コミュニケーションサービスは、 作り手とユーザーの熱量で作られている 【前編】

コミュニケーションサービスは、  作り手とユーザーの熱量で作られている 【前編】

モンスターストライク」(以下モンスト)の生みの親、代表取締役社長の森田、取締役の木村、そして「Find Job!」「mixi」「みてね」を生み出した取締役会長の笠原に、ミクシィグループが大事にしている「コミュニケーション」について様々なテーマを設けて対談を実施。

前編では、ミクシィグループが展開するサービスにコミュニケーションとの関係が深いことから、「コミュニケーションサービスを創る理由と、サービスの未来」について語ってもらい、TOPの思考をひも解いてみました。
(写真左:取締役会長 笠原健治 中:代表取締役社長 森田仁基 右:取締役 木村こうき)

後編はこちら

熱量に興奮

━━━━まずは、コミュニケーションサービスの面白さに気づいたきっかけや体験について聞かせてください。

森田 じゃ、もちろん笠原さんから。

笠原 いいですか(笑)。

森田/木村 どうぞどうぞ(笑)。

笠原 では(笑)。個人的な体験というよりも、きっかけはネットサービスをやりながら気付いた部分が大きかったかな。20年前「ネットは、大量の情報を瞬時に検索できるのが良い」とAmazon創立者、ジェフベゾスの言葉の影響もあって求人サイト「Find Job!」を作ったし、最初から【コミュニケーションサービスの価値】に気付いていたわけじゃない。ただ、「ネットの価値は双方向性、個人でも情報発信ができる時代が来る」と言われていて、掲示板、個人のホームページ、メッセンジャー、ブログ等が生み出されていき、様相が変わり始めたのはなんとなく感じていましたね。その時代背景の中、SNSの可能性に気付くことができ、自分達で「mixi」を世の中に提供していくことになりました。

mixi」を始めてみて一番驚いたのは、ユーザーの熱量。もちろんコミュニケーションのインフラになるサービスをやりたい想いがありましたが、ユーザーがこんなにもサービスを熱心に使ってくれるとは思っていなくて、本当に想像以上だったなあ。滞在時間、アクティブ率、ハマり度合いなどどれをとってもケタ違いだったし。

そこで感じたのは、コミュニケーションサービスの凄さ。「人って、自分のことや大事な友達のこと、好きな人のことに熱心なんだな」と思いました。そしてインターネットは人と人をつなげていく技術革新でもあるのだ、と実感しました。「人×コミュニケーション×インターネット」の組み合わせ、これは最強ですね。

森田 そうですね。といっても、20年前はそこまで深くは考えていなかったけどね。

僕の場合だと、仲の良い友人と遊ぶことが好きだった。それがコミュニケーションサービスに関わっている大きな要因かな。今でもそうだけど、仲間と集まってくだらない話とかよくするし、ゴルフや麻雀なんかもそう。気の合う友人と思い出を作っていきたいと思うタイプで、「友人とのコミュニケーションが好き」という想いが根底にあるね。

木村 同じ意見ですね。私の場合も友人との関係が強烈に影響していて、スポーツやゲームなど、友達と夜通し遊んで過ごしてましたから。

実は学生時代、ゲーム開発に憧れを持っていて、ゲームの企画書を「ゲーム甲子園」に応募したことがあります。「アニメーションアクター」という企画タイトルで、複数の人が非同期で自分のキャラクターを操作し、後ほど同期し編集したら映像が作れるようなゲームを想定していました。当時はネットが今ほど発達していていなかったし、パッケージ型だと実現が難しかった。当時のゲーム企画については、「俺が時代を先取りしすぎたから実現できなかった」と解釈しています(笑)。

それから同時期にハマっていたのが、「ヤフオク」とか「ヤフーチャット」などのネットサービス。

森田 僕もハマってた(笑)。

木村ゲームへの憧れを持ちつつも、インターネットサービスのコミュニケーションの方に熱中してました。簡単に他者とコミュニケーションが取れるし、ネットサービスも簡単に作れる。当時は通信手段が電話ぐらいしか無かったからこそ、テキストでタイムリーにやりとりできるところが新鮮だったのかもしれないですね。

━━━━親しい友人と一緒に楽しむというのが、ベースにあるわけですね。コミュニケーションサービスの面白さはどこにあると考えていますか。

笠原 熱中や興奮、中毒性など「熱量」を生み出しやすいところですね。「mixi」でいうと、簡単にテキストで非同期コミュニケーションが取れ、拘束されずにゆるふわな感じで友人や知り合いの近況を知ることができます。サービスのコミュニティ内では普段知り合えない方と友人になれますし。「LINE」や「Instagram」など、様相はそれぞれだけど、コミュニケーション性の強いサービスってユーザーの熱量を生み、サービス利用ユーザーのバイラル的な広がりやサービスのファンができたりする。そしてサービスとしてハマれば、一種の社会現象を起こす可能性を秘めていると思う。それって新しい文化だと思うし、それを作っていけるところが一番の醍醐味です。

