「投資」が事業部に。それってどういうことですか?

「投資」が事業部に。それってどういうことですか?

6月29日、MIXIは投資活動を事業セグメント化することを発表しました。これまでのMIXIは「スポーツ」「デジタルエンターテインメント」「ライフスタイル」の3つを主な事業領域として事業活動を続けていましたが、そこに投資事業が加わり、4つの事業領域に拡大しています。

ではなぜ、投資を事業セグメント化したのか。

その背景と込められた思いについて聞くべく、執行役員の奥山と投資事業推進本部の荒木の二人に話を聞きました。また、実際に投資を担う部署ではどのような変化が起き、業務としては具体的に何が変わっているのか。木村と鴨志田の二人が応えてくれています。

■プロフィール

奥山 翔(おくやま しょう) 執行役員、投資事業推進本部長(写真左奥)
ベンチャーキャピタル、スタートアップ、事業買収などを経て、2016年4月株式会社ミクシィ(現株式会社MIXI)に入社。経営企画室と投資事業部にて子会社支援や事業推進、M&A、PMI、スタートアップへの投資などに従事。グループ会社の非常勤取締役を兼務。
荒木 豪司(あらき ごうし)投資事業推進本部 投資事業部 部長(写真右奥)
マーケティング、ファイナンス等の経験を経て、2019年3月株式会社ミクシィ(現株式会社MIXI)に入社。M&A、PMI、スタートアップへの投資などに従事。グループ会社の非常勤取締役を兼務。
鴨志田 星矢(かもしだ せいや) 投資事業推進本部 投資事業部 投資管理グループ(写真中央)
大学卒業後、大手監査法人及び中小会計事務所を経て会計監査業務や中小企業の事業承継支援などを経験。2021年4月に株式会社ミクシィ(現株式会社MIXI)に入社。2022年7月より投資管理グループのマネージャーに就任。公認会計士。
木村 圭佑(きむら けいすけ) 投資事業推進本部 投資事業部 投資管理グループ(写真左前)
2018年に大学卒業し、資産運用会社に新卒入社。プライベートエクイティファンド投資業務等に従事。2021年7月に株式会社ミクシィ(現株式会社MIXI)に入社。M&A、PMI、スタートアップへの投資、VCファンドへの投資業務など幅広く投資活動に関わる。CFA協会認定証券アナリスト。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。

 

なぜ事業セグメントに?

━━まず、投資部門が事業セグメントになった背景について教えて下さい。

奥山 ここ数年で投資残高が増えてきていることが背景となり、ガバナンスを強化する観点や開示の透明性を高める観点、投資部門としての投資スタンスを表明する観点などをトータルに考え、事業セグメント化の必要性を経営陣に対して説明をしてきました。具体的には昨年末に動きはじめ、2022年の6月29日に発表。事業セグメントとして売上認識するために定款の目的変更が必要なので、定時株主総会の時期に合うように準備を進めてきました。

荒木 より具体的にお話しすると、2022年9月末現在で、営業投資有価証券のBS計上額16,531百万円・評価額を含めた運用総額24,381百万円と、当社の財務諸表上大きな割合を占めています。株主の皆様をはじめとするステークホルダー各位に当社の投資の状況をご理解いただくためにも事業セグメント化を進めました。

━━事業化前と事業化後でどれほど注力の度合いが変わったのでしょうか?

奥山 ここ数年投資活動自体は活発にしており、既に注力している活動の一つだったと思います。なので、事業化することで注力度が変わることはなく、しっかり成果を上げることに対する緊張感が高まっているといえます。四半期ごとに開示することで投資活動をしっかりモニタリング頂くことは、投資にかかわるメンバーにとって励みにもなっているのではないでしょうか。

荒木 そうですね。投資事業化にあたり、規定や委員会、J-SOX水準での内部統制の整備など、スピード感は持ちつつもガバナンスを担保した意思決定が出来るように仕組みを整える必要もあり、昨年末から発表の6月にかけては投資部門内部でのタスクは多岐に渡るものでした…。この辺りは鴨志田・木村に詳しく語ってもらいたいと思います。

 

事業化前後、現場ではどのような動きがあった?

