スポーツ業界にデジタルマーケティングの革新を!MIXIが開発した「FC東京公式アプリ」こだわりポイントを担当者に聞いた。

スポーツ業界にデジタルマーケティングの革新を!MIXIが開発した「FC東京公式アプリ」こだわりポイントを担当者に聞いた。

2023年10月にリリースされた「FC東京公式アプリ」は、MIXIが培ったUI/UXの知見をふんだんに注ぎ込んだもので、多くのファンやサポーターから高い評価を受けています。この夏には大幅なアップデートが予定されており、さらに使いやすいアプリへと進化する予定です。今回は、公式アプリの開発をMIXIが担った背景や、こだわりのポイント、そして今後の展望について、プロジェクト担当者に話を伺いました。

柳田 佳広 (写真中央)
東京フットボールクラブ株式会社 CRM部 部長

大学卒業後、情報サービス企業に入社。嗜好品メーカーの1to1マーケティング支援に携わる。2007年6月東京フットボールクラブ株式会社入社。ファンクラブ運営や集客企画、広報部門に従事後、2019年2月CRM部 部長に就任。

高田 誠 (写真左)
ライブエクスペリエンス事業本部 企画推進部 部長

明治大学商学部卒業後、株式会社伊勢丹(現:株式会社三越伊勢丹)入社。マネージャー業務を経て、海外事業部IT担当として基幹システム刷新業務や越境EC業務などに携わる。2019年10月に株式会社MIXI入社。ベースボール事業や本部事業管理マネージャー業務を経て、2022年4月より現職。

宮部 継大 (写真右)
ライブエクスペリエンス事業本部 企画推進部 スポーツマーケティングDXグループ マネージャー

2007年、楽天株式会社入社。メディアセールス、広告プランナー、プロダクトマネージャー等を務める。2012年、スタートアップ企業に入社。取締役/事業責任者を経て2020年6月、株式会社MIXI入社。PIST6事業の立ち上げを経て、ライブエクスペリエンス事業本部へ異動。2023年7月より現任。

クラブとサポーターをつなぐタッチポイントを作りたい

━━「FC東京公式アプリ」の概要について教えてください。

柳田 FC東京公式アプリは、試合情報やニュース、スタジアムや公式SNSなど、FC東京に関するさまざまな情報をお届けするアプリです。他にもチケットやグッズの購入、自由席待機列抽選の申し込みや、入場整理券の表示機能をはじめ、JリーグIDとの連携で年間チケット「SOCIO」カードやオフィシャルメンバーシップの会員証をデジタルカードとしてアプリに追加できる機能も兼ね備えています。

━━「FC東京公式アプリ」はどのような背景で開発に至ったのでしょうか?

宮部 このアプリ開発プロジェクトは、「試合以外の場でもクラブとサポーターをつなぐタッチポイントを生み出したい」というクラブの思いからスタートしました。アプリを通じてFC東京の有益な情報や便利な機能を提供することで、サポーターとの関係性をより強固にしていきたいという目標に向け、MIXIに開発の依頼をいただいた経緯があります。

高田 また、MIXIの強みであるUI/UXなどのデザイン力、デジタル活用やシステムを提供することで、クラブの収益最大化に寄与したいという思いもありました。さらには、クラブチーム運営の先にいるファン・サポーターに対して、我々MIXIのパーパスをどう実現していくかという手段の一つとして、今回のアプリ開発に至ったという背景もあります。

━━MIXIにアプリ開発を依頼する上で、クラブ側が重要視していたことはありますか?

柳田 スタジアムに足を運んでくださった方の満足度や体験価値を最大化することです。特にクラブ側が課題として認識していたのが、情報のキャッチアップのしづらさでした。SNSやメールなど、さまざまなメディアからさまざまな情報を発信していたため把握が難しい状況があり、それをアプリで解消したいと考えていました。それに加え、チケット表示や自由席待機列抽選の申し込みなどもアプリに集約することで、クラブの情報にアクセスするためのワンストッププラットフォームを目指していました。

高田 サポーターの皆様の知りたいことや、やりたいことがアプリ上で完結でき、さらにクラブスタッフにとっても運営の負荷が下がるアプリが理想でしたね。

━━MIXIが開発するアプリとして、こだわった部分はどんなところですか?