木村 「モンスト」は、「mixi」の補完関係にあるかなと。非同期のコミュニケーションサービスは、遠距離や直接会っていない場合でも親しい人の近況を知ることができるけど、実際に会っているときのコミュニケーションをネットの技術を使ってどう最大限にするべきか。「モンスト」はみんなで集まって、共通の画面を見ながら共通の体験をその場で一緒にできるからこそ、大きな熱量を生み出しやすい。これまでインターネットサービスって、離れたユーザー同士がサービスサーバーを通してつながる、というある種の固定観念のようなものがあったけど、もっとユーザー同士がその場でつながることができたら面白いんじゃないかと思っていて、それが実現できたと思うんです。

森田 そういえば、「みてね」が生まれたきっかけは、笠原さんの原体験が大きいですよね。

木村 可愛い娘が生まれたからこそサービスが生まれたんですよね(笑)。

笠原 まあまあ(苦笑)。子供の可愛さや面白さをいつでも自分自身で堪能したいし、他の人にも自慢もしたい。ただ誰にでも自慢するわけにはいかないし、子供を見たがっている人にだけみせたい。情報を受ける側が視聴率100%のファンだけであれば、発信側もストレスなく心地良く発信しやすい。だから、コミュニケーションサービスがクローズドである必要がある思いました。

森田 Web業界で働く人に子供が生まれたら「みてね」を使い始めた、もしくはずっと使っているって話を色んなところから聞いてますよ。

笠原 嬉しい限りですね(笑)。

森田 話は少し変わるけど、コミュニケーションサービスの考え方も変わってきましたよね。ミクシィグループはある種、総合デパートのように多種多様なコミュニケーションサービスを生み出しているし、ユーザーの利用シーンが思い浮かぶサービスを作っているよね。

しかし、世の中ではC to Cも一種のコミュニケーションサービスになっている。外を見渡せば「メルカリ」「LINE」など、多数のユーザーを抱える良質なサービスがあり、僕らが同様のものを生み出せなかったことは、正直、悔しい。一方、将来新しいコミュニケーションが生まれ、現在のサービスに取って代わるようなものが出てくる可能性が高い。そんな時に僕らはトライし続け、良いものを作り新しい価値を提供できれば新しい文化を作ることができると思う。理由は、ミクシィグループ創業当時からの、コミュニケーションサービスにかける想いを脈々と受け継いでいるから。

本能的にコミュニケーションが発生するサービスが理想

━━━━熱量を生みやすい点はありますよね。次はコミュニケーションサービスの理想について教えてください。

木村サービスによって異なるとは思いますが、XFLAG スタジオのサービスに関しては、テンションが爆上げできるものを。これはいつもメンバーに話している通り、ユーザーだけでなく制作側も学園祭のようなノリで楽しんでほしい。そんな環境を生み出せたら、幸せだなと思います。ゲーム・イベントのエンターテインメントや今取り組み始めているスポーツ関連でも、そのような空間を作っていきたいですね。ここだけは笠原さんに負けたくないですし(笑)。

笠原 (笑)。

森田 理想のサービスやあるべき姿を定義するのは難しいね。というのも、デバイスや環境によってめまぐるしく変わるから。例えば、今や若い子はハッシュタグでやり取りするコミュニケーションが当たり前になっているし、言葉も生まれる。「マジ卍」なんて言葉も、最近知った(笑)。ただ「人の心をくすぐるしかけ」はそんなに変わらないと思うし、そこを追求していけば近づけると思んだけど、どうしてもこの辺りは感覚的な表現にならざるを得ない。具体的に言葉にできるような事なら、きっと誰にも真似できてしまう。

笠原 理想のサービスといえば、関わってきたサービスや自分のパーソナリティの影響からか、心地良さや発信受信のストレスがないというところかな。特に私自身、高いテンションが苦手だったり、大勢の前で大きな声で話したりが得意じゃない(苦笑)。だから、どちらかというと情報発信に苦手意識がある方でも、主役感を得られ、心地良さを感じるサービスだったらいいかなと思う。

