MIXI初のエンジニア向け技術カンファレンス「MIXI TECH CONFERENCE 2023」とは?担当者に聞いた。

MIXI初のエンジニア向け技術カンファレンス「MIXI TECH CONFERENCE 2023」とは?担当者に聞いた。

MIXI初となるエンジニア向けカンファレンス「MIXI TECH CONFERENCE 2023」が3月1日から3日にかけて開催されました。1日目はハイブリッド開催、2日目と3日目はオンライン開催という、オンラインとオフラインを組み合わせたカンファレンスです。セッション動画はこちらのプレイリストにてアーカイブ配信しています。

今回はそのカンファレンスの企画、運用を担当したCTO室 DevRelグループ マネージャーの杉田絵美にカンファレンス開催の背景や狙い、そして実施した結果について話を聞きました。

目指したのは社内外技術者同士の交流機会

━━今回カンファレンスを開催するに至った経緯について教えてください

私が所属するDevRelグループでは、普段から社内勉強会の開催支援や外部カンファレンスへの協賛など社内外問わず開発者同士の関係構築・強化を目的とした活動を行っています。それらの活動の主な目的としては採用マーケティングや技術広報、ブランディング、エンゲージメント向上、さらには生産性向上などがあります。

そうした関係構築のための活動は、ここ数年のコロナ禍による行動制限や急速な働き方の変化によって従来通りの考え方では難しくなっていました。また、社会全体でリモートワークが進んだことで、社内の勉強会や社外のテックカンファレンスのようなものもオンラインにシフトしていきました。その中で感じたのは、オンラインの良さはありつつも、対面だからこそ実現できていたフランクな技術者同士の交流機会というのが極端に減ってしまったということです。

たとえばMIXIでは4半期に1回、MIXI DEVELOPERS MEETING(別名:エンジニア総会)というエンジニア職が一堂に会するイベントを行なっています。以前はオフラインで開催していましたが、コロナ禍をきっかけとしてオンラインで実施するようになりました。しかし、色々なツールや施策を試しましたが、オンラインでは物足りないところがあり、特に部署の垣根を越えたような全社横断的な横軸の技術知見や取り組みの共有が難しくなっていると感じました。そしてある時のエンジニア総会の企画検討を進める中で、全社横断的な技術交流の活性化やアウトプットを促進することを目的とした社内テックカンファレンスのような形の企画案を出したのですが、せっかく資料を用意して登壇してもらうのであれば、社外向けに実施しても良いのはないかという話になったのが最初のきっかけだったと思います。

━━技術交流の場としてカンファレンスという形を選んだ理由は何ですか?

偶発的なエンジニア同士の交流機会を作るためには、オンラインメディアを活用した情報発信や特定テーマの勉強会のような分散型のコミュニケーションの場よりも、オンライン/オフライン関わらず、一ヶ所に大勢の人に参加してもらえるような大々的なイベントが効果的だと考えました。また、MIXIのエンジニアは領域にこだわらず技術の話をするのが好きな人たちばかりです。テックカンファレンスのように、雑多に技術トピックが飛び交うような場があれば、誰でも楽しく交流してもらえるのではないかと考えてカンファレンスという形にしました。

前例のない中で急ピッチで進められた準備

━━準備は大変でしたか?

そうですね。まず運営体制ですが、初開催だったこともあり社内にはカンファレンスや大きなイベントの企画運営の知見や経験者が少なく、また、社外活動でカンファレンス運営やボランティアスタッフの経験がある事業部所属のエンジニアたちもそれぞれ開発業務もあるため、貴重なリソースを割いてもらうのも申し訳ないなと思い、まずは私のほうで企画から諸々の調達まで進めていくことにしました。もちろん、クリエイティブ周りや当日のLIVE配信、会場スタッフなどは対応しきれないので、デザイン本部やインフラグループ、人事部などに助けてもらいました。

とりあえず、テックカンファレンスを実施しようとなってから、最初の難問は、日程と開催形式を決めることでした。MIXIには様々な事業部があって、それぞれ毎年恒例のシーズナルな企画が走ったり、周年記念などのイベントが予定されていたりと、開発の繁忙期も各事業で違います。また、オンラインのみでやるか、オフラインのみにするか、あるいは、ハイブリッドにするかでも悩みました。社外の各種カンファレンスも参考にさせてもらっていましたが、この企画を考えていた頃は、まだまだオンラインのみの開催が多く、いくつか現れ始めたオフライン開催のイベントもコロナ禍前の規模感や熱量までには戻っていないような状況でした。しかし、年末頃からイベント開催に関する規制緩和など社会情勢や環境の変化が起こりそうな話題もちらほらと出てきており、実施時期と共に開催方法についてもかなり悩みました。