高田 「FC東京の応援をより快適に」「簡単便利なクラブ公式アプリ」というコンセプトのもと、こだわったのは3つの開発フェーズに分けることです。

宮部 フェーズ1では、年間チケット「SOCIO」を購入されている方やオフィシャルメンバーシップに加入している、来場頻度の高いコアなサポーター向けの機能を開発しました。具体的な機能としては、試合情報やSNS情報、ニュース、スタジアム内の飲食情報といった各種情報の集約が一つ。そしてSOCIOのQRチケット、オフィシャルメンバーシップのQRチケットをネイティブ化してアプリで表示する仕組みを搭載しました。

━━まずはコアなサポーター向けの機能を充実させたんですね。

宮部 フェーズ2は現在開発中で、年間2~6回程度スタジアムで試合を観戦するミドル層までターゲットを広げました。特徴的な機能としては、スタジアムマップ機能の拡充です。味の素スタジアムに慣れていない人でも楽しくスムーズに観戦できるように、スタジアムのマップ、飲食情報やイベント情報、グッズ情報などを充実させ、スタジアム観戦UXの最大化を目指しています。

高田 フェーズ3に関してはまだ企画の構想中ですが、MIXIならではのユーザーサプライズファースト、コミュニケーションなど、他のJリーグクラブにはない概念を、デジタルソリューションを通じて形にしていきます。

━━フェーズ3になると、これまで想像していなかったユーザーサプライズも生まれていきそうですね。

宮部 まだ構想段階ではありますが、オフラインとオンラインをまたいだ形でコミュニケーションを広げていきたいと考えています。サッカーのスタジアム観戦では、すでにリアルな場でコミュニケーションが大量に発生しているので、そこにデジタルのエッセンスを加えることで、さらなる広がりが生まれるでしょう。コミュニケーションをデジタルに取り込むというよりは、この熱狂的なサポーターの熱をうまく広げていけるものが理想です。

━━例えば、ゲーミフィケーション機能なども視野に入るのでしょうか?

宮部 それも含めて未定ですが、サポーターが求めるものを形にしていきたいと思っています。それがゲーム要素やコミュニケーション要素の場合もあれば、AIといった最新技術の導入という可能性もあります。まずはフェーズ2をしっかりユーザーに受け入れられてから、フェーズ3に進んでいきたいと考えています。

ファンの満足度につながるマーケティング活動が可能に

━━2023年10月にアプリをリリースしたときのサポーターの反応はいかがでしたか?

宮部 X(旧Twitter)上では「サクサク動いて使いやすい」「さすがMIXI!」という声がありました。また、推し選手の写真をトップページの壁紙に設定できる機能をたくさんの方にシェアしてもらったり、写真のデザインを褒めてもらったり。年明けにデジタル会員証の機能をリリースしたときは、「先進的な取り組みだ」という声もありましたし、自由席の入場待機列抽選機能に関しては、他のクラブのサポーターさんもこの機能を欲しがっているという声も聞きました。

柳田 アナログな部分をなるべく減らし、デジタルに移行していくなかで、サポーターに受け入れられるか心配はありました。特にSOCIOカードを持っている方は年齢層が高いお客様が多かったのですが、6割の方はアプリへの追加を選択されていました。自分が想像していた以上に、デジタルに対する理解やリテラシーが高い方が多いなという印象を持ちましたね。

━━アプリのUI/UXについての評判も高いんですね。

宮部 私たちはノーコードでのアプリ開発ではなく、スクラッチで作っていくので、目的に対して最適なUI/UXを作ることが可能です。コストはかかりますが、精度が高くユーザーに満足いただけるアプリにどんどん修正していけるのが良いところだと思っています。またデザイン本部からの支援も受け、MIXIが持っているUI/UXノウハウを全て注入して作ってきました。

サポーターの中にはデジタルネイティブではない方、普段スマホをあまり触らない方も多いので、開発中にはMIXIのライブエクスペリエンス事業本部側も、FC東京のクラブスタッフのみなさんにもアプリに触れていただき、アプリへの要望や改善点を何度もヒアリングしました。QAにもかなりの時間をかけました。初見でどこまでアプリを使えるかという点を考慮して設計しました。

高田 アプリの分かりやすさという部分は、宮部さんのチームが時間をかけて知恵を絞りながら取り組んでくれました。小さなマーク一つに関しても、必要かどうか議論を重ねてくれた結果が、サポーターの皆様に支持されるアプリにつながっていると思います。

━━アプリをリリースしたことで得られた成果はありますか?

