事業領域が広いからこそ積める経験がある。常に刺激を受けられるミクシィの法務部とは?

事業領域が広いからこそ積める経験がある。常に刺激を受けられるミクシィの法務部とは?

今回は、法務部 契約グループが手掛ける業務とミッションに迫るべく、法務部の部長である渡辺にインタビューを行ないました。これまで2~3年のスパンで転職をしてきたという渡辺。8年間も働き続けられている理由は、ミクシィでしか味わえない仕事の面白さがあるからだとか。このインタビューでは、ミクシィの法務として働くやりがいを中心に詳しく話を伺いました。

コンプライアンス本部 法務部 部長 渡辺 和宏
2013年5月株式会社ミクシィに入社。2021年5月法務部 部長に就任。ミクシィグループにおける契約業務、サービスの法的支援、取締役会・株主総会運営、グループ会社管理、コンプライアンス業務、M&A、PMIなどに従事。

 

法的な支援によって事業の優位性を高める


━━まずはコンプライアンス本部の組織構成と、各グループの業務内容について教えてください。

コンプライアンス本部は、法務部と知財室という2部門で構成されています。法務部は、契約グループとコンプライアンスグループ、渉外グループという3つのグループに分かれており、契約グループはその名の通り、主に契約に関する業務を担当しています。
他にも、子会社の株主総会や取締役会のチェック、登記、M&Aの支援、資金決済法関連の対応なども仕事の一つ。コンプライアンスグループでは、景品表示法や特定商品取引法などの法令審査や調整、法令の相談対応、全社的なコンプライアンス体制の構築・整備、BtoCサービスの利用規約作成、内部統制関連業務、BCP体制の構築などを実施しています。
また、ミクシィは新規事業も多いので、それに対するスキームの検討や、法的な適合性のチェックも手掛けています。渉外グループは、公官庁や業界団体、他社との調整などを担当している部署です。

━━なるほど。法務部ではどのようなミッションを掲げているのでしょうか。

「法的な支援によって事業の優位性を高める」ということをミッションに掲げています。ミクシィは事業スピードが早いため、そのスピードを落とさず進めていくためには、いかに法的に問題のない状態を作り出すかが重要です。

━━法務業務においてもスピードが欠かせないんですね。

はい。法務においてスピードを上げるというのは簡単なことではなくて、結局リソースの空きがなければスピードは上がりません。スピードを上げるためには定常業務やルーチンワークを効率化していくことが重要だと考えているので、そこに対する施策に力を入れています。

━━具体的にはどういったことに力を入れていますか?

例えば、登記は似たような申請でも微妙に提出書類などが異なります。毎回調べていると時間がかかってしまうので、ある程度マニュアル化して取りまとめをすることで、スピーディーに進められるようになりました。また、今まで契約書の管理はExcelで行なってきたのですが、現在はリーガルテックを導入し効率化を図っています。結局Excelで管理していると、一覧表を見た上で対象のファイルを見に行くという手間が掛かっていましたが、クラウドサービスを使うことで一元管理できるようになりました。リーガルテックのツールは業務効率を上げるだけではなく、法律に関する最新情報のキャッチアップにも役立ちますし、サブスクリプションの法律書サービスで法令チェックをすることもできるんです。

━━なるほど。便利なサービスがあるんですね。

作成しなければいけない契約書の数は膨大にあるので、リソースを確保した上で、いかに短納期でクオリティを落とさず契約書を作成していくかが問われます。そこで空いたリソースは、パワーのかかるM&A案件などにしっかり注力できるようにしています。

━━M&Aはやはり他の業務より大変なのでしょうか?

M&Aは契約書自体がすごく複雑な内容であるにも関わらず、期日が決まっているため、普段の契約よりも短期間でのやり取りも想定されます。契約書を提出した翌日に先方から返信が返ってきて、その翌日には返さないといけない、というスピード感です。またリスクの観点から弁護士の確認も入るので、工程自体も普段の契約よりも多くなります。期日通りに間に合わせるために、リソースの確保は欠かせません。

━━M&A関連の契約はスピード感も求められる上に、工程も増える大変な業務なんですね。

さらにM&Aは会社として投資する金額が大きいもの。案件によっては数十億以上の規模になるものもあります。こうした時、契約上ではリスクヘッジをする必要があるので、M&Aを行なう際は法務DDという業務が発生します。

━━法務DDとは?

