チャンネル登録者数が110万人にも迫る『モンスターストライク(以下モンスト』の公式YouTubeチャンネル。2014年に開設し、モンストニュースやXFLAG PARKの情報をはじめ、様々なコンテンツを配信してきました。
今回は、“中の人”の一人であるベイビーかわけと、動画制作を行うコンテンツデザイングループの越智の二人に、動画チャンネルの運用方法と、その中身であるコンテンツの作り方について聞いてみました。意外と(?)真面目な一面をもつベイビーかわけと越智の掛け合いを、ライブ感そのままにお届けします。
━━まず、動画チャンネルを始める場合にはどうすればよいのでしょうか?
かわけ うーん、そうですね……。モンストの公式チャンネルも、今でこそ社内のスタジオで撮影してお届けしていますが、始めた当初はPC1台で撮影から配信まで全てまかなっていたので、何から揃えばいい、っていうのは難しいのですが。
越智 機材は、撮りたい画や方法によって結構違うんです。
━━目的によって違うと。
越智 そうですね。例えば、ただ配信を始めたい!という場合なら、スマートフォン1台で事足ります。さらにこだわって動画制作をするとしても、まずはPCと動画編集用ソフト、それとカメラだけ、ですね。
かわけ あと、ゲーム実況など、画面を写しながら自分の音声を配信する場合、見せたい見せたい画によりますがPCとキャプチャボード、マイクがあるとなおいいですね。
━━簡単に思えてきました。
かわけ 動画を配信、発信するのは本当に簡単ですよ!機材はこだわり出すとキリがないのですが、今はYouTubeLiveなどのプラットフォームもかなり整ってきているし、モンスト公式チャンネルをはじめた6年前に比べると、ハードルはグッと下がってると思いますね。
越智 機材は本当に簡単なものから始められますし、わりと検索すればいくらでもおすすめ機材がヒットしますよ(笑)。
かわけ 機材もさることながら、こだわると沼なのが企画ですね。どんな企画をして、どう編集して表に出すか。編集の部分もすごく重要なのですが、そもそも企画が面白くないと、見てもらえないです。
━━なるほど。今はどんな体制で運用されているんでしょうか?
かわけ 動画が一本出来上がるまでには、企画会議→企画の決定→撮影→編集→公開、というフローを踏んでいます。撮影までは基本的に自分たちでやることが多いですね。
撮影後はプランナーとディレクター、エディターと組んで、ああでもないこうでもない…と編集作業を詰めていく感じですね。それでまとまったら公開、という感じです。
━━企画を決めるのは“中の人”がいるグループですか?
かわけ 基本的にはそうですね。2週間前から仕込んで時間をかけて作る場合もあれば、前々日に企画してモンストニュースに合わせてダッシュで撮影・編集する…みたいな場合もあって、ひとつの動画にかける時間は場合によりけりですね。
越智 編集ひとつとっても、担当者たちの納得のいくかたちまで詰めるのでどうしても時間がかかる場合もあります。でも観てくれるユーザーのことを考えると、それは仕方ない、というか当然の作業です。
━━なるほど。企画会議はわりとすんなりと決まる…?
かわけ それも、場合によりますね。僕が判断していた頃は、思いついた企画に対して、自分の企画でも人の企画でも「これ、面白いですか?」って聞いてるかもしれないです。。思いついた瞬間はよくても、時間が経つと不安になってくることって結構あるので。自信持って「面白いです!」と思える、笑いながら編集できるのならやりましょうって気持ちです。
━━じゃあ逆に、あがってきた企画を却下することもある?
かわけ 却下はできるだけしないようにしています。先ほどもいったように「面白いか?」を確認したときに「どうでしょう…?」って言われると、どこをどうすれば面白くなるか、とか、コストやスケジュール的に実現可能かどうか、をアドバイスすることが多いですね。
━━いい企画かどうか、ってどうジャッジしてるんですか?
かわけ 難しいところではあるのですが、まず企画する段階だと、「一行で説明できるかどうか」ですね。企画段階ではそれぞれペライチにまとめて、企画を発表していくのですが、簡単に伝わらない企画は、ユーザーにもなかなか届かない。パッとサムネイルを見て、内容を想像できるっていうのは、すごく重視している部分ではあります。
━━過去には想像したより伸びなかった企画も…?
