従業員エンゲージメントや企業価値を高めるために、MIXIが注力していることの一つに「健康経営」があります。これは、従業員一人ひとりの健康管理を重要な経営課題と捉え、従業員のこころとからだの健康の維持・増進を支援することで、企業の生産性や価値の向上を目指すものです。
2022年7月、MIXIでは「健康経営宣言」を公開。『ミクシル』でも推進する背景と施策について紹介してきました。1年が経過した今回、現在MIXIが抱える健康課題と具体的な取り組みについて、労務部ウェルネス推進G 長谷部、日下(保健師)、平塚に話を聞きました。
「健康経営宣言」から1年。見えてきたMIXIの健康課題とは
━━現時点でのMIXIの健康課題について教えてください。
日下:具体的な症状として増加傾向にあるのは「脂質異常症」「メンタル不調」「睡眠障害」の3つです。「脂質異常症」は従業員平均年齢が少しずつ上がってきていることを背景に、中性脂肪の値が高い人が増加しています。
「メンタル不調」は、MIXIのストレスチェックの結果は全国的にとても良い数値ではありますが、産業医や保健師への相談件数がやや増えています。「睡眠障害」は「メンタル不調」との関連が深く、同様にこちらの相談件数も増加しています。
その上で、ウェルネス推進Gが健康課題の本質として捉えているのは、従業員の「主観的健康意識の低さ」です。
━━「主観的健康意識」とはどのようなものですか?
日下:いわゆる「ヘルスリテラシー」のことで、一般的には「健康に関する情報を入手し、理解して活用する能力」と定義されています。
以前、MIXIでは主観的健康状態・健康意識に関するアンケートを行ったのですが、「あなたは自分が健康だと思いますか」という質問に対して8割近くの方が健康と回答しました。一方「あなたは健康意識が高いと思いますか?」という質問に対しては、5割以下でした。
「主観的健康意識」は、例えば“睡眠の質をよくしたい”、“唐揚げはやめて蒸し鶏にしておこう”など、健康になるための具体的な取り組みに関与してくる部分なので、この意識が高いと思える人を増やしていくことが望ましいと考えています。
━━ヘルスリテラシーが高まれば、具体的な行動がとれるようになるということですね。
日下:おっしゃる通りです。日々の生活の中で予防行為が行えるので、当然ながら体が健康になる。健康寿命の延伸、パフォーマンス維持・向上につながるので、しっかりと改善していきたい項目です。
━━健康と業務パフォーマンスの関係性について、もう少し詳しく教えてください。
日下:分かりやすい結果があって、去年、MIXIはストレスチェックの中で「プレゼンティーズム(心身の健康上の問題により、業務上のパフォーマンスが上がらない状態)」について調査を行いました。
「この3ヶ月間の勤務日に、仕事に影響をもたらす何らかの症状(健康問題)はありましたか?」という問いに対して「ある」と回答した人が66.8%となりました。
さらに症状があるときの業務パフォーマンスについて、通常を10とした場合、6割以下のパフォーマンスへ低下する人が、業務量の観点で45%、質の観点で38%という結果になりました。
つまり10人あたり3~4人は頭痛、倦怠感、肩こりなど何らかの症状が原因でパフォーマンスが低下していることになります。従業員の健康に関する取り組みを強化することで、高いパフォーマンスで働き続けられる人がもっと増やせるのではないかと考えています。
健康を“自分ごと”として考えてほしい
━━「ヘルスリテラシー」を高めていく上で、ウェルネス推進Gが重視していることは何ですか?