法務デューデリジェンス、つまり法務調査のことです。買収する企業に対して法的な問題がないかどうかを弁護士に確認してもらい、もし問題がある場合はその内容を実務的にどう対処するか、PMIの過程で何を直さないといけないかを洗い出していきます。契約グループでは日々の契約周りの業務もM&A業務においても、失敗が許されない中で、緊張感を持って仕事を進めています。

━━ミスをしたら大問題につながってしまいますよね。

はい。そのためミスを生まない体制を整えています。スピードが求められるとはいえ、クオリティを下げるつもりは一切ありません。時間がなくても必ずダブルチェックを行ない、クオリティを担保しています。

━━ミスしないことが当たり前という業務の中で、法務部の評価基準というのはどういったところにあるんでしょうか。

定常業務である契約書作成やサービスの規約作成は、問題なく処理することが最低限求められるので、その点において評価はなかなか付けづらいところがあります。そこに対して付加価値が出せるかどうかが大切だと思っていて、例えば『モンスターストライク(以下モンスト)』を例に挙げると、『モンスト』ではコラボを頻繁に開催しているので、コラボ先企業との契約でどんな調整が発生するのかといった資料の取りまとめや、契約書作成の過程の中で集約できたノウハウを資料化して、事業部へ展開するといったところができれば、プラスの評価になると思います。
あとはM&Aなどの案件で、PM的な動き方ができているというのも評価ポイントになります。契約書の作成と確認を期日に間に合わせた上で、スムーズに会社を統合する環境を作り上げ、プロジェクトを上手く回したといったようなことですね。

 

ミクシィは数社分の経験値が積めるフィールド

━━なるほど。次は、仕事のやりがいについて教えてください。

ミクシィは色々な新規事業を展開しているので、立ち上げにもどんどん関われることが魅力です。私が入社した当時、ミクシィが運営しているサービスはSNS『mixi』のみでしたが、その後『モンスト』が誕生し、その立ち上げにも参加できました。SNSとゲームというのはサービス業態としては全く異なるため、経験の幅が広がったと思っています。年々『モンスト』はIPとしての力がついてきたので、マーチャンダイジングといったところにも派生して、XFLAG PARKなどのイベント運営、eスポーツへの展開など、裾野がどんどん広がってきた面白さはありますね。

━━その後はさらに飲料事業やジム運営、公営競技、スポーツ事業など、あらゆる事業を手掛けてきましたよね。

ミクシィは他の会社と比べると明らかに事業領域が広く、一社にいるのにも関わらず数社分の経験ができると個人的には思っています。私はミクシィに入社して今年で8年目を迎えました。以前は2~3年のスパンで転職してきたことを考えると、ミクシィでは色々な法務業務を経験できるので、常に新しい刺激を受けられるからこそ、長く勤められているのだと思います。いくつもの事業の立ち上げに立ち会えるというのは経験としてはすごく大きいかなと。普通の会社だったらそうそう経験できることではないと思いますね。

━━幅広い事業に関わることで、法務としての幅も広がるのでしょうか。

そうですね。契約自体はそこまで変わらないことも多いのですが、業界の慣習が全然違うので、そこを知れるのは強いと思います。先日、ある企業の投資に関わったときに、当社の過去の事業で接点があった企業名が並んでいました。業界慣習を把握しているからこそ、法務DDの過程で弁護士に確認してもらいたいポイントを前もって伝えることができました。やはり業界独特の慣習があるので、それをしっかり踏まえていないと契約上で上手く調整することは難しい。ですので、多面的な事業展開をしている事業会社での経験というのは、自分のキャリアにとってもプラスに働くところかなと思います。

━━なるほど。

あとは、スピード感がある会社なので、他の会社より経験できる量が多いというところもやりがいの一つです。

━━普段、どれくらいのスピード感で仕事をしているのでしょうか。

契約書のレビューは依頼してから最低でも一週間くらいを要するケースもありますが、ミクシィの法務部では3営業日で対応しています。事業部からは「即日返してほしい」と依頼をもらうことも。事業の展開に合わせた法務ではないといけないと思っているので、スピード感を持って仕事を進めるようにしています。

━━ミクシィは経験できる場数が違うんですね。となると、月間に手掛ける平均案件数も多いのでしょうか。

新規の契約案件で300~400くらいあるので、一人70~80案件は対応しています。一般的な会社ですと、月平均20~30件ぐらいと聞いていますので、そこから考えるとミクシィでは濃縮された経験が積めると思います。スキルというのは経験を積むことで上がってくるものなので、場数を踏めば必然的に上がってくるはず。またM&Aというのは投資部門が担当して法務が関われない会社も多い中で、ミクシィの法務部では参加させてもらえるので、貴重な経験ができる環境だと思います。

 

