タッチ決済すらもエンタメに変える、次世代の決済システムとは? ~「XFLAG PARK 2019」で初導入するまでの軌跡~
2019年7月13日・14日の2日間にわたり開催された「XFLAG PARK 2019」―― 史上最大規模で開催されたこのイベントには、初導入となるイベント特化型「タッチ決済システム」が採用されました。
キャッシュレス化の市場ニーズが高まるなかで誕生したこのシステムは、なぜ生まれたのか―― 開発の経緯から今後の展望まで紹介していきます。
イベント特化型のタッチ決済サービスとは――
イベント特化型の「タッチ決済」とは、キャッシュレスで支払いが完了するタッチ型の決済サービスです。タッチで決済が完了することはもちろん、後払いサービスにも対応しています。この決済システムはただ単にシステムを利用し決済を完了するのではなく、ミクシィグループの企業理念である『ユーザーサプライズファースト』なエンタメ機能を加えたサービスになっています。
このタッチ決済システムは「GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)」と「GMOペイメントサービス(GMO-PS)」との協業により実現しました。タッチ決済はGMO-PGが提供するクレジットカード決済システムとGMO-PSが手掛ける代金の後払いシステムを採用。新たな市場のキャッシュレス化を推進するため、決済面でサポートしていただきました。(※詳細はニュースリリースをご参照ください)
このシステムを初導入したXFLAG PARK 2019では、「ORABAND(オラバンド)」と呼ばれるICチップが搭載された専用のリストバンドを配布しました。リストバンドの「ORABAND(オラバンド)」を専用端末にかざすだけで、決済が完了します。決済方法は、クレジットカードかコンビニでの後払いから選択可能なので、スマートな支払い体験を実現しました。また、タッチ決済時には、音や光の演出や飲食ブースでフレーバーがあたるルーレット機能などのエンタメ要素があるのも特徴です。
また、決済機能だけでなく、再入場や各エリアへの入場、そして「XFLAG STORE」事前予約商品の受け取りなど、様々な機能が搭載されての導入になりました。
▲「エンタメ決済」利用時のサンプル映像
それでは、タッチ決済の開発から導入までをリードしたLX開発室の田中 悠介にこのプロジェクトについて詳しく聞いていきましょう。
“決済を楽しんでもらう体験”を作りたかった――
――――タッチ決済システムが開発された経緯は?
「タッチ決済システム」を開発した経緯は、毎年XFLAG PARK の開催時に発生してしまう飲食と物販ブースの待機列を解消するのが目的でした。
私はミクシィグループの「ライブエクスペリエンス事業本部」に属する「LX開発室」に所属しています。部署は XFLAG PARKなどのイベントや「XFLAG STORE」などに関する事業を展開していて、LX開発室では主にシステムの開発を担っているんです。
そんなLX開発室で私が席をかまえるのは「イベントシステム開発グループ」で、オフラインイベントのシステム全般を担当しています。
例えば、イベントのチケット販売、ライブギフティング、事前予約した物販の受け取りなど、イベント内のサービスをシステム側から作っているんです。私はその領域のなかで、XFLAG PARK2019のシステム全体のマネジメントとタッチ決済を導入するためのディレクションの一部を担当しました。
目指したのは「快適性×エンタメ」
――――プロジェクトが始動した時どんな気持ちでしたか?
このタッチ決済がイベントで導入される話が出たときの素直な感情は『おもしろさ半分、怖さ半分』でした。
XFLAG PARKは、1日約2万人近くのゲストが来場するイベントなので、その規模で決済システムを導入するのは挑戦的な取り組みでしたね―― 開発メンバーも同じ気持ちで、不安はあったんですけど最終的には『やっちゃえー!』っと思い切ってプロジェクトをスタートさせました(笑)。
――――般的なキャッシュレス決済との違いは?
キャッシュレス決済のプラットフォームは、すでに様々な企業が取り組んでいて市場ニーズも高まっています。そのため、ただのキャッシュレスシステムを作るのではなくて“決済体験の向上”という部分に焦点をあてました。このシステムは、利用へ向けた動機付けや使った時の楽しさのインターフェイスに特化している点が、従来の決済システムとの大きな違いでしょう。
入場から決済まで一貫してできるシステムを目指した
――――システムの開発から導入まで大切にしたことは?
このシステムの開発で大切にしたのは「快適に使えるか」「使ってみて楽しいか」という点でした。システムの安定性・安全性はもちろん大切ですが、XFLAG PARKで導入するなら、入場から決済まで一貫して対応できるものにしたかったんです。お客さまが待機する時間をできる限り減らしたかったので、イベント当日はICチップを埋め込んだリストバンド(ORABAND)を配布しました。
――――決済以外にも様々な機能がありましたよね?
