モンストのステージはどのように制作されているのか?“メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #2」
2020年12月から新たなオンラインセミナー“THE METHOD”を開催しています。
※過去の実施内容はコチラ
“メソッド”が学べるオンラインセミナー「THE METHOD」が始動。その内容は?
モンストのキャラクターはどのような工程で作られているのか? “メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #1」
本イベントは、さまざまなプロダクトにおいて実践されているノウハウやメソッドを惜しみなく共有する、視聴者も参加できるオンラインイベントです。
第3回目となる今回のテーマは、『モンスターストライク(以下、モンスト)』のステージ制作について。本記事では、配信された内容を簡潔にまとめてご紹介します。
登壇者の紹介
2014年度中途入社。3DS版モンスターストライクのディレクターを務めリリース後、アプリのモンスト企画へ異動。レベルデザインやステージ制作を経て現在は企画全般(主にインゲーム)を担当。
司会進行役の「ミクシル」編集長・深町からの質問に、プランナーの林が答えていく形でイベントは進行していきました。
ステージ制作はリリースの3~6ヵ月前から
深町 今回はモンストのステージができるまでのお話を伺っていきたいと思います。まず、ステージはどのような制作フローなのでしょうか。
林 今回は轟絶を事例に説明していきます。まず大まかな制作の流れをご説明しますと、制作者のアサインからスタートします。ステージで新しいギミックがある場合は、その開発を行ないます。
深町 ギミックというのは?
林 ギミックというのは、各ステージ内の特殊な仕様のことです。例えば、「ダメージウォール」というギミックがあるのですが、これはステージの壁に沿って展開している壁のことで、味方キャラが触れるとダメージを受ける仕様になっています。
深町 ギミックはステージごとに色々な特徴があるということですよね。
林 そうですね。ギミックを含め、ある程度ステージが形になったタイミングで、QEという難易度調整の業務に入ります。
深町 QEとは具体的にどんなことをするのでしょうか。
林 社内には難易度のバランスを調整する専門部署があるのですが、そのスタッフがこれまでの経験や勘をベースにして、ステージの内容やキャラクターの強さのバランスをひたすらチェックしています。そこでOKが出たら、データ更新・リリースとなります。
深町 ここでおかしな挙動が出たり、難易度を上げたいという要望が出ることもあるんでしょうか。
林 挙動についての修正はほとんどなく、難易度を調整したほうがいいというケースは何度かありますね。
深町 なるほど。次は制作のスケジュールについて教えてください。
林 まず制作者のアサインですが、新ギミックを作成するステージの場合、リリースの3~6ヵ月前くらいにアサインを決めます。というのも、モンストでは1~2ヵ月ごとにアプリのバージョンアップデートを行なっているため、新ギミックがある場合はあらかじめアップデートに入れなければいけないので、早めにアサインをしています。この後、ご説明するパラドクスというキャラクターも7月リリースだったのですが、1月くらいにはアサインをしていました。もっと長いものだと、ほぼ一年かかったものもあります。
ユーザーを楽しませるギミック制作の裏側
深町 そんなにかかるケースもあるんですね!ギミックの挙動はどのように考えているのですか。
林 パラドクスの場合を例に挙げると、パラドクスではキューブというギミックを作りました。キューブ状態の味方モンスターは触れても動きません。これはモンストにすでにあったブロックというギミックから着想を得て制作しました。ブロックというのはステージ上に設置されている障害物のことで、破壊することはできず、壁と同様に反射してしまいます。ブロックはステージの中で配置が決まっていますが、その配置がステージごとに変わったり、何回もプレイしているうちに変わったら面白いんじゃないかというアイデアからキューブは生まれました。
深町 こういったアイデアは、何を参考にされているのですか?
林 人によるとは思いますが、私の場合は古いコンシューマーのアクションゲームなどからインスピレーションを受けています。
深町 そうなんですね。では、続きの説明をお願いいたします。
林 その後、企画の担当者がギミックを固めた段階で、クライアントエンジニアやデザイナーとミーティングを行ないます。そこで仕様の説明をして開発に進んでいくという流れです。
深町 ミーティングではどのような感じで話が進んでいくのでしょうか。例えば、林さんが仕様をガチっと決めて話していくのか、それともふわっと「こんな感じにやらないか」と話し合っていくのか。
林 ガチっと決めてしまうと、いざ実装するとなると難しい、となる場合もあるので、一緒に相談しながら決めています。エンジニアさんやデザイナーさんから「もっとこうしたらどうだろう?」というアイデアをいただいて改善することもありますし、実際に作ったものを動かしながら調整していくことが多いです。
深町 割と柔軟に進めているんですね。
林 そうですね。その後は開発したギミックを使ってステージを制作していくことになりますが、どんなステージにしていくかは制作者次第。私の場合はまずターゲットを絞って進めていきます。
深町 ターゲットとは?
