UIのスキルは「整理整頓・収納術」で磨く!? ~クリエイターのインスピレーション #04~

2022.01.20

ゲームのステージデザイン、キャラクターのイラスト、アプリのUI設計…など、ミクシィのクリエイターは、ユーザーをとことん楽しませるための制作物を次々に生み出しています。そんなクリエイターは、“日々の暮らし”をどのような視点で物事を見て、聞いて、インプットを行なっているのでしょうか。

クリエイターの皆さんに、おすすめのインプット術を聞いてみるシリーズ、四回目の今回は『TIPSTAR』のUI・UXデザインを手がける小林。クリエイターのインスピレーションに迫ります。

小林 宏彰
次世代エンターテインメント事業本部
TIPSTAR企画運営部 UI・UXデザイナー
前職ではゲームのUI・UXデザインを担当。2021年、ミクシィ入社。競輪アプリ『TIPSTAR』のUI・UXデザインを担当する。プライベートでは、2児の父。“使いやすさと美しさ”を目指すべく、自宅をリノベーション。インテリア雑誌に見開き2ページで紹介された実績も。

 

時間があれば、整理整頓や収納ノウハウの記事をチェック

━━日々、意識的にインプットしていることはありますか?

街で見かける道路標識や広告も普段のインプットではありますが、個人的に一番注力しているのは、「整理・収納系の記事を読んで、気に入ったものは自宅で試す」です。

押し入れをもっと有効活用する方法、キッチンのシンク下を便利な収納スペースにする方法など…整理に関するノウハウ系記事をSNSやWebでチェック。「やってみたい」と思ったものがあれば、週末に自宅でコツコツ試しています。

以下のページを見てもらうと分かりやすいかもしれません。

*『北欧テイストの部屋づくり』no.30 掲載

━━素敵なお宅が紹介されていますが…もしかして、小林さんのご自宅ですか?

そうです。建売住宅を購入し。リビング・台所・トイレなど1階部分をリノベーションをしまして、その関係で北欧系のインテリア雑誌に見開き4ページで紹介してもらったことがあります。今回は、自宅の写真をお見せしながら、「整理整頓のノウハウとUI・UXスキル」について、お伝えできたらなと思ってます。

 

整理整頓の考え方は、UIデザインと同じ

━━「整理整頓のノウハウ」が、「UIデザイン」にどう活かされてるのか教えてください。

私が整理や収納を考えるときに重視しているのは、大きく分けて3つあります。

  • 「導線を意識した家具の配置」
  • 「迷わず使える仕分け」
  • 「メリハリと余白で作る美しさ」

1つずつ詳しく説明していきます。まずは「導線を意識した家具の配置」から。下記のチェストはリビングに置いてあって、文房具や工具、薬、子どものプリントなどを入れているのですが、実は右の上2段は「下着入れ」として使っています。

━━リビングのチェストに「下着」を収納?

不思議に思われますよね。ですが理由があって、リビングのすぐ近くにお風呂場があり、お風呂から出てすぐに下着を着れるようにと、ここに置いているんです。以前は、2階のクローゼットに入れていましたが、小さな子供が2人いるとお風呂から裸で飛び出していきますから(笑)。

━━小林家の導線を考えると、ベストな配置だったわけですね。

そうです。アプリのUI・UXデザインにおいても同様で、ユーザーが使いやすい、便利だと感じる場所にボタンを配置する発想につながってきます。スマホを持ったときの「親指が届く範囲」に意識が向く。ユーザーにしてもらいたい行動ありきで考えられるので、成果が出せるデザインスキルが磨かれると思います。

━━面白い!!2つ目の、「迷わず使える仕分け」については?

