コミュニケーションの力で法務のイメージを覆す。VALUESを胸に切り拓く「信頼」への道

- 八坂 俊輔
- 慶應義塾大学を卒業後、東京大学法科大学院を修了して司法試験に合格。弁護士としてアンダーソン・毛利・友常法律事務所で約6年間経験を積み、2023年11月にMIXI入社。現在はコンプライアンス本部 法務部 戦略グループに所属し、インハウス弁護士としてM&Aや新規事業などに関わっている。
このたび行われた「MIXI AWARD 2025(以下、AWARD)」で、企業理念 PMWV(※)のVALUESを体現した社員としてVALUES賞 全社部門 大賞に輝いた八坂 俊輔。2023年にキャリア入社し、法務部でインハウス弁護士として働く八坂が、コミュニケーションを第一に考えて周囲と信頼関係を築いてきたエピソードや、VALUESへの想いを語ります。
※PMWV……MIXIの企業理念。PURPOSE「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」MISSION「『心もつながる』場と機会の創造。」MIXI WAY「ユーザーサプライズファースト」VALUES「発明・夢中・誠実」
受賞を誓ったあの日から。「伝える力」と「夢中」で信頼を得て、有言実行へ
並み居る候補者の中からVALUES賞 全社部門 大賞に名を刻んだ八坂は、MIXIにキャリア入社してまだ1年半。快挙の背景には、昨年からの強い想いがあったと話します。
実は昨年のAWARDが終わった後、新人賞の対象期間でもあったので、上長に『来年は絶対に新人賞を受賞します』と宣言していました。なので新人賞をめざしていたところ、まさかのVALUES賞をいただきました。
受賞後は、法務部の皆さんに『有言実行でしたね』と言っていただきましたし、他部署とのミーティングの時には『おめでとうございます』と祝ってくださるなど、大賞受賞の影響の大きさをあらためて実感しています
八坂が在籍するのは、法務部の中で新設されたばかりの戦略グループ。インハウス弁護士として、M&Aや新規事業といった大規模プロジェクトに携わっています。
主に社内全体を巻き込むようなプロジェクトに法務部を代表して案件の初期段階から関わり、法務面でのサポートを担っています。たとえば、M&Aでは、基本契約にどのような内容を盛り込むかについて相手方と交渉する必要があり、社内向けに法務観点で交渉の進め方をアドバイスします。また、投資部門や財務部門と連携しながら、MIXIとしてどこまで相手方からの要求事項を応諾し、逆にどこまでの権利等を求めるかを整理し、交渉を重ねて契約書に落とし込んでいくという流れですね。契約締結後の統合プロセスを含め、案件に対してトータルで関わっていきます。
最近では、ひっぱりハンティングRPG『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)のインド展開に関して、法務部と事業部をつなぐ役割を任されています。インドと日本では法制度が異なるため、たとえばガチャの設計や個人データの取得方法など、インドで展開しても問題ないかどうかについて、インド現地の事務所から見解を得るという流れで進めてきました。現在は、利用規約やプライバシーポリシーなどの具体的な内容を詰めている段階ですね
スケールの大きな仕事に向き合う中で、八坂がもっとも大切にしている価値観はPMWVのPURPOSE「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」だと語ります。
私は、ユーザーに直接関わる機会は少ないですが、『豊かなコミュニケーション』を掲げる会社の一員として、ユーザー以外の方々に対しても丁寧なコミュニケーションを大事にしたいと思っているんです。たとえば、法律に関する言葉って、『違法』とか『リスクが高い』などなじみのない人にとってはインパクトが強いので、他部署の方々と接する時にはどう伝えたらいいのかを常に意識しています。最終的には『八坂が言うんだったら、その通りなんだろう』と納得していただけるような伝え方ができるようにしています。
なので普段から、私自身や法務部全体がどう見られているか、事業部との関係性に気を配っていますね。個人的には、VALUESの『夢中』を体現しようと目の前の仕事に一生懸命に取り組む中で、皆さんからの信頼度を少しずつ積み重ねていけたのではないかと思っています。
苦い経験から学んだ、想いの伝え方。相手の立場を考え、誠実に言葉を尽くす
八坂は現在関わっている仕事において、PMWVのPURPOSEを具体的にどう落とし込んでいるかを語ります。
