千葉ジェッツの2023-2024シーズンが終了。田村代表に総括してもらった

千葉ジェッツの2023-2024シーズンが終了。田村代表に総括してもらった

MIXI GROUPのプロバスケットボールチーム、千葉ジェッツの2023-2024シーズンが終了しました。東アジアスーパーリーグで優勝し、日本のクラブとして初めて東アジアチャンピオンの称号を手にするなど、今シーズンも充実した内容となりました。さらに、待望の新ホームアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」が完成し、来シーズンへの期待が一層高まります。今回は、千葉ジェッツの田村代表にシーズンの総括と来シーズンの展望についてお話を伺いました。

田村 征也(たむら まさや)
2009年 株式会社MIXIに新卒入社。2015年 モンストスタジオ マーケティング部部長就任。2016年 株式会社XFLAG STORE 代表取締役社長就任。2018年 執行役員ライブエクスペリエンス事業本部本部長就任。2020年 執行役員スポーツ事業本部本部長就任。2020年 株式会社千葉ジェッツふなばし代表取締役社長就任。

チームとしての成長を実感できたシーズン

━━今シーズンの戦績をどのように評価していますか?

今シーズン、初めて参加したEASL(東アジアスーパーリーグ)では、ホームアンドアウェー形式で行われた全ての試合に勝利し、優勝を果たしました。日本のクラブとして初めて東アジアチャンピオンの座に輝き、国際舞台での実力を示すことができました。

━━EASL制覇は本当に快挙でしたよね。さらに天皇杯では2年連続5度目の優勝を達成しました。

天皇杯のファイナルでは、117点の大量得点を挙げ、48点差の快勝で優勝を果たしました。決勝戦で100点ゲームになったのは、99回の天皇杯の歴史で初めてのことだったようです。

レギュラーシーズンでは「35勝25敗」、勝率「.583」で東地区3位となり、日本生命Bリーグチャンピオンシップにはワイルドカードで出場しました。惜しくもセミファイナルで敗れ、ベスト4という結果になりましたが、GAME3までもつれ込むエキサイティングな戦いを最後まで力強く見せることができたと思います。

今シーズンは、海外遠征を含む非常にタフなスケジュールで、例年よりも多くの試合を戦い抜きました。シーズン中には選手の怪我による離脱など厳しい局面もあり、決して順風満帆なシーズンではありませんでしたが、その中で、EASLと天皇杯の2つのタイトルを獲得できたことは大変素晴らしい結果であり、チームは本当によく戦ってくれたと思います。

━━昨シーズンは「95点」という自己採点でしたが、今シーズンを100点満点で点数をつけるなら?

今シーズンも目標としていた「三冠」には届きませんでしたが、チーム全員が一丸となり、選手それぞれがフォローし合いながらシーズンを通してチームとしての成長を実感できたので、評価としては「98点」と言えるのではないでしょうか。

━━金近 廉選手がBリーグ新人賞を獲得するなど、来シーズンに向けた期待も高まります。

金近選手はスリーポイントシュートが持ち味の選手で、今シーズンはディフェンスやドリブルの上達も見られ、プレーの幅を広げながらシーズンを通して主力として活躍してくれました。日本代表にも継続的に選ばれていますし、Bリーグの「モテ男No.1決定戦 2024」で1位に輝くなど、スター性もありますね。

━━今シーズンは広島ドラゴンフライズが初優勝し、年間チャンピオンとなりました。Bリーグはまさに戦国時代ですね。

そうですね。最後は、より勝ちたい気持ちの強いチームが勝つ……というくらいに、チーム間の実力差はますます拮抗してきているように思います。そうした中で、三冠を獲得することの難しさを改めて実感していますが、来シーズンも再び三冠にチャレンジしたいと思います。

国内トップクラスの新アリーナが完成

━━クラブ運営面での振り返りもお願いします。

まだ集計中ですが、主な経営数値は概ね好調でした。特に今シーズンはチケット売上が伸び、過去最高の数字を更新することができました。船橋アリーナ(船橋市総合体育館)の収容人数が約4500人という上限がある中で、観客の快適性や満足度を担保しつつ、チケットの価値を上げるためのさまざまな工夫が功を奏したと思います。

ファンクラブの入会数も前シーズンに比べて2倍ほどに伸びました。既に来シーズンのゴールド会員の新規入会受付を終了するなど、千葉ジェッツファンは順調に拡大しています。アカデミー事業もバスケットボールスクールの開校数を増やしており、チアリーディングスクールの入会数も増加しています。

クラブ全体としての売上高はついに30億円規模となり、私が代表に就任した2020年と比べて約2倍になりました。

━━そしてついに「LaLa arena TOKYO-BAY 」が完成しましたね。

はい。今シーズンに関してはレギュラーシーズンのチケットが全て完売し、船橋アリーナは常にほぼ満員の状態でした。とてもありがたい状況ですが、逆に言うとチケットが入手しづらく、新規の方に観戦の機会を与えにくい課題がありました。

そうした課題解決の意味でも、収容客数1万人規模のLaLa arena TOKYO-BAYが完成したことは、私たちにとって待望の夢のホームアリーナがついにできたという期待感と喜びがあります。

また、観戦体験のレベルアップという意味でも、LaLa arena TOKYO-BAYが備える最新鋭の設備と空間演出によって、Bリーグのファイナルや天皇杯の決勝と同等以上のバスケットボールの魅力を毎試合のように提供できるようになったと思います。

そしてLaLa arena TOKYO-BAYでは、食事を楽しみながら観戦・鑑賞ができる「VIP ラウンジ」や「VIP BOX」などのVIPエリアが設置されました。これにより、ラグジュアリー層のお客様に社交の場としてのバスケットボール空間を提供する新しいハイグレードビジネスを展開することが可能になりました。また、将来的には海外からのインバウンドのお客様をターゲットにしたサービスも展開していきたいと考えています。

