“ヒットプロダクトを生み出す方程式”を見つけたい。分析グループが目指すこと

“ヒットプロダクトを生み出す方程式”を見つけたい。分析グループが目指すこと

共闘ことばRPG『コトダマン』などプロダクトの運営と新規事業開発を手掛ける、デジタルエンターテインメント事業本部(以下DE事業本部)。ここには、データを通じてプロダクトの成長に貢献するグループがあります。各プロダクトの拡大において欠かせない存在です。

今回は、DE事業本部 分析グループのマネージャーである小谷に、具体的な仕事内容や面白さ、今後分析グループが目指していることについて聞いてみました。

 

現場との間で重要なのは、“分析への信頼感”


━━まず最初に分析グループの仕事について教えてください。

DE事業本部では、『コトダマン』をはじめとしたプロダクト運営・新規事業開発を手掛けています。その中で、分析グループのメンバーは、新規または運用中のプロダクトの分析環境の構築、運用中のプロダクトの施策を振り返るための分析などを担当しています。

━━分析環境の構築?

あるプロダクトを成長させたい時、まずKPIなどの目標設定が行われますよね。例えば、新規会員数や定着率、滞在時間などどですね。そうした数字がどう推移しているかを観測するために、どのようなデータを取ればよいか、分析グループで整理して、ダッシュボードを作成します。そうすることで、プロダクト側のプランナーや運用チームが指標を一望できるようになり、ユーザーの行動や盛り上がりを掴みやすくなる。すると、具体的な機能改善や新規施策などに落とし込んでいけるわけです。まずは分析をする環境の基板を作る、というと分かりやすいでしょうか。

━━運用サイドがチェックしたい項目を洗い出してまとめるわけですね。

そうです。そのために、プロダクト側のエンジニアに「◯◯を計測したいので、アプリ側の△△の数字取れますか」とお願いし、分析に必要な情報を揃えるのも、重要な仕事ですね。

━━「現在運用されているプロダクトの分析」というお話がありましたが、新たなコラボ企画や機能の開発についても携わることはあるのでしょうか。

もちろん、あります。例えば、『コトダマン』でいうと、さまざまなアニメなどのコンテンツとコラボすることが多いのですが、そのコラボ先の選定に必要な材用を揃えるために市場調査や競合調査を実施することがあります。どういったIPとコラボしたほうが多くのユーザーに届きそうか、競合がコラボ企画を実施した際にはどのぐらいのインパクトがあったのか…他にも、キャラクターそのもの認知度や人気度を知るための市場調査を行なうこともあります。それらのデータをまとめ、企画や運用サイドにレポートしていく流れですね。

━━プランナーや運用担当者との連携が重要にも思えたのですが、情報共有の場があるのでしょうか。

定期的にプランナーの方たちと施策を振り返るための定例mtgを設けています。ただ、ここではダッシュボードでも見られる数値について話をしていくというより、“課題ごとの状況”を詳細に伝えていくことが多いですね。

━━どういうことでしょう?

たとえば、「先週スタートした新機能って使われている?」という話に対して、もう少し具体的に、新規とか既存とか、どういったユーザーが、どのタイミングで、どのぐらい使っているのか、次のアクションにはどれだけ進んでいて、ゲームから離脱しているのはどの場面なのか…などのデータをまとめ、レポートしていくような感じです。新機能がリリースされる際には、企画や運用サイドではある程度仮説を立てて開発を行なっていますから、意図した通りの結果になっていくのかをデータで確認していくわけです。

 

追う数字、追わない数字をはっきり区別する

━━なるほど。データ分析の仕事が少しずつ見えてきました。では次に、この仕事を向き合う上で大事になることについてお聞きしたいです。

成果というところでいえば、プロダクトの成功を通じて売上をあげることです。ですが、なかなか難しいのは、私たちの仕事が売上に直結していると完全に言い切れないことなんですよね。売上の変動要因は同時に多数ありますから。なので、私が大事にしているのは、データ分析の結果に対して、“納得してもらうこと”。

━━そのために、どういうことをされているのでしょうか?

企画や運営サイドに納得してもらうためには、どうやって数字を見ていくのかについて、お互いに認識をひとつにしておく必要があると考えています。“KPIマネジメントの考え方を共有する”と言ったらいいでしょうか。考え方を共有して、納得したうえで施策に取り組んでもらう。そして、「この振り返りがあったことで、情報が整理された」「次の企画の土台を作ることができた」「新しい機能が生まれるきっかけになった」…そういった結果を積み重ねていくことで、信頼を得ていく。その信頼は、僕らが提案する分析結果をもとにアクションしてもらううえで、一番といっていいほど大事なものです。なので、入社してすぐにやったことはKPIマネジメントに対する考え方を浸透させることでした。

━━そんなに重要なことなのでしょうか?

そうですね。誤解を恐れずにいうと、ユーザーの課金率や離脱率などの数字を追いかけ過ぎるあまりに、そのデータに溺れてしまうことがよくあるんです。

━━データに溺れる?

