モンストのゲーム内イベントは、課題発掘と解決にアリ!あらゆる“メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #8」

モンストのゲーム内イベントは、課題発掘と解決にアリ!あらゆる“メソッド”が学べるセミナー「THE METHOD #8」

「THE METHOD」は、ミクシィのさまざまなプロダクトにおいて実践されているノウハウやメソッドを惜しみなく共有するオンラインイベントです。

今回の「THE METHOD」では、『モンスターストライク(以下、モンスト)』のゲーム内イベントについて。

『モンスト』の“遊びの部分”は、どのように考え、作られているのか?実例を使いながら、企画・仕様決めの工程を詳しく解説していきます。本記事では、「THE METHOD #8」のダイジェストをお届けします。

 

登壇者の紹介

登壇者は、『モンスト』のゲームプランナー大沼

大沼 純平 (おおぬま じゅんぺい) モンスト事業本部
2018年に新卒入社。入社から現在までモンストのゲームプランナーとして従事。ゲームの運用業務も担当しつつ、ゲーム内の様々な新機能、コラボイベントの内容や演出などの企画を担当。現在はゲーム内のイベントやコンテンツなどの企画を中心に担当。

司会はモンスト事業本部・事業支援室の三瓶が担当しました。

 

イベントの企画からリリースまでは、7つの工程

━━まずは、『モンスト』のゲーム内イベントがリリースされるまでの流れを教えてください。

イベントがリリースされるまでの工程は、大きく分けて7つ。「企画」から始まり「仕様決め」「キックオフ」「指示書作成」「開発」「QA」、そして最後に「リリース」となります。『モンスト』は1~2ヵ月のスパンでアップデートを実施していますが、毎回、同じフローでリリースしています。

 

企画は、「問題」「原因」「解決策」から考える

━━今回は「ゲーム内イベントはどのように考えている?」がテーマでした。「企画」と「仕様決め」の部分について詳しく知りたいです。

まず「企画」では、アップデートごとにメンバーから企画を募集し、どの企画を採用するのかを決めていきます。企画担当に限らず、エンジニアやデザイナーも自由に提案できるので、集まる企画の数は平均すると100程度にもなります。

ここでは、『決戦クエスト』を具体例にして解説していきます。『決戦クエスト』は、2021年12月に実施したイベントなのですが、遊んでいない方もいらっしゃると思うので、まずはイベントの内容についてお話をして、その上でどのように企画していったのかを伝えていきたいと思います。

まず『モンスト』では半月に1回のペースで、新キャラを獲得できる3つのクエストが登場します。これらを「新イベント」と呼んでいて、『決戦クエスト』は、新イベントに絡めた形式のゲーム内イベントになります。

『決戦クエスト』では、普段の3つのクエストに加えて、特殊な形式のクエストを1つ追加しました。工夫したのは、普段の3つのクエストをクリアしておくと、特殊な形式のクエストがクリアしやすくなる点。

下の図でいうと、普段の3つのクエストが黄色い枠で囲った部分。特殊な形式のクエストが一番左側の「ストームのクエスト」です。「ゼルコバ」、「カンファ―」、「ウィロー」それぞれのクエストをクリアすると、各キャラの対策レベルがアップする。結果、「ストームのクエスト」で、各敵キャラに与えるダメージが増加してクリアしやすくなる仕組みです。

━━ユーザーの反応はどうだったのでしょう。

他の「新イベント」と比較しても、プレイしたユーザー数、それぞれのクエストの1人あたりのプレイ数も大幅にアップ。加えて、SNSやYouTubeの動画コメントでの評判も悪くない。“成功”といえる施策だったと思います。

━━では『決戦クエスト』はどのように企画したのか教えてください。

イベントを企画する際は、基本的に「問題」「原因」「解決策」で考えるケースがほとんどです。まずはじめに「問題」があり、次にその問題はなぜ起こっているのかの「原因」がある。そして、その原因に対して、こういう形なら解決できるんじゃないかと「解決策」を考えていっています。この3点から、解説をしていきます。

「問題」

私が感じた問題は、新イベントがユーザーにあまり楽しまれていないのではないか?という点。データからも、他のコンテンツやクエストと比べてプレイしているユーザー数、プレイ回数が少ないことが分かりました。

「原因」

仮説の一つは、クエストの報酬としてもらえる新キャラを獲得する価値が低いからではないか、つまり、クエストをプレイする理由につながっていないのではないか、と考えました。『モンスト』は長期運用されているゲームですから、長く遊んでいるユーザーはすでに多くのキャラを持っているわけです。そうなったときに、ここで新キャラを獲得する必要性が見出せないのでは?と思ったのです。

「解決策」

解決策の方向性は、「キャラ獲得以外でクエストをプレイする理由を作る」です。では、どんな目的があればプレイしたくなるのか?そこで感じたのは、「新しく出たクエストをとりあえずクリアしよう」という感情です。とりあえず1回だけはクリアしておきたい、というモチベーションですね。データでも新クエストを1回だけプレイしてクリアするユーザーは多いことも分かり、「クエストをクリアする」がプレイの目的になる仕組みを作れば良いのではないかと考えました。

━━なるほど!そこで『決戦クエスト』では、特殊な形式のクエストを1つ追加して、普段の「新イベント」をプレイしておくと、特殊な形式のクエストがクリアしやすくなる仕組みにつながったわけですね。

