モンストのキャラクターはどうやって作られる?制作工程を0から追いかけてみた

モンストのキャラクターはどうやって作られる?制作工程を0から追いかけてみた

ゲームを楽しむ上で欠かせない『モンスターストライク(以下モンスト)』の個性豊かなキャラクターたち。いったいどのように作られているのでしょう。そこで今回は、デザイナー・吉岡に具体的なキャラ制作工程について聞きました。実際に使われたラフデザインを使いながら“モンストキャラができるまで”を詳しくレポートしていきます。

 

キャラクター紹介
制作工程を紹介するモンストキャラは、大典太光世(おおでんたみつよ)。天下五剣と評される剣客の一人。年齢は15歳。高貴な身分のお嬢様だけれど、性格はじゃじゃ馬で天真爛漫、というのがキャラ設定です。

▲ 大典太光世(進化前)


▲ 天下五剣と評される5人の剣客

 

大典太光世(進化後)はこうして作られた
モンストキャラの場合、進化前・進化後・神化と3パターンがあり、同時制作されるのが一般的。今回は、大典太光世の“進化後キャラ”にフォーカスして、できあがるまでの工程を紹介していきます。

【0日目】デザイン開始
キャラクタープロデュースグループから、想定表(※)が渡される。ここからすべてのキャラ制作が始まります。大典太光世の想定表は、以下の内容でした。
(※)想定表とは、キャラに関する情報がテキストやイメージ画像で記載された表のこと。名前、性別、年齢、性格、設定などが細かく書かれている。

【大典太光世の想定表】

・名前:大典太光世(おおでんたみつよ)
・性別:女
・年齢:15歳
・性格:じゃじゃ馬で、天真爛漫。行動力はあるが、感情的に動いてしまうのが短所。箱入り娘なため、世間とはずれた考えを持っている。
・ストーリー設定:天下五剣と評される剣客の一人。高貴な身分のお嬢様で、悪霊や妖怪などを倒す陰陽師的な家系の息女。大好きな妖怪がボスに操られて悪さをしていることを知り、開放してあげたいと思う。そのため、両親の反対を押し切って城を抜け出し、ボスを倒すために旅を始める。しかし、どこにボスがいるか知らないため、行き当たりばったりな旅をしてとらトラブルを解決するのが現状。
・ルックスの設定:金色多めの衣装、洋服ベースの和風の混ざったような服、旅のトランク

 

吉岡
吉岡
想定表に書かれたテキストやイメージ画像を見ながら、キャライメージをどんどんと膨らませていきます。たとえば、じゃじゃ馬で、天真爛漫というところから、天然なのかな?少し幼さがあるのかも?だったら髪型は二つ結びのほうが表現できる…?というような感じ。頭の中でイメージして自由に動かしていきます。

それから、他のキャラの特長や印象と類似しないことは、キャラデザインする上でとても重要です。その子独自の個性を持たせることは、ユーザーに覚えてもらい、好きになってもらうためには欠かせない要素なんですよね。

しかも今回の大典太光世は天下五剣の一人なのですが、想定表を受け取った段階で他の4人の剣客のキャラは決まっていたので、髪の長さや髪型、背丈などがかぶらないよう注意しながらキャラクターを形作っていきました。

 

【デザイン開始から2週間後】ラフ完成&キャラプロ提出
キャラデザインのラフ完成しました。この段階で、キャラの髪型・衣装・小物など細かなところまでデザインされています。キャラを作り上げる全てのものにはきちんと意味があり、たとえば着物に描かれた牡丹の花。牡丹の花言葉は、高貴・風格のあるという意味があります。大典太光世のキャラ設定とされていた“高貴な身分のお嬢様”のイメージを表現しています。

とはいっても、一人でデザインに没頭しているとどうしても広い視点が持ちにくくなるもの。そこで、モンストのキャラデザインは、必ず確認担当と呼ばれるイベント全体を統括する方相談役とペアで担当します。キャラプロからオーダーされた世界観とずれていないか、的確に表現できているか、アドバイスをもらいながら形にしていったそう。

完成したラフをキャラプロに提出。イメージとの相違がないか、他のキャラとかぶっていないかなどのやり取りを行ないます。

▲大典太光世(進化前)のラフが完成

 

吉岡
吉岡
モンストのキャラを制作する際には、進化前・進化後・神化後の3パターンのつながりを考えてデザインしていきます。

たとえば、大典太光世の髪の毛の先。少し光らせているんですよ。グレーっぽく見えている部分です。実は、これは、神化になるためのトリガーみたいなもので。神化すると、この毛先が青く光って髪がぶわーっと長くなるんです。
“進化後”だけで完結するキャラクターではなく、その前後をデザインしていくことでストーリーを持った魅力的なキャラクターになるんだと思います。

 

