2022年4月、ミクシィの経営戦略や経理財務、経営企画などを担う経営推進本部に「経営管理部」が創設されました。一見すると真新しさこそありませんが、「静的な経営管理部ではない」と島村本部長は語ります。今回は、「経営管理部」が出来た背景と、そこへ新設された「FP&A」グループの役割について、詳しく聞きました。
動的に経営を支える「経営管理部」
━━まずは創設の背景から教えてください。
島村 これは外的な要因と内的な要因、両面での理由があります。外的な要因としてはコーポレートガバナンス・コード*が改定され、上場企業はより「資本効率を意識した経営」を求められる流れが市場全体に高まっていました。そのため、資本コストを把握し、リソースをより有効活用するために変化が求められていた背景からです。さらに、内的な要因としては、ミクシィの事業の多角化が関係しています。ミクシィは現在、『 モンスターストライク(以下、モンスト)』、『共闘ことばRPG コトダマン』などのゲームに加え、ライフスタイル領域の『家族アルバム みてね』、『minimo』、『Romi』や、ベッティング領域の『TIPSTAR』、さらに、NFTマーケットである『DAZN MOMENTS』といった多岐にわたる事業を展開しており、計数管理にかかるタスクはグループ単位では見きれないほど事業が増え、業績管理を「部」レベルのリソースで見ていかなければいけない状態にもありました。
大まかにその2点から、グループ全体の経営、業績管理を担う役割として創設されたのが背景です。
*JPX(日本証券取引所)によって定められた、コーポレートガバナンスの実現を目指すための指針。
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━━従来の業績管理とは組織的に大きく違うのでしょうか?
島村 これまでは「IR」「経営管理」「財務」の領域をひとつの部署で担っていたのですが、IRはありがたいことに投資家様との面談件数が増加したことに加え、機関投資家様の議決権行使部門とのコミュニケーションが重要要素としてアドオンされたことや、財務もグループ会社にキャッシュマネジメントシステムを導入したことなどもあり、それぞれの役割も責任も大きなものに成長しました。分かりやすく言えば、一人の部長が担当するボリュームを超えていた。まずはそこを整理して、財務企画部長と私の役割を明確に分けたようなイメージです。
━━主な業務内容も大きく違いますか?
島村 経営管理部は「管理会計」と「FP&A」というグループで構成されているのですが、部としての主な業務範囲は以下のような感じで、いわゆる一般的な会社での経営管理業務とは大差ない認識ではいます。
・予算編成
・業績予想の策定
・月次の予算実績分析
・各種レポーティング
・管理会計ルールの策定
・予算外申請などの運用
・上記に関連した情報システムの高度化
しかしながら、市場や取締役会のニーズ、全社の業績を踏まえ、数字ひとつ見る際のリテラシーや求められる提案のレベルが大きく変わりましたね。当社は各セグメント・事業で、企業としての生き残りをかけた勝負を行っています。成熟産業であれば、一定の指標を見ていれば事業をハンドリングできるかもしません。しかしながら、我々が見るべき数字は絶えず流動的です。市場・競合の状況など、事業環境を理解した上で、どの指標を意識して戦っていくべきなのか、短期および長期の視点で事業に示唆・提案していけるような戦略組織への転換が求められていると思っています。
━━一般的な経営管理部と比較して、ミクシィならではの機能もありますか?
島村 いわゆる「経営管理」と聞くと、売上などの数字を見ながら会社の状態を静的に判断するのが一般的だと思いますが、我々の場合、経営戦略機能も備えているのは、ひとつの特徴と言えるかもしれません。いわゆる「選択と集中の議論」をリードしたり、各上級執行役員が取締役会で戦略とリスクの議論をするための報告議案内容を企画したり、単なる計数管理に留まらず、動的に会社の方向を握る部分まで取り組んでいるのが特徴だと思います。
━━なるほど。
島村 より分かりやすく言えば、5-10年後も当社が市場で生き残るための総合的な戦略部門、という感じでしょうか。新規事業を準備していく中でも、ステークホルダーに今どのような状況で、なぜその事業を進めているのか説明する責任がありますよね。それをストーリーとして語る経営戦略ももちろん重要ですが、定量的にどのような目標に向かってどれほどのリソースを使って目指していくのか、現実的なロードマップを示すことも重要だと思っています。なので「経営管理部」が目指しているのは、「経営目標地点やROEの数字を経営とディスカッションしながら、ともにデザインしていく組織」を機能として会社に作る、ということですね。
━━ミッションはどのように定めているのでしょうか?
