9月の中旬、『モンスターストライク(以下モンスト)』事業本部の組織開発・採用を統括する水本が、「HERP」と「Panalyt」が共同で主催するイベントに登壇しました。当日は「ミクシィの再成長を陰で支えるHRBPが語る!採用デジタル化の戦略」と題して、“HRBP(*)”の立場から、事業部の採用戦略について発表。当記事では、発表されたスライドを交えながら、登壇の模様をお伝えします。
*HRBP Human Resouce Business Partner の略。主に戦略人事と呼ばれ、経営や事業などの成長を人事面からサポートする役割を担う
登壇の様子
早速、当日の講演の様子をスライドとともにご紹介していきます。今回はオンラインでの開催。HERP社からは冨田 真吾氏、Panalyt社からはトラン・チー氏が参加し、会を進めました。
まずは自己紹介から。
入社後、約10年間、人事部門にて、採用、制度設計、労務管理、社内活性など幅広い業務に携わり、その後、新規事業の立ち上げに携わっていた、と発言。現在のHRBPになるまでの経緯を簡単に紹介しました。
▲HRBPとしての務めは経営陣から事業責任者に出された宿題である「モンストのリバイブ」を組織の側面からサポートすること。これまでの組織運営のやり方から大きな変化が求められた
続いて、ミクシィ社がどのような企業であるかを簡単に振り返ります。
「プロダクトオリエンテッドな会社は、プロダクトが大体3年を迎えた頃に組織の問題に直面することになる」と経験を話し、組織を盤石なものにしていく重要性を語りました。
機能ごとに組織が分けられた事業部の状況を把握するために、まず取り組んだのは組織サーベイの結果を見たうえで、部室長・マネージャーに現場の温度感をヒアリングをすること。その結果わかったのは…
そこからまず見えてきたのは事業部メンバーの“モンスト愛がすごい”こと。モンストをやり込むことで、まずは同じ視座に立とうとしたと語ります。
組織の縦と横のコンフリクトを洗い出し、優先順位をつけることで状況を整理。次に、人事面での問題を洗い出すアクションを起こします。
見えてきた人事的な課題としてまず明確だったのが採用に関してです、「採用の裾野が広がりすぎ、必要な人員を確保できていなかったこと」「さらにその進捗状況が明確に共有されていなかったこと」この2点を課題に設定し、HRBPに採用の機能を追加し小回りの効く採用チームを作りました。次に組織同士の横のコンフリクトに取り組みます。コンフリクトの原因としてマネジメント不全を仮説とし、実態をサーベイを活用して検証していきました。
「定性と定量を行き来しながら、問題をなるべく立体視することを徹底的にやっていった」と、サーベイやそのデータを用いて下図のようなグラフに落とし込むことに。
サーベイでアンケートをする時に気をつけたことは「部長陣・マネージャーには回答内容が見えないようにしたこと」。つまり、HRBPである水本が現場の本当の状況を把握していけるよう進めたとのこと。
それぞれの取り組みの結果、以前よりも現場と一体になった採用が出来るようになり、今は部門の立て直しの真っ最中と紹介しました。
上記のような動きのほかにも、水本がHRBPとして取り組んだことについて紹介。
続いて、人事本部と事業部付け人事の棲み分けを図で解説しました。
棲み分けについては、「人事本部の動きを把握しながら、より事業に対してクリティカルな施策を行ったり、先進的な施策を率先して行うことで、人事本部へもナレッジを共有して協働して進んでこうとしている」と説明。
最後にまとめとして、HRBPとして大事にしていることについて解説。
「クイックな意思決定に繋げるため、実際に起きている事実を両方の視点から見て判断していく、判断してもらいやすい状況を作る」と話しました。また、HRとして「現場がどのようなところで苦しいか、なにで頭を悩ませているかをきっちり想像しながら、不満を聞いたらなるべく解決していけるよう、HRBPとしてもっと邁進していきたい」と話し、水本からの発表は終了。
続いて、配信時に寄せられた質問をピックアップして水本本人が応えるコーナーに。寄せられた質問に対して、水本は以下のように回答しました。
Q.この1年の中で、長年の人事制度設計・労務管理の経験が活かされた場面はありますか?
水本 制度設計の経験があったので、評価制度の解釈ひとつとっても、その判断が人事制度のコンセプトに合うのかを理解したうえで運用のサポートをすることができます。労務管理についても、ある程度のものは一次受けをすることが可能なので、状況と論点を整理した後に労務と連携できるので問題が大きくなる前にスピード感を持って対処することができています。
Q.人員の新陳代謝はどのように行われたのでしょうか?
水本 まずは新陳代謝を行わなければいけない理由を明確にします。その上で、現場と労務間で状況の共有をし適切なコミュニケーション方法を選択していきます。基本的には「注意」と「評価」のフィードバックを明快に示すことからです。。フィードバックが課題に対してクリアなものになっているか?本人が課題を正確に認識し理解することができるかに重点を置きながら寧にコミュニケーションをとって自身にとって良い選択をしてもらえるようにすり合わせていきました。
Q.サーベイのアラートに対する対応は具体的にどのようなかたちで行われたのでしょうか?
水本 基本的には、本人へのヒアリングがメインとしています。問題が本人によるものの場合もあれば、組織によるものの場合もあるので、直接的な対話の中で何が問題となっているのかを丁寧に確認していきました。
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その後、Panalytのトラン・チー氏による「採用の重要指標と運用方法」についての紹介が行われました。
最後に、今回のイベントに登壇している3名によるセッションへ。それぞれが発表した内容をもとに、議論が繰り広げられました。
『HRBPの役割と、その理想形』というテーマに対して、「HRという基本的な機能や知識は共通していて、HRBPのポイントは、もちろんBPにあります。ビジネスパートナーとして、事業責任者がなるべく戦略に対して意思決定できるような環境をつくることがミッションだと思っています。」と解説。
『新しい施策やツールに伴う社内の軋轢を最低限にする方法』というテーマについては、「導入のスタートを最小限の規模にする。小さく実験してみて、うまくいけば波及していくことが大事」と紹介。
これに対してPanalytのトラン氏は「どの組織に対しても、スモールスタート、クイックインは大事だと思います。大上段にある問題を解決するための動きだと時間がかかってしまうので、まずは最小限のところから順々につぶしていくことが大事ですよね」と重ねました。
パネルディスカッションの最後となる設問はこちら。
「HRBPになってからは、たぶん、大きな失敗はないと思ってるので、幸いもう一度やり直したいことは今のところはないかなと思いますね。…あくまでも私からして、なのでもしかすると傍からみれば失敗していることもあるのかもしれないですけど(笑)」と締めくくりました。
最後に
今回は、昨今注目を集める“HRBP”という役割を説明しながら、水本の行ってきた施策や取り組みを紹介させていただきました。水本は「事業部のビジネスパートナーとして事業部内の人事的な課題を明確にあぶり出し、そこへアプローチすることで回帰的に事業に貢献する。そのためには現場の声を聞き漏らさないこと、聞こえてきた声に対しては解決してあげられるような動きをすることが大事。また、HRBPとしてクイックに施策を進めていくべく、コンセンサスを得るための定量・定性の両面からのリサーチもとても重要ですね」と繰り返し語っています。今回の発表をHRBPの一例として参考にしていただけると幸いです。