モンスト好きが集まる最大級イベント『XFLAG PARK』の作り方 。“メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #5」

モンスト好きが集まる最大級イベント『XFLAG PARK』の作り方 。“メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #5」

「THE METHOD」は、ミクシィのさまざまなプロダクトにおいて実践されているノウハウやメソッド惜しみなく共有するオンラインイベントです。

※過去の実施内容はコチラ

THE METHOD #0
 “メソッド”が学べるオンラインセミナー「THE METHOD」が始動。その内容は?

THE METHOD #1
モンストのキャラクターはどのような工程で作られているのか? 

THE METHOD #2
モンストのステージはどのように制作されているのか?

THE METHOD #3
モンストのキャンペーン施策はどのように制作されているのか?

THE METHOD #4
モンストのUIはどのように制作されているのか?

 

今回の「THE METHOD」では、ミクシィの運営する最大級イベント『XFLAG PARK』の作り方について。『XFLAG PARK』とは、2016年より、幕張メッセにて開催している“モンスト好きが集まる”ライブエンターテインメント。(2020年・2021年はオンラインでの開催)ゲーム・アニメ・音楽など、さまざまなジャンルの垣根を超えた非日常の体験を届ける『XFLAG PARK』は、どのように作られているのか、その思考に迫ります。本記事では、「THE METHOD #5」のダイジェストをお届けします。

 

登壇者の紹介

登壇者は、マーケティング部の比奈本(ひなもと)。現在は、オフライン・オンラインイベント、動画施策とYouTubeチャンネル管理、モンソニ!プロジェクトのライブ演出や映像など、幅広い業務に携わっています。

比奈本 真(ひなもと しん)モンスト事業本部  マーケティング部  コンテンツマーケティンググループ
イベント制作会社を経て、2016年ミクシィ入社。初年度XFLAG PARKやモンストグランプリ、モンスト物産展などのイベントに携わる。その後、オフラインイベントや動画施策を担当。現在は、マーケティング部にてオフライン・オンラインイベント、動画施策とYouTubeチャンネル管理、キャラクタープロモーション映像の管理(新キャラ、獣神化キャラの映像)、モンソニ!プロジェクトのライブ演出や映像などに従事。

 

司会はモンスト事業本部・事業支援室の三瓶が担当。

 

『XFLAG PARK』の特徴

━━まずは、『XFLAG PARK』の特徴について教えてください。

『XFLAG PARK』の特徴は大きく2つあると思っています。1つは「コンテンツ開発の挑戦」、もう1つは「自社開発によるさまざまなシステム開発」です。

まずは「コンテンツ開発の挑戦」からお話していきます。一般的にゲームのオフラインイベントのステージというと、声優のトークショー、ゲームを使ったコンテンツ、キャラクターライブステージなどが中心になるのですが、『XFLAG PARK』では、演者を見る・聴くではなく、来場者自身がエキサイトで血が騒ぐようなコンテンツを開発していきたいと考えています。たとえば、ダンスステージやサーカスなどがそれに当たりますね。フィジカルな迫力・熱量を感じられるステージ作りに積極的に取り組んでいます。

━━2つ目の「自社開発によるさまざまなシステム開発」については?

イベントの体験をより楽しいものにすべく、自社であらゆるシステムを開発していて、たとえば2018年は「QRチケット」、2019年は「場内支払いのリストバンド決済」「自社整理券発行システム」などを導入しました。そして、オンライン開催となった2020年は、友達とライブ配信を視聴しながらボイスチャットができるなど、一緒に楽しめる機能がつまった「XFLAG CONNECT」をリリース。このように毎年何かしら新しいシステムを自社開発し導入していることも『XFLAG PARK』の特徴と言えると思います。

 

『XFLAG PARK』開催までのスケジュール

━━毎年7月開催の『XFLAG PARK』ですが、企画~開催までどのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか。

オフラインとオンラインで少しスケジュールが異なります。オンラインの場合は、『XFLAG PARK』を開催した翌月、つまり8月から来年の『XFLAG PARK』の企画がスタート。休みはありませんね(笑)。オンラインの場合は、準備期間は少し短くなって半年程度になります。

━━最も忙しい時期は、あらゆる準備が重なる4月・5月あたりでしょうか。

おっしゃる通りで、4月~5月の時期は一番バタバタしている頃ですね。空間デザイン・製作、ノベルティ製作、飲食メニューやレイアウト、チケットの販売方法、ステージコンテンツの検討…など『XFLAG PARK』を構成する全ての要素が目いっぱい動いている状態です。