━━では続いて、事業化に至る背景でどのような業務を行っていたか教えてください。

木村 事業化に向けては、駆け回りながら関係部署と連携し整理していきました。タスクが乱立していた中でも、準備に力を要したのは主に3点です。

・定款の変更

・会計処理の検討

・社内規程の制定及び改定

まず、MIXIの本業として投資活動を行うためには、会社としてのルールを定めた定款に記載されている「目的」の変更が必要。どのように定款を変更すればいいかを法務部や経営企画部の方々と相談しながら手探りで進めていきました。

会計処理の検討も大きな論点でした。事業化すると従来の会計処理から大きく変わるため、財務諸表への影響について、経理税務部の方々と密な連携を取ってシミュレーションしていきました。

次に、社内規程を追加するミッションも。定款目的は公表されているので他社事例を見に行くことができましたが、社内規程は公開されているものではないので、最初はどうすれば良いか分からずでした(笑)。このあたりも、経営企画部や法務部、さらには内部統制にも関連する所ですので、内部監査室とも相談しながら進めていきました。そして、投資に関する意思決定権限を見直すため、職務権限についても整理する必要があり…と社内ほぼ全てのコーポレート部門と連携しながら進めていましたね。

━━それは大体どれくらいのチーム、期間で行われたのでしょうか?

木村 荒木と鴨志田、私の3名をメインメンバーとしてプロジェクトチームを組み、おおよそ7ヶ月の期間で準備しています。

鴨志田 2021年の11月に計画が動きはじめて、6月の株主総会で承認されるまでの期間なので、それくらいですね。当然ですが、チームに「投資の事業化」の経験がある人はいないので、そもそも何を検討すれば良いのか、あるべきゴールは何なのかなどを考え、携わるメンバーの知識を持ち寄って、時には他部署や他社にも協力を仰いで実現に漕ぎつけたようなイメージでしょうか。様々な視点で様々な意見を頂けたことは本当にありがたかったです。

━━実際に事業化してから、業務も大きく変わっているのでしょうか?

木村 投資検討先としては従来と同じくVCやスタートアップ企業などが主なところになるので、実質的な投資検討内容はそこまで変わっていません。

ですが、変更点といえば「投資委員会の設置」と「プレ投資委員会の実施」が主なところでしょうか。従来は投資先を選定し決裁を得るために、投資額に関わらず経営会議または取締役会まで付議して決議を諮っていたのですが、少人数で構成された「投資委員会」が設置されたことで、ある一定の金額までは経営会議を経ずに付議することが可能になりました。投資にまつわる権限と予算が事業部に一部移譲されたことで、より迅速に投資実行を行うことが可能となっています。

━━実際に投資委員会内で決裁しているものはどれくらいの割合ですか?

木村 案件ベースで言えば、約7〜8割くらいでしょうか。

鴨志田 また、投資委員会の設置に合わせて初めた試みとして、「プレ投資委員会」という仕組みを部内で作りました。プレ投資委員会はオフィシャルな機関では無いのですが、より多角的な意見を取り入れながら投資先を決定していくことに重きを置いて始めた取組です。

「A社に投資すべきではないか」と考えている担当者がいたとしても、どうしても様々な主観が入り込んだりすることがあり、正しい判断ができない場合があります。そのため、MIXIとして本当に投資すべき案件かどうか、まずは部内のメンバーを3名指名してプレ投資委員会で意見を募ります。そこで忌憚なく壁打ちを行うことで、担当者が気づけなかった論点を洗い出したり、投資仮説をブラッシュアップしていきます。この取組により、指名されたメンバーも力がついていきますし、投資判断をより洗練していくことができると思います。

プレ投資委員会はこれらの目的のために部内で行っている仕組みのため、本番の投資委員会に付議するための規程上の必須プロセスではありません。極端な例で言うと、プレ投資委員会で指名された3名のメンバー全員が反対したとしても、依然として担当者が投資すべきと考えている場合は、投資検討を継続することができます。

━━担当者が3名を指名するんですね。

鴨志田 そうです。投資事業部内には様々なバックグラウンドを持つメンバーが揃っています。コンサルティングファーム、金融機関、キャピタリスト、中には投資とは全く関係のないバリバリの営業マンだった人もいます。多様なバックグラウンドを持つメンバーが揃っているからこそ、異なる視点から意見がもらえるので、投資担当者から意見を貰いたいメンバーへの指名制になっています。

ただし、プレ投資委員会という取組は実験的に始めて見た試みですし、今後も随時改善をしていければと考えています。

━━それ以外にも変わったことはありますか?

