『家族アルバム みてね』のこれから。世界中の家族の“こころのインフラ”をつくる|取締役ファウンダー 笠原健治〈後編〉

『家族アルバム みてね』のこれから。世界中の家族の“こころのインフラ”をつくる|取締役ファウンダー 笠原健治〈後編〉

MIXIで取締役ファウンダーを務める笠原が、事業責任者として果敢に取り組んでいる2つのライフスタイル領域の事業があります。それが、会話AIロボット『Romi』と『家族アルバム みてね』。それぞれのサービスがどのような状況にあり、またその裏にはどのような想いが秘められているのか。前編では会話AIロボット『Romi』について、後編では、『みてね』についてと、笠原が考える「事業づくり」について聞きました。

SNS『mixi』を立ち上げ、MIXIの歴史と共に奔走してきた笠原のキャリアについてはこちらに詳しくまとめていただいているので、ぜひ合わせてお読みください。

44「MIXI創業者と振り返るこれまでの軌跡。創業からずっと変わらない“想いと決意”」SNS、mixi、モンスト、みてね – 笠原 健治氏(MIXI)

『みてね』の開発きっかけは、子どもの写真を共有したかった
『みてね』は、スマホで撮影した子どもの写真や動画を共有、整理できる家族向けアプリです。2015年にリリースして順調に利用者数を伸ばし、現在は1,500万人を超える人たちにご利用いただいております。2017年には海外版として『FamilyAlbum』を展開。英語から始めて、韓国語、中国語(繁体字)、フランス語、ドイツ語、スペイン語など現在は7言語で提供しています。毎月の新規登録ユーザーについては、海外が日本を超えてきたところです。現在は「海外展開」と「収益化」に注力して、事業展開を進めています。

『みてね』を立ち上げたきっかけは、自分の子どもが生まれたことです。誕生から1週間ほど経ってスマホの写真アプリを見てみると、子どもの写真や動画で埋め尽くされていました。ちょっとした表情の変化や、うとうと眠ったり、足を動かしたり…そんな日々の様子を残しておきたいと撮りまくっていたんですね。「子どもが生まれると、こんなに写真や動画を撮るのか!」と私自身もびっくりしたほどでした。さらに、自分が撮った子どもの写真を妻や両親など他の家族にも見せたくなるし、逆に彼らが撮った子どもの写真も全部見たいと思う気持ちが強くなりました。

そこで既存の写真共有サービスをいろいろ使ってはみたものの、どうもしっくりこない…。共有する作業が大変だったり、写真が見られたかどうかも分からなかったりした。だったら、おじいちゃん・おばあちゃん世代も簡単に使えて、写真や動画で「子どもの成長」がまるっと残せるベストな家族アルバムアプリを作ろうと思い、自分たちで開発することにしました。

プロダクト開発者の想いが、独りよがりになっていないか
『みてね』が誕生した背景には僕自身の原体験があるので、「プロダクト開発においては、原体験があったほうが良いですか?」と聞かれることがあります。全てがそうだとは言わないですが、周りをみても事業責任者やチームメンバーの経験が基になっているサービスは多いんじゃないでしょうか。特にまだ世の中にないサービスであればなおのことで、原体験が強い「想い」や「信念」になって、プロダクトを成長させているようには感じます。

ただ気をつけないといけないのは、その想いが“独りよがりになっていないか”です。たとえば良いと思っているのが自分だけだったらあまりにニッチすぎるし、サービスとして広げていくのは難しいでしょう。市場がどこまであるのかは、冷静に見極めないといけないなと思います。また、コンセプトだけじゃなくて、機能を作り込んでいく中でもこの視点は重要だと思います。自身が“こうあってほしい”と仮説を持つのはすごく良い始まりだと思いますが、“本当にそうなのか?”は疑っていかないといけない。世の中の多くの人たちが欲しい機能なのか?必要としているのか?については、細かく検証しながらやるのが良いと思っていますね。

なので、ユーザーの反応はとても気になります。ある種、仮説の答え合わせみたいなものだと思うので。数値やコメントなどを“ユーザーがどのぐらい喜んでくれてるのか?”の度合いにして、大きければ大きいほど施策が成功したと捉えています。

子育てする中で感じた不便や不安を取り込んで、解消していく
『みてね』のこれからでいうと、事業としての「広さ」や「深さ」を考えていくフェーズにあると考えています。「広さ」は海外展開ですね。日本だけを対象にするとどうしても制限がありますから。あとは、単純に世界の人々の暮らしや価値観に触れて、どういう心理だったのか?と観察していくのは面白い。見知らぬ土地を開拓していくといったら少し大げさかもしれないけれど、行ったことのない国に足を踏み入れるワクワク感はすごくありますね。もともと人間が持っている好奇心・冒険心が満たされる感覚に近い気がします。

「深さ」でいうと、『みてねみまもりGPS』『みてねコールドクター』などの事業になります。『みてねみまもりGPS』は、子どもの居場所がいつでもわかる位置情報みまもりサービスです。子どもが大きくなって一人で行動する機会が多くなったときの“心配”を解消したいと思って始めました。『みてねコールドクター』は、夜間・休日に自宅に医師が来てくれたり、24時間365日、オンラインで診察が受けられたりするサービスです。最初は“直接、お医者さんに診てもらいたい”との要望が多かったのですが、最近ではオンライン診療の割合も増えています。次の時代において「オンライン診療」は伸びていくんだろうな、というのは肌で感じています。

『みてね』の始まりがそうであったように、自分たちが子育てしていく中で感じた「不便」や「不安」を取り込んで、プロダクトの開発を通じて解決していきたい気持ちは強くあります。『みてねみまもりGPS』や『みてねコールドクター』など、“みてね”のブランドが子育て領域のベースになっていく。そんな将来像を描いています。この分野において、一番最初に想起される存在を目指していきたいです。

次の時代のインフラとなるようなコミュニケーションサービスを目指して
ここまで会話AIロボット『Romi』と『みてね』について話してきましたが、これらに共通しているのは「インフラとなるようなコミュニケーションサービス」という点です。『Romi』に関していえば、ロボットが“一家に一台”あるような生活もあるんじゃないかと思って取り組んできましたし、『みてね』に関しても、家族の絆をもっと強くできるんじゃないかと考えながら向き合っています。

そして、言い換えると、次の時代のインフラとなるようなコミュニケーションサービスは、僕たちが目指していることでもあります。『みてね』で言えば、“世界中の家族のこころのインフラをつくる”という言葉をミッションに掲げていて、その実現に向けてこれからもやっていきたいと思っています。

その上で、改めて考えてみると僕の中にずっと原点としてあるのはSNS『mixi』です。まさに目指している世界だとも思っていて。

MIXIは、SNS『mixi』をもって、コミュニケーションのインフラともいえるサービスを手掛けることができた会社です。その開発を通して、人と人のコミュニケーションが未来の社会を作っていくことを実感しました。その後も、『モンスターストライク』や『みてね』などで多くの人たちに愛される、コミュニケーションを核としたサービスを生み出してきました。コミュニケーションサービスを生み出したり、開発の過程で温かいスピリットを吹き込む醍醐味を知っているメンバーが数多くいることが何よりもの財産です。社名をMIXIにこだわり続けているのは、「コミュニケーション」へのこだわりだと自分は捉えています。
これからもこの唯一無二の財産を原動力として、人々が「こんなものがほしかった!」と、心が明るくなるようなサービスを生み出し続けていきたいと思っています。

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