『XFLAG PARK』を作る上での基本原則

━━毎年開催する中で、常にユーザーの期待に応え続けることはとても難しいことだと思います。大切にしていることやイベント制作におけるルールなどはあるのでしょうか。

モンストとしてのオフラインイベントを開催するにあたっての基本的な考え方を原則として設けています。

本日はその中から5つほど事例をお持ちしました。

 

【1】期待を知り、期待に応えず、期待を超える

同じタイトルでイベントを開催していると、来場者の方々は“何かしらの期待”を持って参加してくださるようになります。その中で私たちが重要視しているのは、「期待に応えること」ではなく、「期待を超えること」。期待に応えることで来場者が得られる感情は「満足」ですが、それはゴールではありません。期待を超えることで、来場者に「驚き」と「感動」をもたらし、強烈な記憶として残したい…というのが私たちの思いです。

そして、そのためには、まず向けられた期待を知ることが大事なんですね。私たちが取り組んでいるのは、来場者アンケートやTwitter・YouTubeに寄せられたコメントの調査。来場者の皆さまが『XFLAG PARK』にどのような想いを抱かれているか、は勿論、広くユーザーの皆さまの空気感のようなものをくみ取れるよう、注意しています。

 

【2】緊張と緩和

緊張とは、物事に集中している状態。緩和とは、その緊張が緩みホッと一息ついている状態を意味しています。『XFLAG PARK』は、1日かけてのイベントになりますから、ずっと「緊張」を保つことは難しく、上手く「緩和」を取り入れられる仕掛けを作ることがとても重要になってくるのです。

たとえば、ステージのタイムスケジュール。同時に最大3つのステージが進行するのですが、それぞれターゲットを明確にすることで、来場者によっては、ものすごく興味があるステージ/全く興味がないステージという興味の振れ幅を大きくすることが可能です。更にステージ以外にも物販コーナーや飲食コーナー、体験型コンテンツなど幅広いスペースを設けているのも、休みどころを作るためです。

言ってしまえば『我々が一生懸命作り上げたステージ』を見て頂かなくてもよい、と考えています。折角作り上げたステージコンテンツを見てほしい!という思いは大切ですが、それを来場者に強制するのは作り手のエゴに過ぎません。

この「緊張と緩和」をコントロールする装置の1つに「プロセニアム・アーチ(額縁舞台)」というものがあります。これは、観客席から見て、ステージを額縁のように切り取る構造物のこと。本来は、舞台上で「何か起こるぞ」と意図的に注目を集める部分を作り出すものです。

ただ、私たちはなるべくこのフレームを感じさせないように空間をつくり、参加者と演者に線を引かないような形で、いつ何が起きるかわからない緊迫感・ドキドキ感を演出できるような工夫も行っています。

重要なのは緊張と緩和を生み出し、“非日常の1日をとことん楽しむ”ことが出来るような設計を行うことです。

 

【3】非日常の空間作り

非日常を感じてもらうための工夫は、会場内だけの話ではありません。特にオフラインイベントにおいては「会場に向かうまでの道のり」「会場の入り口」こそが重要です。最寄り駅に着いて、友達と待ち合わせをし、会場まで一緒に歩いていく…そこから非日常は始まっていると捉えています。

 

【4】場の持つ力

オフラインイベントの成功において、会場選びは大きなポイントになります。それゆえ、会場選びの要件として、制作経験者・担当者であればあるほどインフラ面だけを気にしてしまいがちです。会場の広さ、天井の高さ、電源の容量、ネットワークの回線速度…このような点ばかり目がいってしまいますが、大切にすべきは、主催者自身が“来場者にどう楽しんでもらうか”のビジョンをしっかりと描けていること。そこから、必要となる会場やステージ造作などが見えてくるのだと考えています。

 

【5】非日常の“驚き”を忘れずに

比較的簡単に“非日常”を感じられるようにする手段は2つあります。1つは「人間の目線を意識すること」、もう1つは「手の動きを意識すること」です。1つ目について、人間は、基本的に“目線の高さ”で認識している情報を、“日常”として認識する、と考えています。ですから、そこからはずれた視点を提供すると、それは非日常と認識されやすくなります。