ちなみに…
大典太光世(神化後)のデザインラフはこちら

▲大典太光世(神化後)のラフも同時進行で制作

 

【デザイン開始から3週間後】キャラ絵(初稿)完成
キャラプロからOKがでたら外部クリエイターにキャラ絵制作を発注。内部で制作することも多く割合は半々。どちらにするかは、制作スケジュールやデザイナーの技術力・キャパ・熱量によって決定していきます。“自分でやりたい”と手をあげて担当が決まることもあるそう。

この日は、外部クリエイターから3つの構図が上がってきたので、早速確認!一番重要なのは、キャラクターの魅力を存分に引き出せているどうか。大典太光世らしいキャラになっているか、確認していきます。

 

▲3つの案の中から選ばれた構図

吉岡
吉岡
今回、外部クリエイターからいただいたキャラ絵の初稿を見て感動してしまいました。というのも、伝えていた性格や設定ストーリーを汲み取ったデザインが、“ゲーム内で使われるサイズ”で見事に表現されていたからです。
比べていただくと分かると思うのですが、最初に私が書いたデザインのラフは縦長だったのに対して、上がってきた初稿は正方形に近い形をしていますよね。これは、モンストのゲーム内に登場するキャラは、基本、正方形サイズになるからなんです。
細かすぎる表現はスマホで反映されなかったり、つぶれてしまったりするので、このフェーズにおいては規定の画角内で、キャラの魅力を表現していくことが求められています。

 

【デザイン開始から6週間後】キャラ絵(詳細ラフ)完成
外部クリエイターが制作した3つの構図から1つを選択し、ブラッシュアップ。
修正を繰り返し、キャラ絵(詳細ラフ)を完成させていきます。

 

吉岡
吉岡
外部クリエイターさんと話合いを重ねながら何回か修正を重ねていくのですが、個人的にはこの工程はすごく好きですし楽しいですね。どんどんキャラの個性が引き出されて行って、最初に自分が作ったときには気づけなかったキャラの魅力を発見することも多くあります。

また、私がクリエイターさんに対して修正をお願いする場合に気を付けているのは、修正理由も伝えること。たとえば、左下にいる緑のモンスターの胸についているまが玉。別のモチーフに変更してもらうようお願いしています。その理由は、まが玉は別シリーズで特別な意味付けしているからなんです。きちんと背景も伝えることで、クオリティが全く違ってきます。

 

【デザイン開始から3か月後】着彩仕上げ
完成したキャラ絵(詳細ラフ)に着彩し、いよいよ仕上げの段階。
色がのせられて、より表情豊かに。描かれたキャラクターがイキイキとしてきました。


▲詳細ラフ完成後、着彩していく

 

【デザイン開始から3カ月後】キャラ絵 完成
最後の調整を行なって、ついに完成!

キャラ絵完成後はゲーム用に縮小したデータをエンジニアチームに渡し、さらに表現的NGや商標登録の問題がないかを法務や知財の方々にチェックしてもらい終わりです。


▲大典太光世(進化後)のキャラ絵完成

 

吉岡
吉岡
着彩における最終的な変更点についていうと、たとえば刀を振り下ろしたときのエフェクト。黄色一色だったものを限定キャラクター意味合いを重ねて虹色にしています。他には、目の色はピンクから紫に。髪の毛の色と似ていたので同化してしまう印象が強かったので変更をかけました。それから、肌の色も。スマホでチェックした時に、ホワイトが強く色がとんでいるように感じたので少しトーンを落としています。
こんな風に一枚のイラストで見るのではなく、ゲーム内で動くキャラであることを前提に最終的なチェックを行なって、完成へともっていきます。

数カ月かけて完成してキャラは思い入れたっぷり!自分の子供のような感覚で、大好きになっちゃいますね

 

キャラクターデザインにかける思い
最後にキャラクターデザイナーとして活躍する吉岡に、モンストのキャラデザインにかける想いについても聞きました。

キャラ制作を手掛ける中での一番の楽しさは、“こんなイメージ”でしかなかったものを自分の絵として落とし込んでいけることでしょうか。モンストのキャラは、しっかりと性格やストーリー設定がされていますから、そこからどういう子なんだろう…と考え、頭の中で自由に動かしながら、少しずつ描き、命を吹き込んでいく作業は本当に楽しいですね。そして、出来上がったキャラに対して、周りから「いいね」と言われたり、リリースしてユーザーから大きな反響を得られたときは最高の気分!

その反対に、ユーザーが満足されていない意見をいただくと本当に悔しい…。キャラのファンになってくれるはずだった人なのに…と思うとショックは大きいですね。でも、それが次に頑張ろうというパワーにもつながっています。

今後は、デザインを通じて“発明”をしたいですね。これまでに存在していなかった新しいものを生み出せたらと思います。まだ誰も表現していない、自分らしいものをクリエイトしていきたいと思っています。

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