ストレスを感じない環境を作るために ~エンジニアのマネジメントどうしてる? #13~

ストレスを感じない環境を作るために ~エンジニアのマネジメントどうしてる? #13~

ひと口にマネジメントといえど、そのスタイルは様々。チームメンバーや部下、組織や技術、やり方も多彩にあります。このシリーズでは、“エンジニア”のマネジメントを担うメンバーに焦点を絞り、「エンジニアマネジメントってどうしてる?」と悩みや独自のやり方などを赤裸々に語ってもらい、メンバーの多種多様な“マネジメント観”を中心に、そのノウハウをお届けしていきます。

第13回目は、『モンスターストライク(以下モンスト)』のインゲーム開発に携わるマネージャーの米田に話を聞きました。

米田 圭佑(こめだ けいすけ) モンスト事業本部 クライアント1グループ マネージャー
2014年4月入社。5月よりクライアントエンジニアとして『モンスターストライク(以下モンスト)』の開発に携わる。10月よりモンストのスピンオフゲーム『モンスターストライク スタジアム』の立ち上げにクライアントエンジニア兼プランナーとして従事。その後、再び『モンスト』の開発にクライアントエンジニアとして携わり、2021年5月よりマネージャーに就任。現在は主にインゲーム領域の開発とチームマネジメントを担当。

エンジニアが気持ちよく働ける環境づくり
━━まず米田さんが所属するチームの業務内容について教えてください。
私たちクライアント1グループは、『モンスト』のクエストに入ってからクエストを出るまでの“インゲーム“と呼ばれる部分の開発を担当しています。この領域の開発を担当するクライアントエンジニアは、正社員と業務委託の方を合わせて9名。私がマネージャーに就任したのは2021年5月からで、それまではリーダーとして約2年にわたり開発とチーム運営に携わっていました。
━━米田さんがマネジメントで心がけていることはありますか?
“働くメンバーに不必要なストレスをかけない環境づくり”を意識しています。例えば「納得できないまま仕事をする」「怖い雰囲気があって気軽に発信や相談がしづらい」といったような、業務を進めるにあたって不必要なストレスは極力減らしていきたいなと。心理的安全性の担保された職場環境を整えることが、マネージャーとしての役割のひとつだと考えています。そういった環境を築くための手段のひとつとして、組織観点で物事を考えながらも、しっかりとメンバー個々人と向き合うことが大事だと考えています。一人ひとりがのびのびと好きなように働ける環境が個人にとっては理想ですが、ときには個人のスタンスと組織の方向性が異なる場合もあり、そういう場面こそ自分の頑張りどきだと考えています。

━━最近ではどんなことがありましたか?
最近で言えば、マーブルワークスタイル制度について。リモートワークならではの利点ももちろん多くありますが、組織づくりにおいては特に、オフラインで顔を合わせて仕事をするからこその利点も多くあります。当時の状況としてコロナ情勢が一時的に穏やかになっていたこともあり、組織としては週1日でも面と向かってみんなとコミュニケーションを取れる状況を作っておきたかったのですが、メンバーの中には週5日でリモートワークを希望する人もいました。そういった個人の希望と必ずしも一致しないお願いをする際に、「流行りだから」とか「決めたルールだから」という一言で済まさないように、理由や思いをきちんと言葉にして伝えるように意識しています。そのためには、自分自身も上司から降りてきたものや世間の流行りなどのインプットを鵜呑みにせず、しっかり咀嚼し理解して、本質を捉えた上で自分たちの環境だとどうすべきなのかを判断し、メンバーに伝えられるように努力しています。

自分とは異なる意見を “理解する”
━━理不尽な要求を押し付けないということですね。
はい。かといってメンバー全員の全ての希望をそのまま実現していくのはあまり現実的ではないので、部分的に譲歩していただくケースももちろんあります。メンバーはみなさん優しい方ばかりで、助けられている場面も多いのですが、そこに甘えず、みなさん自身が少しでもより納得した上で働けるようにしっかりと対話することが重要だと考えています。ここを押さえておけると、みなさん自身が気持ちよく働けるという面だけではなく、各個人が本質的な意図の部分を理解していたほうが、より応用を効かせ場面に応じた適切な行動が取れるという良さもあるかなと。
━━具体的にはどのようにメンバーの方とお話されていますか?
こういった異なる主張を理解してもらおうとする際には、自分と異なる観点で物事を考える重要性についても、よくメンバーと話をしています。

