アウトプットを継続するために工夫してる? ミクシィのデザイナーに聞いてみた。

アウトプットを継続するために工夫してる? ミクシィのデザイナーに聞いてみた。

ミクシィグループには『コミュニケーションの場』をデザインで創出し、ユーザーバリューを最大化することをミッションに掲げる“デザイン組織”があります。この部署には現在、150名を超えるデザイナー・クリエイターが在籍中。日々たくさんの成功と失敗が生まれているデザイン組織では、社内外に向けて主にnote「ミクシィデザインノート」やTwitter、Docbase(社内ドキュメントツール)を通じたナレッジシェアが活発に行なわれています。今回は、3人のデザイナーによる「アウトプット方法について」の座談会を開催!アウトプットを継続的にできるような工夫や意識のコツをヒアリングしました。

(写真 左/野添 ゆかり 中/日野 文恵  右/遠藤 茜)

 

アウトプットは自分のため?人のため?

────まず、みなさんがアウトプットを始めたきっかけについて教えてください。

野添 私の場合は、自分のできること・できないことを可視化するために始めました。ポートフォリオ的な使い方ですね。そもそもポートフォリオは、「このデザインを作りました」「こういう意図で作ってこんな結果がでました」ということを伝えるもの。ですが、もっと仕事の進め方とかデザインするまでの考え方、どういう知見を得たのかなど、ポートフォリオには載せられないものをまとめるために、私はnoteでの情報発信を始めました。

遠藤 そう思うようになったきっかけはあるの?

野添 一年目が終わった頃、事業部異動の話があり、そのとき「あなたは何ができるの?」という質問を受けて。そのときに何も返すことができず、自分は何もできないと思っていました。でも、一年間必死に働いてきたのは確かだし、何もないわけがない。瞬間的に答えるのが苦手だから、自分はどんなことを考えて、何ができるのかをちゃんとテキストで整理して蓄積していこうと思い立ったんです。

遠藤 なるほどね。

野添 他にも、オープンな場所で発信すれば、社内外問わず共有できるので楽ですし、誰かの役に立てればさらに嬉しいな、という気持ちもありました。

日野 私も野添さんと似ていて、自分の考えを言葉に落とし込んで理解するためにTwitterやnoteを始めました。せっかく本を読んでインプットしたことも、自分の言葉としてアウトプットする場がないと、知識を吸収できないと気づいたから。あとは、自分のイラストを載せて、ファンやフォロワーを増やしたいという野望もあった(笑)。世の中にはたくさんのデザイナーがいますが、その中で自分の存在に気付いてもらうためには、外に発信していくしかないと思ったので、私は自然な流れでスタートしました。

遠藤 私の場合、始めの頃は自分のためよりサービスのため、という思いが強かったかもしれません。noteで当時携わっていた新規サービスの紹介記事を書いたら、それを経由して「noteを見てサービスに来ました」という人が何人もいて。自分がデザイナーとして外に発信することでサービスの認知度が上がるといいなという思いで投稿してました。その後は徐々に私も野添さんのようにポートフォリオ的な使い方になってきました。新規事業のサービスを担当していた当時、チームビルディングや企画など“目に見えるアウトプットとして表に出てこないスキル”も少なくないのではと思い、言語化して残そうと。

野添 お二人はアウトプットの題材って、どうやって見つけていますか?

日野 私はあまり意識して題材を集めてないかも。人と話しているときや他の人の記事を読んで思いついたことを書いていますね。

野添 私も思いついたときに、タイトルと簡単な下書きだけメモして保存しておいて、気が向いたときにまとめています。

遠藤 私も同じです。意識的に収集はしていなくて、気づいたときにメモ帳に書くくらい。うちの部署は「積極的に情報発信しよう」というミッションを掲げているので、最近だとメンバー同士で「その話もっと知りたいから記事書いてよ!」とか「今回の案件、他の部署でも参考になるかも。noteやDocbaseにまとめてみたら?」と言われることも多いですね。自分では大したことないと思っていることでも、他の人から要望されると、「そういうのが知りたいんだ!」と新しい気付きにもつながっています。

────みなさんはいわゆる“バズる”記事を狙っていますか?

