ミクシィの特例子会社※である株式会社ミクシィ・エンパワーメントは、障がい者が活躍する場の拡大を目的に2017年10月に設立されました。データ作成・入力業務やアプリ開発における調査・QA(品質保証)業務、バックオフィスサポート業務など、当社グループの各種業務支援を主な事業とし、現在10名(仙台事業部においては7名※2020年12月時点)の障がいのある従業員が活躍しています。
※厚生労働大臣(公共職業安定所長)から認可を受けた、障がい者雇用促進目的で設立する子会社
ミクシィ・エンパワーメントが本社を構える宮城県仙台市では、2009年度より「仙台市障がい者雇用貢献事業者表彰事業」を実施しています。これは、障がいのある方の雇用促進に積極的に取り組む事業者を表彰し、障がいに対する市民の理解を深めるとともに、障がいのある方の雇用の創出・拡大を図ることを目的としています。本年1月26日に、事業の功績を評価いただき、「令和2年度 仙台市障がい者雇用貢献事業者」の一つとして選出され、仙台市長より表彰状を贈呈されました。
▼1月26日(火)に開催された表彰式での表彰状贈呈の様子
今回のインタビューでは、北村(TOP画像右)と宇高(TOP画像左)に現場の実態と表彰の喜びを語ってもらいました。
障がい者も健常者も仕事のクオリティは同一に
━━「令和2年度 仙台市障がい者雇用貢献事業者」の表彰、おめでとうございます!授賞した感想はいかがですか。
北村 ありがとうございます。一年前にこの表彰制度を知って、授賞することを目標の一つに頑張ってきたので、すごく嬉しいです。ミクシィグループ内での存在の認知が広まっただけでなく、社会的貢献という面からもお役に立てているのではと思っています。
宇高 自分たちが地道に築いてきた実績を自治体から表彰していただけたことで、頑張りが認められ、働くスタッフの自信や勇気につながりました。障がい者の雇用促進を通じて、仙台市に貢献し、地方再生の一役を担うことができたのかなと思います。
━━ミクシィ・エンパワーメントでは、どんなスタッフが活躍していますか?
宇高 身体、知的、精神障がいなど、さまざまなスタッフが働いているダイバーシティな環境です。
━━障がい者スタッフのみなさんは具体的にどんな仕事を?
北村 グループ内の様々な多岐にわたる業務を、請け負っています。例えば音声の文字起こしや、アンケート結果の打ち込みなどパソコンでの作業をベースにした業務です。
宇高 こういった一人で黙々と進める作業は、彼らの特性に合っているケースもあります。特に発達障がいの方は、過集中の傾向があるケースもあったりします。その集中力は強みでもありますから。
北村 中には発注書のチェックや、機械学習用の基礎データ作成といった、判断の難しい業務もあります。実は、答えのない業務はとても難しく、本人たちもしんどいと言うこともありますね。でも自分たちでルールや判断基準をスプレッドシートに記入し、ナレッジを貯めながら、前向きに取り組んでくれているので頼もしいです。
━━なるほど。苦手な業務にも積極的に取り組まれているんですね。ちなみにどのように仕事を進めているのでしょうか。
宇高 文字起こしを例に挙げると、文字起こしが終わった後はリーダーや他のメンバーが録音データを聞き直してダブルチェックしています。「ここはこうじゃない?」と思ったことをGoogleドキュメントに書き込んで、それを担当スタッフが見て聞き直して、問題なければ納品、という流れです。
━━なぜダブルチェックを?
北村 本人の障がい特性によって、日本語として絶対ありえないことも記述してしまうこともあるからです。
宇高 文脈と関係ない単語で、個々の情報のつながりが弱いと違和感を感じづらい傾向があったりします。そうなると納品の形として質が低くなってしまうので、ダブルチェックを入れるようにしています。障がい者だから成果物の質が多少イマイチでも仕方ないよね、というのは一ミリも思っていません。障がい者としてのハンデを認め、うまく活かしたり対策したりしながら、我々は我々の最大限できる一番いいものを提出できるよう心掛けています。
━━どんなに時間が掛かったとしても、質の悪いものは出したくない。そこは譲れないところですよね。
宇高 はい。だからこそ、私たちの業務は基本的に一人で完結するものはなく、誰かにチェックしてもらったり、必ずコミュニケーションが発生するようなフローになっています。
━━ちなみに、仕事の割り振りはどうしているのでしょうか。
北村 実は、健常者メンバーが仕事を割り振りしているわけではないんです。
宇高 業務速度はすべてデータ化していて、納期に合わせてリーダーがメンバーに仕事を割り振りしています。納期に余裕があれば、しばらくその業務と離れていたメンバーに任せて思い出してもらうこともありますね。過去の経験を忘れてしまいがちな障がい特性を持っているメンバーも中にはいるので。
現場スタッフに任せることで大きな変化が
━━そうなんですね。なぜそういうやり方に?