島村 大きく言えば、「資本効率の向上に貢献する事業ポートフォリオマネジメントの実現」です。当社のパーパス、ミッションにそった経営目標や中期経営計画を策定し、それに応じた単年度予算を編成する中で、事業ポートフォリオをブラッシュアップする、ということです。どのプロダクトを成長させ、会社のリソースを如何に効率よく使うか経営判断をしていくための材料をなるべく多く用意し、判断しやすい状況を作り、広く経営者のポートフォリオマネジメントを支援・貢献していくことが、ミッションですね。
━━経営管理部の中には「FP&A」グループというのも新設されていますよね。
島村 FP&Aは、Financial Planning & Analysis(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)の略称で、主には事業の業績を見て分析を行いながら、財務計画の立案までを行う役割です。
━━なぜこのグループが必要だったのでしょうか?
島村 単純に経営・事業の数字を見える化すればいいだけではなく、その数字にどんな意味があるのかを言語化し、経営と現場のコンセンサスを作っていくことが重要です。例えば、経営側としては数字の伸びていない事業には予算は立てづらい、でも事業側としては成長の兆しが見えている、売上を立てるためにプロモを強化して一気にスケールしたい、ということもあります。どっちが合っているのかは時と場合によります。ただ、そういうコンフリクションが生じた時は、定量的な分析をベースに議論し意思決定を行っていくことをサポートする機能が必要です。それがFP&Aグループに求めている機能です。
━━なるほど。そうした時にどのような動き方をされるロールなのでしょうか?
前田 FP&Aには2つの性格が必要なのですが、ひとつは「コーポレート」、グループの事業全体を見据えた上で財務的にどこに注力すべきかを判断する性格。もう一方は「事業」側の事業戦略として財務計画を分析し、事業計画に財務的な視点で提案するという性格ですね。この両方を併せ持ったロールがいることで、経営と事業側の分断が生まれにくくなる。それぞれの財務や熱意、思いを汲んだ上でそれぞれに提言する橋渡し役というと分かりやすいでしょうか。
━━実際にはどのような業務をされているのですか?
前田 私は『TIPSTAR』に関わっているのですが、事業側の目標のバランスを整えるお手伝いをしているようなイメージです。もちろん、『TIPSTAR』に限らず各事業にはそれぞれ事業目標や財務目標がありますが、経営と視点が違う場合があるので、経営の視点を伝えて調整を行ってもらいながら、事業側の言葉を丹念に一つひとつ拾い、“現場の声”を経営にも共有するような動き、という感じです。
すこし抽象的かもしれませんが、「数字の解釈をすること」が主な仕事です。私が事業側に関わるのは半期の予算策定の時や月次の振り返りの際が主なのですが、単に前月より上がった、下がったで一喜一憂するのではなく、下がった背景に何があったのか、市場と比べて伸び率はどうなのか、といったアナリストとしての視点から解釈の方法を伝え、説明の際の材料にしてもらうような仕事ですかね。
━━数字に解釈を与える仕事ともいえますね。
島村 前田さんのようなポジションは会社にとってすごく重要なんです。日々経営と執行サイドで経営数字の共通認識を作らずに、コーポレートの利益都合を優先して「○○といった理由なので予算1000万円下げます」と一方的に説明しても軋轢を生むだけだし、ちゃんと事業数字に対する解釈を経営と握れていない事業がコストの増額を申請してもまた然り。
繰り返しになりますが、コーポレートと事業、それぞれの言葉を解きほぐして間に入って折衝してくれるような役割。そうした折衝は財務のような客観的なデータをもとに話をしないと、思いだけのぶつかり合いになってしまう。
そうならないためにも、財務を分析し、言葉で説明しながら間に入ってくれるFP&Aという役割が重要なんです。この業務は、論理的に数字を解釈できることに加えて、相手の気持ちを理解して言葉を伝えていく高度な人間力が求められます。社会人として若い時からしっかり揉まれていないと、なかなか身につけることができないバランス感覚です。前田さんはしっかり揉まれてきたんでしょう(笑)。
前田 そんなに褒めていただいて、ありがとうございます(笑)。
━━事業戦略に関わることもあるのでしょうか?