柳田 ユーザーデータをマーケティングに活用できるようになりました。例えば、推しの選手を壁紙にできる機能で集まったデータを活かして、選手のメッセージ付きの入会促進などを実施しています。
高田 ユーザーデータを蓄積できるようになったことで、一人ひとりに対する最適なマーケティング活動が可能になりました。この活動は、最終的にファンの皆様の満足度につながっていくと実感しています。

アプリの機能拡充を皮切りに、 IT企業が運営するスポーツクラブの理想形を目指す

━━FC東京側として、今後の公式アプリの目標を教えてください。

柳田 FC東京側としては次の3つの目標を掲げています。一つ目は、毎日開きたくなるようなアプリにすることです。FC東京に関することはすべてアプリ上で完結できるワンストップのインフォメーションアプリを目指しエンターテインメント的な要素も盛り込んでいきたいと考えています。

二つ目は、スタジアムマップ機能を拡充させることで、スタジアム体験の価値を提供することです。三つ目は、サポーター同士のコミュニケーションの場として、盛り上がれる場を生み出すことです。初めてスタジアムに足を運ぶ人に、優しく手を差し伸べてくれるファン・サポーターがいるようなコミュニティが生まれることを期待しています。

宮部 アプリ自体はデジタルですが、機能を使う場面としてはオフラインが多いので、たくさんのサポーターの方に「アプリを持っているとオフラインでの観戦体験が便利になる」と実感いただけたら嬉しいですね。サポーターが来なければアプリは使ってもらえないですし、アプリがあるからといって新規のサポーターが来てくれるわけではありません。試合が多ければ多いほどアプリの利用価値も上がっていくので、新規サポーターやリピーターを増やすために、オフラインとオンラインを交えたマーケティング施策を実施することがサッカービジネスの肝だと思っています。

━━MIXI側の今後の目標を教えてください。

高田 MIXI側としても、3つの目標を掲げています。まず一つ目は新規・既存ファンに向けて、もっとFC東京にコミットしてもらえるような情報ツールとして、アプリが起点となって動いていくことです。

二つ目は、FC東京公式アプリの開発・運用で培ったノウハウを活かし、MIXI GROUPのバスケットボールチームである千葉ジェッツのファン・ブースターにもしっかり届けることです。自分たちが運営するクラブのファン、サポーター、ブースターの皆様に満足感の高いサービスを提供することが私たちの使命です。

三つ目は、アプリ運用において同じような悩みを抱えるJリーグやBリーグなど他クラブの向けのビジネス展開です。スポーツ事業のクラブの先にいるファン・サポーターに対してMIXIができることがあれば、他クラブともパートナーを組み、スポーツ業界全体を盛り上げていきたいと考えています。

宮部 またカスタマーデータをどう分析し、どう活かすかというデジタルマーケティングの支援にも力を入れていきたいと考えています。ポイントプログラムの導入や決済のキャッシュレス化など、スタジアムのDX支援も進めていきたいですね。デジタルマーケティング領域を幅広く支援することで、IT企業が運営するスポーツクラブの理想形を示していきたいと考えています。FC東京のスタッフの方々と協力し、次世代のスポーツクラブとして最高の顧客体験を提供できるマーケティングを実施し、日本の中で最先端を走っていけるように支援していきたいと思っています。

━━FC東京公式アプリを発展させていく上で、エンジニアの存在は欠かせませんが、アプリ開発エンジニアに必要なものは何だと思いますか?

宮部 経験やスキルよりも、新しい価値を提供していきたいという気持ちだと思います。スポーツビジネスはオフラインのビジネスでありながら、デジタル領域の最先端技術を導入する余地がまだまだあります。スポーツマーケティングDXグループでは、スポーツに関わる仕事がしたいという思いと、新しいソリューションを試してみたい、という両軸を実現できるチーム。そういったところに共感していただける方であれば大歓迎です。

柳田 スポーツビジネスはまだまだ未成熟な業界であり、伸びしろが大きいと感じます。やれることは本当にたくさんあるので、新しいチャレンジをやりがいに感じてくれる方と一緒に働きたいですね。

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