「ここ3年ほどで、MIXIの中途採用組織の役割は大きく変わりました。私たちがこれから目指すのは、採用支援を起点に、人と組織の課題を解決できる存在。あらゆる現場から頼られる人事本部になることが理想です」と語るのは、人材採用部 中途採用組織 マネージャーの卯木。「中途採用組織」のこれまでとこれから、そして今後取り組むべき課題について話を聞きました。
卯木 源一 (うのき げんいち)
人事本部人材採用部 中途採用グループ マネージャー
大学卒業後、総合人材サービス企業に新卒入社。人材紹介の営業として、エンジニアはじめ複数の職種の採用支援に携わる。2020年5月、MIXIに入社。2023年4月に中途採用組織のグループマネージャーに就任。
人と組織の課題を解決する集団へと変化
━━MIXI社内における「中途採用組織」の役割についてどのように捉えていますか?
近年、事業環境の変化と企業規模の拡大により、人事にも柔軟な対応と新たな価値の創出が求められています。ここ3年ほどで「中途採用組織」の役割は大きく変化しました。私が入社したのは2020年ですが、当時は中途採用におけるリクルーティング業務に強みを発揮していましたが、現在は「採用支援を起点に、人と組織の課題を解決する集団」へと進化しつつあると考えています。
「中途採用におけるリクルーティング業務に強みを発揮する集団」とは、採用ボリュームに重きを置いているという意味です。数年前の社内状況として、各事業の成長に合わせて多くの人材をスピーディに採用していく必要がありました。経験者採用だけでなく、ポテンシャルを秘めた若手採用にも力をいれていて、「採用人数」が一つの価値になっていたと思います。
ですから、私たち「中途採用組織」の動き方としても、各事業部から「こういう人が欲しい」という要望に対して、エージェントと連携して人を集め、現場に候補人材を紹介していくことが中心。もちろん私たちが面接に入ることもありますが、最終決定する現場の方々が採用を推進していました。
━━そこから「採用支援を起点に、人と組織の課題を解決する集団」を目指すに至った課題感は何ですか?
MIXIの企業規模が大きくなり、より強固な組織づくりが求められる中で、これまでと同じあり方では最大限のパフォーマンスを発揮できないと感じたからです。
「こういうスキルを持った人が欲しいです」という事業部からの要望に対して、「わかりました」と応じているだけでは、その組織を理解することはできないですし、「組織に内在する課題」を解決することはできないと感じていました。
そのチームのパワーバランスはどうなっているのか、部長が考える次のマネージャー候補は誰なのか、それによってどういう問題が起きそうなのか、その上でどのようなスキルを持った人を採用すればいいのか…こういった話を事業部のトップと深く考え、一緒に採用活動を進めていくことが、「組織を成長させるための採用」だと考えるようになりました。
採用とは会社における投資なので、私たちは投資の成功確率を上げるための動き方をしないといけません。単に候補者のスキルとか経験だけを見るのではなく、事業部におけるバランス、仲間との相性、組織の組み方といったことを一緒に考えなければ、投資は成功しないんです。
━━なるほど。
同時に私たちが各事業に深く入り込んでいれば、HRのスペシャリティを持って気付けることがたくさんあると思っています。例えば責任者からは見えづらいけれど、私たちから見えている課題があるのだとしたら、どうアプローチすればいいのか?解決する方法はないのか?を考えて、何かしらの施策を提案することができると思っています。
事業部との深い対話から、組織の課題を探る
━━「中途採用組織」のメンバーの動き方も変わりましたか?
大きく変わりましたね。現場からの要件定義について、現場の責任者と話し合いながら採用活動を進めています。
例えば、ある事業部の部長がマネージャー候補を中途採用したいと要望してきた場合、まずは内部のメンバーからの昇格候補が見つからない理由を探る必要があります。個人の適性や意向についても確認し、本人がマネージャーになりたくない場合は、その理由を探ります。仕事内容や評価体制の問題があるかもしれません。新たなマネージャー候補を中途採用する前に、組織全体の視点から議論を行い、最良の選択を検討します。
それから場合によっては、私が評価会議に入らせてもらうこともあります。
━━それは、どういう意図でしょう?