せっかくリストバンドを使用するなら、飲食や物販ブースだけでなくイベント中のすべてのシステムで利用できるようにしたかったんです。
その結果、リストバンドを専用端末にかざせば、商品の購入決済はもちろん、物販商品の受け渡しや入場、アトラクション受付時での使用ができるように設計しました。また、システムを使った後のリアクションやエンタメ性も重視したかったのでオラゴンの模様が光ったり、音がなったりするサプライズ感も大切にしましたね。
現場からプロジェクト全体のボトムアップができた
――――今回のプロジェクトで大変だったところは?
苦労したのは、快適さや使用時のエンタメ性を追及していくうちに、仕様が膨らんでいって様々な部署やエンジニアの方と連携してプロジェクトを進めたところです……
自分はディレクターなので、システムを利用したお客さまが満足するかどうかという視点に立ちながら、エンジニアの皆さんと連携する機会が多かったんです。東京はもちろん、福岡やアメリカのエンジニアさん 達とも連携していたので、すべてを完全にコントロールするのが難しかったですね。
――――プロジェクトを進めるうえで意識したことは?
コミュニケーションロスをできる限り無くすために、一人ひとりが発言しやすい空気感を作ることを心掛けました。例えば、東京はもちろん福岡チームと朝会を毎日開催したり、朝会の司会進行をルーレットやあみだクジで決めるなど場を和やかにして全員が発言しやすくなるようなチーム作りをしたりしましたね。
上下関係や職種を超えて、フラットに意見を言ってもらうことで、自分たちのようなマネージャーやディレクターが気がつかなかった改善点やアイディアをキャッチアップできたんです。
実際に手を動かしてくれているエンジニア陣だからこその意見や考えを伝えてくれて、プレイヤーからプロジェクト全体のボトムアップができた気がしています。プロジェクトメンバーの一人ひとりが同じ目標やシステムの完成に向けて実装しているのを肌で感じた瞬間でした。
お客さまの記憶に残る決済システムになった――
▲当日のタッチ決済導入の様子
――――イベント当日の印象は?
イベント当日は、プレッシャーがすごくて逆に冷静になりました(笑)。決済システムは、金額がズレたり決済中にフリーズしたりするとアウトなんですよ…… それに当日は端末も100台以上導入して、スタッフも100人以上動員したうえでオペレーションを伝える形で臨んだんですけど、どんなに準備しても不安がよぎりましたね(汗)。
でもやっぱりオペレーションのレクチャーはもちろん大切なんですけど、重要なのはシステムを使ってくれるかどうかです。
お客さまが使ってくれないとシステムを作っても意味がありません。そのために、タッチ決済の特典や利用方法を印刷したチラシの配布やパネルの掲示などの露出を増やして多くの方に知ってもらえるように取り組みました。
――――お客さまが実際に使っている時の感想は?
イベント当日のお客さまの反応は細かく見ることはできなかったんですけど、後日Twitterに『思ったより使いやすかった』『使ってみて楽しかった』という意見が投稿されていて、これまでの苦労が報われた気がしました。
お客さまにとってイベントのシステム自体は、記憶に残らない部分でもあるんです。ですが使用者の反応を見た時は『お客さまの記憶に残った !!』と手ごたえを感じた瞬間でした。それに現金とタッチ決済の利用回数を見ると、決済システムで支払いをしたお客様が多くて数字面での反応も良かったと思います。
――――リストバンドにこだわった理由は?
決済システムをリストバントにしたのは、快適さを重視したからです。QRコードを使用した決済システムは、携帯を出して、電源を入れて、アプリを起動した後に端末にかざして…… 決済を完結するまでに時間がかかってしまうんですよね。
1秒2秒の支払いスピードの違いが、待機列の発生になってお客さまの待機する時間が変わってきます。リストバンドにすれば携帯を出す必要もなく、タッチするだけで決済が済むのでスピーディーにお会計を完了できると思ったんです。
従来のイベントシステムの想像を超えていきたい――
――――これから挑戦してみたいことはありますか?
今回のプロジェクトを通して、次の挑戦につながるアイディアが生まれました。今回のタッチ決済システムは、社外のイベントにも活用できるのでコンサートやライブなどの音楽領域やスポーツの分野でも活用できるチャンスは多いと思います。
イベントのシステムは、来場するお客さまからするとまだまだ期待値が低いんですよね。今回のタッチ決済システムに限らず、お客さまの期待を超えた体験を提供していきたいです。
――――お客さまの期待を超えるためのアイディアは何かありますか?
「快適」と「エンタメ」を軸に色々な可能性を探っていきたいです。
“体験の入り口”はリストバンドに限らずセンサーや生体認証など選択肢は広がっていますし、”体験の出口”になる体験・経験の部分はただの演出で終わるだけではなくて、よりパーソナライズされた体験やイベントの世界感に合わせたそこだけの感動体験などを提供できるように、色々なものを掛け合わて期待を超えるアイデアを具現化していきたいです。これからもシステムという切り口から、多くの人に感動を届ける仕組みを提供し続けていきます。