木村 業務としては先ほどお伝えした通りですが、投資における判断はより一層シビアに行うようになりました。

今まではマイノリティ株式の売却を行った場合、PL上の売却損益は「特別損益」として計上していたのですが、今後は取得にかかった費用は売上原価に、売却額は売上高に計上されることになります。また、VCファンドの損益取込も「営業外損益」から「売上高」または「売上原価」に反映されるようになりました。つまり赤字になると会社の「営業損益」にも影響が及んでしまうため、MIXI全体に作用する。この通り、会計数値に対してもより責任を負う立場になるので、より精緻に判断をしていかなければいけないんです。

鴨志田 加えて、IRでの変化もあります。従来は投資を行ってもBS上の投資有価証券に計上される金額が増えていく一方で、どの程度投資成果が得られているのかなどは開示されていませんでした。今後は、投資セグメントとしての情報が一定開示されることになり、投資家への説明責任も求められます。それと何より、会社の大切なお金を扱う部署ですので、投資先を始め社内外関係者へのリスペクトを忘れずに、誠実に業務を行っていきたいと思います。

━━責任が重くなったものの、投資事業部に移譲された権限や決裁権も増えたということですね。

 

これからの“投資事業部”

━━事業化してから、MIXI外部(投資家、パートナー企業、投資先など)からはどのような反応が寄せられていますか?

奥山 投資が活発になることに対する期待感は上がっている気がします。ただ、投資をすることが目的ではなく、新たな事業を生み出すために投資を活用しているので、投資をバンバン増やすことはありません。より厳密に良いパートナーを見極めながら見つけていく投資を心掛けています。

━━では、投資を事業として成長させていくにあたって、どのような姿になるのが理想でしょうか?

奥山 投資して終わりではなく、投資が始まりという感覚で投資事業を行っています。そのため、投資後もしっかりフォローする気持ちが強いメンバーがより大切になるのかなと。また、当社事業や当社の将来事業とコラボレーションできる会社やサービスを探す必要があるので好奇心や強いメンバーを増やしていくことが必要だと思っています。

荒木 我々は事業会社として投資をさせていただいていますので、投資家としてキャピタルゲインを得るだけではなく、事業面でもいい形でご一緒させていただけるのが理想です。M&A等でグループ入りいただくこともありますし、資本業務提携の関係を段階的に強化することもあります。双方の事業が成長するような座組を実現していきたいと思っています。

━━メンバーを増やすにあたって、どのような資質がある方が向いているのでしょうか?

奥山 好奇心と思いやりのある方、でしょうか。スキルが高い方でこのようなメンタルをお持ちの方、ぜひお待ちしております!もしスキルがなくても強いメンタルがあればご連絡ください。スキルについても、これまで投資や経営に関わっていなければNGということはなく、事業をしっかり伸ばしてきた経験や撤退事業で粘り強く戦ってきた方なども活躍できるフィールドだと思います。

荒木 奥山のコメントを具体的に落とし込んだ行動指針として、投資事業部では下記の3つの行動指針を定めています。

正しいことをする
法定遵守に留まらず、当事者意識を持って説明責任を果たすこと

深化と探索を両立させる
高い専門性で成果を出しながら、好奇心を持って新たな領域にチャレンジすること

・敬意を持って振る舞う
相手の価値観や視点を取り入れ、あらゆるステークホルダーを尊重すること

こういった考え方に共感いただける方には活躍いただけると思うので、ぜひ一度お話できると嬉しいです!

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