今や、1on1ミーティングはビジネスの世界では、当たり前になっているかと思います。部下個人を中心としたミーティングとして、広く知られているはず。

ミクシィの社内でも、様々な組み合わせで1on1が実施されています。マネージャーと部下、部長とマネージャー、役員同士、時には部署間など、開催の目的に合わせ、週1、隔週1、月1など様々な頻度で行われています。
※2020年7月現在、状況に応じてオンライン/オフラインを使い分け、1on1が実施されています。

 

ミクシィの場合ここ数年で人事施策として1on1が始まったわけではありません。さかのぼると、2008年ぐらいから既にスタートしており、当時を知るメンバーに聞いてみると「気付いたら始まっていた」「誰かに指示されたわけではないけど、何となくマネジメントに良さそうだったので、自然にやっていた」そうです。

2020年の現在も、1on1はミクシィの正式な人事施策ではありませんが、各部署が自主的に取り組んでいます。この10数年続いているミクシィらしいカルチャーを活かし、より良いマネジメントにつなげ、事業成長や組織体制の強化などに繋げることはできないか。人事戦略グループが取り組んでいる部下と上司の1on1におけるスタンスや、様々な施策を紹介します。

1on1の実態

先ほども説明した通り、1on1は従業員の90%以上が実施している(社内調べ)ものの、そのやり方について、基本は部署が独自で行っています。また、今や1on1のTipsはいたるところにあるのものの、その手法ややり方について効果的かどうかは、メンバーとの関係性、メンバーの心身の状態など様々な要因によって左右され、画一的なやり方はないのが実情です。例えば、MTGの題材として業務の進捗報告のみを行うのか、メンバーのプライベートに踏み込む話をするのか、などは実際に1on1を行う立場の方の悩みどころでもあるはずです。

 

そのため人事戦略グループとしては、1on1を充実した形で実施するため、厳格なルール策定や「〇〇の通りにしてください」といった指示ではなく、様々な情報を提供し、あくまで支援する立場でサポートすること、としているそうです。具体的には複数のテーマを設けた「1on1に関する研修・勉強会」をマネジメント層向けに定期的に開催し、様々な社内事例や一般的な手法を提供しています。

そのようなスタンスをとったのも、「社内で1on1が幅広く実施されているのに、本当に効果的な1on1が実施されているのだろうか」といった課題からスタートしたとのこと。そこで、社内で、1on1についての実態調査を実施。1on1でどんな内容であれば、有意義な時間と感じるのかについて全社員にアンケートを実施してみました。すると下記のような結果に。

上の図表の赤い数値の箇所に注目すると、「承認」や「活躍・成長目標」といった項目において高い相関関係があるようです。この項目なら1on1で有意義に感じられるケースが多いようです。逆に「プライベート」は、あまり有意義さを感じにくいという結果に。補足説明にはなりますが、数値が低い=1on1で話す内容にふさわしくない、ということではなく、特に有意義と感じやすい項目にあるのが「承認」や「活躍・成長目標」という捉え方をしています。ちなみに、1on1をやること自体には概ね満足しているという回答が大半でした。

1on1を実施する側(上司)も含めて、どう充実させていくのか、この課題にどのようにアプローチし解決に導いているのか、「1on1に関する研修・勉強会」から具体的な例を見てみます。

 

1on1に関する研修・勉強会の事例

人事戦略グループが実施している1on1に関する研修・勉強会は全部で3つ。 「1on1共有会」「1on1アカデミア~リスニング&リフレクション~」「1on1アカデミア~アクノレッジ&アサーティブ~」がありますのでご紹介します。

 

1on1共有会

マネジメント層10~20名に任意参加してもらい、4~5人で3~4のグループにわかれてワールドカフェ方式(グループ対話の形式。一定時間がきたら、グループのメンバーを入れ替えての対話を繰り返し行う。ホスト役の方は、グループ事に少人数で対話をするため、話し手の意見を聞きやすく、自分の意見も言いやすい)で実施。

こちらは「私の1on1では、〇〇のやり方で行っています」「1on1では、□□の観点に気を付けています」とマネージャーが実際に実施している1on1の内容の共有がメインです。マネジメント層が普段どのような内容で1on1をやっているのか、発表してもらい、それについて質問を行い、深堀しながら情報としてキャッチアップしてもらっています。

 

1on1アカデミア ~リスニング&リフレクション~

事例の共有とは別に、1on1を実施する理由やマネジメントに効果的な観点から、座学を通した勉強会も実施しています。その一つが、1on1アカデミア ~リスニング&リフレクション~」です。この勉強会で学べるのは、1on1における傾聴の姿勢質問方法や内省です。

