「インフラ室」と聞くと、サービスのインフラやネットワークを開発する組織をイメージされる方も多いかもしれません。ミクシィのインフラ室は、ハードからソフト、AIに至るまで幅広い知見を持ったエンジニアが集う特異な組織。今回は、そんなちょっと変わったミクシィのインフラ室に焦点を当てました。
〈目次〉
■インフラ室 室長が思う「インフラ室ってこんなところ」
■「何で入社したの?何やってるの?」
■座談会「インフラ室のホンネ」
まずは、インフラ室の室長である吉野にインフラ室のミッションや業務範囲などについて話を聞きました。
━━早速ですが、インフラ室のミッションについて教えてください。
まずインフラ室が属する開発本部全体についてお話しをさせていただくと、開発本部では大きく「注力事業に貢献する」というミッションを掲げています。その中でインフラ室は、“映像”や“インフラ”という側面から貢献することをミッションにしています。現在では、2021年10月にリリースされた『PIST6*』を盛り上げていくことも一つのミッションですね。スポーツ全般、その先の技術を追求していく上での一つのアウトプットとして『PIST6』への貢献が挙げられると思います。
*『PIST6』とは
新たなスポーツエンタメとしての自転車競技。若者が楽しめるスポーツエンタメへリノベーションし、自転車競技を「勝ち負け」のギャンブルから「仲間と盛り上がる」ベッティングへ生まれ変わらせることを目指しています。「スポーツの楽しさ」「エンタメの楽しさ」「付加価値としてのベッティング」、この3つの要素を組み合わせながら、競輪の新しいカルチャーを生み出していきます
━━インフラ室ではどんな仕事をされているんですか。
『モンスターストライク(以下モンスト)』については設備の運用全般を担当しています。『TIPSTAR』については映像インフラを全部自前で構築しています。地方の競輪場から映像を転送するネットワークから、映像の編集、番組作成のためのシステム構築、映像配信は全部インフラ室で行なっています。
━━直近ではどんなプロジェクトに取り組んでいるんでしょう。
ローカル5Gを使った車載カメラの開発です。それに付随する新しい試みもたくさん水面下で動いています。来年度前半には全てリリースできれば、と。
━━楽しみですね!次はメンバーについて教えていただけますか。
インフラ室は全部で15人ほどの組織です。技術的好奇心が強い人が多く、それぞれに得意分野を持っているのが特徴かと。
━━それはネットワークエンジニアという土台があった上でのキャラクターの話ですか?
いえ、ネットワーク専門というわけではないです。フロントを開発できたり、ハードウェアに密接に接する部分の開発もできる人もいるので。インフラ室は、“得意なことが全部違う人たち”の集まりでいたいと思っているんですよ。
━━それはなぜですか?
エンジニアは「スキルアップしたい」「新しいことを勉強したい」という人が多いので、横に座っている人が経験したことのないことに取り組んでいたら、刺激にもなるし学びにもなるじゃないですか。インフラ室では少なくとも「ナンバーワンの分野は一人1個以上持つこと」といった目標があります。
━━なるほど。インフラ室のみなさんに共通していることはありますか?
「とりあえず戦ってみる」という人が多いと思います。例えば『TIPSTAR』でこんなシステムを作ろう、と提案したら「オー!!」とこぶしを突き上げて賛同してくれるような。
━━好戦的な人たちというか。萎縮しない人たちが多いんですかね。先ほどのお話ですが、インフラ以外の開発もできる人がいるということは、「インフラ室」である必要はあるんですか。
ないです。看板を変えてもいいし、組織ごと爆裂しても全然構わないです(笑)。
━━どういうことですか!?
