千葉ジェッツの2022-2023シーズンが終了。田村代表に総括してもらった

千葉ジェッツの2022-2023シーズンが終了。田村代表に総括してもらった

MIXI GROUPのプロバスケットボールチーム・千葉ジェッツふなばし(以下 千葉ジェッツ)の2022-2023シーズンが終了。前人未到の3冠達成に、あと1歩まで迫った非常にエキサイティングなシーズンとなりました。今季トライしたこと、来季に向けた課題、間もなく完成予定の新アリーナ等について、田村代表にシーズン総括の話を聞きました。

田村 征也
2009年 株式会社MIXIに新卒入社。2015年 モンストスタジオ マーケティング部部長就任。2016年 株式会社XFLAG STORE 代表取締役社長就任。2018年 執行役員ライブエクスペリエンス事業本部本部長就任。2020年 執行役員スポーツ事業本部本部長就任。2020年 株式会社千葉ジェッツふなばし代表取締役社長就任。

輝かしい結果を残せたのは、フィロソフィーがあったから

━━今シーズンは新たにジョン・パトリックヘッドコーチを招聘しての1年でした。田村さんは戦績をどのように評価していますか?

今シーズンは、コーチやサポートスタッフが大きく入れ替わった変化の1年でした。千葉ジェッツを応援してくださるファン(通称:ブースター)の方々からすると、とても不安の多いシーズンのスタートになったと思います。

ジョン・パトリックヘッドコーチが記者会見のときに、「激しいディフェンスとトランジション(オフェンスとディフェンスの切り替え)という、千葉ジェッツが得意とするバスケットボールスタイルを体現したい」と言っていましたが、今季はその言葉通り、しっかり自分たちのスタイルを実現できたと思います。

結果としても、レギュラーシーズンにおいては「53勝7敗」でB1東地区優勝、勝率「.883」とBリーグ記録を更新する最多勝、最高勝率を記録しました。また24連勝を打ち立て、こちらもBリーグ記録を更新する結果となりました。

天皇杯においては、4年ぶり4度目の優勝に返り咲くことができました。そしてチャンピオンシップでは2年ぶりのファイナルの舞台で、奇しくも天皇杯と同じ対戦相手の琉球ゴールデンキングスに敗れ、準優勝となりました。目標としていた「3冠」には、あと1歩届きませんでしたが、「天皇杯」「B1東地区優勝」の2つタイトル獲得と「最多勝・最高勝率」「24連勝」という2つのBリーグ記録が更新できたことはクラブにとっても、本当に素晴らしい戦績を収めたシーズンだったと思います。

━━100点満点で点数をつけるなら?

3冠という偉業も目前だったので、「さぁ、どうなる!?」というスポーツならではの期待と不安をみなさんと共有できたところも含めて「95点」でしょうか。チャンピオンシップのファイナルは本当に実力者同士の戦いだったので、タイトルが取れるか取れないかは、紙一重でした。惜しくも3冠は達成できませんでしたが、同じ目標を追ってみんなが熱狂できたのは本当に良かったと思います。千葉ジェッツが着実に成長してきたからこその結果だと思っているので、高い点数をつけて良いと思っています。また来シーズン改めて3冠にチャレンジできるのだとポジティブにとらえたいですね。

━━今シーズンは新しいスローガン「JETS SPEED. JETS PRIDE.」を掲げましたが、それを体現できたということですよね。

そうですね。千葉ジェッツを表現するコンセプトを、今年初めてクラブ全体として設けました。我々のスタイルを体現してきたからこそ、タイトルを獲得できるような強いチームに成長を遂げられたと思います。

チームとフロントの距離を縮める組織編成

━━スポーツにおいて、自分たちのスタイルを確立しつつ結果も出すというのは本当に難しいことだと思いますが、それが成功した要因は何でしょうか?

変化に挑戦しつつも、千葉ジェッツの根幹となるフィロソフィーが残っていたからだと思います。千葉ジェッツの「強み」についてクラブ全体が共通認識を持っているからこそ、指揮官が代わってもジェッツの強みを活かしたまま、進化できたのだと思います。

━━クラブ全体にフィロソフィーを浸透させるために、工夫した点とは?

クラブ共通のスローガンを作ることに加え、ドラスティックな組織編成にも注力しました。

プロスポーツクラブというのはとても特殊な組織です。会社としての運営組織に加えて、選手・コーチたちのチーム組織が共存しています。会社としての目標は利益を上げることですが、選手・コーチの目標は“勝利”です。異なるKPIを追う組織が2つあると、どうしても一体感を保つことが難しくなるものですが、そうならないようにクラブの組織体制を見直しました。

━━具体的にはどのように変えたのでしょうか?