林 モンストは何百万人のユーザーさんがプレイしています。中には、最近始めたばかりの方もいますし、やり込んでいるコアユーザーの方も。理想は全員に適したステージを作りたいのですが、現実的には厳しいので明確にターゲットを決めて作るようにしています。
敵の攻撃の数値をExcelで管理
深町 ライトユーザーとヘビーユーザーとでは強さも変わるし、遊び方も変わりますもんね。資料にある「ステージはExcelでできている」というのが気になったのですが…。
林 一つのステージは10項目程度のデータの組み合わせでできていて、そのCSVの基礎となるものをExcelで作っています。この表は都合によりぼかしているのですが、敵の攻撃の管理しているExcelになっています。敵の攻撃の種類や威力などが入っていて、敵の攻撃を一通りCSVとして出力しているんです。
深町 Excelで威力の数値などのデータが入っているものを一通り作って、実装していると。
林 そうですね。最後にそれを一つにまとめて、ステージとして動かしているイメージです。
深町 そういった方法でステージが作られているとは結構意外でした!それでは最後に林さんが仕事で意識されていることを教えてください。
林 私はステージを制作しているのではなく、ユーザーのみなさまにもっとモンストを楽しんでいただくために、ゲームの面白さという“体験”をサービスとして提供するという意識で業務にあたっています。
深町 なるほど。ミクシィのユーザーサプライズファーストの精神ですね。ありがとうございました。
質疑応答
最後は質疑応答の時間。視聴者のみなさんから寄せられた質問にもリアルタイムで回答!ここでは、回答したいくつかの質問を抜粋してご紹介していきます。
Q.ターゲット層はどんなセグメントで分けていますか?
モンストのターゲットの場合は、ライト、ミドル、ヘビー、という大きく分けて3つのターゲット層を想定しています。「このラインを超えた人はミドル」というように、ある程度ユーザーの技術も気にしてセグメントしているので、レベル、ログイン人数など複合的な要素でターゲティングをしています。
Q.パラドクスのステージはリリース初日に何人のユーザーがクリアしたのでしょうか。
詳しい人数はお伝えできませんが、轟絶クラスだとクリア率は挑戦したユーザーの5%ほどです。
Q.ステージ企画のジャッジはディレクターの方が旗振りしているのでしょうか。
必ずしもその都度ディレクターのジャッジが入るわけではなく、そこに至るところまでは制作者の裁量に任されているので、ある程度自由に制作しています。プレイしてみて不快ではないとか、あまりにもおかしいところがなければそのままリリースしています。
Q.強キャラでステージがクリアされてしまったときは、どのような気持ちですか?
どうしても時間が経つとインフレは進んでいくものなので、時間が経ったときにステージがクリアされてしまうのは仕方ないと思いますし、私自身はそんなに気にしていません。逆に強いキャラが出た場合に、クリアできる余地を残すように意識しています。だんだん遊べる人が増えていくのは、いい部分かなと思っています。
Q.レベルデザインをする上で、課金要素などは意識されたりするのでしょうか。
基本的には、課金をしてガチャを引かないとクリアできないという作りはしていません。ユーザーが楽しめるかどうかという観点で作っています。
Q.ボツネタはどれくらい出ますか?
厳密に言うと、制作途中でガラッと別のものに変わってしまったということはあまりなく、ほとんどはコンセプトの中で多少調整されるくらいです。
Q.リリース済みステージの難易度調整はどれくらいの頻度でありますか?調整後のユーザーの反応は?
リリース済みのステージに関しては、難易度調整を行なうことはありません。あまりにステージが厳しすぎる場合は、そこに助けになるキャラは入れていこう、という施策は行なっています。
Q.印象的なギミックまたはステージは?
印象的で言うと、「ラウドラバリア」ですね。このギミックは、同じ敵を何度も叩かないとといけないというもので、あれが結構自分の中では強烈なイメージです。開発自体も歴代一番コストが掛かっているものだったと記憶しています。
Q.ギミックを考えるときは、ボスキャラのイメージに合わせたりしますか。
キャラクターイラストのラフがその時点で出来上がっていないことが多いので、ギミックや遊びを先に考えるパターンが多いです。
Q.難易度調整はこれまでの経験で行なわれているとのことですが、同一の難易度でも難易度にブレが生じることはないのでしょうか。ブレた場合はどのように振り返りをしていますか。
難易度のブレは、正直あります。意図的に波を作っているということもありますが、当然データを見返したり、反省を次に活かしていくように心掛けています。振り返りのタイミングはまちまちですが、1ヵ月に1回または3ヵ月に1回程度です。
Q.初降臨時に、想定していなかった攻略法などはありますか?
これは多々あります。ある程度、こういう楽しみ方をしてほしいという考えのもと作っているのですが、想像を超えた攻略をしてくださるユーザーさんが多いので、毎回驚かされるばかりです(笑)。
Q.新ギミックリリース後のユーザーの反応は気にされますか?数値データのみを確認するだけですか?
ほとんどの制作者がユーザーの反応を気にしていると思います。SNSでの反応やリリース後のデータを見て、QEのスタッフと話しをしたりしますね。
最後に
第3回目の「THE METHOD」では、モンストのステージ制作についてご紹介しました。ステージやギミック制作のフローやスケジュールについての話を伺う中で、モノづくりこだわりが垣間見えた回になりました。
オンラインセミナー「THE METHOD」は、今後も開催予定。様々な“メソッド”に焦点を当てながら、細かな制作ノウハウなどをお届けしていくので、ぜひ次回の開催を楽しみにお待ちください。
概要:THE METHODの第4回目は、ミクシィグループの「モンスト」の「キャンペーン」がどのように作られているかを紐解きます。アウトゲームの機能開発をどのように行っているか、2021年4月から行っているキャンペーン施策を例にして、サーバーサイドエンジニアである浅野 大我(アサノ タイガ)の視点から語ってもらいます。
日時:2021年4月22日(木)19:30~
※Q&Aを含め、40分程度を想定しております
場所:オンライン配信(予定)
応募:https://the-method.connpass.com/event/209728/
※先着申し込み順となります