“サーバントリーダーシップ”精神でメンバーを支える~エンジニアのマネジメントどうしてる? #14~

“サーバントリーダーシップ”精神でメンバーを支える~エンジニアのマネジメントどうしてる? #14~

ひと口にマネジメントといえど、そのスタイルは様々。チームメンバーや部下、組織や技術、やり方も多彩にあります。このシリーズでは、“エンジニア”のマネジメントを担うメンバーに焦点を絞り、「エンジニアマネジメントってどうしてる?」と悩みや独自のやり方などを赤裸々に語ってもらい、メンバーの多種多様な“マネジメント観”を中心に、そのノウハウをお届けしていきます。

第14回目は、『モンスターストライク(以下モンスト)』のインフラ構築、サーバの保守運用に携わるマネージャーの王(おう)に話を聞きました。

王 奇(おう き) モンスト事業本部 ゲーム運営部 モンストサーバー2G マネージャー
2012年10月、MIXIに入社。SNS「mixi」を運用する事業部にて、mixi日記やmixi内のカジュアルゲームアプリ開発に携わる。「minimo」事業を経験した後、モンスト事業本部にサーバーサイドエンジニアとして活躍。「モンスト」の海外版リリース対応・機能開発・インフラ構築・負荷対策など幅広く担当。

メンバーの力が最大限に発揮できる環境づくり
━━現在の業務内容を教えてください。
『モンスト』のサーバ関連の業務を担うグループは2つあり、その1つのグループマネージャーを担当しています。メンバーは僕を含めて6人です。グループごとの明確な役割分担はなくて、僕が見ている2Gはインフラ周りの開発やサーバの保守運用などの業務を担うことが多いですね。境界線は設けず、状況を見ながら機能開発なども幅広く手掛けています。

━━マネジメント歴はどのぐらいになりますか?
2012年の10月に新卒でMIXIに入社して、2022年3月にマネージャーになったので、マネージャー歴はちょうど1年ぐらいですね。以前は小さいチームだったこともあって“マネジメント”というものはあまり意識はしていなかったように思います。「みんなで何でもやります!」みたいな感じで(笑)。マネージャーになって、いろいろ考えていくようになりました。

━━この1年で“マネジメント論”のようなものが見えてきた?
そこでいうと、僕は「サーバントリーダーシップ」をとても大事にしています。「サーバントリーダーシップ」とはリーダーシップの型の一つで「相手に奉仕し、その上で目標達成に向けた主体的な行動を促すリーダーシップ」というもの。部下を支えるためにリーダーは存在する、と言ったらいいのでしょうか。

━━部下を支えるため、ですか。
そうです。ここでポイントになるのは、指示や命令でメンバーを指導するのではなく、メンバーに対して奉仕をして組織をリードする点。大前提に「メンバーは自分より優秀なんだ」という認識があって、メンバーの意見をしっかりと聴き、リーダーとしてどんな支援ができるのかを考える。メンバーを尊重し自主性を大切にすることで、メンバーの持つ力が最大限発揮できる環境を作っていく。これこそがマネージャーに求められる考え方じゃないかなと思っています。

組織と個人、双方が重なり合う部分を見つけて落としこんでいく
━━「サーバントリーダーシップ」を実践する上での難しさは?
一番は「目標設定」ですね。会社や事業部から期待されているグループの役割を見極めて、数値目標に落とし込む部分も苦労はありますが、どちらかというと一人ひとりのメンバーに合わせた目標設定のほうです。

━━どういう点に苦労されるのでしょうか。
僕自身の考えとして、マネージャーは“メンバーの自主的な活動を応援している立場”でありたいと思っています。だから、個人の目標に対して、そこまではっきりと示していないところもあるんです。もちろん、グループの方向性は示していくけれど、業務やタスクに落として細かく指示や命令を出したくない。それぞれの目標に関しては自分たちで考えて決めてくれたら良いと思いますし、それを支援する側に回りたいと思っているんです。