法務部は法律を扱う部署で、バックオフィスの中でも一般的に保守的で堅いイメージを持たれがちです。だからこそ、事業部の方々から『尋ねづらい』『近寄りがたい』と思われないよう、コミュニケーションにはとくに気を配っています。
たとえば契約書関連のやりとりでは、ヒアリングをした事実を前提とした法的解釈を社内のチャットツールで伝えた後、事業部に直接出向いて担当の方と話し、温度感を伝えるというように、ハードとソフトのコミュニケーションを織り交ぜ、納得いただけるように努めています
丁寧なやりとりの積み重ねによって、周囲にもよい影響が出てきていると実感している八坂。
人間同士なので、オンラインが便利であっても、直接会ってコミュニケーションをとることを大切にしなくてはいけないと思っています。直接会うことでこそ伝わる温度感や人柄、信頼感があると思うんです。そうした積み重ねからか、最近では事業部の方から『この件、どう思いますか』と気軽に相談していただけることも増えてきて、法務部に対するイメージが少しずつ変わってきているのかな、と嬉しく感じています。
ちなみに、昨年も『ミクシル』に私の記事を掲載していただいたのですが、その写真では六法全書に見せかけて『モンスターストライク 爆絶大図鑑』を横にさりげなく置くなど、普段から遊び心を大切にしていて、弁護士の堅いイメージをいい意味で裏切れるよう意識しています
こうしてコミュニケーションをなによりも重視してきた八坂ですが、実は1年前には苦い経験があったと言い、「当時の私はコミュニケーションについて語るレベルにもなかった」と反省を口にします。
もともと「モンスト」などMIXIのプロダクトが大好きだという八坂は、それ以来、「事業部目線でも考えること」を徹底してきました。事業部が提案してきた事業内容と法的制約がぶつかるようなケースでは、PMWVの価値観を交えながら対応してきたと話します。
もちろん、法規制が原因で、新規サービスやプロダクトの実現が難しい場合もあります。ただ、私たちも、法律をただ杓子定規に当てはめて『No』と判断しているわけではありません。会社としてどの程度のリスクを許容できるか、他の事業への影響はどうか、MIXIのステークホルダーからの見え方はどうかなど総合的に検討した上で、緻密な議論を重ね、判断しています。実現が難しいことを伝えることで、もしかしたら担当者の方から嫌われてしまうかもしれませんが、それでも判断結果を伝えなければなりません。
そういう時にカギとなるのがVALUESの『誠実』だと思っていて、私は真正面からコミュニケーションをとるようにしています。事業部の方々を招いてミーティングを開き、『このような法的リスクがあります。法務部としても事業部のこと、MIXI全体のことを考えて検討し、このような判断に至りました』と経緯を誠実に説明するように心がけていますし、疑問点などをその場で解消できるようにしています
誠実なコミュニケーションから生まれる絆。重要な局面でこそ、真価が問われる
普段プロジェクトを推進する中では、周囲との一体感を感じたり、協力して成果につなげたりする場面も多いと話します。
たとえば、M&A関連で突発的な対応が発生し、翌日までの書類提出を求められるケースもよくあります。その際にはすぐに書類を確認し、社内の各所から承認をもらうために事前協議を進めます。社内外の方々と調整して話を詰めつつ、最終的に締め切りに間に合わせるという流れになるのですが、これは私一人では決してできないことです。一緒に取り組んでいる皆さんが、それぞれの立場から適切に動くことでスムーズに進むんですよね。日頃から密にコミュニケーションをとって互いに信頼し合っているからこそ、イレギュラーな対応もできると実感しています。
こうして深めてきた絆は、重大な局面でこそ真価が問われると感じています。ある大きな案件の際には、事業部、バックオフィスのメンバーが一丸となって対応していく中で、MIXIとしての結束の強さを感じました。また、法務部が社内で築いてきた存在感や、他部署からの信頼の大きさも伝わってきて、私自身も法務部を力強く支える存在になりたいと思いました
今、携わっている各プロジェクトや法務部の現場では、VALUESの「誠実」が浸透しているのを肌で感じると言います。
「たとえば、事業部とのミーティングに法務部のメンバーが参加する際、法務見解や所感を忖度なしに伝えるということも『誠実』の実践の一つだと思っています。こうした姿勢を積み重ねてきたからこそ、事業部の皆さんも法務の視点を意識してくださるようになり、『このプロジェクトの件で相談させていただくかもしれません』などと早めに声をかけてくださることが増えてきたと感じています。