かわけ ありますね(苦笑)。正直、モンストニュース以外に自主企画でやっている企画は結構チャレンジングなものが多いので、中には想像より全然視聴回数が伸びないな!って驚くようなものもあります。なんなら、僕の考える企画とか伸びないものが多かったりします…。
越智 今だから言えるんですけど、僕が企画したものだと「モンシティ」ですね…。僕と、この企画を担当したディレクターが学生の頃に3DCGアニメのコントがすごく流行っていて。モンストのキャラクターでコントをやってみたんですけど、これは全然伸びなかった…。
▲モンシティのキャプチャ(2017年4月19日配信)
越智 企画の段階からめっちゃ面白いじゃん!って盛り上がったんですけどね(笑)。
━━(笑)。伸びなかった原因って…?
越智 これは推測ですが、僕とディレクターは学生時代の思い出として共有していたのですが、ユーザーとは世代も違うし、世代が同じだとしても必ず皆それを見ているとは限らないので…。思い出補正みたいなものがかかってたのかな。ユーザーの想像している“面白さ”と、運営側の“面白さ”は違うこともあるので、あれは泣く泣く一話で終了しちゃいましたね。
かわけ これ絶対面白い!喜んでもらえるわ!ってひらめいて企画して、想像よりも見てもらえないとシンプルにへこみますね。博打打ってでも、80%の面白さよりも150%くらいの面白さを狙いにいきたくなっちゃうので、外れた時はショックもでかい…。
越智 でもそのおかげで、「公式が病気」って言われるくらいの企画を出せてるのはありますよね。こう言われるのってある意味褒め言葉だと思うんで(笑)。
━━逆に、すごく伸びた番組もあるんですか?
かわけ そうですね。まず、僕が企画してるとか出演してる企画ってそんなに伸びないんすけど…例えば、これとか。
▲番組の中の出題シーン(2016年5月13日配信)
すごい昔の企画なんですが、いわゆる“写真で一言”的な大喜利を、ユーザーと一緒にやる企画で、ユーザーとコミュニケーション取れるやつは伸びる!と思ってやったんですが、全然伸びなかったんですよ。
でも、その後に生まれたのが「ベイビーかわけのあれやって」ってシリーズで。
▲番組の冒頭(2018年9月1日配信)
この動画が伸びた理由、ざっくり3つですね。まずはディレクターの方の構成が鮮やかで気持ちよかったこと。次に、当時の公式動画のプレイ系の企画で「挑戦」ものが少なくて新鮮に感じてもらたこと。それと、公式チャンネルでは、基本的に使うことがなかった裏技を使っているのも、楽しんでもらえた要因のひとつじゃないでしょうか。敵の弱点にマッチを擦るように当てる“マッチショット”をしていたり、壁ドンで飛ばしたり。あと、割合ダメージなんかもこれまで出すことがなかったので、ある意味公式のタブーを打破できた回ではあるのかな…「かわけが出るやつは伸びない」ってジンクスを蹴散らせたのがこれですね。思った以上に伸びました。またすごく伸びたものでいうと、ルシファーの発表の瞬間とかはすごかったですね。これは僕の企画でなく周りのメンバーがしっかり作っていて、情報を小出しにしていくタイミングから発表の瞬間まで完璧でしたね。
――なるほど。こうして“中の人”として認知されていったんですね。
かわけ でも、僕、中の人として出演しはじめた頃はユーザーにあまり好かれてなかったと思うんですよ…当時の中の人は全員女性だったし、イケメン枠として登場してたわけでもないし(笑)。でも、ある時をきっかけにユーザーの反応が変わったことがあって。
▲ベイビーかわけの初登場回(2016年2月1日配信)
越智 ああ!覇者の塔クリアした時?
かわけ それもありますね。ユーザーに「意外とこの人うまいぞ」って思ってもらえた回(笑)。
越智 あ〜、じゃあ第1回の獣王戦か(笑)。
かわけ それです!僕、その頃は自分自身あまりうまいと思ってなかったのに、なにかの拍子で準決勝まで進んでしまって。めちゃくちゃ強いことで有名な「ありすぅ&ぺんぺん」チームと決勝で闘うことになったんですよね。あの時は、ユーザーもまさか僕のチームが勝ち進むと思ってなかったので、すごく盛り上がった記憶があります。それから、「意外と強いかわけ」として、ユーザーに徐々に認めてもらった感覚がありますね。
越智 中の人として認められるのは、意外とモンストのうまさだったっていう。
かわけ それなのか分からないですけどね(笑)。あれもまぐれみたいなものだったし。でも、元準獣王の資格は今でもしっかりプロフィールに記載させてもらってます。
かわけ ユーザーに喜んでもらえる企画を作るためにはユーザーと同じくらいゲームをやり込んでることもすごく大事で。僕は課金もめっちゃするし、もちろんめちゃくちゃプレーもします。これが仕事でいいんだっけ?って思うくらい楽しんでやってます。
越智 たぶん、中の人で一番課金してますよね。最近は『コトダマン』のコラボもあるからガチャを回しすぎてやばい、って言ってました。
かわけ コラボのタイミングが被ると、こんなにガチャ回して大丈夫か?ってくらい回してますね…そういう時に、逆に、「これも仕事だから!」って言い訳してます。
越智 やってるね(笑)。
━━今はすっかり“中の人”として馴染んだ感じですよね。
かわけ だといいんですけど(笑)。
越智 愛されてると思いますよ、僕は。
━━企画の話に戻りますが、かわけさんの企画術みたいなものってあるんでしょうか?
