ひと口にマネジメントといえど、そのスタイルは様々。チームメンバーや部下、組織や技術、やり方も多彩にあります。このシリーズでは、“エンジニア”のマネジメントを担うメンバーに焦点を絞り、「エンジニアマネジメントってどうしてる?」と悩みや独自のやり方などを赤裸々に語ってもらい、メンバーの多種多様な“マネジメント観”を中心に、そのノウハウをお届けしていきます。
第10回目は、ライブエクスペリエンス事業本部 システム部 Fansta開発グループ マネージャーの藤木に話を聞きました。
メンバーが対等な関係で話せる『peer 1on1』
━━藤木さんがマネジメントで取り入れてる施策について教えてください。
メンバーからの評判が良さそうだな、と感じているのは『peer 1on1』です。
━━『peer 1on1』…?
一般的な『1on1』は、上長とメンバーで行なうマネジメント手法として知られていると思いますが、『peer 1on1』は上下関係のないメンバー間で実施するもの。私のイメージかもしれませんが、『1on1』は上司とやる前提があるので、どうしても堅苦しい内容になりがち。仕事の報告、キャリアの相談…といった話が中心です。
━━同様のイメージを持っていました。
ですが、『peer 1on1』は対等な関係で行うから、雑談や相談がメインなんですよ。この人はこれに興味があるんだ、こういった価値観を大事にしているんだ…など、「人となり」を知る時間になります。それが、これまで話せなかったテーマを深く掘り下げることにもつながっていくと考えています。
━━『peer 1on1』で話すテーマは何でもよい?
ええ。ここに縛りはもうけておらず、メンバーに任せています。アジェンダは用意せず、本当に自由です。目的は「一緒に働く仲間を理解する」なので。ときにゴルフを熱く語ったり、好きな音楽やゲームについて話したりなど、画面共有しながら説明することもあります(笑)。
━━自分のキャラクターを伝える場にもなってるんですね。
リモートワーク中心だから、メンバー同士の気軽なコミュニケーションを意識していかないといけないし、その空間を創っていくのがマネージャーの役割だと思っています。
━━冒頭では、メンバーからの評判がよさそう…との話もありました。
元々は、完全在宅勤務が始まったときに「会議室への移動前後の雑談って結構大事だったよね。あれがなくなるのは寂しい」というメンバー間の雑談からスタートしたものでした。そもそも、ある程度お互いを知っている状態でないと雑談も発生しにくいので、最低限の関係性づくりを補完するのに役立ったのではないかと思います。
━━マネージャーである藤木さんとメンバーの時間は、別に設けているのでしょうか?
そうですね、毎週15分の1on1を実施していて、そのうち月に一度は30分に拡大して実施しています。前者はなるべく業務の話はせずに、雑談を中心に体調や困っていることがないか確認しています。後者の30分については、評価シートを見ながら真面目な話をする時間、ですね。ここでは業務の相談やキャリアの話が多いですね。これから磨いていきたいスキル、いま感じている課題などを聞いています。
━━大切にしている視点はありますか?
『評価指標達成』のプロセスに寄り添う、ですね。
━━どういうことでしょうか?
自分の過去を振り返ってみると、上司と目標を決めてもその過程について話す場がほとんどなかったと気づいたんです。だから、だんだんと目標に対する意識も薄くなっていき…評価の時期になって、いま取り組むべき指標を思い出す(笑)。
そうではなくて、メンバーとの1on1では評価指標をベースに話をして、一緒にそれぞれの得意や苦手を確認していくようにしています。「いま取り組んでいる業務に、こういう視点が足されればこの指標を伸ばしていけるよね」「じゃあ、この仕事をお願いしようかな」と、そんな話をよくしていますね。
━━対話を大事にされてる一方で、藤木さんの「時間的な負担」が気になりました。
おっしゃる通りでメンバーが2~3名だったときは問題なかったのですが、現在は7名の部署。それなりの時間が必要になってきました。そこで、1ヵ月ほど前から『peer 1on1』を少し変化させて、3~4人をランダムに組み合わせた「チーム」で実施しています。
━━なるほど。状況に合わせて、工夫されてるんですね。
1対1がいいのか、3人チームでもいいのか…ここは検証している段階です。複数人だとどうしても表面上の会話になりやすいので、深い話をするなら1対1にして頻度を下げる方法もあるかな、と考えているところです。
━━藤木さんの考える「チームメイキング」とは?
“みんなが働きやすい空間創り”でしょうか。ゴミを拾うとか、道にあるちょっと邪魔な小石をどかすとか、そんな感覚です。
━━というと…?
先日は、部門をまたいでプロジェクトに関わっているエンジニアの「日報」や「勤怠」が複雑になっていたのでシンプルにしたり、現場の声を聞いて新たなタスク管理ツールを導入したりしましたね。
━━なるほど。小石をどかす、の意味が分かりました。
最近、良いなと思っているのは、こういった“働きやすい空間創り”をみんなでできている点なんです。現場からある課題があがってきて、私がこういうものがあったら便利だよな…と発信すると、それを得意なメンバーが作ってくれる。自分たちが心地よいと思える環境を自分たちで創っていく。そんなチームにしていきたいですね。
藤木にマネジメントについて聞いてみたら、こんなポイントがありました。
「メンバーの価値観や感情に寄り添う丁寧な対話」
メンバーと向き合う時間を疎かにせず、評価指標をベースに、今月はこれに気を付けてやっていこう、春までにこれをできるようになろう…とポイントを決めていく。結果、高いレベルでの人材育成が実現できるし、メンバーの評価への納得度も高くなる。強いチームを生み出していくヒントがつまっていると感じました。
このシリーズでは、引き続き、ミクシィグループ内の“エンジニアのマネジメント”の実態やノウハウを紹介していきます。