2023年からGM兼取締役本部長が統括する「チーム統括本部」に広報チームを異動させました。「チーム統括本部」はトップ・ユースのチームを編成・管理すること、フロントスタッフとの橋渡しとしての役割を担っています。今季よりチーム統括本部に広報機能を紐づけたので、チームとの距離感を近くし、コミュニケーションがスムーズになることで、YouTube等のPRコンテンツを制作しやすくなりました。チームとフロントが一体感を持って、活動しやすくなったというのはとても大きな変化だったと思います。

━━組織体制の変更がチーム側にとっても会社側にとってもポジティブな変化をもたらしたということですね。

そうですね。自分たちの理想とする組織形態にうまく変化ができたと思います。足掛け3年、共通目標を持って組織化することによって、合理的かつ効率的に業務が進められるようになりました。変化をしないといけないタイミングでスムーズに変化することができ、その結果、好成績を収めることができたと実感しています。変化というのは、誰もが好意的に受けいれるわけじゃないですが、「変化なしに成長はない」と思っていたので、信じてやり続けて良かったなと思います。

千葉ジェッツの価値は着実に上昇している

━━2021年6月にリブランディングを行いましたが、その後の定着・浸透状況はいかがでしょうか?

リブランディングの一つとしてロゴを刷新しましたが、今ではすっかり定着していると思います。新ロゴを使ったポスター・のぼりが街にとけこんでいますし、グッズも好調に売れているので、「いろんなシーンで使ってもらえるように、ロゴをシンプル化させたい」という狙い通りの結果が出ていると思います。

━━チケットの販売数や売上などにも影響はあったのでしょうか?

新型コロナウィルスの流行以降、ダイナミックプライシングという価格変動をする料金制に変更しました。今季は開幕から100%収容での興行が実施できた事もあり、チケットの売上は前年対比約130%となっています。人数制限が解除された事に加えて、チームの価値が上がり、チケットの需要が上がっているのは、数字にもあらわれてきています。

新規のお客様を増やすためのマーケティング施策にも力を入れてきた結果、顧客の母数が3倍に増えました。新規顧客も増えているので、需要はかなり高くなっていると感じています。

━━2024年春には収容客数1万人規模のホームアリーナが開業予定ですが、移転プロジェクトは順調でしょうか?

建設は順調に進んでいて、2024-2025シーズン開幕から利用できるように準備しています。現行の船橋アリーナで興行運営をしながら、新アリーナに向けて準備をするので、社内では移転プロジェクトを立ち上げて、役割分担なども進めているところです。こういった大規模なプロジェクトを組織で動かせるようになったのも、大きな変化だなと思っています。

━━収容数もぐんと大きくなりますね。

そうですね。大きいアリーナと小さなアリーナでは声の反響の仕方も異なるので、ブースターの応援も変わってくるんじゃないかと思います。

━━今季は声出し応援が解禁になったことも、大きなトピックスでしたよね。

久々の声出しなので、当初はブースターの声が遠慮がちだった感は否めませんでした。そのため、チアのメンバーを中心に声出しの音頭を積極的に取るようにしたんです。応援の仕方の動画をつくって、SNSで発信したり、試合前に流したり。声出し応援に肯定感を与えるような取り組みは、クラブとして積極的に行ってきました。その結果、チャンピオンシップのホーム開催においては、クォーターファイナル、セミファイナルでは大きな声援をいただき、そのアドバンテージも大きかったと思っています。

新ファン獲得を実現した“2つの戦略”

━━運営面でさまざまな取り組みをしたと思いますが、特にSNSの活用は積極的でしたね。

先ほどお話ししたように、チームとフロントの距離を近くすることによって良いコンテンツが配信できるようになり、YouTubeでは登録者数が約10万人に増えましたし、TikTokの再生回数も断トツなんです。その結果、「B.LEAGUE AWARD SHOW 2022-23」でSNSのフォロワー数が最も増加したクラブに贈られる『ソーシャルメディア最優秀クラブ』を受賞することができました。

━━YouTuberや芸能人とのコラボなど、話題性の高いコンテンツが多いですよね。

そうですね。千葉ジェッツ内だけでなくMIXIのYouTubeチームとの連携で、話題性の高いコンテンツがつくれたと思います。

また、今季は地域連携にも注力しました。千葉ジェッツのホームタウンは船橋市ですが、2023年から松戸市と八千代市、市川市とブーストタウン協定を結び、活動エリアが広がりました。千葉ジェッツを応援してくれる街では、選手がコーチ役となってスクールを開催したり、市民の方々を試合に招待したり、チアのダンス教室を開催したり、さまざまな形で街と交流を深めていきたいと考えています。新しいエリアが増えたことで、千葉ジェッツを知ってくださるお客様が増えたこともありがたいですね。

━━デジタルとローカルの取り組みでファンが拡大しているわけですね。

そうですね。MIXIメンバーと連携しながら、お互いに得意なことを持ち合って、バリューを発揮できる状況がつくれるようになったと思います

新アリーナを熱気で染めたい

━━来シーズンへの意気込みや今後トライしていくこと、注目してほしいポイントを教えてください。

来シーズンも変わらず、Bリーグの年間チャンピオンを狙い、3冠への再挑戦をしたいです。そして最後はみんなで笑って終えられるようにしたいと思います。

また新アリーナのこけら落としでは、赤色のユニフォームを着たブースターで満員にできるよう、さまざまな施策に積極的に取り組んでいくつもりです。

━━8月には、2023 FIBA Basketball World Cupが開催されるので、ますますバスケットボール界の盛り上がりが期待できそうですね。

そうですね。千葉ジェッツの選手も日本代表に選ばれる可能性がありますし、世界に対して競技で勝っていくということで国民の興味関心が高まっていくはずなので、期待しています。

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