2021年4月からミクシィでは、『リザーブ休暇』という新しい制度が導入されます。これは簡単に説明すると、利用できず残念ながら失効してしまった有給休暇を積み立てて有効活用できる新しい制度です。本記事では制度設計の背景と詳細をお伝えいたします。
『リザーブ休暇』について解説します。これは、一律共通で社員全員に付与する特別休暇とは異なり、各社員の失効する有給休暇を『リザーブ休暇』として振替え、利用制限がある有給扱いの休暇となります。毎年付与される一般的な有給休暇と大きく異なるのは、利用用途に制限が設けられていること、最大40日まで貯蓄できる点です。
それでは、事例を用いながらこれまでとこれからでどのように変更になるのか、ビフォーアフターでみてみます。
ビフォー
※数値は全て日数
※有給付与のタイミングは一律4月1日としている(実際は入社のタイミングで有休付与日数は異なる)
ビフォーの図から、例えば、入社三年目の事例だと、15日(有休取得数)+14日前年度繰越有休日数)=29日(当年利用可能有休日数)となります。ここから、同年で7日(利用した有給日数)を有休として利用したとすると、残有給日数は22日となります。しかし、翌年にそのまま繰り越されるのではなく、前年度から繰り越された14日から7日分が利用有給日数として減算された上、残りの7日は失効してしまいます。これは、労働基準法第115条により、年次有給休暇の時効が2年間と定められているため、一昨年分の有休が失効する仕組みです。この失効した有給休暇分を、全て『リザーブ休暇』として積立貯蓄ができるようになります。では、具体的にどのように貯蓄されていくか計算してみます。
アフター
※リザーブ休暇を入社5年目まで一切利用しなかったとする
アフター図の入社4年目の例を見てみると、前年度(入社2年目と3年目)までに失効した有給休暇が9日分あるので、これがそのままリザーブ休暇として取得できます。同年に8日有給として利用した場合、前年度繰越有休日数から行使されるため、7日間が失効対象となりますが、前年のリザーブ休暇9日に加え、7日分が加算されるため、翌年の入社5年目のタイミングで合計16日のリザーブ休暇が利用できます。ちなみに5年目は繰越の有給休暇と同数の有休を取得したため、リザーブ休暇に振替えできるものはありません。よってこの年はリザーブ休暇の貯蓄ができなかったとなります。
あくまで、リザーブ休暇は失効対象だった有給休暇が振替えになる、と考えるとシンプルかと思います。
それでは次に、本制度設計の背景や運用フローにについて担当した西にインタビュー。どのような想いで設計したのか、聞いてみました。
――まず、今回の『リザーブ休暇』について設計された背景について教えてください。
はい。まずは背景として、ミクシィで働く社員のみなさんのライフステージが大きく変わろうとしていることです。
――どういうことでしょうか?
一つ目は、平均年齢が高くなってきていることですね。簡単ではあるのですが、この先5年後をシミュレーションしてみると、これまで在籍している社員は20代/30代がボリュームゾーンでしたが、30代/40代にシフトしていきます。
――平均年齢が上がるとなると、社員の病気やケガのリスクが増えてきますね。
そうなんです。年齢層があがるにつれて、傷病のための休暇というのはニーズが高くなるだろうと思っています。それに加え、子の看護や親御さんの介護、慶事や弔事も増えてくる可能性が高い。さらには、昨今地震や台風といった災害も増えてますよね。実際に災害の休暇について労務への相談もありましたから。ライフステージの変化が一層おきやすい状況になると、これまでの休暇制度だとカバーできないところがでてくるのでは、というのが新しい休暇制度の設計の背景です。
――これまでだと、有休を休暇にあてる方が多かったと思います。例えばですが、災害休暇や傷病休暇といった特別休暇を新しく設けて、カバーできないでしょうか。
仰る通り、そちらも検討してみました。ただ、様々なライフイベント全てに特別休暇を付与してしまうと、公平性が保ちにくくなるリスクもあります。
――というと?