もう1つ、手の動きを意識すること。いくら好きなコンテンツとはいえ、ステージの前で黙ってみているだけで到達できるゴールは“高い満足度”です。そこで『XFLAG PARK』では縦長のバルーンを来場者に配布し、2つのバルーンを叩くことで音を出し、自身の感情を表現できるよう工夫をしました。もちろん、ただ渡すだけではなく、ステージが始まる直前に膨らませ方、使い方、どうすれば意図する音が出るのかをきちんとエデュケーションするように気を付けています。そうすることで、声をあげたり、つい、立ち上がってしまったり、バルーンを大きく掲げて叩いたりすることへの“違和感”が無くなっていきます。

そうした“感情の爆発”を発露してよい場所なんだ、と、頭ではなく、体で理解していただくのです。

これが実現できると、ちょっとした疲労感も含めて非日常的な感動に繋がっていきます。

観客の手の動きを意識し、そこから体全体を動かしてもらう…そうした意図を持つことで、大きな予算を賭けずとも、非日常を演出することは十分に可能なのです。

 

驚きと感動を創造できた事例紹介

━━イベントを制作する上での「基本原則」面白いです!では、もう少し具体的なところで、これらの基本原則が反映された事例があれば教えてください。

2018年、「ルシファー獣神化発表の演出」においては、今回ご紹介した基本原則を利用し、演出を創り上げました。

まず最初に「プロセニアム・アーチ」の外から演出を始めました。座席構成にも工夫があります。ステージの中に一部客席を配置することで、舞台と客席の境界線を曖昧にし、非日常を最大化。前からだけではなく、頭上からもさまざまな演出が起きているような、そんな空間を創りました。さらに、モンスト史上でも初となる、獣神化の当日解禁を行いました。“いつもと違う!”を積み重ねることで、来場者に「驚き」と「感動」を提供することができた事例だったと思います。

もちろん、お伝えした原則に則れば、来場者に必ず満足いただけるわけではありません。失敗のリスクもあります。ですが、ユーザーの期待超えるためには、恐れないチャレンジが必要です。私たちは、たくさんの取り組みの中から原則・ルールを見つけ、カスタマイズし、より驚きと感動を届けられるイベントを創り上げていきたいと考えています。

 

質疑応答

最後は、質疑応答です。視聴者のみなさんから寄せられた質問にもリアルタイムで回答しました。

Q.これまでのイベント運営で何が一番しんどかったでしょうか。

肉体的という意味では、『XFLAG PARK』は正直全部しんどいです(笑)。7日間帰れなかったり、一日中リハーサルしたりすることもありますから。ですが、“終わった後の来場者の皆さんの笑顔”で、ある意味、全部解決です! とはいえ、負担は減るべきですから、リハーサル・設営スケジュールの構築を、特にオンライン化したこの1・2年は意識していますね。

 

Q.個人的な質問で申し訳ないですが、私も『XFLAG PARK』のようなイベント制作(できるならに『XFLAG PARK』)に携わりたいと考えています。 そこで、比奈本さんはどのような人を求めているか教えてもらえたら嬉しいです。

大前提として、“何にでも興味を持ち、行動する人”ですね。技術やノウハウ・経験なんてものは重要ではなく、ちょっとしたことにも疑問や興味を持つことができるような「探求心」を持ち続けられる方とはぜひ一緒に仕事がしたいです。なぜなら、その探求心の先には、きっと僕自身が知らない、分からない、まだ見たこともない新しい体験が待っていて、その人は僕にそれらを教えてくれる存在になるのだろうと思うからです。

 

Q.『XFLAG PARK』はこれからも続いてくれるでしょうか?

続くかどうかは…それを楽しみにしていただける来場者の皆さまの声次第だと思います。私たちは、その声に応え、モンストやXFLAG全体が盛り上がるような動きを毎年考えていくだけだと考えています。

また、別の言い方をするなら、“毎年同じようなイベントを繰り返せばいい”とは思っていません。ですから『XFLAG PARK』という名前の、以前とは異なる形に変化する可能性もあるでしょう。結果、別の名前になるかもしれないですね。そんな変化すら、一緒に楽しんでいただけるような体験を今後も届けていきたいなと思います。

 

最後に

今回の「THE METHOD」では、ミクシィの運営する最大級イベント『XFLAG PARK』の作り方についてお伝えしていきました。非日常のイベントを創り出すための“具体的なノウハウ”がつまった時間になりました。来年の『XFLAG PARK』では、主催者側の視点を持って参加してみるのも面白いかもしれませんね。新たな発見が見つかりそうです。

オンラインセミナー「THE METHOD」は、今後も開催予定。様々な“メソッド”に焦点を当てながら、開発・制作ノウハウなどをお届けしていきます。次回もお楽しみに!

 

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