日野 私は考えますね。ロゴの作り方とかコンセプトの決め方、ブランディング戦略など、もうすでに色々な人が記事にしている内容は求められていないんだろうな、と。自分が書く必要はないものは書かないです。誰もやっていないことを始めようと思って、マンガの記事を書くようになりました。でも私が普段から本当に何気なくやっている「言語化の練習をしよう」という記事をTwitterで発信したときは予想外の大きな反響があって、こういう記事が需要あるんだ!と新しい発見がありましたね。

野添 ネット上で見かけない内容には、ニーズが集まりやすいですよね。日野さんの言語化の練習とか、当時は具体的にまとめている記事がなかったので、みんなが知りたかった情報なんだと思います。私はポートフォリオとしてのアウトプットが目的なので、需要がなくても、誰かと今後仕事をするときのためにと思って記事を書いているかもしれません。そこにバズりは求めていないですね。

遠藤 私もそうですね。前に一度、私の記事を見た人が「ぜひ会いたい」と言ってくれて、実際に会ったことがあったのですが、別にその記事ってバズったわけでもなかったんですよね。結局、記事を見て「なるほど」と思ってくれる人に届いているから、反響は気になるけれど、いいね数が多い・少ないってあまり気にしなくてもいいかなと思っています。

 

気になるのは、“いいね数”より“誰”に届いているか

────みなさんは記事を書くときに、どんなことを心掛けていますか?

遠藤 どんな記事も意識しているのは、“誰に届ける記事か”ということです。記事を読んだ人が、「思っていた内容と全然違う!」となるのが嫌なので、最近は記事の最初に「こういう人向けの内容です」とか「こういう人に役立ててばいいなと思っています」という一文を入れるようにしています。記事の最後に、「こういう風に役立ててほしいです」という文章を入れることも。

日野 私も同じです。誰に向けた内容なのかすぐ分かりますもんね。

野添 その一文があるおかげで、記事を書いている自分も「誰向けに書いてるんだっけ?」と道に迷わなくて済みますよね。自分にも読み手にもいいかなと思っています。

日野 確かにブレずに軸が通る感じだよね。支離滅裂にならないというか。

遠藤 それはあるかも。あと書き方としては、私はまず紙に全部構成を書き出してます。

日野・野添 へぇ~!!

遠藤 タイトル、見出し、記事の内容や方向性、結末を全部紙に書いちゃう。スタートからゴールまで、こういうストーリーで書こうと決めてから必ずタイピングするようにしていて。つらつらと文章を書くと長くなるし、最終的に何を言ってるか分からなくなるので、しっかりゴールを見据えて書くようにしています。日野さんの場合はどう?

日野 私の場合は、あまり真面目すぎないようにしています。絵文字も使うし、ビックリマークも使う。あえて話し言葉に近い感じで書くように意識しています。どうしてもカタイ文章だと、記事制作のやる気がでないし(苦笑)、私自身カタイ文章はパーッと流し読みしてしまうところがあるので。一方、話し言葉で、面白いネタを入れつつ書いてある記事って、つい一言一言全部読んでしまうんですよね。自分の記事もじっくり読んでもらいたいですし、読みやすいと思ってもらいたいので、そういう書き方を意識してます。

 

続けるコツは、自分に合ったツールと方法を探ること

────なるほど…。みなさんのアウトプットのモチベーションはどこから来るんですか?

