「書籍購入支援制度」を導入されている会社も多いかと思いますが、ミクシィにも福利厚生として導入されています。ふと「みんなどんな本を購入しているの?」と疑問がわいたので、社員のみなさんがどのような本を購入しているのか、書籍ジャンルの傾向や人気がある書籍タイトルなどを実態調査してみました。
ミクシィらしい制度
改めて「書籍購入支援制度」について説明すると、業務の成果につながる個々の自己成長を支援するをコンセプトとしたスキルアップ支援プログラムの一つです。
ちなみにミクシィの書籍購入支援制度の内容をまとめると…
制度概要
ビジネス書・自己啓発本・技術書など、スキルアップ・ナレッジ習得し、”成果に繋がる”書籍の購入を支援する制度。
支援内容
1ヶ月の購入される書籍の総額【5,500円(税込)】まで支援。購入された書籍は個人所有。
利用条件
冊数制限は無し。電子書籍での購入も可能。
※コミック・小説など一部対象外の書籍あり。ビジネス本でマンガ化された書籍は利用可能
「上限金額内なら、何冊でもOK」「個人の所有となる(ただし課税対象)」といったところが、ミクシィらしい特長だと思います。これは背景として、「ふと読み返したいと思うことがある」「技術書は作業をしながら読むケースもあるので、手元にあると便利」という働く社員の声があったため、このような制度としました。
それでは、早速実態調査の結果を見ていきましょう。
実態調査の結果は?
調査内容は下記条件で実施しました。
調査内容:対象期間内、従業員の購入書籍名と書籍カテゴリー
対象期間:2019年5月1日~12月20日
対象:期間内に従業員が制度を利用して購入した書籍
※期間内に書籍購入の申請を社内決裁システムにて提出されたものをカウント
※「書籍カテゴリー」については、「スキルアップ・自己啓発」「リーダーシップ・マネジメント」「経営戦略」「起業・イノベーション」「人事」「マーケティング」「テクノロジー」「ファイナンス・IR」「トレンド」「デザイン」「その他」のカテゴリーを独自に設定し、各書籍をいずれかに分類。
カテゴリー | 概要・書籍イメージ |
スキルアップ・自己啓発 | スキルアップ、キャリア、自己啓発、生産性向上時間管理など、スキルや業務向上に関する書籍 |
リーダーシップ・マネジメント | リーダーシップやマネジメントなど組織管理に関する書籍 |
経営戦略 | 会社の企業経営に関する書籍 |
起業・イノベーション | 起業や技術革新などに関する書籍 |
人事 | 人事や労務に関する書籍 |
マーケティング | マーケティング・PR・広告に関する書籍 |
テクノロジー | 開発の技術書・Web/ITに関する書籍 |
ファイナンス・IR | 財務戦略や経理などに関する書籍 |
トレンド | 世の中の一般トレンドに関する書籍 |
デザイン | デザインテクニックに関する書籍 |
その他 | 上記のどこにも分類されない書籍 |
一部の書籍はカテゴリーの判別が困難でしたので、編集部独自判断で分類しております。その点はご了承いただけますと幸いです。
それではまず、購入された書籍数をみてみましょう。
購入書籍総数:4,225冊
す、す、すごいですね。約8ヶ月での合計となりますが、月平均500冊以上が購入されている計算になります。ミクシィには約1,000人の社員が所属していますから、仮に全社員が制度を利用して購入したとすると、1人当たり4.2冊購入している計算です。
次に、購入された書籍のランキングTOP10です。
順位 | 書籍名 | 著者 | 購入数 |
1 | 「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ | 玉樹 真一郎 (著) | 55 |
1 | FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 | ハンス・ロスリング (著), オーラ・ロスリング (著), アンナ・ロスリング・ロンランド (著), 上杉 周作 (翻訳), 関 美和 (翻訳) | 55 |
3 | 岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。 | ほぼ日刊イトイ新聞 (著, 編集) | 37 |
4 | ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) |
楠木 建 (著) | 34 |
5 | コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法 |
山田壮夫 (著) | 26 |
6 | THE TEAM 5つの法則 | 麻野 耕司 (著) | 24 |
