ひと口にマネジメントといえど、そのスタイルは様々。チームメンバーや部下、組織や技術、やり方も多彩にあります。このシリーズでは、“エンジニア”のマネジメントを担うメンバーに焦点を絞り、「エンジニアマネジメントってどうしてる?」と悩みや独自のやり方などを赤裸々に語ってもらい、メンバーの多種多様な“マネジメント観”を中心に、そのノウハウをお届けしていきます。
第12回目は、『モンスターストライク(以下、モンスト)』のサーバーサイドに携わるマネージャーの原田に話を聞きました。
━━現在、原田さんが担当されている組織について教えてください。
『モンスト』のサーバー部門には2つのグループがありますが、私はその1つのグループマネージャーとして、7人のメンバーをマネジメントしています。以前は2つのグループに分かれておらず1人で全体を見ていましたが、一人ひとりをしっかり見切れていない感覚が強くありまして。2グループの体制に変更しました。今の自分の力量に合った規模感だと感じていますね。
━━ここまでマネージャーを経験されてきて、原田さんが大事にされていることは?
マネジメントにおいて中心にあるのは、メンバーの自主性を最大限に引き出すことです。その上で、“メンバーのやりたい/やりたくないが何か”はすごく気にしていますね。
“エンジニア”と職種名でくくるのは簡単ですが、当然ながら一人ひとりタイプや思考は大きく違います。実装がすごく好きなエンジニアもいれば、インフラをとことん極めたいエンジニアもいる。構成や仕組みを考えることが好きなエンジニアもいて、本当に色々です。エンジニアとして経験を積んでいればいるほど、自分がやりがいを感じる業務やあまり興味が持てない分野など「本音の部分」があると思いますね。
━━確かにそうですね。
“好きこそものの上手なれ”という言葉があるように、やっぱり人間は好きなものに向き合ったほうがモチベーションは上がりますし、よいパフォーマンスにつながります。プロダクトや部門として抱えている課題解決と、その人のやりたいことや好きな気持ちがマッチできると、自主性が引き出され、お互いにとって最高にハッピーな状態が生み出せると考えています。
━━では、メンバーの本音を知るには、どうすればよいのでしょうか。
とてもシンプルで、その人をよく知ることだと思っています。ただそこは時間もかかるし、同時に大変な部分でもあります。まず前提として、私自身が信用される人間でなければ、メンバーは本心を話してはくれないですしね。好きなことについては比較的話しやすいものではありますが、やりたくない、苦手…は言いにくいと感じるところだと思います。「何でもやります!」「できます!」と積極的に手を挙げないと、マネージャーから良い評価が得られないのではないかと不安になる。そんな環境にはならないよう気を付けています。
━━まず“何でも話せる”信頼関係が大事なんですね。
たぶん、メンバーからしてみたら苦手意識を表に出したり、仕事を選り好みしていいのか…とか感じると思うんですよ。もちろん、本人のエンジニアとしてのキャリアを考えた時に経験したほうがよい仕事はきちんと説明をしてしていきますが、そこで「できない」と本当の気持ちを上司に伝えることは「悪」ではないと、私は思います。
マネージャーに自分の本当の気持ちを話しても大丈夫なんだ、と思ってもらえる信頼関係をきちんと築いていかないと、と日々気を付けています。
━━原田さんは、どのような方法でメンバーと向き合っていますか?
私は1対1でじっくり対話する時間を大事にしていますね。その1つが定期的にメンバーと実施している「1on1」です。ここは業務の進捗確認や相談の時間でもありますが、もう少しフランクに「最近気になる仕事ある?」「アサインされた業務以外で、解決したい課題はある?」とか、そんな話を聞いています。そういう会話の中で「ここはもう少し、改善できるんじゃないかと思う」「この技術をもっと極めたい」みたいな話につながるケースが多いですね。
━━なるほど。引き出す中で気を付けていることは?
メンバーが意見をしてくれたことに対して、安易に「じゃあ、やってみて」と渡さない点でしょうか。私は、プロダクトや技術に対して気になった点や改善点を伝えることと、その仕事を実際にやることはまた別かなと思っていて。言い出しっぺが全ての仕事を任される状態にしてしまうと、絶対に言い出しにくくなるでしょう?(笑)話を聞いた上で「自分としてはどう?」「取り組んでみたい?」と本人の気持ちを確認するようにしていますね。
━━メンバーとの対話は、1on1以外にもありますか?
半期ごとの評価も1対1でしっかり対話する時間です。ここで気を付けているのは、週単位で実施している1on1との内容が乖離していないことです。もし乖離があると、1on1では「いいね」「やってみよう!」といい言葉をかけていても、メンバーがその通りにしていても評価はついてこない状態になる。だったら、自分の気持ちよりも、評価されやすい仕事を優先しよう、そっちを率先して取り組んでいくかと思うだろうし、それは作りたい組織とは違うように思いますね。
━━メンバーの自主性は引き出されないと?
そうですね。マネージャーという立場は、メンバーから見ると思っている以上に「パワー」があるのだと思います。こうしてみたら?のアドバイスも、人によっては命令のように感じるでしょうし。たとえば私が『モンスト』のサーバーエンジニアはこういうものだよねと規定してしまったら、きっとそれ以上のエンジニアは生まれにくくなりますよね。自分の影響力を把握した上でメンバーと向き合わないと、メンバーの自主性は引き出されないんじゃないかと思います。
原田のマネジメントには、こんなポイントがありました。
「対話を通じて、それぞれのメンバーを知る。
それが、自主性を最大限引き出す組織作りにつながる」
一人ひとりのメンバーにしっかり向き合い、深く理解することを大事にしている原田。ここまでの話から、「企業が抱える課題」と「一人ひとりの希望や技術」が重なり合う場面を見つけるのが、マネージャーの役割と捉えているように感じました。
このシリーズでは、引き続き、MIXI GROUP内の“エンジニアのマネジメント”の実態やノウハウを紹介してまいります。