FC東京の「2030VISION」とは?MIXI本社で開催されたワークショップ開催レポート

FC東京の「2030VISION」とは?MIXI本社で開催されたワークショップ開催レポート

2022年2月、MIXI GROUPとなったJリーグクラブ・FC東京。新たなクラブフィロソフィーを掲げて走り抜けた初年度を終え、2シーズン目の開幕を迎える前のオフシーズン期間に、MIXI本社(渋谷)にスタッフを集めたワークショップが開催されました。

クラブフィロソフィーより一段と解像度の高いものとして策定された「FC東京2030VISION」の理解促進と浸透を目的とした今回のワークショップ、どのように設計され実施に至ったのか、川岸代表と柳本常務、そして講師を務めたFC東京クラブコミュニケーターの石川直宏氏に話を聞きました。

<目次>
Part1:川岸 × 柳本 × 石川「FC東京2030VISION」の背景を語る
Part2:ダイジェストレポート
Part3:ワークショップを終えて

Part1:川岸 × 柳本 × 石川「FC東京2030VISION」の背景を語る

石川 直宏(写真左)
FC東京クラブコミュニケーター
1981年生まれ、神奈川県出身。横浜FMのアカデミーからトップに昇格。2002年にFC東京へ期限付きで加わり、スピード豊かなサイドアタッカーとして定位置を確保。翌年、完全移籍を果たし、チームの柱としてプレーするほか、アンダー代表やA代表でも活躍。2017年に引退するまでFC東京の象徴であり続け、現在は「FC東京クラブコミュニケーター」を務める。Twitter / Instagram

川岸 滋也(写真中央)
東京フットボールクラブ株式会社 代表取締役社長
1999年 株式会社NTTドコモ入社。2008年7月 MIXI入社。2012年 株式会社リクルート入社。2020年7月 MIXIに復帰。ライブエクスペリエンス事業本部 スポーツ事業部の事業部長を経て、2022年2月 Jリーグクラブ FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社 代表取締役社長に就任。

柳本 修平(写真右)
東京フットボールクラブ株式会社 常務取締役
株式会社NTTドコモを経て、2008年MIXIに入社。SNS mixiのサービス企画、経営企画、アドテクスタジオなどを経験。2016年7月XFLAGスタジオ本部 人事戦略室の室長に就任。2018年4月、執行役員人事領域担当。2020年4月 執行役員 人事本部長就任。2022年2月 FC東京の常務に就任。

━━「FC東京2030VISION」について教えてください。

柳本 これまでFC東京の経営陣はクラブフィロソフィーに基づき、2030年を一つのゴールに据えて、「どのような姿を目指すのか?」「どういったビジネスモデルを構築していくべきか?」を議論してきました。そのなかでクラブフィロソフィーより、一段と解像度・リアリティを高めたビジョンとして明示化したものが「FC東京2030VISION」です。

川岸 クラブフィロソフィーについては現場の皆さんの意見をヒアリングしながら言語化しましたが、「FC東京2030VISION」はフィロソフィーを礎にしつつ、経営陣が中心となって策定した背景もあり、スタッフにビジョンを伝え、浸透させ、自分事として落とし込んでいくプロセスが必要だと思っていました。

柳本 このビジョンをFC東京のスタッフに自分事化してもらうために何が必要なのかを考えていた矢先、タイミング良くFC東京のクラブコミュニケーターである(石川)直さんのワークショップに参加する機会があったんです。そのワークショップの内容が「自分のビジョンを考える」というものだったので、これを応用すれば「FC東京2030VISION」の理解・浸透に有効そうだと思いました。

━━具体的には、どういったところに親和性があったのですか?

柳本 直さんが現役時代に怪我で苦しんだ話、コミュニケーションによって自分が助けられた話など、周囲とどう関わりながら成長してきたかという話があって、この価値観はMIXIでいう“相互理解”と近しい考え方だと思ったんです。

いわゆるビジョンを社員に落とし込む研修は世の中にたくさんあるので、どこかの講師にお願いすることも検討していましたが、いかにも教科書的なビジネス研修になってしまいかねません。そうなると当事者意識を持ってもらえないかもしれないという懸念もあったので、FC東京スタッフと親しい直さんにワークショップの講師を依頼することになりました。

川岸 MIXIがFC東京の経営にジョインしていくなかで、「新しいFC東京はどこに向かっていくのか?」ということはサポーターだけでなくクラブ内のメンバーも注目していたところだと思うので、一年かけて作ってきたビジョンを共有し、一人ひとりが咀嚼してもらうのはすごく重要なプロセスだと考えていました。

「2030VISIONワークショップ」がその最初の取り組みとして開催できたこと、そして媒介役として直さんの今までのクラブとの関わりやこれまで築いてきた関係値をお借りして、進められたのはすごく良かったなと思います。

━━そもそも石川さんが務める“クラブコミュニケーター”とは、どういった役割を担っているのでしょうか?

石川 私の仕事は、クラブと地域や社会、ファンとコミュニケーションを図り、一体感を生み出していくことです。クラブに関わる人たちが、長く一緒に働く上でビジョンを共有し、対話していくことで、自分の人生とクラブを重ね合わせられる面積を増やしたいというのが、私の希望でした。

現役を引退してからは、クラブに関わる人たち一人ひとりが尊重され、お互いを認め合う風土はそのままに、さらに一歩踏み込んで距離感を近づけるきっかけを作りたい、とずっと考えていました。

FC東京がMIXI GROUPの一員となり、川岸さんや柳本さんを中心にクラブフィロソフィーが新たに策定され、今回さらに解像度の上がった2030VISIONができました。これをクラブに関わる人たち全てが、より自分事化できれば素晴らしいと思ったんです。

また、新型コロナウィルスの流行もあいまって、クラブがどこに向かっていくのか、現在地はどこなのかが明確でないと、選手もスタッフもサポーターも右往左往してしまいます。そういうところを変えるためにチャレンジし、トライ&エラーを重ねながらも、進化を加速させていくために、今回のワークショップがいいきっかけになればと思っていました。

━━ワークショップの構成はどのように組み立てられたのでしょうか?