━━バスケットボール界にとどまらず、日本のスポーツビジネス界にとっても新たなチャレンジですね。

そうですね。LaLa arena TOKYO-BAYのVIPエリアは、国内でもトップクラスの素晴らしい設備になっていると思います。厨房設備も備えており、一流リゾートホテルに料理を提供している事業者と提携し、コース料理を提供できるようになっています。先日開催したお披露目会でも大変注目を集め、多くのパートナー様からすでに引き合いをいただいています。

バスケットボールは、野球やサッカーと比べると1試合あたりの収容可能人数が少ないため、いかに付加価値をつけて差別化するかがビジネスとして非常に重要だと考えています。そのためには、皆さんに「見たい」と思っていただけるようなエキサイティングな試合や空間演出、そしてハイグレードなサービスを多くの方々に体験していただくことが必要です。そこから良い評価が広まり、ビジネスの成功につながる流れを作っていきたいと考えています。

━━南船橋には「ららぽーとTOKYO-BAY」や「ららテラスTOKYO-BAY」といったショッピングモールもありますし、試合観戦以外の楽しみも広がりますね。

はい。バスケットボール観戦のついでに買い物へ、あるいはその逆の楽しみ方も可能です。試合の前後に家族や仲間と食事に出かけることも容易になると思います。

一日中あのエリアで過ごす楽しみ方があるので、LaLa arena TOKYO-BAYが南船橋にあることは、エリア全体にとって非常に良い影響があると思います。

これまで継続してきた取り組みが評価された

━━クラブ内の取り組みについて伺います。これまでも千葉ジェッツのフィロソフィーをクラブに浸透させること、そして組織編成の最適化に取り組んできたと思います。現在のクラブの状況をどのように見ていますか?

今シーズンは組織編成を大きく変える年ではありませんでしたが、私たちが続けてきた取り組みが周りに評価された年だと感じています。例えば、Bリーグの「ソーシャルメディア最優秀クラブ」を2年連続で受賞しました。

これはMIXIの動画クリエイティブ室と連携した結果ですね。モンストなどで培ったSNSの知見を持つプロフェッショナル集団と、千葉ジェッツの広報チーム、そして出演してくれた選手たちが協力して成し遂げたプロジェクトです。

━━YouTubeの再生数は3000万回を超えてBリーグでNo.1になったんですね。

そうです。MIXIの動画クリエイティブ室は、単に動画を制作するだけでなく、マーケティングの要素と現在のSNSトレンドを取り入れて、戦略的に成果を上げてくれました。もともと私がモンストスタジオのマーケティング部を率いていた時代に作ったチームであり、当時の仲間たちが手伝ってくれているのはありがたいですし、安心して任せられる間柄です。まさにMIXI GROUPとしての強みが発揮されていると感じています。

━━田村さんは、もともとYouTubeが好きなんですね?

そうですね。10年以上前からYouTubeをよく観ており、現在でも1日1時間以上は好きでYouTubeのコンテンツを楽しんでいます。そのため、YouTube界のトレンドについては今でもしっかり追えていると自負しています(笑)。

━━他には、千葉ジェッツのどのような活動が評価されたのですか?

私たちは地域に密着した活動をさまざま展開しています。これまで、千葉ジェッツはホームゲーム会場でのフードドライブの実施や子ども食堂の開設、地域ブランド野菜のPR、そして選手による農業体験や料理教室など、食に関わるさまざまな活動を行ってきました。これらの一連の活動が評価され、農業界のMVPともいわれる「農林水産大臣賞」を受賞しました。

他にも荒尾岳選手が社会貢献活動の一環として、船橋市内の農園で米作りを行ったり、現場からの発案で始まったさまざまな企画が動いています。これらはクラブのフィロソフィーが浸透してきたからこそ、ボトムアップで企画・アクションが生まれ、評価につながっているのだと思います。

━━SNSから稲刈りまで……幅広いですね。

そうですね。地元のファンを大切にしながら、日本全国でのファン拡大活動を「地上戦 & 空中戦」の両面で展開しています。また今シーズンは、EASLに出場したことで東南アジアエリアを中心に国際的なプレゼンスを高めることができました。特にファイナル4が開催されたフィリピンでは、バスケットボールが国技であるため現地でのバスケットボール人気が非常に高く、富樫選手の活躍が注目を集めました。「日本のバスケチームといえば千葉ジェッツ」と言われるほど、チームの知名度も上がったと思います。

━━最後に、来シーズンへの意気込みを聞かせてください。

来シーズンは、千葉ジェッツにとって大きな転換期になると考えています。ホームアリーナがLaLa arena TOKYO-BAYに変わることで、私たちの活動の幅が広がり、観客数も増え、より多くの方々におもてなしを提供する機会が増えます。これにより、試合内容や演出面を含めて、クラブとして一段も二段もレベルアップするチャンスになると思います。ファンの期待にしっかり応えるだけでなく、それを超えるためにも、万全の準備をして臨みたいと思います。

また、新しいアリーナの活用により収入が増える見込みがあるため、しっかりと投資を行い、Bリーグを代表するビッグクラブを目指してさらなる成長を遂げたいと考えていますし、悲願の「三冠」を達成したいです。究極的には「人気・実力ともにナンバーワン」と認めてもらえるようになりたいので、来シーズンは入場者数でもファンクラブ会員数でもトップを目指したいです。

経営面でも親会社の支援に頼らず、クラブ単独で地域密着型のサステナブルな運営ができるようになってきているので、Bリーグクラブのロールモデルとなれるように頑張っていきたいと思います。

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