デザイナーやディレクターをはじめ、ミクシィには様々なクリエイターが所属しています。「リーダーシップ論」は、活躍するマネージャー/リーダーに仕事へのこだわりを聞くシリーズ。今回は、自身も映像エディターやディレクターとして活躍しながら、コンテンツデザイングループのマネージャーを務める越智に話を聞きました。
映画への道を諦め、辿り着いたジェネラリストへの道
──早速ですが、越智さんがミクシィに入社した経緯を聞かせてください。
映像を作る側になりたいと思ったきっかけは、大好きなハリウッド映画でした。でも、ハリウッド映画の合成技術に使われるソフトや機材を導入しているのは、僕が学生だった当時は知っている限りCM制作会社ぐらい。今でこそ価格は下がりましたが、当時は編集機材だけで数千万円もかかるものもありました。それらを使いこなせるようになって、将来はハリウッド映画制作に携わりたい! と、新卒ではCMを制作するポストプロダクションに映像編集アシスタントとして入社しました。
──そんなに高価だったんですか!ハリウッド映画の制作に携わるのは、狭き門ではありますよね。
そうですね。そこで働いているうちに、映像編集の才能を持ったすごい人たちと出会って、「自分は夢を舐めていたな」と痛感しました…。ある売れっ子のエディターは、普通はCGソフトで作る雷の稲妻を、ペンで書いて合成して作って見せてきたんですよ。世の中にはちょっと次元が違う人がやっぱりいるんだなと思い知った瞬間でした。「もしかしてプロフェッショナルではなく、ジェネラリストを目指すのが良いのではないか」と思い始めていたタイミングで、ミクシィで働いていた先輩に声をかけてもらい転職することに。今年で入社5年目になり、僕のキャリアの中で、ミクシィが一番長く在籍している企業です。
──ミクシィに入社されてからは、どのような業務を担当されていましたか。
当時のミクシィは、『モンスターストライク(以下モンスト)』の公式YouTubeチャンネルの活用を強化していこうと、映像の編集技術や知識を持っている人を募集していて、僕はモンストの動画制作部隊に配属されました。YouTubeチャンネルは現在100万人以上のフォロワーがいますが、僕が入社したときは立ち上げたばかりでフォロワーも6万人ほど。業務は、動画コンテンツの企画、撮影、編集までを行い、慣れてくると、生放送も担当することになりました。
──やはり、一般的な動画と生配信は求められる技術が違うのでしょうか。
YouTubeにアップする動画を単純に作成するのと生放送は技術的に大きく違いますね。生配信においては、画面の切り替えなどスイッチングを間違えると、放送事故になってしまうこともあります。
──なるほど。じゃあ映像のスキルをより深めようとしていたんですか?
いえ、映像を作るだけなら制作会社にいた方が、より経験が積めてプロフェッショナルを目指しやすいですが、事業会社にいるからには自分の知識や技術を色々な方向に広げていくべきだと思っています。…と、そんな話を色々なところでしていたところ、2020年1月に組織の改変があり、僕は制作室に移動し、急遽映像制作のグループのマネージャーを務めることになりました。
チーム作りは良いクリエイティブを生み出すのに繋がる
──マネージャーになってからはどのような業務を担当されていますか。
他部署との調整や働く環境の整備、メンバーへの仕事のアサインなどを行なっています。メンバーには、やはり幅広いジャンルの映像に触れて経験を積んで欲しいので、その人の成長を考えながら、レベルが高い仕事も愛を持って振っています。状況によっては、僕もディレクターやエディターとして仕事をすることもありますね。
──グループには、どのような役職の方が在籍していらっしゃるのでしょうか。
ディレクターとエディター、グラフィックデザイナー、CGクリエイターが僕を含めて20名在籍しています。デザイナーチームとCGクリエイターチームは今年7月からグループに加わり、「上流から企画に携わりたい」という高い成長意識を持っているメンバーが入ってきました。グループには、企画やイベント関係など色々なところから仕事が来るので、上流から携われる機会もありますし、グループの目標にも「事業部に提案すること」を入れているので、やりたい仕事を叶えられるのではないかと思ったんです。
──成長はできそうと思う反面、提案し続けるのは大変だと思います。そのモチベーションはどこにあったのでしょうか。
提案というのは、もちろん新規で何かを発案する場合もありますが、それだけでなく、タスクが来たときに「こういう風にするのはどうですか」と自分の考えを足して返すパターンもあります。正直なところ、今は案件が多すぎて提案はあまりできていませんが、「提案はしていくべきだね」という認識はみんな持ってくれている状況です。自分で企画したものを制作して、事業に貢献できたと言えるようになれば嬉しいじゃないですか。
──グループのメンバーにしっかりと向き合う様子が伝わってきます。これまで越智さんは、マネジメントの経験はありましたか。
全然ですよ。前職では制作メンバーの一人という感じでしたし、マネジメントは今回が本当に初めてです。
──初めてマネージャーになってみて、難しいと感じていることはありますか。