先日、こんな嬉しい出来事がありました。案件が無事終了したタイミングで、わざわざ法務部の執務エリアに来て感謝を伝えてくださった方がいたんです。これも私たちが日頃、一つひとつの業務に誠実に取り組んできた結果なのかもしれないと思い、いい循環が生まれていると感じました
彼のような行動が社内全体へと広がっていくためには、どのような意識を持ち、実践していけばよいのか、自分なりの考えを語る八坂。
私自身、まだまだ至らないところはありますが、会社として『豊かなコミュニケーション』を掲げている以上は、事業部であろうがバックオフィスであろうが、私たち一人ひとりがコミュニケーションの最善を常に追求していかなければならないと考えています。
言葉の選び方が適切かなどを意識し、どれだけ思いやりを持って接することができるかが大事だと思っています。たとえば、法務部に対して何かを依頼する時、極端な例ですが、契約書だけをアップロードして『ご確認お願いします』で終わるのではなく、概要や背景を少し詳しく記載するなど、ちょっとした気遣いを加えていただけるだけでもコミュニケーションはずっとよくなると思います。その積み重ねが、社内全体のよりよい関係性づくりにつながっていくのだと感じています
守るだけじゃない、「攻めの姿勢」を打ち出す法務部。VALUESを携えてMIXIらしいチャレンジを
法務部で1年半、壁を乗り越えながら成長を続けてきた八坂。MIXIで働く魅力についても触れ、「知らない世界、新しい景色を見られること」と笑顔で話します。
MIXIは常に新しい事業、新しいサービス、新しいプロダクトに挑戦し続けています。多種多様な分野に踏み込むことは、それに応じた法令調査などを行わねばならず、大変なこともたくさんあります。ただ、知らない分野、知らない世界に触れ、新しい景色を見せていただけるのは大きな魅力だと思っています。
社内から日々、いろんなアイデアが法務部に寄せられ、その一つひとつについて法的な観点で調べたり、過去の事業と照らし合わせて一貫性があるかを確認したりするのは、時間も労力もかかります。でも、サービスに対して一生懸命に取り組んでいる皆さんの姿を見たり、そのサービスが実際に世に出たりすると、『自分ももっと頑張ろう』と心を動かされます。さまざまなことにチャレンジできる環境、私は楽しいですね
今回の受賞を「出発点」と捉える八坂には、MIXIでこれから成し遂げたいことがあると言います。
AWARDに関して言えば、目標は大きく、PMWV賞やマネジメント賞など残りの賞をすべて受賞したいと思っています。そのためにも、今後は自分自身に焦点を当てるだけではなく、関わるプロジェクトや法務部全体がどう成果を出していくかにフォーカスしていきたいです。
その中で大事なのは、私自身や法務部のファンを増やしていくことだと考えています。社内の皆さんが『法務に相談してみようか』『八坂にちょっと話してみよう』と気軽に声をかけられるような状態こそがコミュニケーションを大切にする会社として理想の姿だと思うので、そこをめざしていきたいですね。弁護士としてVALUESを体現し、発揮することで、たくさんの方々と信頼関係を築き、親しみやすい法務部をつくっていけたら、法務部の関わり方も広がっていくんじゃないかとイメージしています
そして法務部として、「攻めの姿勢」であらゆることを仕掛けていきたいと意欲を見せる八坂。
法務部のメンバーはみんな穏やかな性格なんですが、私自身も含め、保守的なイメージを払拭するような『発信』はあまりできていません。社外だけでなく社内に対しても、法務部にはどんな人がいて何を考えているのかを『ミクシル』などを通して広く伝えていきたくて、そんな発信ができるように日頃からインプットに努め、実績や信頼を積み上げていきたいですね。その結果、MIXIが提供するサービスやプロダクトのユーザーが増えたり、MIXIで働きたいと思う方が増えたりしたら嬉しいです。
さらに、MIXIが生成AIサービス『ChatGPT Enterprise』を全従業員に対して導入したのを受け、法務部では今、社内の皆さんに社内のルール確認やドキュメント作成を効率化するカスタムGPTを提供するなどし、法務相談のハードルが下がるような施策を手がけています。バックヤードの中でも、法務部は今までPMWVの『発明』とはやや遠い存在でしたが、AI の力を使うことで、私たち自身も『発明』できるようになりましたし、業務の効率化も一気に進みそうです。今後も法務部全員の力を結集し、MIXIらしいチャレンジを加速させていきたいと思っています
※ 記載内容は2025年6月時点のものです