例えば、独身の方であれば慶事の結婚、出産休暇、男性だと生理休暇が取得できない状況です。一方別の方はライフイベントが盛りだくさんで様々な休暇を取得しやすくなってしまう。社員各々の取り巻く環境によって、休暇取得数の格差がでてきてしまうと、全体最適の観点からもよくはないですよね。
――確かに。
なので、社員構成も多様化している中で特定の社員のみの権利ではなく、できる限り社員の皆さんに平等で、ライフステージの変化に沿った休暇制度で社員をサポートして、安心して長期的に働ける制度にしたかったわけです。
――なるほど。
そのような観点で総合的に考えると、失効している有休を積み立ててもらい、ライフイベントに応じて利用してもらう形がベストなのではないかと考えました。ちなみに実際に有休を失効している社員の割合は80%超なんですよ。
――え、そんなにですか。
ええ。1日でも有休を失効した方を含めるとその割合になります。さらにこのデータは、2020年3月末日のデータです。コロナ禍の影響で2020年4月~2021年3月の有給休暇の消費日数はもっと減っていると予想されます。有休がもったいない…と思いつつも、どうしようもできなかったのがこれまで。これからは失効していた有休を有効活用できます。
――消化できずに失効していた有休が、リザーブ休暇として積立できるのはありがたいですね。いざというときに使える可能性が高いですし。
例えば、子の看護休暇はこれまで年間5日までという上限があり、それ以上休暇をとるとなると有休か無給の子の看護休暇から消費することになっていたかと思いますが、リザーブ休暇を最大40日間貯めている社員であれば、子の看護休暇として最大40日間を有給扱いで取得できます。利用用途にルールがあるので、その点はご留意願いたいのですが、突発的なライフイベントにもフレキシブルに利用できる制度と考えてもらえば幸いです。
――一つ疑問に感じたのですが、入社年度が長い人は付与される有休日数も多く、失効する有休も多くあるかと思いますので、リザーブ休暇として積立しやすいかと思います。しかし、入社年度が短い方だとあまりリザーブ休暇がないのでは。
その点についても検討し、制度がスタートする2021年4月1日以降に入社される方、現在ミクシィに所属されている直雇用の方に、初回ボーナスとしてリザーブ休暇を一律10日間付与します。
――それを聞いて安心しました。今回のリザーブ休暇でこれまでの休暇制度と変わった点を改めて教えてください。
リザーブ休暇の枠組みの中で利用できるのは、下記になります。
――傷病目的や災害対応などで休暇を取得したいリザーブ休暇の枠組みのなかで利用できるようになっているんですね。
そうですね。そのあたりは新設された休暇となります。下の画像は、今回のリザーブ休暇設計にあたり、これまであった休暇制度の目的を見直し、再整理したものになります。
――おや、よく見るとこれまで有給休暇扱いだったものが一部減少していますね。
こちらも、休暇の目的を整理している中で、全体最適・公平性・長期的に活躍しやすい環境なのか、といった観点を最大限考慮しました。とはいえ、いきなり無くなると困る方もいらっしゃいますので、慶弔休暇は1年間、看護/介護休暇については2年間の移行措置を設けていいます。
有給休暇としての付与日数が減っているところはありますが、必要な休暇数をリザーブ休暇から無制限で利用できるようになっています。この変更点を損得で考えるのではなく、個々のライフプランや必要日数によって、自身で柔軟に組み立ててもらいたいと思っています。
――あくまで、全体最適、公平性、長期的に活躍してほしい、という観点で設計されたわけですね。最後に質問したいのですが、リザーブ休暇制度はこの内容で完成なのでしょうか。
現時点で、考えられるところまではできたと思っています。しかしながら、これから、先日お話したマーブルワークスタイルも本格導入していきますし、アフターコロナの世界もスタートしていきます。状況が刻々と変わっている状態ですので、拡充の余地があれば、柔軟に検討していきたいですし、繰り返しにはなりますが、社員のみなさんに長期的に活躍してもらえるように、制度としてよりよくしていきたいと思います。
2021年度4月から導入された本休暇制度。失効する有給休暇をプールした形で、ライフイベントに応じた自由な使い方ができるようになりました。
こちらの図は利用事例です。「子供が熱を出して…」「新婚旅行に行きたい」などはリザーブ休暇の枠組みから計画的に使う、そして、「リフレッシュしたい」「一人旅をしたい」などの場合は従来の有休を使用など、より目的に応じて検討できるようになっているかと思います。ミクシィはどんな方にでも働きやすさを担保しつつ、ベストなパフォーマンスを出してもらえるように、制度設計を通じて支援していきたいと考えています。