 

「仕様決め」では、自分の選択によってゴールできた感覚を大切に

━━「仕様決め」についても教えてください。

「仕様」と言っていますが、「企画の具体的な内容」と捉えていただいたほうが分かりやすいかと思います。『決戦クエスト』で一番意識していたのは、「ユーザーの選択によって、ゴールできた」感覚を作ること。理由はシンプルで、“ユーザーの力で何かを達成した体験”は、楽しい、嬉しいといったポジティブな感情につながるからです。

ここでは、その感覚を作るためのポイントを2つご紹介していきます。

ポイント1:ゴールに到達するための方法・選択肢を複数用意する

選択肢が少ないと、「ユーザーが選択した」という感覚は得られにくい…。選択肢は1つでもなく、2つでもなく、3つ以上あるといいと思っています。なぜなら、1つだと当然ながら選択の余地はないですし、2つだとどちらかと言えばこっちかな、と消去法で選んでしまいがち。ユーザーが自らの意志で積極的に選択できる場面づくりには、複数の選択肢が重要だと考えています。

この考え方を受けて、『決戦クエスト』では、新イベントのそれぞれのキャラクターごとに対策レベルを用意。キャラごとにダメージがアップする形式を採用しました。これによって、どのキャラをどこのレベルまで上げるか、という複数の選択肢が生まれるわけです。

一方で、採用しなかった方法として、対策レベルを全部のキャラで共通させること。分かりやすく、シンプルな選択ではありますが、「どのキャラをどのレベルまで上げるか」を考える余地はなくなって、「この対策レベルを上げるかどうか」という1つの選択肢になってしまうと考えました。

ポイント2:ゴールに到達するための方法を強制しない

選択肢を強制してしまうと、自分で選択した感覚にはなりません。無理やりやらされている感覚が強まると、作業のように感じてしまう…。全然楽しくないですよね。

『決戦クエスト』で重視したのは、追加した特殊な形式のクエストの難易度。対策レベルが低かったとしても工夫次第でクリアできるし、逆に全てレベルMAXにしていると楽に勝てるような難易度にしたんです。良くない例としては、全ての対策レベルをMAXにしないと勝てない仕様にすること。これは、レベルMAXを強制してしまう。あらゆるレベルでも勝てるような難易度調整を入れた点が、仕様決めのポイントです。

━━難易度を上げたほうがプレイ数が増えるのでは…と考えてしまいそうですが、そうではないんですね。

ビジネス的な視点が強くなりすぎると、陥ってしまう考え方ですね。ユーザーの遊び方を強制してしまい、イベントがつまらなくなってしまう…。逆にプレイ数が減る恐れもあるので、私も気を付けている点です。

今回は『決戦クエスト』を事例に紹介していきましたが、この考え方は他のイベントを企画する際にも同じように考えているポイントです。何か考え方のヒントが見つかれば嬉しいです。

 

質疑応答

最後は、質疑応答です。視聴者のみなさんから寄せられた質問にもリアルタイムで回答しました。

Q.企画からリリースまではどのぐらいですか?

企画の規模にもよりますが、細かい機能追加は1ヵ月程度です。ボリュームがあるもので半年ぐらい。今回ご紹介した『決戦クエスト』は半年ぐらいですね。他のゲームに比べると、かなり早いほうかなと思います。

Q.印象に残っている案件があれば教えてください。

新卒で入社して初めて手掛けた大きな案件は印象に残っていますね。自分で企画を考えて、経験がない中で、エンジニアやデザイナーと議論しながら、リリースに持っていきました。プランナーとしての甘さを指摘された経験を含めて、とても記憶に残っています(笑)。

Q.ゲームプランナーとして、どのように業務経験を積んでいきましたか?

まずは、運用業務から始めました。一言で“運用”といってもたくさんの業務があって、たとえばガチャ運用だったり、ステージの制作だったり、あとはキャラの設定を考えたり、クエストバナーの発注をしたり…さまざまな運用業務を経験してきました。その後、少しずつ企画の仕事も増えていき、ゲーム内のいろいろな機能の企画・開発のディレクションに携わるようになりました。

Q.『モンスト』のような長期運用されているゲームの企画で気を付けている点は?

一番は、既存機能とのバッティングですね。企画単体としては素晴らしいけれど、実装することで他の企画が死んでしまうのは絶対に避けたい。ですから、影響範囲については慎重に検討します。長く運用しているからこそ、気を付けないといけない点です。

Q.プランナーとしての「発想の方法」があれば教えてください。

普段、生活をしている中で「楽しい!」と思った瞬間を大事にしています。なぜ楽しいと思ったのか?どの要素に心が動いたのか?そこにはどういう構造があるのか?…これらを徹底的に考えるようにしています。「楽しい」の原理原則を掴めれば、きっとそれは『モンスト』にも活かせると思うので。

 

最後に

『モンスト』のゲーム内イベントで重視しているのは、“ユーザー自身が、自分の選択によってゴールできた”という感覚を作ること。そのために複数の選択肢を用意し、ゴールまでの方法を強制はしない。自分の意志で自由に遊べるからこそ、もっと遊びたいと思えるゲームになっていくのだと感じました。

オンラインセミナー「THE METHOD」は、今後も開催予定。

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様々な“メソッド”に焦点を当てながら、開発・制作ノウハウなどをお届けしていきます。次回もお楽しみに!

 

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