そもそもMIXIという一社だけのカンファレンスに、どれだけの人が参加してもらえるかも未知数で、先を読めないことだらけでした。色々と悩み抜いた結果、カメラに向かって話すか、聴講者に向かって話すかという登壇体験としても、また、「エンジニア同士の技術交流の場づくり」を叶えるためにも、最低限のオフライン会場は用意したいと考え、今回のような構成にしました。そこからは、会場に問い合わせしたり、コンセプトを固めてキービジュアルの制作依頼をしたり、怒涛のカンファレンス準備が動き出しました。

━━実際の準備期間はどれくらいでしたか?

最初にオフライン会場の候補をあげて会場に問い合わせたのが12月上旬だったので、約3ヶ月といったところでしょうか。会場と日程が確定してからは、用意すべきセッション数やロジ周り、各種制作物などが見えてきたので、一気に進めたという感じです。

セッションやその他の展示などのコンテンツについては1月に入ってから具体的な調整を始めました。講演してもらう技術トピックは、夏に実施したエンジニアのアウトプットに関するアンケートを参考にしたり、事業領域や技術領域に偏りが出ないように全体のバランスを見ながらプログラムの素案を組み立てて、各登壇者やチームへの打診を進めていきました。

今考えるとこのプログラムを考えるのに一番苦労して時間をかけていた気がします。そのほかのロジまわりも同時進行で進めなければならなかったわけですが、12月の会場確定から開催まで3ヶ月あったとはいえ、年末年始の休暇もありますし、その他の業務もあったので準備期間は思いのほか短かったですね。

プログラムづくりに込めた想い

━━今回は3日間、そしてセッション数が多いですね

全部で28あります。本当はもっと色々な人に話してもらいたかったのですが、3日間という日程や聴講する側のことを考え、このボリュームにしました。とはいえ、28枠ものセッションを調整するのは不安も大きかったです。MIXIには社外のイベントなどでよく登壇しているメンバーはいますが、そこまで多いわけではなく、技術領域にも偏りがあります。意外と普段あまり登壇していない人たちも以前のアンケートで手を挙げてくれていましたし、社内で雑談していても機会があれば話したいというエンジニアもいたので、勇気を出して一人ひとりに打診していきました。

残念ながら、タイミング的に話せることがないと辞退されることもありましたが、中には即答で承諾くれた登壇者もいましたし、じっくり丁寧に考えてから回答してくれるチームもあったり、皆、とても協力的でポジティブに受け取ってくれていたので、セッション調整は思いの外、スムーズに進めることができました。

━━セッションの内容もさまざまですね

セッションの多様性についてはこだわった部分です。現在MIXIには色々な事業領域があって、ゲーム関連の技術もあれば、一般的なスマホアプリもあり、それらのサービスを支えるサーバサイドやインフラ、SREなどの分野で、それぞれの開発組織内で最適だと思う技術やツールが採用されていたり、工夫がされています。

また、ゲーム系技術としてよく知られているUnreal Engineをスポーツ事業の中でも活用するなど、事業領域が広がることで社内にあった従来の技術をこれまでとは違った別領域で転用するような形の使い方もでてきています。開発チームの規模や開発の進め方もそれぞれで、そういったまだまだ知られていないMIXIの開発現場にある知見やノウハウをあげていったところ、このような多様なトピックで構成されていました。

━━セッションの内容以外で工夫したことはありますか?

あえてシングルトラックにしました。マルチトラックにすると、トピックによって視聴数に差がでてしまったりして、登壇者からすれば折角準備したのに残念な体験になりかねないと思い、視聴者が極力、ひとつのセッションに集中できるようにシングルトラックにしました。

登壇体験という点では、1日目のオフライン登壇と2日目、3日目のオンライン登壇とで、極力体験の差が出ないように、リモート登壇ではなくオフィスのセミナールームを使ったLIVE配信にしました。

他には、登壇者にはその技術や取り組みをよく見せようとする必要はなく等身大で話して欲しいと伝えていました。今回は技術交流を目的としているので、実際の業務で得られた知見やノウハウを、自分の言葉でありのままどんどん話してくれるのが一番だと思ったからです。

初開催テックカンファレンスを終えて

━━初めての自社主催テックカンファレンスを開催してみてどうでしたか?

