チーム全体で成果を上げられるマネージャーでありたい~エンジニアのマネジメントどうしてる? #15~

チーム全体で成果を上げられるマネージャーでありたい~エンジニアのマネジメントどうしてる? #15~

ひと口にマネジメントといえど、そのスタイルは様々。チームメンバーや部下、組織や技術、やり方も多彩にあります。このシリーズでは、“エンジニア”のマネジメントを担うメンバーに焦点を絞り、「エンジニアマネジメントってどうしてる?」と悩みや独自のやり方などを赤裸々に語ってもらい、メンバーの多種多様な“マネジメント観”を中心に、そのノウハウをお届けしていきます。

第15回目は、『モンスターストライク(以下モンスト)』のアウトゲーム開発に携わる岡本勇太に話を聞きました。

岡本 勇太(おかもと ゆうた) デジタルエンターテイメント事業本部 モンストゲーム運営部 クライアント 2G
2018年新卒でMIXIに入社し、「モンスターストライク」および「モンスターストライク スタジアム」で、ギミック実装やUI、システム領域の実装をはじめとした複数領域の開発に携わる。2021年5月からクライアント2Gのマネージャーとして従事。人員調整や開発全体課題のハンドリングを行うなど幅広く担当。

自走する組織を作る

━━早速ですが、岡本さんがマネジメントされる上で意識されていることについて教えて頂けますか?

まず一つは、「属人性を減らし、自走する組織を築く」ことでしょうか。例えば、私が上手くマネジメントし、開発が順調に進む組織を構築できたとしても、それは私がマネージャーとしている間だけの話です。マネージャーやメンバーが他の人に変わると、途端に課題が生じることがあります。なので、誰か一人が管理しているようなものでも、なるべく他のメンバーが引き継ぎ、共有できるように属人性は減らしていきたいと思ってマネジメントを行ってます。案件に関しては基本ペアを組みその中で実装内容や相談を共有する、その上で開発MTGでより大きな改善や課題を相談するといったアサインの工夫はしてきました。またそのためにはメンター側の育成も必要で、僕自身がメンターのサポートを行う形で成長を支援するなどしていました。着実に成果を上げてくれたメンバーも多く、主力として活躍してもらっています。
課題としては、まだオンボーディングの形が確立してなく、成長曲線として個々人の資質やサポートコストに依存するなどがあるため、継続的に改善を試みています。

━━誰かが抜けて困るような状況を作らないことで、組織として強固なものにしていきたいと。

そうですね。ただ、属人性の排除だけにフォーカスしてしまうと、メンバーそれぞれがスキルを伸ばすことや技術的なチャレンジをしづらくなってしまう恐れもあって。業務が回るだけではなく、働いているメンバーが成長ややりがいを感じることも重要なので、なるべくチャンスを与えることやチャレンジを促すことは意識しています。そうしたことを通じて、モンスト以外でも活躍できるスキルを身に着けて欲しいと思っています。

取り組む上で気付けることも

━━マネジメントを行う上でぶつかった課題もあったのでしょうか?

マネージャーになりたての頃は、自分が直接業務を進める割合とマネジメント業務の割合が50:50でエンジニアリングマネージャーとして動けるのが自分の中で理想だと考えていました。しかしエンジニアリングマネージャーの役割は評価・育成、技術更新、組織課題の解消、実装品質の管理、…など責務が多いことが分かり、今は20:80くらいでマネジメントを重視しています。ただそれでも責務の多さからマネジメントの質が低くなり、中々組織課題に取り組めないなど、思考錯誤している状態です。現時点ではピープルマネジメント(メンバーの評価など)以外の部分は少しずつ権限を移譲することで、より個々のマネジメントが効果的に行える状態を目指しています。

━━そうした経験の中でも、特にマネージャーだったからこそ学べたこともありましたか?

大きな気づきの一つは、本当に色んな人がいるな、ということですね。特に、「成長したい」という目標がメンバーによって異なる意味を持つことがあり。エンジニアとしてのスキルを伸ばしたい人もいれば、プロジェクトを前に進める推進力を高めたいと感じている人もいます。そうしたニュアンスの違いは1on1でつぶさに聞いてメンバーそれぞれの希望や思いをしっかり把握していかないと、メンバーが働きやすい環境は作れないなとは思います。

あくまでもチームとして

━━マネジメントには多様なフレームワークもあると思いますが、何か採用されていたりしますか?

LayerXさんのエンジニアブロクで書かれている「チームのCapability」の考え方はとても参考にしてます。
https://tech.layerx.co.jp/entry/2023/07/19/202234

今まで漠然とエンジニアリングマネージャーは責務が多いなと感じていましたが、大きく4つにマネジメントに区分でき、それぞれのマネジメントが効いている状態を目指すことが責務であると。そして全てをマネージャーが行うのではなく、権限委譲できるのであればしていったほうがよりチームとして強い組織になれる、というのはそのとおりだと思いました。
もちろん簡単ではないですが、私のグループでは明示してないものの既にメンバーがそういう動き方をしていたのもあって、構造的には落とし込みやすかったです。なので少し前にも触れましたが、ピープルマネジメント以外は少しずつ権限を移譲しメンバーが意思決定できるようにすることを目指しています。また、メンバーの特性についても、身につけて欲しい能力や個々人の特性を表現する上で漠然と頭の中にあったものが簡潔に言語化されていて、課題の構造分解や目指す方向性を示しやすくなりました。
加えて、自分がサッカー好きだからというのもあるのですが、サッカーの戦術やポジションの役割など、一つひとつがマネジメントに通じるものがあるなと思い、置き換えて考えたりはしています(笑)。
FWは課題解決を図れる人、SBは周りを見つつタイミング見てFWと連携を取れる人、DFは保守的に実装の質を担保出来る人みたいな。そして時にはDFがFWになる流動性があっても良いわけです。オフザボールのように関係ないときにどう動けるかも重要ですよね。そしてマネージャーは監督に近いと思っていて、選手それぞれの個性や強みを理解して組んだ戦術を、メンバーが100%のクオリティで遂行することを実現することが最高のチームだなって考えています。

━━最後にあらためて、どのようなマネージャーを目指していきたいか教えてください。

メンバーの役割や能力、他のメンバーとのシナジーや動き方など、複合的な要素をしっかりと把握しながら、チーム全体で成果を上げられる。そんな組織を作れるようにはなりたいですね。

今回の学び

岡本のマネジメントには、こんなポイントがありました。

権限を移譲することでマネジメントを行いながらもメンバーが意思決定できるように
属人性を排除していくことで事業にとって最適なチームに

まずはマネジメントにかかるリソースを分担するため、なるべく権限を移譲しながらチームを作っていく。さらに、属人性を排除しながらチャレンジも行える環境を作ることで、所属するメンバーも成長でき、事業にも還元できる最適なチームが作れるのではないか、という仮説でマネジメントに取り組む岡本の実践が聞けました。
このシリーズでは、引き続き、MIXI GROUP内の“エンジニアのマネジメント”の実態やノウハウを紹介してまいります。

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