日野 最近はnoteの投稿が減っているんですが…(笑)。私は趣味のイラストをTwitterに投稿したりしているのですが、ファンを増やしていきたいという目標があるので、それが投稿し続けるモチベーションになっているかもしれません。あと個人的に、自分がやりたいこと、やるべきことを付箋に書いて可視化しているので、「やらなきゃ!」という気持ちにはなりますね。完了したタスクが付箋という形で溜まってくると達成感があるので、見える化というのは大事だなと思います。

野添 それはいいですね。私のモチベーションは何だろう。そもそもアウトプットを絶対やり続けないといけないぞ、という気持ちはなくて。それこそ、私の目的はポートフォリオなので、今の自分に必要だったらやるし、必要でなければやらないんですよね。

日野 うんうん。

野添 モチベーションの保ち方はしいて言うなら、記事をアップしやすくしておく、ということでしょうか。一回ポストするボリュームが大きいと疲れるので、日々、業務の知見を何かしらまとめておいて、アップするときに少し調整して記事を出すようにしています。イチから書き出すのは結構辛いので…。そして、一番書きたい記事から書いていますね。できるだけアウトプットしやすい状態のものから始めれば、そんなに難しくないぞ、みたいな気持ちにはなるかなと。

日野 確かに。

野添 大人なので、やりたいことからやっちゃうのでいいかなと思っています(笑)。

日野 それで永遠に後回しにされているのもあるんですけどね(笑)。

一同 笑。

野添 遠藤さんはどうですか?

遠藤 私のモチベーションは、社内外のつながりが広がるということかも。例えば、初めて会う人に「記事見ました」と言ってもらえることもあって、お互い知らない人同士なのに記事を通じて一回接点が持てているのが、単純に自分は嬉しいなと。社内外問わず、会う前に自分を知ってもらえることは、今、担当してる組織支援や新卒採用などの業務では強みになると感じています。そういうモチベーションで続けられている感じはしますね。

日野 私もTwitterのDMに仕事の依頼が来るようになったり、学生さんからの連絡が増えるようになりました。特に学生さんからは、「自分のポートフォリオを見てほしい」というお願いが数件。でも正直、難しかったですね…。私はデザイナー5年目ですが、今まで直属の後輩がいなかったので、直接本人にレビューするとか、こうしたほうがいいよとアドバイスしたことがなかったので、自分はこういう経験が圧倒的に足りないと気づかされて。「もっとレイアウトを良くすることができそうだけど、どう説明したらいいか分からない」となってしまったんです。Twitterで言語化の練習はしているけど、レビューをするという言語化の練習はしてなかった。情報発信をしたことで、自分に足りない部分を気づかされたといういい経験にもなりました。

野添 そういうこともあるんですね。

遠藤 あとは、自分に合ったツールを見つけて、自分のできるペースで続けることが大事かなと思っています。私はこまめな発信が求められるTwitterは苦手です。noteやDocbaseのほうが好きですね。

野添 確かに。最近ではラジオも増えてきていますよね。デザイナーさん同士が、あるテーマについて話した内容を公開したりとか。

遠藤 こういう発信は社外向けのような気がしますが、実際は社内に対する影響のほうが大きいんじゃないかなと最近は感じています。相手のスキルや考え方が分かると単純に仕事がしやすくなるし、今度あの人に仕事頼もう、ということにつながることもあるかなと。私自身、アウトプットを社内の人の信頼を得るためのツールしても活用してたりします。情報発信をするとまず身近な効果が得られると思うので、そういうのをモチベーションにしてもらえるのもいいかなと思います。

────ありがとうございます。最後に個人的にで良いので、みなさんが思う思い入れがある記事とイマイチだった記事を教えてください。

日野 私の場合は、「デザイナーに必要な言語化をTwitterで練習してみてわかったこと」ですね。

自分で考えて実践してやったことを書いた記事です。イマイチな記事は記憶から消しているので、覚えていないかも…(笑)。

一同 笑。

野添 個人的には、キノシタさんの「【レポ漫画】AdobeMAXjapan行ってきました…! 」です。

好きな理由は、ノンストレスでさらさらと読めて、イベントのことをもっと知りたいと思えるから。イベントのレポート記事って、読むのがしんどいものなんですよね。だけどキノシタさんの記事は、絵柄も好きだし、マンガの登場人物の表情や言葉遣いから、イベントの内容だけでなく、書き手の人となりも伝わってくる。イベントの記事を読んでいただけなのに、書き手の人に対しても魅力を感じるのがとてもいいなと思います