プロジェクトが上手く進められるのであれば、どの組織に所属していようが構わない。異動したかったらどんどん異動してください、という感じですね。
━━吉野さんとしては、それぞれの武器を持っている人たちをインフラ室に集めたいというわけではないんですね。
はい。ないですね。偶然縁があって、本人がやりたいことと会社がやらなきゃいけないことがマッチした人がいたらラッキーと思っているので。
━━最後にインフラ室が求めるエンジニア像について聞かせてください。
分野で言ったら、ハードに近いところまで開発できる人ですね。一番求めているのは、ハードの中のハードに最適なソフトウェアを作れる人です。そんな方にお越しいただければ、より開発の馬力がアップするかなと。
━━なるほど。ありがとうございました!
次は、インフラ室に所属している3名のメンバーがそれぞれどんな入社動機があったのか、どんなことをやっているかなどの率直な声をご紹介します!
市野さん(2021年3月入社)
■担当している業務内容
『TIPSTAR』『PIST6』に関わる映像の伝送・配信環境の構築・運用がメインミッションです。ミクシィでは、主に放送局やケーブルテレビ局が使う技術や、業界に先駆けて新技術を積極的に導入しています。また、無線映像伝送も取り組んでおり、ローカル5Gの構築・車載カメラの開発など、新たなチャレンジにも取り組んでいる最中です。
■転職理由とミクシィ入社のきっかけ
ミクシィに入社する前は、動画配信の会社に14年ほど勤めていました。転職の経緯は、映像配信の経験を活かしながら、技術力を広げていきたいと思ったから。転職を積極的に行っていたわけではありませんが、様々な企業の採用ページを見ていて、ミクシィは新技術をどんどん導入しているという記事を読んで、面白そうだなと感じました。また、自社サービス・事業展開という特性を活かしてスピード感をもっているところも高い魅力でした。
■インフラ室に所属してみて
インフラ室は様々なタイプのエンジニアが在籍していると感じています。現在取り組んでいる車載カメラにしても、物理作業を行うエンジニア・ハードウェアエンジニア、管理画面を作るフロントエンジニアがすべて同じチーム内にいます。一つの小さい開発会社みたいな組織なので、とても刺激に溢れています。また、『TIPSTAR』については、映像を圧縮せず伝送・スタジオ編集後にそのまま配信が実現できており、映像で関わる要素がほぼ揃っているのはやっぱりすごいと思いますし、『TIPSTAR』のリリースにあわせてわずか1~2年でこのレベルまでできるようになったのには驚きました。みなさんの技術力が高いので、入社間もない頃はみなさんについていくのに必死でしたが、自分の知識や技術力を高めていけるのはありがたい環境だと感じています。今後は、動画配信だけでなく端末開発など、新しい軸を作りながら、エンジニアの幅を広げていきたいと考えています。
山田さん(2018年5月入社)
■担当している業務内容
私が担当しているのは、『モンスト』と『TIPSTAR』『PIST6』のネットワークです。配線経路の調査や機材の設置から、ネットワークの構築・運用、車載カメラの無線ネットワークの構築まで幅広く手掛けています。裏方的で地道な作業も多い仕事ではありますが、自分の思い描いた通りにネットワークが動いたときに、大きな感動があります。
■転職理由とミクシィ入社のきっかけ
前職は、新卒でISPの子会社に入社し、設備の増設工事の管理やL2ネットワークの運用・構築を手掛けていました。ネットワークの規模は、L2スイッチだけでも数千台ほど。転職を意識するようになったのは、BtoC向けの仕事を担当したのがきっかけです。基本的にBtoBの企業様との仕事が多かったのですが、たまたまBtoCの企業様を担当する機会がありました。メンテナンスの反応をダイレクトに見ることができ、ユーザーと接点が持てる仕事に魅力を感じたんです。ミクシィを選んだのは、『モンスト』のユーザーだったから。また、JANOGでインフラ室の方々が高頻度で発表されており、ミクシィは技術的にも進んでいる会社であること、勉強の機会を与えてくれる会社だという印象を持っていました。
