったと思います。

渡辺 面白かったのが、ロールプレイングのワークショップです。チームごとにシチュエーションを決めて、役割分担をしました。例えば、子どもを預けている保育園からすぐに迎えに来てほしいと言われたとき、両親はお互い身動きが取れない状況で、メンバーがパパ・ママなどになりきり、どう折り合いをつけるか話し合うといったような内容です。男女を逆転して私がママ役を務めたのですが、「いつも私に任せるじゃない!」といった演技が自然に出ました(笑)。

西山 いつもとは違う立場に立って、「こういう状況のときに自分だったらどう思うか」とか、「どう主張するか」「家族としてどう折り合いをつけるか」というのをロールプレイングすることで、立場を変えて家族について考えてみる、という狙いがあったように思います。パパがママ目線になってみたり、子どもがいないメンバーが親の立場になったり、親が子どもの立場になったり。目線を変えると家族の見え方も変わってくることが分かりました。

━━ロールプレイングを通していろんな発見があったんですね。

渡辺 ママはこうあるべきとか、パパはこうあるべきとか、自分はこうだというのが、視点を変えることによって、“家族”の捉え方がより広がった効果があったと思います。

西山 ロールプレイング後は、家族の考え方を各自が広げた上で、『みてね』が対象とする家族について改めて議論しました。

━━グループディスカッションの狙いとしては、答えを出すということですか?

西山 答えに近づければいいなと思っていましたが、家族自体が多様なものなので、『みてね』としてはそれぞれが思い描く家族であってほしいという思いがあり、またミッションに掲げていた通り、「喜びの輪を広げ、その人がその人らしくいられる」というのが大事なので、逆に“こうあるべき”という型を作りたくないというのが、みんなの共通の思いだったと思います。

━━家族を定義づけるというよりも、家族のあり方についての考えを広げるほうがメインだったわけですね。

西山 そうですね。『みてね』は子育てを起点にサービスが確立されてきたので、アプリの構成としては子どもが中心になっているのですが、ユーザーのなかには、SNSなどを見ていてもペットの見守りアプリとして利用されている方もいますし、好きなアイドルの推し活として利用されている方もいます。それぞれが自分たちの愛する“見守りたい存在”を『みてね』を通して楽しんでくれているのは、私たちにとっても嬉しいことだなと。「愛する大切なものを誰かと共有したい」というユーザーの思いを『みてね』は受け入れられるものでありたいなと思っています。

また、いろんな家族の方がいろんな形で『みてね』を利用してくださっていることも、『みてね』は受け止めていきたいですし、家族の状況に合わせた対応にも、もう少し力を入れていきたいところではあります。

━━具体的にはどういうことですか?

西山 これまで実施した取り組みを例に挙げてお話しすると、『みてね』の管理者の立場には「パパ」と「ママ」という表記があるのですが、自由記述もできるように変更したり、2人以上の親も登録出来るようになったり、いろんな立場の人がみてねの管理者の立場になれるよう変更を行ないました。これは、より多様な家族を受け入れる取り組みとして、『みてね』が実現した例の一つです。まだまだ対応できていない問題が山のようにありますが、少しずつでも多様な家族像に合わせた対応を進めていきたいと思っています。

ワークショップを通じて「家族」の解像度が高まった

━━ワークショップを終えて、率直な感想を教えてください。

渡辺 多様な家族の姿があると改めて知ったことで、『みてね』がターゲットとする家族というのはどうあればいいんだろうという解像度が高まったように思います。今後もさらに追求することで、より精度も高くなってくるだろうなと。立場を変えたロールプレイングでは改めて相手の気持ちに寄り添える大切さにも気づけたので、ワークショップを通じて視点が広がった実感があります。

西山 そうですね。家族というのは一概に定義できないので、家族の多様性を受け止めていきたいという気持ちはよりチーム内で強まったと思います。もう一つ、家族というのは温かい幸せなものという一面だけでなく、機能的な側面や、ポジティブなこともネガティブなことも共にしていく関係でもあるので、それをただ「幸せで温かくて美しいものだ」として描くのは私たちの実感とズレているのかなというのがチームの感覚としてありましたが、家族にはいろんな側面があることを踏まえるのは、『みてね』を作る上でも大事なことだなと実感しましたね。

渡辺 改めてそういうことを確認し合える良い機会になりましたよね。

西山 はい。ステレオタイプの家族ではなくて、本当の意味での家族について考えることができました。多様な家族像について対応できていないこととどう向き合っていくべきか、定義できない多様な家族というものをどう考えるべきか、といった課題に対して今までバラバラだった目線が、みんなで考える軸ができたんじゃないかなと思います。家族についてしっかり考えることによって、ミッションの意味が各自、具体的でストーリーのあるものになったように感じています。

ワークショップを通じて、「世界中の家族のこころのインフラをつくる」という『みてね』のミッションがチームメンバーのなかで強固になり、より自信を持って私たちが取り組み伝えていける土台を作れたんじゃないかなと思います。

クリエイティブの品質をあげ、根底に一貫性を持たせていきたい

━━今後はどのようなアウトプットを予定していますか?

西山 私たちの考えていることや、ありたい世界を、プロダクトやサービスの隅々まで行きわたらせて伝えていきたいと思っています。例えばランディングページで発信しているメッセージではまだアップデートされていない部分もあるので、私たちが描いているミッションをビジュアルに落とし込んで、デザイングループとしての表現につなげていけたらと思っています。

具体的には、デザイン理念を策定し、あとは『みてね』全体にブランディングが行きわたるため、デザインシステムなどの仕組みづくりを、デザインチームで進めていく予定です。

━━デザインシステムがあれば、『みてね』らしさを判断する基準ができますよね。

西山 そうですね。サービスを誰に届けるのか、というのは一番大事なことだと思うので、ターゲットについて考えることができるようになると、いろんなデザインにつながってくるかなと思います。

渡辺 事業や組織がスケールしていくなかで関わる人も増えていますが、デザインシステムが基盤となることで、ユーザーに一貫した体験や印象を与えることができ、クオリティの面でも担保できるようなると思います。デザインシステムが整った上で、『みてね』として「誰のためにどうあるべきなのか」、ブランディング文脈も合わせてチームで取り組んでいくことで、より強みも増していくのではと考えています。

━━デザイングループは今後、どのような組織にしていく予定ですか?

渡辺 私たちは「世界中の家族のこころのインフラをつくる」という、とても難易度の高いことに挑もうとしています。この目標に向けて、来期から事業部全体で組織を強化していこうと動いているところです。メンバーと一緒に話し合いながら、世界中の家族のこころのインフラとしてのサービス・プロダクトを提供するデザイン組織を築いていきたい。そのために一緒に考えてくださるような方を探しています。『みてね』自体のクオリティを上げ、デザイン組織としても強みを増していきたいと思っているので、そこに力を貸してくださる方にぜひお越しいただけたら嬉しいです。

西山 経験やスキルがあるに越したことはないのですが、私たちが描こうとしている世界に共感してくださる方がいいなと思います。「家族のこころのインフラになる」というのは、すごく難しい課題ですが、そこに挑もうと思ってくださる方であれば、大歓迎ですね。

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