7 | 直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN | 佐宗 邦威 (著) | 20 |
8 | ビジョナリー・カンパニー 2 飛躍の法則 | ジム・コリンズ (著), 山岡 洋一 (翻訳) | 19 |
9 | PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 | ローレンス・レビー (著), 井口耕二 (翻訳) | 18 |
9 | たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング | 西口 一希 (著) | 18 |
『「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ」』『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』がなんと同数で1位。『「ついやってしまう」~』は、大手ゲームパブリッシャー出身のプランナーの著作。エンタメ事業も展開する当社としては、参考になるのではと考えた方が多かったのかもしれません。サービスを作っていく上で、顧客体験の知見と理解は必須ですからね。また『FACTFULNESS(ファクトフルネス)~』は、社内に共有されている役員陣がオススメする推薦図書の一つ(後述します)。その影響もあって、購入された社員が多く、このような結果になりました。
続きまして、 書籍カテゴリー毎の割合を見ていきましょう。
全書籍の割合で28.6%と圧倒的に多かったのは「スキルアップ・自己啓発」でした。自己成長やスキルアップへの意識を強く持っている社員が多いのかもしれませんね。2位は「テクノロジー」が17.1%。エンジニアが多数在籍している影響もあってか、開発技術に関する書籍の購入が多かったようです。またシンプルに「技術書は値段が高いから」という声もありそうですね。3位は「その他」。なかなかジャンル分けが難しい書籍も多数ありましたので、やむを得ず…という編集部事情もあって、このような結果となりました。
それでは、次は各カテゴリーの書籍購入ランキングTOP5を見ていきましょう。
※同数が多かった場合、順位は割愛しています。
各カテゴリーの書籍購入ランキング
1位は『FACTFULNESS-ファクトフルネス-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』でした。マスメディアでも良く取り上げられ話題になった本書籍。思い込みや先入観によって、つい正しく物事を捉えられないケースがあるかと思います。そんな中、データを正しく見ていくためには、という気付きにつながるかもしれない1冊への関心が高かったようです。
リーダーシップ・マネジメントのカテゴリーから1位は『THE TEAM 5つの法則』がランクイン。最大限のパフォーマンスを発揮するためにチームで協力していく…、頭ではわかっていてもどうやって実践するのか、明確な答えを見出すのは難しいところです。「チームで成果をだしていきたいと考えるけど、やり方がわからない」「これからチームについて勉強していきたい」と考えている方には、入門書としてもよいかもしれません。
1位は任天堂の元代表で故岩田聡氏の発言や対談をまとめた『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』でした。天才プログラマとして様々な名作ゲームを生み出し、プロデューサーとして数々のムーブメントを巻き起こした岩田氏について綴った一冊です。偉大なる経営者・ゲームクリエイターの思想や経営方針を知れる一冊だと思います。そして、2位にランクインした「『ストーリーとしての競争戦略』。弊社役員もオススメしている推薦図書にも挙げられています(後述します)。
アメリカの投資家、事業家であるベンジャミン・ホロウィッツ氏の著作『HARD THINGS』がランクインしました。困難が起きた時にどのように立ち向かってきたのか、自身の苦境を赤裸々に語りつつも、それによって得た教訓をマネジメントにどう活かしているのか。起業家の視点から組織・マネジメント論について書かれた書です。
動画ストリーミング配信でお馴染みのNETFLIX社。同社の企業文化を明文化したCulture Deckをベースに、どのような思想で人事戦略を構築してきたのか。それが理解できる『NETFLIXの最強人事戦略』が1位でした。強い企業文化を維持し進化させていくヒントに興味を示された方が多かったのかもしれません。