法務のブレーキは“進むため”にある

━━現在の法務部のメンバー構成について教えてください。

法務部のメンバーは全部で13名。契約グループに6名のメンバーが所属しています。

━━みなさんの共通点はありますか。

「どんどんチャレンジしていきたい」という気持ちを持っていることが共通点ですかね。新しい仕事を任せた際も前向きに取り組んでくれますし、中には「M&A関連の仕事に挑戦したい」と未経験の仕事に対して自ら手を挙げてくれるメンバーもいます。法務としてのキャリアをどう築いていきたいかを前向きに考えている人が多いです。

━━法務の方は保守的な方が多い印象だったので、それはちょっと意外でした。

ミクシィの事業部から出てくる案件というのは刺激的なものが多いんです。一般の企業では法務からすぐにNGとされるようなことでも、ミクシィの法務では責任を持ってOKとすることがあります。

━━会社によってはストップを出す部署、として認識されることもありますよね。

そうですね(笑)。かといって、他社と基準が違うわけではなくて、私たちが判断基準にするベースはあくまでも法律です。でも法を盾に突っぱねるのは、会社にとってプラスにならないし、それをやるのは法務じゃなくていい。例えば弁護士事務所でもいいと思うんです。管理部門はコスト部門でもあるので、いかに事業を推進させていくかを念頭に動くことが、ミクシィの法務としての存在意義だと考えています。当社は他が手掛けていないような、前例のない事業やサービスに挑戦していく風土があるので、ブレーキの使いどころが鍵なんです。

━━…というと?

「この範疇であれば大丈夫」という領域を見極めて、判断していくということですね。私たちは意地悪で「違反する可能性があるので駄目です」とブレーキをかけているわけではなくて、法令に違反すると法務がかけたブレーキよりもさらに強いブレーキが待っているわけです。つまり事業が終わる、または会社が終わる。これは車に例えたらクラッシュするようなものなので、法務のほうでちゃんとブレーキをかけて曲がれるようにしていきたいんです。結局、ブレーキというのは、進むためにあると思うので。

━━アクセルとブレーキをいいバランスで使い分けるということですね。

そうです。スピードを保ちながら、道を外れないよう最適なところでブレーキをかけていくことが法務としての役目だと思っています。

 

ミクシィだからこそ自分の経験が活かせる場面がある


━━契約グループの今後の展望について教えてください。

事業部からはスピーディーな対応以外にも、知識の提供や事前交渉などを求められているので、要望に沿うものを提供していきたいと考えています。事業部の方々に他社との交渉を担当していただいているので、法的な観点で法務が後ろ盾できると、ミクシィ全体の事業が優位に進められるだろうと。そのためにメンバーの拡充と、組織強化にも注力していきたいですね。

━━例えば、どういう方だと活躍できそうでしょうか?

法務としての実務経験が3年ほどある方で、さらにM&A関連の業務を経験されている方だと即戦力として活躍いただけると思います。あとは英語の契約書を理解できる力、英語で法律事務所とコミュニケーションを取って調整できる力があるとさらにありがたいですね。

━━やはり、司法資格は必要でしょうか。

資格を持っている方は歓迎しますが、必要なときは外部の弁護士と連携できますので、法務の実務経験がある方であれば全く問題はありません。事業部と弁護士の間に立って、いかに円滑に進めていくかという力のほうが重要ですね。

━━資格よりもコミュニケーション力や先を見る力が重要、と。

そうです。ときには、ミクシィの事業内容をご存じない外部の弁護士から「アプリって何ですか?」という質問が来ることもあるんです。そのため、法務部はサービスの仕様を弁護士に説明して、懸念点を整理した上で相談しないといけない。事前に弁護士からの質問を想定しておけば、効率よくやりとりを進めることができます。

━━なるほど。ゲームやエンタメ業界で働いていた方の方が仕事はしやすいのでしょうか。

ITやゲーム、エンタメなどの業界出身者のほうが親和性は高いと思いますが、マストではないです。これはグループの方針でもあるのですが、メンバー全員が業界知識を同じレベルで持っている必要性はなくて、一人ひとりが尖った能力を持てばいいと考えているので、色々な業界出身者が集まるほうがチーム力は上がると思います。現在活躍しているメンバーも、ゲーム会社やエンタメ企業、マーケティング会社、医薬品の卸会社など、さまざまな企業から来ています。ミクシィはさまざまな事業展開をしていますし、M&Aも積極的なので、業界知識が活かせる場面が訪れる可能性もありますから。

━━バックボーンが異なるメンバーの知見が、会社の強みになるということですね。

そうです。新しいメンバーを迎えることで法務部がパワーアップしていくだけでなく、事業部にナレッジを溜めることができ、会社全体で安全なサービスを提供できるようになると考えています。

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