引き出しの中をお見せするとこんな感じです。

たとえば、左の写真。「文房具」の引き出しなのですが、その中は、さらに細かく分けています。「消しゴム」「マスキングテープ」「ハサミやノリ」「筆記具」などで分けているので、迷わず自分が欲しいものを選び取れます。

大人も子供も、“欲しいものが見つからない”といったストレスはありませんし、片づけるときも分かりやすいから、ごちゃごちゃしないメリットもあるんです。

━━この収納術は、UIデザインのどのあたりに活きてきますか。

私がイメージしているのは、アプリ内の「タブ」ですね。

『TIPSTAR』は、初心者も含めて競輪を楽しんでもらうサービスですから、もともと情報量が多いコンテンツでもあるんです。ですから、誰もがゲームを楽しめるような情報の整理が非常に重要です。分かりやすくカテゴリー分けをしていくつか階層を作る。そこからボタンの形を変える、サイズを変える…など工夫をして、ユーザーが何の機能を操作しているのか、どこの階層にいるのかを分かりやすくデザインで伝えています。

━━最後、「メリハリと余白で作る美しさ」について教えてください。

「導線を意識した家具の配置」「迷わず使える仕分け」に関しては、機能的な要素が強かったのですが、最後は、面白さ・美しさといった味付けの部分になりますね。

使いやすさ、便利さでいえば、台所の壁紙やリビングの扉を青にする必要はありません。お気に入りの絵や季節ごとの小物も並べなくていい。けれど、それで出来上がるのは、特別感のない、どこかで見た空間になってしまう。「美しい」とか「楽しい」という感情は得られないと思うんです。

━━なるほど。

私が特にこだわっているのは、「空間の余白」です。たとえば、家具の高さ。基本的に腰の位置より低いものを選ぶようにしています。背が高いものといえば、唯一、冷蔵庫ぐらいでしょうか。目線を引く位置にすると、圧迫感のない空間が広がります。

*『北欧テイストの部屋づくり』no.30 掲載

他には、インテリアの素材やカラーを合わせて、全体がスッキリ見えるように工夫。統一感が生まれますし、それによって「オリジナルの世界観」を演出できるんです。

━━「『TIPSTAR』の世界観づくり」にもつながりますね。

おっしゃる通りです。アプリのテーマカラーを使ったり、場面によってリッチなボタンデザインにしたり…それは『TIPSTAR』の世界観づくりと通ずる話だと思っています。

レイアウトという観点で綺麗に整えるスキルと、「使いやすい!」「テンションがあがる!」みたいな感情を作るスキルはまた別の力です。双方をバランスよく磨いていけると良いのだと思います。

 

終わりはない。整理もアプリも「改善」が大事

━━ご自宅の整理・収納の工夫は、やり終えた感じですか?

そこでいうと、終わりはないですね(笑)。生活していると、新たな“使いにくさ”が生まれるので、常に何かしら手を加えて改善をしています。最近だと子どもの衣類が増えてきたので、クローゼットの収納を増やしたいなと思っていますね。また数年後には、それぞれのパーソナルスペースが必要になるでしょうし。

「暮らしやすい」「生活しやすい」を目指し、日々、細かな改善をかけていく考え方を含めて、UI・UXデザインととても似ていると思います。

━━本当ですね。

“UI・UXデザインスキルを磨く”となると、なんだかとても難しそうなものに思えてきますが、こんな風にごく身近なものからスキルは磨けると思いますよ。

━━ジャンルも気にしなくてよい?

私の場合は、「整理整頓・収納ノウハウ」でしたが、映画、アニメ、スポーツなど、興味がある分野であれば何でもよいんです。そこで使われているサービスに目を向けてみてください。お客さんを喜ばせる工夫にあふれていますから、まずはユーザーとして体験し、そこを詳しく分解していく。すると、UI・UXスキルを磨くヒントが見つかると思いますね。

 

最後に

「整理整頓・収納の考え方は、UI・UXにつながっている点が多くある」と話してくれた小林。最初は関係あるの…?と疑心暗鬼でしたが、話を聞いて大いに納得!自宅における「物の整理」「空間の使い方」は、アプリにおける「情報の整理」「アプリの世界観づくり」と同じだと感じました。また、自分の生活に近いところ、興味のあるところからできる「インプット術」も気負わず始められますね。明日から真似できそうです!

 

~インプットの心得 その4~
身近なサービスから“ユーザーを楽しませる工夫”を紐解き、実際に試す。

 

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