“1on1は、大きな枠組みとして「信頼関係を構築する」と 「成長を促進させる関わり」の2つのフェーズに分かれます。信頼関係の構築のためには、まず1人1人との相互理解、相手の特性や、価値観の理解が非常に重要と考えています。また、そのためにはうまく話を聞き出し理解するスキルも必要です。そのための勉強会が「~リスニング&リフレクション~」です。 人事戦略グループ マネージャー 杉村”

 

傾聴の姿勢」においては、「信頼関係を構築する」ために下記のような項目について説明しています。

◆基本的な傾聴の姿勢
 ┗無条件に肯定的に聴く
 ┗相手の立場を共感的に理解する
 ┗ありのままの自分を受け入れる

 

◆自分と相手の非言語行動に注意を向け理解する
 ┗身体的動作、プロセミックス(空間の行動)、一般的な外見⇒自分に対して
 ┗姿勢・身振り・仕草、顔の表情、声に関係した行動、目に見える自律神経反応、身体的特徴、一般的な外見⇒相手に対して

◆言語的メッセージの理解
 ┗経験・行動・感情の3つに分解しながら話を聴くことで、話の中で抜けている部分を探る

◆傾聴の阻害要因の把握
┗相手の話を十分に聞けないパターン(体調、心配事、過剰な熱心さ、問題の類似性、相違、魅力)を理解する

 

テーマ「質問方法や内省」では、「成長を促進させる関わり」つまり経験学習を促進するための1on1の手法として下記を説明しています。

◆話しやすい場づくり
 ┗近況や体調についてや、前回からの良い変化などを聞く

◆何について話すかを決める
 ┗主体性を持たせるために、できるだけ相手に決めてもらう

◆対話を通して内省・概念化を促す
 ┗効果的な質問で内省の支援をし、言い換えや要約などで概念化の支援を行う

◆経験を支援する
 ┗本人の次回アクションや上司の協力すべきことなどを決める

 

1on1アカデミア ~アクノレッジ&アサーティブ~

もう一つの勉強会が、「~アクノレッジ&アサーティブ~」です。こちらは、「承認」と「自分も相手も大事にする伝え方(アサーティブ)」についてです。

“信頼関係の構築に欠かせないのは、相互理解も大切ですが、部下への承認も欠かせませんん。事実を認め、そのまま伝えることが承認です。承認は、部下の言動の「習慣化」が促進されると考えています。 人事戦略グループ マネージャー 杉村”

承認」では、褒めると承認の違いや、目を見る・うなづくといった「存在承認」、行動を事実として伝える・相手の行動に感謝するなどの「行動承認」などの知見について啓発しています。

アサーティブ(コミュニケーション)」では、他社も配慮しながら、伝えるべき内容をどのように伝えていくのか、という視点でのやり方を説明しています。

これらの研修・勉強会とは別にSlackで1on1に関するTipsを適宜共有していますが、これもあくまで「取り入れてみてはいかがでしょうか」のスタンスで実行しているとのことです。

参加者の声

勉強会を受講したマネージャーにアンケートを実施したところ、下記のコメントがありました。

・1on1はどうしても我流になりがちだが、皆がオープンにすることで、いろいろな気付きがあった
・他部署のリーダーやマネージャーの方がどのように1on1を実施されていて悩んでいるのかを聞けたので、今後の1on1にも活かしていけそう
・1on1の進め方だけでなく、普段のコミュニケーションの取り方についても考えさせられる内容だった
・様々な1on1の実施方法があり、今後に活かせそう

概ね満足いただいているようです。特に、本勉強会に参加したことで、色んな方の1on1実施方法をインプットできた点は大きな学びに繋がったという声は共通してみられました。

 

最後に

人事戦略グループのマネージャーである杉村にコメントをもらいました。

1on1は部下と上司がお互いに信頼し合える関係性を構築した上で、事業成長を実現していくためのマネジメント手法の1つであると思っています。部下と上司、それぞれの性格やタイプも違うでしょうし、タイミングによってはコミュニケーションの取り方に変化が必要なときもあるでしょうから、一定の型にはめたやり方は、必ずしも上手くいくとは限りません。とはいえ、心構えとして上司が「部下のための時間」であることを忘れてはいけないと思っていますし、部下が1on1を「楽しみな場」と捉えてくれるように心掛けるのも必要だと考えています。

人事企画部 人事戦略グループマネージャー 杉村

 

※パート2では、1on1の実施内容や普段から気を付けていることなど、複数のマネージャーにインタビューした内容を紹介します。

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