今回オフラインの会場は100名程度の規模で用意していましたが、参加者の中には社員や社員のつながりで招待した社外の方々、元社員もいました。それもあってか、規模感的にも話しやすくてアットホームな感じが出ていて良かったという声ももらいました。また、当日会場にきた登壇者や社員が「こんなにちゃんとしていると思わなかった」と言ってくれたり、リモートワークではなかなか話す機会のないメンバー同士が楽しそうに話していたりして、準備は大変でしたがオフラインもやってよかったと思いました。

オンライン参加の皆さんもポジティブな反応がほとんどで、特にTwitter上で有名な方が褒めてくれていたのには個人的に感動しました。社内Slackでもみんな盛り上がってくれていて、それも本当に嬉しかったです。苦労して準備した甲斐がありました。

━━MIXIらしさはどの辺りにこめられましたか?

一番にMIXIらしさを出せていたのは、MIXIの各サービスを象徴するような様々な色を使ったカンファレンスロゴではないかと思います。社内のデザイナーに要望やコンセプトなどを説明して頼んだのですが、誰もが真っ先に目にするはずのロゴは、MIXIらしさがひと目で伝わるようにしたかったのです。私の拙い説明にも関わらず、見事にカタチにしてくれました。

また、量より質という点もMIXIらしさだったのではないかと思います。一般的なカンファレンス運営では参加者数などの規模感が注目されがちかと思います。MIXIとしては今回が初カンファレンスだったので、そういった数値よりも、コミュニケーションの場としての質によりこだわるようにしました。特にオフライン会場には交流スペースがあったり、主なサービスの歴史や技術スタックを紹介するパネルを用意したりと、そのこだわりが多少なりとも感じていただけるような工夫ができていたのかなと思います。

2日目、3日目のオンライン開催でも、あえてリモート登壇という形はとらずに、いつもの会議室で社員が自由に観覧できる席も用意した手作りのスタジオからLIVE配信したのは、人と人とのコミュニケーションを大切にしているMIXIならではの配信方法だったのではないかと思います。

━━参加者数は期待通りでしたか?

MIXIはエンジニアが約300名程度いますが、普段から社外で頻繁にアウトプットしていて発信力や影響力の高い人は多いほうではないと思います。また、今回は広告などは出さず、connpassやツイートだけで参加者を募りました。そのため、参加者はそこまで多くならないと思っていたのですが、結果的には予想以上に多くの方たちに参加してもらえたと思います。1日目の参加者のツイートを見て、カンファレンスを知ったという人たちも大勢いたようです。

━━社内の方々からの感触はどうでしたか?

中には、またこういう登壇の機会があれば是非協力したいと言ってくださる方やオフライン会場に来た方たちとの交流が良かったとか、楽しかったといった声があがっていたので、総じて社員の満足度は悪くなかったのではないかと思います。今まで知らなかった他部署の話が聞けてよかったとか、普段はオンラインでしか話すことのない同僚とゆっくり話ができてよかったとか、懇親会や打ち上げがしたいという声があがったりしていたので、社内向けのコミュニケーション施策としても良い取り組みだったと感じています。

来年に向けて

━━今年できなかったことはありますか?

色々断念したことはありますが、たとえばパネル展示があります。講演だけですべてを紹介するのは難しいので、パネル展示があればより深く紹介したり、参加者同士の交流も生み出せたかなと思っています。あとは、もっとコミュニケーション機会をつくる仕掛けを盛り込みたかったです。量より質ではあるのですが、参加者サプライズファーストな面白い仕掛けがさらに出来たのかなと。

━━来年に向けて取り組みたいことはありますか?

今年は私が中心となって動きましたが、今回で自社のテックカンファレンスというものを体験してもらったので、今度はエンジニアやデザイナー、人事などもっと色々な人を早い段階から巻き込んで自分たちの手で作るカンファレンスを体験してもらえればと思います。企画面から運用面、セッションなどもプログラム委員会を作ったりしてみんなで考える、エンジニアによるエンジニアのためのテックカンファレンスにしたいです。

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