森田 人々の本能的な欲求にどれだけ自然な形で寄り添えるか、例えば、思わず友人を誘ってしまうような仕組み。なかなか言葉で言い表すのは難しいけど、無意識にユーザーがアクションする、本能的にコミュニケーションが発生するようなサービスが、あるべき姿かもしれない。これって思ってる以上に深いコミュニケーションの感覚が必要だと思う。昔、「mixアプリ」をサードパーティーに作ってもらう時に、SNSmixi内の友人達のソーシャルグラフを活用したプロダクトが、どうやったらうまくできるかについて説明して回ったけど、あまりうまくいかなかった。

木村 難しいですよね。面白いコンテンツの視点ではなく、コミュニケーションオリエンテッドで考えて、何が重要なのか、どうしたら盛り上がるのかという視点で考えていたから。どうしても重要視している価値の相違が出てしまう。

森田 そう。各サードパーティーは何らかの過去の成功体験を持っていたはずだから、無意識にその方向性に寄せていく傾向がありましたね。僕らは軸がコミュニケーションなので原点がそもそも違っている。バンドでいう、音楽性の違いみたいなものです。なので、「サンシャイン牧場」や「みんなの検定」などコミュニケーションを軸に置いていたサービスは、ユーザー数も莫大に増えましたし、「mixi」のプラットフォームでハマったんだと思います。

━━━━コミュニケーションサービスの設計は簡単に説明できない箇所も多々ありますよね。とはいえ、サービスがもたらす影響力、社会的価値、経済価値は底知れないパワーを秘めていると思います。

森田 世界規模で見ると、ヒットしているサービスの大半はコミュニケーションサービスばかり。その観点から考察すると、コミュニケーションサービスって大多数の人にとって無くてはならないもの。それだけ人はコミュニケーションして生きているということの証明でもある。

木村 経済価値の観点からだと、良い意味で消費を生み出し、価値につなげているところがあるかと思います。「XFLAG」が展開するサービスは、今名付けたんだけど「アッパー系コミュニケーション」かな。つまり、友人達と盛り上がってテンションが上がるときこそガチャを回したり、リアルイベントに一緒に参加したりと、独りでは中々実行しづらいことでもみんなといるとより一層消費意欲をかき立てる可能性が高い。アッパー系コミュニケーションが消費の後押しにつながっているかと思います。

笠原 少し補足すると森田さんの話から、コミュニケーションサービスとしてハマれば、社会現象になるし、裏を返せば大きなビジネスチャンスにつながる可能性を秘めている。木村さんの話で言うとコミュニケーション消費というか、誰かの役に立ちたい、褒めてもらいたいなどコミュニケーションの話題にもなりますし、新しい消費だと思います。

パラダイムシフトの見極めと新規サービス

━━━━社会的インパクトが大きいという点は想定できましたが、新しい消費とは、新たな発見でした。それでは最後に「今後のコミュニケーションサービスの潮流となるのは」という視点でお願いします。

森田 SNSに関していえば、どちらかというとクローズドの方向で、その集大成というか完成形が家族単位と思う。SNS上の知り合いや友人を増やせば増やすほど、心地が悪くなるデメリットもありますから。家族であれば基本的に永久に続くし、ずっと続くソーシャルグラフのコミュニケーションサービスとして面白いかもしれない。

笠原 より楽な、心地良い、ストレスがかからないってところがベースですね。テキストから、写真、動画、ライブへと変化していると思います。ARやVRなども注目はしていて、今はまだ重たい体験だけど、いずれ最適な形になった際にチャンスが訪れると思う。

森田 法律やデバイス環境の変化ってわかりやすいし、大きなビジネスチャンスなんだよね。スマートフォンの誕生があったからこそ、LINEやfacebookがここまで巨大になったと思うし。自戒の念を込めて言うと、SNS「mixi」はスマートフォン対応が遅れ、苦戦した過去がある。

一番わかりやすいチャンスはスマートフォンの次のデバイスがきたときかな。そのタイミングを逃すことなく準備を進めていきたいね。パラダイムシフトがいつ起こるか誰にもわからないけど、これまでも世の中を動かすサービスを作ってきた僕らならやれると思う。ただ「新しい文化をつくる」ってミッションを掲げているからこそ、社会的にどれぐらいインパクトがあるのかという視点でアクションを起こす必要はあるね。

━━━━パラダイムシフト、つまり、法律やデバイスの変化など節目のタイミングが大きなチャンスになるわけですね。そのタイミングにどんなサービスを生み出していくか教えてください。

森田 たくさんありますね。その中には、世間がアッと驚くのも含まれるかもしれない。今ある事業ミッションや各サービスコンセプトを変えずにやっていくよ。

笠原 「心地良い」の軸でサービスを作っていきます。詳しくは言えないですが、絶賛研究開発しているプロダクトもありますよ。

※後編はコチラ

PAGE TOP