“共感と理解”という言葉がありますが、共感というのは相手と自分自身の考え方まで一致していることを指し、理解は自分と考え方は異なっていても相手の言いたいことは分かる、ということ。この共感と理解を曖昧にしたまま話し合いを進めていると平行線から進まないことが多々あるので、目的や手段それぞれの段階において、お互いが「共感」しているのか、「理解」はしているが「共感」はできていないのか、「理解」さえできていないのか、状況を明確にしながら順を追って話し合うことは意識しています。

もちろん組織づくりとしては、「共感」してくれる人を増やせるように努力することは大事です。しかし、たくさんの人が働いている以上、何が何でも同じ意見、同じ思いを持つということは場面によっては難しいし、考え方の多様性があるということは素晴らしいことでもあります。ただ、共感はできずとも自分とは異なる意見を理解しようとするということも非常に大事だと思っていて、相手の観点で物事を考えてみると、自分には見えていなかったものが見え、はっと気付かせられることも多くあったりします。「理解」できているかいないかの違いだけでも大きく納得感は違ってくるのではないかなと。
━━確かにそうですね。
これは自分自身も常に気を付けなくてはならないところで、なにか物事を進めようとする時にメンバーから異なる意見が出てきた際には、冷静に意見を聞き、要素を分解し、本来やりたかったことを損なわずにお互いが一番幸せになる落としどころは何なのかを探るように努力しています。ただ自分の意見を押し殺す、他人の意見に従う、というわけではなく、意見の多様性を理解した上で、本質を突いた最適な道を見つけ出すことが大事なことだと考えています。

こういったことは組織づくりのみに限らず、例えばモンストの施策においても同じで、数百万という多種多様なユーザーに対して、全ての施策が全てのユーザーに刺さるかというとそうではないことが多いです。つまり自分自身がその施策のターゲットではないことも多く、自分にとって良いと思えるものだけが正義ではない。多様なユーザーを相手にものづくりをする立場の人間であれば、自分とターゲットは切り分けて考え、自分がターゲットでなかったとしても「施策が対象とするユーザーには届く」ということを理解できることが大事。そうでないと自分の目線だけでしか、「良い・悪い」の判断ができなくなってしまいます。そこを切り離して「これは誰にとってどう良いものなんだろう」と考えられるようになれば、他の観点から提案もできるようになると思いますし、思考の柔軟性や幅は広がっていくのかなと。なにより「面白くないな」と思いながら仕事するよりは、「なるほど、ターゲットからすると楽しそうだな」と理解できるものに携わる方が自分自身も楽しいですよね。

自分と違う考え方を理解することは非常に困難です。組織づくりの話題に戻れば、妥協せずにしっかりと説明し、場合によって他の意見を取り入れ、より良いものへと再構築し、少しでも理解や共感を深められるように努力することが、物事をお願いする立場の人間の責任だと考えています。そして、聞く側も「どうして相手はそういう主張をしているのだろう」と考えを巡らして頂けるようになれば嬉しい限りかなと。

僕自身も上手くできていないところが多く、メンバーのみなさんには迷惑をかけてしまうこともあり、まだまだ精進の身なのですが…これからももっと上手くできるように努力していきたいですね。

対話の時間は大切にする
━━米田さんは1on1を通じて、どんなことを話していますか?
当グループでは毎週30分、正社員のメンバーを対象に1on1をしているのですが、ざっくりとは5割が雑談、5割が業務についてです。