■インフラ室に所属してみて
思っていた以上に、技術力が高い方ばかりで驚きました。一人ひとりが一騎当千というか…。そんな組織に迎え入れていただけてすごく嬉しかったし、今も嬉しいんですよね。特に吉野さんが『TIPSTAR』の立ち上げにあたって、映像伝送の知識がないところから驚異的なスピードで学習をされて、いつの間にか構成図を組み上げていたのを目の当たりにしたのは忘れられません。今後の目標としては、映像機器からネットワーク機器まで幅広く見られるエンジニアを目指したいです。ネットワークの知見をベースにメンバーの取りこぼしをサポートできる裏方でありたいなと思っています。
馬淵さん(2018年1月入社)
■担当している業務範囲
担当している『モンスト』ネットワークの設計や運用と、『TIPSTAR』『PIST6』における映像編集システムの開発の両方を担当しています。特に現在は映像編集システムの開発に注力しています。金額面と運用面の両方のコストを最小限に保ちつつ、新しい映像表現を簡単に提供し続けるシステムを作ることが私のミッションです。具体的には、映像関連業務の簡略化を図っています。今はUnityやUnreal Engineなど、リアルタイムに映像や音を処理することに長けているゲームエンジンを使い、それを現場の誰でも利用できるようなシステムになるよう、開発と検証を進めています。また、簡略化するのは現場だけでなく、エンジニアとデザイナーが一緒になってスムーズに映像制作するためのワークフロー整備など、プロダクトの価値を向上させるための取り組みを考えています。また、最近ではUnreal Engineに特に注目し検証や開発を行っています。Unreal EngineはXR関連機能をはじめ、放送関連の機能が非常に充実しているところに強く価値を感じ、我々も取り入れています。他にも、サービスを運用する人が簡単に管理できるように、WebRTCを活用した遠隔モニタリング、Go言語での映像制御API、Vue.jsでのSPAによる編集ストレスのないフロントエンドといった、今までWebで活用されている技術を活用することで、誰もがどこからでも簡単に触れるインターフェース作ってきました。。今の業務は、既存の業務フローを劇的に改善できるところがやりがいですし、とてもおもしろいところだなと思っています。
■転職理由とミクシィ入社のきっかけ
以前は、電機メーカーやインターネットサービスプロバイダで、ネットワークの運用や設計を担当しながら、運用改善にも取り組んでいました。JANOGでこれまでの活動を発表していたら、吉野さんに声を掛けてもらってミクシィへ。吉野さんもJANOGで社内の取り組みを発表していて、例えば『モンスト』のネットワーク構築の中で、キャリア以外ではあまり使わないようなネットワーク設計を導入していたんです。もちろんその技術にはメリットがあるのですが、実際にアプリの会社でそこまで挑戦的な設計をすることは今まで見たことがあまりありませんでした。そこまでネットワークに深い理解を持って設計し、果敢に挑戦できる文化があるところであれば、飽きなさそうだし面白そうだと思い、興味を持ったので入社しました。
■インフラ室に所属してみて
インフラ室は、技術的好奇心が高い人が多いので刺激に溢れた環境です。私も自分が面白いなと思えた領域には積極的に手を出していくタイプなので、今後もさまざまな領域でより精度の高い改善を進めていけたらと考えています。
━━ここからは「インフラ室ってどんな組織?」というテーマで、ざっくばらんにお話を聞かせてください。
吉野 冒頭でもお話しましたが、カテゴライズしにくい色々なタイプのメンバーが集うチームですね。物理――いわゆるハード、ソフト、AIまで、幅広い知見があるメンバーがいます。
市野 得意分野が異なる人たちが集まるからこそ、自分たちのチームの中で大体のことが解決できますよね。サービスや仕組みを作るときに、ハードのレイヤーの低いところからフロント系まで最短で突っ走れる。チームで考えたことがすぐ試せるところが魅力かなと。
馬淵 一人ひとりが幅広い業務を担当できますが、一番得意なところはそれぞれ違うので、プロトタイプを作るときにチームだけで完結してパッと作れちゃうスピード感は特徴的ですよね。