1つは、採用市場と見比べた時の評価がなされているかを確認するためです。
MIXIでの活躍だけで判断するのではなく、同業界における活躍スケールと比較して判断しなければ、適切な評価になりません。逆のケースもあり、MIXIでの良い評価に対して、その根拠や理由について話し合うこともあります。
「中途採用組織」ではエージェントとやり取りする場面が多くあるので、競合他社の最新情報を得る機会も多くあります。このような情報を通じて、他社の条件や評価制度などを把握し、現場で議論することができる点が強みと言えます。
もう1つは、フィードバックを通じた育成の観点です。
評価は、単に成果を判断するだけでなく、成長を促進するための手段でもあります。たとえば、マネージャーがメンバーに対して適切なフィードバックを行うことで信頼関係が深まり、自身の目指す方向性が明確になるなど、重要な収穫を得ることができます。
「頑張ったから【GOOD評価】です」で終わりではなくて、また次に【GOOD評価】を取るためにはどうしたらいいのか、何が足りていなくて、何を伸ばすといいのか。そういった「評価のあり方」をすごく考えるようになりました。
━━いわゆる「単なる採用担当」ではないんですね。
そのとおりです。私はメンバーにも「単なる採用担当ではない」という話をしています。
すごく分かりやすい名称なので、組織名や職種名もこの言葉を使われがちなのですが「採用担当」としてしまうと、その価値が限定されてしまう。「人を採用すること」「採用するために人を集めること」が、私たちの価値だと思い込んでしまう。けれど、そうではなく「採用支援を起点に、人や組織の課題を解決する集団」という定義に変えていきたいと思っています。
現在、「中途採用組織」では新しいメンバーを募集していますが、この考えに共感してくれるかどうかは重要なポイントだと思います。当事者として事業部に関わったその先、組織がどう変化していくのかに興味関心を持って、現場とその想いを分かち合える方が向いていると思いますね。
各方面から頼られる、現場に近い部門でありたい
━━今後はどのような取り組み・施策を考えていますか?
2024年4月から新たに体制を変更し、事業部ごとに担当を持つようにしています。
従来はエンジニア職の採用を担当するメンバーが複数の事業部をカバーしていましたが、「人と組織の課題を解決する中途採用組織」を目指すには、特定の事業部について深く理解する必要があります。エンジニアだけ採用できたとしても、組織の課題が必ずしも解決されるわけではありません。企画職やデザイナー職など、その事業部を構成する全ての職種を総合的に考慮することが重要です。
そのため、各事業部には2人以上のメンバーが担当し、それぞれが得意な職種や領域を役割分担しています。このアプローチにより、自分が担当している職種だけでなく、「事業部の成長」に焦点を当てた行動が可能になると考えています。
━━他にもありますか?
人事だけでなく他部門との連携も強化していきたい点です。特に労務との連携は重視していて、専門知識を持ったスペシャリストと共に、事業部に合った働き方などを考えていけるとよいのだと思います。
最前線にいる「中途採用組織」が中心となって、その事業部の課題に合わせて適切な部門を巻き込んでいく。そして、最終的にあらゆる現場から頼られる人事本部になれたら、すごく理想ですね。
━━人事に相談すれば何とかなるんじゃないか…という信頼感でしょうか。
まさにそれですね。
ただのオペレーション部隊ではなくて、現場から「何かあったらまずは人事に話をしてみよう」「話をしてみたら、いい方向に進むかもしれない」「とりあえず聞いてもらいたい」と思ってもらえたら、それは私たちの介在価値の高さですし、会社としてもすごく健全な状態だと思うんです。
MIXIの社員数は1000名を超え、世間では大企業と見なされる規模に達していますが、私たちは規模の大きさを理由に諦めるつもりはありません。物理的、心理的な距離を含め、常に現場に密着した部門でありたいと考えています。日々の取り組みを積み重ねることで、私たちは「人と組織の課題を解決する集団」を目指すことができると信じています。