仕事の進捗状況や相談を会話の入り口として優先的に話しますが、特に問題がなく順調な場合も、早めにミーティングを終わらせることはあまりせず、時間いっぱいまで雑談をすることが多いです。なぜかというと、とりあえず会話してみることが、お互いのことを知るきっかけになると考えているからです。例えば「最近、面白かったオススメのゲームあります?」とか「年始はなにかお正月らしいことして過ごしました?」とか。とりあえず話してみることで意外な発見に繋がる場合もあるので、色々な糸口から話をするようにしています。そんな何気ない会話自体も大切ですし、さらにそこから、「これはちゃんと話しておいた方が良さそうだな」と思える話題に繋がったときこそ1on1の存在価値が発揮されるひとつの場面なので、重要度によってはお互いがすっきりして業務に戻れるように、時間を延長して話を続けることもありますね。

━━お互いを知るため、ということですが、なぜそこまでコミュニケーションの時間をしっかり取るのでしょうか?
リーダーやマネージャーなど、肩書がつけばつくほど気楽に話しかけづらくなる傾向はあるのかなと考えていて。自分の普段の働きぶりを知らない相手には具体的な業務の相談をしづらいですし、相手が偉い人だと身構えるほど「建設的なこと言わないとだめかな」「弱みを見せないほうが良いかな」など色々な感情や思考が邪魔をして率直な意見を言いづらい場面も出てくると思います。お互いのことをより知っていれば、そういった要素にも邪魔されづらく、コミュニケーションの質が高まると考えているので、できるだけお互いを知り、身近な存在と思ってもらえるべく意識しています。

…と、色々と恰好を付けたことを言いましたが、純粋に僕がメンバーのみなさんとおしゃべりすることが好きという点も大きいです(笑) 。

案件を任せるのは挙手制
━━チームの仕事の進め方として、特徴的なものはありますか?
エンジニアの自主性を尊重する、ということです。私たちの業務として大きなウェイトを占めているのは、色々なIPとコラボしたキャラのストライクショットの開発。コラボ先には有名なIPが多く、世界観や表現も洗練されている作品ばかりです。僕たちが担当するインゲーム領域は特に、ただ味方が敵にダメージを与えるといったような機能的な面のみが動けば良いわけではなくて、仕様面や演出面など総合的にその作品らしさが出ていればこそユーザーの満足度は最大化されます。ゲームの触り心地という部分は明確なゴールがなく、100点に仕上がるのか120点に仕上がるのかは、最終的に担当者の熱量が左右する考えているので、うちのチームでは挙手制をベースに担当者を決めています。本人のスキル的に、ひとりでやるにはチャレンジな案件であっても、リソースが許す限りサポートしつつ、熱量のある本人にやりきっていただきたい思いがあります。
━━その作品が好き、という熱量のある人に任せているんですね。
そのIPが好きという理由もあれば、技術的に挑戦してみたいものがあるとか、理由はさまざまですね。自分がやりたいと思えるものに携われると自分自身も楽しいし、こだわりを持ちながら業務に取り組める。実際にエンジニアからも「このキャラはこういうところが一番アツかったので、こういう表現を盛り込むのはどうでしょう?」といったようなコード面以外での「こだわり」の提案も多いんです。最初の話とも繋がるのですが、心から自分がやりたいと思えることに取り組めるということは、自分が楽しく働けるだけでなく、総合的にプロダクトのクオリティアップにもつながっていきます。この良い流れをより推進できるような環境づくりを目指し、今後も努力していきたいです。

今回の学び
米田のマネジメントには、こんなポイントがありました。

・納得して仕事に取り組める環境を作る
・メンバーとのコミュニケーションの時間は惜しまない
・前向きに「やりたい」と思える雰囲気作り

これらを実践する理由は、“エンジニアのストレスフリーな環境”を作るため。自身も一人のエンジニアという観点から、組織のしがらみやルールで縛り付けることなく、のびのびと個人のスキルを最大限に発揮できる、自由な雰囲気作りを重視していることが印象的でした。

このシリーズでは、引き続き、MIXI GROUP内の“エンジニアのマネジメント”の実態やノウハウを紹介してまいります。

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