柳本 私が最初に参加した直さんのワークショップでは、「自分自身を知る」「自分のモチベーションの根源とは何かを知る」「自分のビジョンを掲げる」「自分のビジョンをどう達成するか」という内容で構成されていましたので、今回のワークショップには、そこに「FC東京2030VISION」と「2030年の自分のビジョン」を結びつける要素を加えてほしいとオーダーしました。

石川 その話を受けて、「まず自分が経験してきたこと、学んできたところに、どうクラブのフィロソフィーやビジョンを重ね合わせられるか?」を川岸さんから話をしてもらうことが重要だと考えました。

川岸 FC東京では月に2回ほど全体会議を実施しているのですが、そのなかで触れなかった部分や本音の部分をワークショップでは話すようにしました。

柳本 川岸さんによるビジョン概要説明、自己紹介など、タイムマネジメントは細かく調整しました。また、MIXI本社がある渋谷でワークショップを開催するということもポイントです。2030年、日本の首都・東京を代表するクラブのビジョンを自分事にしていくためには、ぜひここからの景色を見て刺激を受けてほしいと思っていました。

Part2:ダイジェストレポート

FC東京の「2030VISION」ワークショップをMIXI本社(東京都渋谷区)セミナールームで開催。冒頭、柳本常務よりガイダンスが行われました。


川岸代表よりFC東京の新経営ビジョン「2030VISION」の概要を解説。


東京ガスの社員選手としても活躍した、大金直樹会長も登壇。これまでのクラブの歩みと、今後のビジョンへの期待が語られました。


石川氏がナビゲーターとなり、FC東京の「2030VISION」を自分事として共有するためのグループワークを実施。


アイスブレイクを兼ねた参加者同士の自己紹介タイム。出身校や趣味の話など、意外な発見があり、予定時間をオーバーするほど盛り上がりました。


3人ずつ×5つのグループに分かれ、フレームワークを活用したグループワークを実施。最初のグループワークは、お互いの個性・特徴を擬音語・擬態語で表現する「オノマトペ・ワーク」。


続いて「ビジョン・フレーム」を活用し、各自が考えるビジョン実現のアイデアをまとめていきました。


石川氏がグループワークの進行をサポートしながら、各テーブルで熱い議論が交わされました。


4時間におよぶ「2030VISION」ワークショップが終了。

Part3:ワークショップを終えて

【石川氏】
ワークショップでは、自己紹介やビジョンの言語化など、自分の思いをアウトプットする機会が多くありました。印象的だったのは、皆さんのアウトプットの熱量が高かったことです。お互いの関係性の質を高めていくためには、心理的安全性が保たれた環境で、自分の思いを素直に表現して良いんだと感じてもらうこと、その上で自分の得意・不得意を理解することが重要です。皆さんの熱量に触れるなかで、自分の思いを正直に表現できる場所をもっともっと作っていきたいと感じました。

1回のワークショップでガラッと組織が変わるとは思っていません。大切なのは、継続していくことなので、もっと自分とクラブのビジョンを仕事にどう活かしていくか?というところまで落とし込んだワークショップを重ね、そこに関わる人たちをどんどん増やしていくことを意識して取り組んでいきたいと思っています。

今回はビジネススタッフのみの参加でしたが、今後は選手やトップチームのスタッフ、育成・普及のコーチ陣やファン・サポーターなど、さまざまなステークホルダーにも展開していきたいです。みんながビジョンに対してそれぞれの価値観や立場で語り合って、クラブの目指す方向性を語り合える集団になったら、とても魅力的ですし、強いチームになるでしょう。さらに、「このクラブに入りたい」という理由の一つにもなると思います。「ビジョンに憧れて入りました」、「そのビジョンを達成するために来ました」という人が出てきたら組織は大きく変わるはず。その力に自分はなりたいと思っています。今後も一つひとつ積み重ね、修正しながら良いワークショップを開催していきます。まだまだ改良の余地はあります。課題は多いですが、自分にとってはモチベーションになったり、次へのエネルギーになっているので楽しみです。

今回のワークショップは、MIXIとFC東京という二つの価値観を融合させて新しい価値を生み出し、みんなでFC東京の未来を想像していく、その一つのきっかけだと思っているので、期待やワクワクする気持ちをみんなでシェアしながら、ビジョンの達成に向けて取り組んでいきたいと思っています。

【柳本氏】
参加者アンケートによると、ほとんどの参加者が「ビジョンについて理解が深まった」と回答してくれたので1回目の手ごたえとしては上々です。「ビジョンは全員が理解すべきことだから、他の人も受講してほしい」と答えてくれた人も非常に多かったです。他者推奨が強いということは、それだけ有意義な時間を過ごしてくれた証拠だと思います。課題としては、「自分のビジョンを考える時間が少ない」「経営陣からの説明をもっと深く聞きたい」という意見もあったので、タイムマネジメントや構成面を、次回以降改善したいと考えています。

今回の「ビジョン」を軸にしたワークショップはFC東京にとって新しい取り組みです。FC東京がMIXI GROUPにジョインしたことで、ポジティブな変化が起きるきっかけになっていると実感しているので、今後も継続していきたいですね。

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