遠藤・日野 うんうん。

野添 以前私が書いた「自分が欲しいと思うサービスは、ビジネスとして成り立つのか?」という記事はあまりよくなかったかな。。

なぜなら、タイトルと内容が合致していないから。このタイトルを見たときに読み手は、「結局成り立つのか成り立たないのか」「成り立たせるためにどうすればいいのか」を期待して読むと思うのですが、実際は何の答えもないポエム日記なんですよね。無駄にエモいタイトルなせいでまあまあPV数が多いのですが、それに対して一切レスポンスが無いので、期待を裏切る記事にしてしまったなと反省しています

日野 なるほどね。

遠藤 私の思い入れがある記事は、「CHAROPをクローズしました -リリースしてわかった3つの誤算-」です。

これは自分が立ち上げから関わったSNSアプリ「CHAROP」のサービスクローズに関する振り返り記事で、デザイナー視点で振り返るというのは新鮮かなと思って書きました。ナレッジシェアは進んでいますが、サービスの成功・失敗の理由まで触れることは少ないので、意味のあることではないかなと思っています。もう一つ、反応が良かった記事は、「アプリデザイナーのキャリアを考えてみた」。

アプリデザイナーのキャリアとして、マネージャー路線、UXデザイナー路線など、4つくらいバリエーションを書いた記事なんですよね。「自分はこのタイプかも」とシェアする人や、「自分の希望はこの中にないな、じゃあどんなタイプなんだろう」ということをシェアする人もいた。キャリア診断ではないですけど、シェアしやすい内容だったのかもしれません。

野添 確かに。興味を持ちやすいですよね。

遠藤 逆にイマイチだったかなと思う記事は、イベントレポート記事かな…。

イベントレポート記事って、noteのような自分のスペースで発信する場合、「こういうイベントに行きました」という内容だけではちょっと違うんじゃないかって個人的には思うんですよね。

日野 そうですよね。イベントレポートを書くときは、自分の感想を入れるようにしています。結構、それが大変なんですけどね(笑)。

遠藤 そうそう。自分のスペースといえど、イベント内容だけだと意味がないんですよね。でもそこに自分の意見を載せれば、自分の空間で伝える意味が出てくる。でも日野さんと同じく、私もその作業が徐々に負担に感じるようになりました。
で、改めて考えると、レポート記事ってチームメンバーや社内の人に、「この前のイベント面白かったです。こんな内容だったんですけど」って紹介するのに使うことが多いなって気づいて。なので最近はnoteではなく、Docbaseで社内向けに共有するようになりました。Docbaseだとそこまで気合い入れた文章じゃなくてもいいかなと楽に書けるので。

野添 やっぱりどんな内容をどこに上げるかというのは大事ですよね。共有したい内容が社外なのか社内なのかも判断して、SNSやツールを使い分けて情報発信していくという気づきに繋がったのも良かったと思います。

みてね事業部 デザイナー 野添 ゆかり
大学卒業後、2017年UI / UXデザイナーとして、ミクシィに新卒入社。マッチングサービスのデザイン業務に従事。2018年にみてね事業部に異動し、「家族アルバム みてね」のデザイン全般を担当。
Vantageスタジオ新規事業開発室 日野 文恵
2016年に武蔵野美術大学を卒業後、新卒で株式会社ミクシィにデザイナーとして入社。社内グループ会社のサービスデザインを複数担当し、2018年5月よりVantageスタジオ新規事業開発室に所属。現在、新規サービス「mocri」のUI/UXなどを担当。
デザイン本部 デザイン戦略室 遠藤 茜
公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科を卒業後、2013年ミクシィに新卒入社。デザイナーとしてアプリのUIデザインを中心に活躍。新規事業立ち上げも経験し、現在はデザイン戦略室に在籍、キャリア支援・広報活動を担当。
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