メンバーに恵まれているから特にないんですが、強いて言えば、予算の管理くらいでしょうか(笑)。メンバーからは「ほかの人を見ているとマネージャーは大変そうに見えるのに、越智さんは大変じゃなさそう」と言われたこともあるくらいです。でも、現場を離れちゃうのには寂しさもあって、僕が担当していない案件のミーティングにも「入れてくれ」と頼んで参加するときもあります(笑)。やっぱり現場には現場の楽しさがありますよね。でもぶっちゃけ、番組をつくりあげる能力は、現場のディレクター陣の方が高いと思っているので、ミーティングに入ると「邪魔になってないかな?」と思う時とかもあります(笑)。
──越智さんは、自身がどのようなタイプのマネージャーだと思いますか。
マネジメントには色々なやり方があって、全て指示を出すタイプもいれば、メンバーを信じてお任せして、働く環境の整備に徹するタイプもいます。僕は、ある程度現場はメンバーに任せつつ、自分もサポートできるところは入ったり、出来ることを探したりしながら、現場とマネジメントを行き来するようなやり方ですかね。もともと人を巻き込むのが好きだったので、自然とこのやり方に行き着いたというか。巻き込まれて迷惑に感じる人がいたらごめんなさい(笑)。
──もしもメンバーの中に、指示が欲しいタイプの人がいた場合はどうされますか。
キャリアや成長の話をしたうえで、本当に指示を待つようなやり方で良いのか話してみるのではないかと思います。ただ指示に従うだけの仕事なら面白くないと思うし、なかなか続かないと思うんですよね。理想的なのは、外に出てもやっていけるスキルは持ち合わせながら、会社を辞めるのはもったいないと思ってもらえる環境にしていけたら最高ですよね! それに、みんながやりたいことができて、働きやすい環境を僕が整えられれば、自然と良いクリエイティブは生まれてくると思っています。
──マネージャーとしての業務の中で、やりがいを感じるのはどのようなときですか。
デカイ案件にみんなで一緒に取り組めたときや、メンバーから「この案件すごく楽しかった」といった声を聞けたときですね。もしも、メンバー内で問題が起きまくっていたら、マネジメントを楽しいとは思えなかったかもしれません。僕にとっては一緒に働きたいと思える人がいるかどうかは重要なポイント。ミクシィには、部下やほかの事業部も含めて「この人と一緒に面白いことをやりたい!」と思える人がいるから続けられているのだと思います。
──越智さんの話を聞いていると、メンバーとの関係性の良さが伝わってきます。コミュニケーションを取るうえで、何か大切にしていることはありますか。
なるべく直接会話するよう心掛けています。リモートワークになってからは減ってしまいましたが、チャットでは伝わりづらいこともあるので。メンバーには「何かあったら直接声をかけてね」と伝えてありますし、自分からも話しかけるようにしています。以前、全社で席替えをしたときは、ほかのフロアも含めてオフィスを一周して、誰がどこに座っているのか確認しに行きました(笑)。僕はもともと「コミュニケーションの化け物」と呼ばれたことがあるくらいのおしゃべり好き。街中の知らない人とも普通に話せてしまうほどです。人と話すことが好きな時点で、僕はマネージャーという仕事は向いているのだと思います。
──マネージャーとしてどのようなグループを目指していきたいとか、参考やロールモデルにしている組織などは、何かありますか。
理想は、あるSFアニメに登場する機動隊なんです。メンバー全員が自身の判断で行動しながらも、互いの情報は共有し、同じ目標に向かって突き進んでいけるチーム、あれはまさに理想です。現実の業務で考えると、お互いのスキルセットや特性をよく理解しておかないと難しいですが、グループのメンバーならできるんじゃないかと思っています。
──メンバーのことを本当に信頼しているのですね。
もちろん信頼はしていますが、親心のような気持ちもあるのかもしれません。みんなが本当に大好きなので、将来どこかで食いぱっぐれたり、露頭に迷ったりしないようにしてあげたいなと思ってます。極論を言うと、制作室は会社の中になくてもいい組織だと思われかねません。クリエイティブが必要な際は外注することもできますし、その方がよりクオリティが高いものができる場合もある。だからこそ、自ら仕事を生み出せるようになって欲しいんですよね。
でも、インハウスのクリエイティブチームにも強みがあって、それは繰り返しになりますが、事業部に寄り添えることです。事業部がやりたいことを実現できるように、自分たちの意見を伝えてクリエイティブで促していく、それほど上流から関われるようになるのがベストかなと思います。
──今後挑戦してみたいことを聞かせてください。
もともと映像が好きなので、映像から離れることは想像できません。今後も何かしら映像に携わる仕事を続けたいと思っています。そのうえで、新しく勉強してみたいと思っているのはプロモーションやマーケティングです。これは個人的な夢物語レベルの話ですが、それらの知見を身につけて、最終的にはグループが“インハウス代理店”のようになれれば面白くなるんじゃないかと思っています。例えば、プロダクトが生まれるときや、グループ会社が立ち上がるときは、制作やマーケティングのリソースは足りないじゃないですか。そこまで補えるほど、頼りがいのある部署になること。あくまでも、僕の個人的な夢ではありますが(笑)。あのグループにお願いすればなんとかなると頼ってもらえたら嬉しいですし、それくらいグループを会社に寄与できる存在にしていきたいですね!