全体ランキングでも同数で1位だった『「ついやってしまう」体験のつくりかた』が堂々の1位です。注目したのは4位の『ファンベース』。ファンである顧客をどう向き合い、どのように継続的に共に歩んでいくのか。SNSが当たり前になった時代だからこそ、マーケティング手法として知っておくべき考え方が網羅された本です。
いよいよ到来する5G。通信性能が飛躍的に向上するにつれて、ビジネスがどの様に変わっていくかを解説した『5Gビジネス』がランクインしました。5G入門書としてはオススメです。また、Googleによって始められたプロジェクトで、コンテナ管理ツールKubernetesについて体系的に解説している『Kubernetes完全ガイド』がランクインしました。ちなみにKubernetesはギリシャ語で航海士・パイロットを意味するそうです。
実践的なIR・ファイナンスのカテゴリーの枠ではないかもしれませんが『PIXAR-ピクサー-世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』が本カテゴリーで1位となりました。3位にランクインした『「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」』は各社の決算を分析している『決算が読めるようになるノート』を書籍化したものです。
デザインのカテゴリでは『あるあるデザイン』が1位を獲得。デザインのルールや雰囲気などが視覚的に学べる良書だと思います。ノンデザイナーの方がメンバーにイメージを説明するときにも役に立ちそうです。ちなみに4位にランクインしている『ほんとに、フォント。』も同社が出版している書籍です。
その他はどこのカテゴリにもわけることができなかったものをまとめています。1位に輝いた『アフターデジタル~』は、筆者がオフラインが無くなることを言い換えて呼んでいる言葉だそうです。オンラインベースでのビジネスの世界はどうなるのかを考察している書籍です。
役員オススメの書籍
購入ランキングで少し触れましたが、社内には、役員がオススメしている推薦図書が公表されています。少しだけご紹介しますと…
書籍名 | 読後の感想 |
ストーリーとしての競争戦略 | 戦略とは因果関係である。物事には順番がある。ということを教えてくれる書。ビジネス版エントロピーの法則。 |
ポジショニング戦略[新版] | マーケティングについて何か一冊読むとしたら、ずばりコレ。人の脳の構造から、マーケティングの本質に迫る名著。 |
ファクトフルネス | 事実に基づいて固定観念にとらわれずに見るべしを教えてくれる。みんながそうだと思っていても実は違うこともあるし、変化していくものもある。 |
サピエンス全史 | テクノロジーやアルゴリズムを含めたさまざまなものによる変化を感じることができる。 人類に起こった4つの革命(認知革命・農業革命・人類の統一・科学革命)を通じて、どのような変化が起きたか、その結果どうなったかを歴史を遡りつつ話が展開される。 |
論語と算盤 | 人間性とビジネスにおける両立とバランスについて書かれた本ですので、事業責任者などには一読を勧めたい名著。 |
こちらは2019年5月頃推薦図書として挙げてもらいましたので、少しタイムリーではないかもしれませんが、社員が書籍選びの参考にしているようです。
制度を利用して書籍を購入した社員にアンケートを実施し、感想を聞いてみました。
【制度利用者の声】
・自腹で技術書などを購入してたのでめちゃめちゃ助かっています。電子書籍にも対応してるのが嬉しいです!
・読書量が増えました。現状業務改善につながっているので、前向きに利用できるメンバーにはとても良い仕組みだと思います。
・自分のお金だと「買ってばっかりで消費が追いつかない」って気持ちで買わないケースもありますが、書籍購入支援制度のおかげでとりあえず買ってしまうようになりました。
・最高です! 書籍を買うハードルが下がり、たくさんの知識を得られるようになりました。
みなさん本当に素直なご回答をありがとうございます(笑)。会社の制度を上手く利用し、結果読書量が増え、日々の業務改善や視座の向上などに繋がっているのであれば素晴らしい限りですね。
書籍のジャンル分けについて、手作業で一つひとつカテゴライズしたのですが、編集部で独自判断せざるを得なかった難しい書籍が多々ありましたため、「○○の本はこのジャンルじゃないか?」と見解によって相違が出る点はご了承ください。また、あくまでミクシィ社内での書籍ランキングで、役員の推薦図書や調査時期と記事制作時期との間にタイムラグがあり、世の中のトレンドをそのまま反映しているわけではない点もご理解ください。
次回は職種別購入数や部署別購入数などのランキングも公表してみても面白いかと思っております。本記事で紹介できなかった書籍も多数ありますが、書籍選びの参考にしていただけますと幸いです。