前田 ゼロから入って一緒に作っていくというよりも、予算を加味して事業部が作成した事業戦略に対して、コーポレートや市場の状態を伝えながら示唆をするようなことはあります。事業戦略をより安定的なものにするために、専門的な立場からアドバイスするようなイメージですね。
━━ミッションはどのように定められていますか?
前田 「数字のブレを分析し、美しいプランを作ること」ですね。事業を行っていく上で、仮説として立てた数字はあくまでも予測で、現実にはずれていくものなので、その背景を分析しながら、どうすれば理想の数字に近づけるのかをアナリストの視点で見て、プランナーとしての視点で経営の状況と合わせて立案する、といったところが主です。
島村 先にお伝えした「管理会計」のグループの目標は「集計の効率化」です。FP&Aグループが分析するための材料も、元は管理会計グループが集積した情報があるからこそ。なので、まずはそこを効率化することですね。さらに、会社全体に会計情報をスムーズに可視化して流通させることも透明性を担保する上で重要なので、もっと効率化できないかと思っています。
━━経営管理部の体制としてはどうなるのが理想なのでしょうか?
島村 FP&Aという人材は、経営と事業を繋ぐ繊細なスキルが必要で理想は、各事業にFP&Aの担当がつけられるほどグループを拡充していくことでしょうか。そうすることで、各事業とも綿密なコミュニケーションを取りながら戦略を練っていく事ができる上に、事業としてもよりスケールしていける可能性が増える。さらに、コーポレートにはコーポレート専任のFP&Aがいるとより強みを増しますよね。
なるべく静的ではなく、事業部をはじめ様々な部署、人から怖がられないような立場でカジュアルに相談してもらえるような雰囲気を持っていけるといいなと思っています。
━━他社の経営管理部と比べると、すこし異色なキャラクターですよね。
島村 いわゆる経営管理、と聞くと予算を締め付けてくる部署だと思われることも少なくなく、実際そういうことも必要なのでやってはいますが(笑)。あまり、コストカットだけに目を向けていないのは特徴かもしれません。「締め付けは事業を生まない」と思っているというか。新規事業を立ち上げて、少し見守る時間があるのは特色だと思います。もちろん成長性に注目はしますが、ローンチして少し伸びないからといってすぐに進退を判断することはしない、というのは会社のカルチャーにも共通してありますので。
━━見守るカルチャーがあると。
島村 これは私が思うところですが、「市場を作ってきた」企業だからこそ、という感じはしますね。SNS『mixi』にせよ、『モンスト』にせよ、既存の市場に飛び込んでユニコーン企業的にぐんと伸びた、というよりも、まだそこにない市場もしくは黎明期の市場をサービスによって切り拓いてきたのがミクシィ。新規事業がローンチしてすぐにスケールしなかったとしても、チャレンジを見守り、過度なストレスをかけずにインキュベートしていくという雰囲気が会社全体にあると感じています。
━━成長できる環境ともいえそうです。
島村 そうですね。市場からの要求は高度化していますし、その外圧を受けながらコーポレート、事業それぞれの財務を見て調整を行う仕事なので、求められるスキルはシビアではありますが、環境としては成長に充分かなと。特に、先に話した通り、ただ予算実績を管理する部署ではなく経営目標や経営戦略立案まで含めて提案していく業務になるので、CFO的なリテラシーに加えて、CSO的な能力も鍛えられていく職種になると思います。
前田 そうかもしれませんね。ボードメンバーとも、声をかければ今日にもミーティングできるような距離感なので、経営にごく近い部分で仕事が出来る魅力は大きいと思います。
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