かわけ うーーん。術っていうほど、なにかメソッドを使って考えているわけではないですね。
越智 この間、寝てる間に夢の中で企画会議してて起きたら思いついた!って言ってたよね。
かわけ あれはね、僕もびっくりしました。どんだけモンストのこと考えてるんだっていう(笑)。企画術でいうと、ある程度トレンドがあるので、そこに乗っかってしまえば企画を作ることは出来るんですよね。他のYouTuberがやってる企画をお題だけ変えてやるとか。でも、それだとオリジナルになれない。オリジナルになるためには、やっぱり頭をひねって“ユーザーは何を喜んでくれるか”考え続けるほかないんです。
越智 トレンドをやっちゃうとトレンドは生めないですからね…。
━━企画を考えるために続けていることもある?
かわけ そうですね、結構たくさんあります。意識的にテレビのバラエティ番組に目を通してたり、その時々に流行ってる映画や音楽も追ってます。YouTubeの急上昇にあがってきた動画でも、メイク動画とかも分からないなりに全部見たりして(笑)。時代に置いていかれないようにはしてますね。
越智 インタビューっぽくなってきた。
かわけ やめてください(笑)。でも本当に、自分がトップクリエイターならそんなことする必要ないのですが、天才ではないので、そこは地道に流行ってるものを見たり、人気を集めているコンテンツを積極的に見て、なんとかそこから企画を作り出せるような、種のようなものを集めることはやってます。そして集めた種を近くの天才どもに話して雑談するんです。雑談から種の芽が出たり、新しい種を教えてもらったり、なんなら品種改良してもらったりと。企画を思いつく糸口はどこでもありますからね。
━━動画の評価軸はどうしてるんですか?
かわけ これが結構難しいところで…。もちろん視聴数や高評価数はひとつの指標として見てはいるのですが、あくまでも数字なので。それでどれだけ喜んでもらえたか、とかはコメント欄で感覚を掴むことのほうが多いですね。
越智 モンストニュースとかだと、獣神化の発表も兼ねてたりするので、一概にその動画の数字が伸びた、場合によってはマイナス評価になることもあるのでうまくいった、いかなかった企画とは言えないんですよね。なので、今期の大きな目標としては「一本で100万PV取れる動画を作る」と掲げて、ひとつヒット作みたいなものを作ろうとはしてます。
━━なるほど。お二人が思う“いいコンテンツ“ってどのようなものでしょうか?
越智 そこにチャレンジがあるもの、でしょうか。繰り返しになってしまうのですが、トレンドを追って数字を稼いでも、トレンドは作れない。モンストの公式チャンネルだからって、新キャラクターを作ってみたとかステージの解説だけだと、味気ないじゃないですか。他社だったりほかのチャンネルと差別化するためには、ある程度“色”が重要だと思うんですよね。
━━色?
越智 色、特色です。モンストの公式はゲームとすこし外れてても面白い動画あげてるよなーって思ってもらいたいので。ここまでやっちゃうんだ、こんなこともやるんだ、みたいな驚きは意識していきたいですね。
かわけ 僕は学生のころから映画もテレビもYouTubeを見るのも大好きで、色々なコンテンツに日常的に触れてきました。そのコンテンツを直接楽しんでいたのはもちろんあるんですけど、それをきっかけに、自分の視野が広がるんですよね。
越智 あるね。映画の中で流れてる曲を聞いて好きなアーティスト見つけたりね。
かわけ そうです!そういう風に、YouTubeの動画をきっかけにしてアーティストが生まれるかもしれないし、動画クリエイターが生まれるかもしれない。見てる側にとって発見のある企画がいいコンテンツなのかな、って思います。僕が考えた企画が、ほかのコンテンツを知りたいと思うきっかけになる、とか。ゲームの情報をアナウンスするだけじゃなくて、なにか“興味の入り口”みたいなものとして楽しんでもらえるのが理想ですね。