北村 これまでは健常者スタッフが、何時から何時まではこの仕事、と仕事を割り振ってスケジューリングしていました。しかしスタッフが定着せず、安定的な運用ができていなかった。無駄なルールを取っ払う体制構築が必要だと思うようになったからです。
宇高 これまで仕事の進め方、福利厚生一つとっても、細かいルールがありました。そういう制限が、窮屈に感じられていたのではないかと。例えば、飴は一日2個までとか。理由はあるんですよ。制限しないといくらでも食べてしまう障がい特性の人もいるから。細かいルールのほうが、障がい者スタッフは働きやすいだろうと思っていたんです。
北村 そう。過保護になっていたんですよね。1から10まで言ったほうが動きやすいだろう、と。でも一緒に働く中で、彼らは健常者と変わらないし、もっと任せてもいいんじゃないか、できなかったらやめればいいからと思うようになり、少しずつ任せる範囲を広げていきました。
宇高 任せることが増えると戸惑うこともあると思うので、分からないことは何度聞いてもいいよ、失敗することは悪いことじゃない、ということはずっと伝え続けていましたね。
━━その結果、どのような変化がありましたか?
北村 現場を取りまとめる健常者スタッフが障がい者スタッフのマネジメントだけではなく、本社の業務を取りに行くリソースが生まれました。業務が充実してきたので、彼らのやりがいも生まれ、離職率の低下にもつながったんです。またスタッフの自主性も伸ばすことができ、自分の意見を言ってくれるようになりました。もちろんすべてを判断することは難しいですが、分からないときは相談しながら進められるようになりました。
━━現場に任せるというのは勇気のいることだと思いますが、その結果、いいスパイラルが生まれたんですね。
宇高 こういった“自走できる環境”が評価され、今回の表彰につながったと思うので、思い切ってチャレンジして良かったと考えています。
━━今後の展望についてはいかがですか。
北村 業務が増えているので、できればもっと人を増やしていきたいというのが正直なところですね。
宇高 業務の中には、Photoshopを使った難易度の高い作業などを任されることもあるのですが、現スタッフにはそこまでスキルがないのでお断りをしている状況です。なので今後は、Photoshopのスペシャリストなど、何かのスキルに特化した方を採用してもいいのかなと思います。個人的な希望としては、ミクシィ・エンパワーメントは、障がい者が就職したい会社になりたい。今回の表彰を受け、その礎は築くことができたんじゃないかという自信につながりましたね。
これからも、エンパワーメントの皆さんと協業しながら、グループにてよりよいサービス運営に努めてまいります。最後に今回の表彰について代表の奥田からのコメントがありますので、紹介いたします。
とはいえ、最初から上手く運営ができていたわけではありません。色々な個性を持った人たちが働く職場なので、程度が分からず過保護・過干渉になっていた時期もありました。スタッフの離職率も高く、安定的な業務パフォーマンスが実現できなかったこなせなかった反省を活かしながら、地道に組織体制を整えてきました。
2020年は新型コロナウイルスの流行もあり、イレギュラーな働き方も多かった一年でした。代表である私も仙台オフィスに行けない中、現場のスタッフだけで頑張ってくれた。そういった背景のある中で今回表彰をいただき、みんなの自信にもつながったと思います。さらに管理側の組織体制も大きく変わった年でしたが、スタッフも定着し、しっかり安定的に運用してくれました。これまでの努力が実った印象的な一年だったと思います。なかなか外からは見えにくい部分ではありますが、こういった部分を評価いただけていたのならすごく嬉しいですね。今後は新しいメンバーを迎え、エンパワーメント社の業務を通じて収益を生み出すという目標も実現できるよう、さらに組織体制の強化に励んでいく予定です。