━━インフラ室においても、やっぱりスピード感は重要なんですか。
馬淵 僕たちはプロダクトを直接持っているわけではないので、事業部で困っていること、もしくは事業部で困りそうなこと、あったら嬉しいだろうということを先回りして調べて提案してというフェーズを踏む必要があるので、スピード感がないといけないんです。
吉野 例えば、表現の幅を広げるとか、事業ができる可能性を広げる、もしくはコストを下げる、といったようなことですね。
馬淵 しかも僕たちがやろうとしていることは、他の会社でもやってないことが多いので、トライアンドエラーも多くなる。モノづくり重視だからこそスピード感は必須ですね。
━━なるほど。インフラ室ではどんな風に仕事を進めているんでしょうか。
吉野 プロジェクトによりけりですが、最初の第一号令だけ私が言って、あとは現場のみなさんにお任せする感じです。
山田 吉野さんが最終目的地だけ言って、どうアプローチするかはメンバーで考えていく感じですよね。
吉野 全員で一つのプロジェクトに関わることはめったになく、プロジェクト内の進捗管理はしていますが、チームの中では共有をしないので、それぞれのメンバーが何をしているか全然知らない、というのはあると思います。
山田 スペシャリティがそれぞれ違うので、お互い交わる部分は気にしつつですが。
━━それで成り立っているのって、とてもハイレベルなことですよね。
市野 各々のメンバーの自主性に任せる環境ですよね。技術に興味関心を持っている人が多いので、みんなそれぞれ必要な情報をキャッチアップし合っている感じです。
吉野 もちろん運用で困ったときに叩くコマンドを教えてよ、くらいの共有はあります。属人で突っ走っても良いんですが、トラブルが起きたときに、ここまで何とかしなきゃいけないところは上手くやってね、という。しょっぱなから属人性を排除することを念頭に置いてはいません。運用に入るなら、バックアップが取れるような組織体制にしてはいますね。
━━属人で突っ走ってもOKというのは、とてもインパクトのある言葉でした。次は、インフラ室におけるコミュニケーションについて教えてください。
吉野 チャットで自分の意見をちゃんと伝えられればいいんじゃないかと思います。ログが残るコミュニケーションが取れる人は、資質的に合うんじゃないかと。もし面接で一個しかチェックできないとしたら、「チャットできるかどうか」というところを見ますね。
全員 (驚愕)
吉野 技術的なトピックをチャットで、素早く伝わるように書き込める人ってすごいですよ。私は細かく早く送ります(笑)。私に惑わされず、自分の意見をチャットで言える人は強いなと。
馬淵 それは究極に難しい(笑)。確かに吉野さんはコマ切れタイプですよね(笑)。
吉野 みんなチャット早いから、議論が別の方向に持って行かれちゃうじゃないですか(笑)。この会社に入ってチャットをコマ切れする癖がついちゃったんですよ。
全員 (笑)
━━自分の知見をちゃんと言語化する能力があって、それをタイムリーに相手の言葉を拾いながら、文章としてアウトプットできるかどうかが重要と。
吉野 そうでないと障害対応できないので。
━━なるほど。コミュニケーションの素早さと正確さが、障害対応につながってくるんですね。最後に伺いますが、インフラ室の強みを表現するとしたら、どういう表現になりますか。
市野 ブレーキを踏む人が少ない。キャラクターの多様性ですよね。
山田 確かに。嫌な意味での横やりがないです。横からいきなりブレーキを踏まれることがないので、結構のびのびやっています。
吉野 それこそミクシィが掲げる“ユーザーサプライズファースト”に沿っているものであれば、自由に突っ走ればいい。逆に突っ走って失敗できれば、たいしたものなので。だから、今までブレーキを踏まれて困ってきた人には、ミクシィは最高の環境かもしれないですね。自分がやりたいことが明確にあって、その技術を持ってやれうるところまでいっているけど、「良く分からないからナシ」という話はよくあるので…。めんどくさい説明資料を作成しなくちゃいけなくなったりとか。
全員 確かに(笑)。