━━メンバーを尊重し、メンバー中心に考えた組織運営ですね。
そうです。でも、そうすると自分で目標を定めて何をしたらいいのか考えていきましょう…みたいな雰囲気になりやすい。それでやりやすいと感じる人もいるでしょうけど、全員がそうとは限らない。ある程度はっきりしたものが見えていないと、やることがないとか、自分が重視されていないのかなとか、不安を感じてしまう人は一定数いると思うんですね。
なので、メンバーの状態に合わせて「この業務をやってください」「こういう目標を立てたほうが良いんじゃないか?」と具体的に伝えたほうが良い場合もあるなと思っています。この辺はメンバーの状態をみながら、バランスが大事なんだろうなと感じています。

━━「目標設定」する上で気をつけていることは?
メンバーそれぞれには「やりたいこと」があると思っていて、それは個人としての“やりがい”とか“キャリア”とかモチベーションを保てる部分だと捉えています。一方で、組織からは“グループへの期待”とか“個人に求められる役割”があります。この二つが重なり合う部分を見つけて、お互いにとって良い形に落とし込んでいくのが重要なのだと思っています。「やりたいこと」があったとしても、事業に全く貢献できていなければ意味がない。評価することはできませんから。

━━具体的にはどのように?
わりとストレートに話はするようにしていて、「組織としてはこういう感じの働き方を期待していて」とか「あなたのポジションとしてはこういう振る舞いを求めているんですけど」とか、こちらの考えを伝えます。だけど、それに辿り着く道は一つではありませんし、大事にしてるものは人それぞれだから、メンバーの気持ちや意向に寄り添いながら、すり合わせていきたいと思っていますね。そうするとメンバーからも「この部分はやれるけれど、これはあまり得意じゃないです」「こういうスキルつけたいと思っていたので、これはやってみたいです」と話が進んでいくケースが多いです。

自分の評価を、自分で勝ち取れるコミュニケーション力
━━マネージャーとして、今後取り組んでいきたいことは?
それぞれのメンバーが「事業からの期待」と「個人の自主性」が重なり合う部分を自分で考えて、目標として定められると良いなと思っています。

そのための環境づくりとして、「グループが大事にしていること」「最低限求めているところ」とか、スタンスみたいなものをもう少し明確化して、グループ全体に公開していけると良いと考えています。期待されているステップアップなものが見えていると、新しく入ったメンバーも戸惑わないでしょうし、評価もしやすい。マネージャーだけが判断するのではなく、グループとして判断するのが理想ですね。メンバーの自主性が育つフラットな風土になるんじゃないでしょうか。

━━それぞれのメンバーに期待することは?
自分の仕事をアピールできるコミュニケーション力を磨いてもらいたいと思います。
自分が定めた目標が、事業部にとってどういう価値があるのか?どのぐらいのインパクトがあるのか?それは一番自分が分かっているものであって欲しいし、上司に対してもしっかりプレゼンをしてほしいですね。これは何も「目標と評価」の話だけではなくて、通常の業務内でも自分の意見を主張したり、考えを説明したりすることと同じだと。周囲に納得してもらえるよう、自分の考えが正しいかを示すためのコミュニケーションを大事にしてもらいたいと思っています。

━━この力は大事ですか?
そう思います。この力があれば、たとえ僕がマネージャーじゃなかったとしても、自分の評価を自分で勝ち取っていくことができるでしょう?組織である以上、マネージャーが変わることは大いにある話です。次にくるマネージャーは、「サーバントリーダーシップ」とは異なる話をするかもしれない。だからこそ、いついかなる場合でも自分の意志を伝えられるコミュニケーション力を磨いてもらいたいと思うんです。

今回の学び
王のマネジメントには、こんなポイントがありました。

・マネージャーは“メンバーの自主的な活動を応援している立場”
・「事業からの期待」と「個人の自主性」が重なり合う部分を、自分で考えられる環境づくりを大事にする

メンバーの自主性だけを重視するのではなくて、合わせて「会社や事業部にどれだけの貢献ができているのか?」を考えることが重要なのだと感じました。
このシリーズでは、引き続き、MIXI GROUP内の“エンジニアのマネジメント”の実態やノウハウを紹介してまいります。

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