例えば、ユーザーの初期継続率を上げたいがために初心者ログインボーナスなどの強力な報酬で、数日ログインを継続させようとするような施策を打つことがあります。このようなことはこれまでいろんな会社が多くのタイトルでやってきたかと思います。もちろん数日遊んでもらうことでアプリの面白さに気づいて継続につながるかもしれませんが、中長期の継続率でみたときにはなにも変わらないことがほとんどです。目の前に見える数字に過敏に反応してしまい、それに対して根本的な解決につながらない打ち手を考えてしまう場合がある、ということですね。

━━なるほど。

データは追えば追うほどいい、というものではないと思うんです。数字は長い目で見ることが大切ですし、何よりも見るべき数字をきちんと見極めることが重要なんです。そもそも今回の企画や機能は何を実現したかったのか、ユーザーに何を届けたかったのか。その上で足りないものは何か、どう埋めるかを考えるためにデータを使うべきだと私は思うんですよね。

━━奥が深い…。これは、一般的なアナリストの考え方?それとも、小谷さんの考え方なのでしょうか。

個人としての考え方だと思います。アナリストはこういうものだという正解はありませんから。ゲーム業界におけるデータ分析を手がけてきた中で、私が感じていることです。データ分析を仕事にしているのにこんな言い方をするのは誤解を招くかもしれませんが…データ分析は、あくまでも手段のひとつでしかないと思っています。だって、トレンド分析やユーザー分析を丁寧にやっていたとしても、面白くないゲームを作ったら、きっと成功はしないですよね。でも、めちゃくちゃ面白いゲームを作ったら、高い確率で成功するわけでしょう?(笑)。だからこそ、目先の数字に惑わされすぎず、ユーザーに届けたい価値を見失わないでほしいと思っています。私は、運営がユーザーに届けたい価値がきちんと届くサポートをしていきたいし、ミクシィのアナリストにはこれがとても重要な考え方だと思っています。

 

プロダクトの成長にコミットできる面白さ

━━お話を聞いていて、小谷さんは「データ」ではなく「プロダクト」にコミットしているように感じました。

そうですね。実際に今、分析グループで活躍しているメンバーも、プロダクトの成功にコミットして、日々の仕事に向き合っています。だから、ミクシィのDE事業本部における分析グループでは、いわゆるデータサイエンティストと呼ばれるような方より、エンタメ業界やゲームそのものに興味がある人のほうが向いていると思いますね。プロダクトをもっと面白いものにしていこうという原動力になりますから。

━━分析のスキルはもちろん、ゲームやエンタメへの関心も重要なのでしょうか?

もちろん、とても重要だと思います。一人のユーザーとして、ゲームをすごく楽しんでいるからこそ分かる肌感覚はとても大事ですし、そこにデータを分析する中で見えてきたこととを組み合わせて、プランナーや運用メンバーに提案をしていくことが求められます。

━━プロダクトにコミットできる環境が、仕事の面白さとも言えそうですね。

そうですね。大前提の話にはなりますが、スマホアプリやゲームの場合、リリースして終わりということはなくて、どんどんアップデートされていきます。今あるゲームシステムにどういうものを追加していくかを考えていくことが求められるからこそ、ユーザーの行動を解釈する分析という仕事が必要になってきます。実際に運用中のプロダクトではユーザーにもっと楽しんでもらえるようにと、毎月たくさんのイベントを開催したり、新機能がリリースされたりしています。長い時間をかけてより良いプロダクトにブラッシュアップしていく環境で働けることは、この仕事の良いところだと思います。コンサルティング業界などではプロジェクトが終わると分析結果がその後どう売上に貢献できたのか知ることができないまま終わることもありますからね。

━━最後に、これから分析グループとして目指していきたいことを教えてください。

現在は、ある特定のプロダクトに対して、調査・分析を行なっていますが、ここからもう一歩進んで、普遍的に役立つ情報を整理して、ナレッジにできたらと考えています。

━━普遍的に役立つ情報とは?

よいプロダクトを生み出せる方程式、みたいなものでしょうか。爆発的なヒットを生み出すには、どういう条件が必要なのか。そのとき世の中ではどういうことが起きているのか…。ミクシィにも、大ヒットさせたプロダクトがいくつかありますが、きっと一般化できるノウハウがあるのだと思います。データ分析という観点から、そこを探っていきたい。もしそこをクリアにすることができたら、既存のプロダクトの改善に限らず、新規事業の開発についても役立つことができるのではないか、そういう貢献の仕方ができたらアナリストとして働く楽しみがもっと増えていくと思います。

小谷 健輔(こたに けんすけ)
大学院で博士(工学)取得後、コンサルティング業界に入社。データ分析を通じさまざまな業界の課題を解決する。その後、興味があったゲーム業界へ転職。2020年2月、ミクシィに入社。現在はDE事業本部の分析グループでマネージャーを務める。
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