長谷部:1つは「健康における凡事徹底(ぼんじてってい)な行動」です。凡事徹底とは、当たり前のことを当たり前にできるようになるという意味なのですが、健康につながる行動も歯磨きやお風呂と同じレベルで習慣化していきたいと考えています。とはいっても、実際に行動するのは本人ですから、私たちができるのはきっかけ作り。いろいろな施策を企画・実施する中で、生活を変えるきっかけを多く生み出していきたいと考えています。
2つ目は、MIXIがミッションとして掲げる『「心もつながる」場と機会の創造。』をテーマにした施策を大事にしています。
例えば、「凡事徹底」の考えを広めていく上で、長寿生物として知られるジンベイザメ「ボンジー」と長時間睡眠のコアラ「テッペイ」というキャラクターを作りました。楽しくソフトに「凡事徹底」を伝えられたらと思っています。
━━「ボンジー」と「テッペイ」かわいいですよね。
長谷部:社内のデザイナーに依頼をして作ってもらったのですが、可愛くて私たちもすごく気に入っています。個人的には、こういった楽しい健康経営の施策をきっかけに事業部の垣根を超えたコミュニケーションに繋がって、何か新しいビジネスが生まれたら素敵だなと思っています。
“楽しい”の感情を大切に。参加型イベントを多数実施
━━具体的な健康経営の取り組みについて教えてください。
平塚::2023年の上半期から「ベジチェック」「睡眠セミナー」「マインドフルネスヨガ」などいろいろなイベントを行ってきました。
「ベジチェック」というのは、食品メーカーのカゴメが開発した、手のひらをセンサーに30秒あてるだけで推定野菜摂取量を見える化できる機器を使った測定会イベントです。今年の5月から始めて、それ以降は毎月31日がある月に実施しています。みなさん楽しみにしてくれていて、参加者は毎回100名を超えています。8月のイベントでは取締役ファウンダーの笠原さんが参加してハイスコアを記録してくれたり、CTOの吉野さんがSlackで自身のスコアや改善策を投稿してくれたり、“楽しいイベント”として少しずつ広がっている手応えを感じています。
「睡眠セミナー」は、社員が抱える健康課題の一つでもあるので、多くの人に参加していただけるようオフライン・オンラインとハイブリッドの形で実施しました。セミナーでは、良い眠りを取るためのノウハウについて学べるよう、睡眠のメカニズム、食生活、寝室の整え方などについて講師が説明。あわせて、入眠しやすくするストレッチについて教えてもらいました。参加者アンケートの満足度が非常に高くて、次回似たようなセミナーがあったら参加したいと回答された方は全員という結果になりました。
━━やはり参加型イベントの方が人気ですか?
平塚::その傾向はあると思います。
他には「マインドフルネスヨガ」のイベントを行ったのですが、「睡眠セミナー」と同様、参加者のみなさんに体を動かしてもらう時間をたくさん作っています。参加者からは、少し体を動かすだけで体が軽くなった、簡単な内容なので実践しやすい、との声をもらっています。リモートワーク中心で働いている方が多いので、自宅で簡単に気持ちをリフレッシュできる方法が役立っていると感じています。
それから10月には「体力測定」を予定しています。現時点で標準ぐらいの筋力がないと、70歳・80歳になったときに立てないし、歩けない…という結果があるので、体力測定を通じて、今のうちに体力・筋力をつけていこうとメッセージを伝えられたらと思いますね。
健康を話題にする従業員が少しずつ増えてきた
━━「ヘルスリテラシー」向上の手応えはいかがですか?
長谷部:アンケートに寄せられた声や、部署内でのコミュニケーションを見ていると、健康に関する話題がじわじわ増えていると感じています。例えば、Slack上に「mixi_健康活動」というチャンネルを作って6月から本格運用をしているのですが、現在参加者は133名。ここでは、保健師の日下さんやMIXI専属の産業医が、健康に関するさまざまな情報提供を行っています。
日下:ヘルスリテラシーを上げていく上で、イベントやセミナーは非常に有効な方法ではありますが、同時に「気軽に健康について話せる環境」を整えていくことがポイントだと考えています。
私から情報発信するだけでなく、「昨日の食事内容について意見を聞いてみたい」「ネットでこういう話を聞いたけど、実際はどうなのだろう?」……など、従業員の方が興味を持って、質問してもらいやすい環境を整えていきたいです。
今後も、楽しくてワクワクする施策を実施していく方針は変わりません。私たちも始めたばかりなので、そこから生まれる感情を一緒に分かち合いながら、“MIXIの健康経営”を探求していけたらと考えています。健康に長く働き続けられる“生涯現役社会の構築”に向けた動きを増やし、企業の生産性向上につなげていきたいと思います。