2022年2月、MIXI GROUPとなったJリーグクラブ・FC東京。2023年1月、MIXIとFC東京の信頼関係醸成・相互理解をさらに進めるべく、MIXI本社(渋谷)にて「チームビルディングプログラム」が実施されました。今回はこの研修の講師であり、FC東京のクラブナビゲーターである羽生氏と、FC東京の常務・柳本に、この研修の狙いと実施の背景を伺いました。
<目次>
Part.1:羽生直剛 × 柳本修平 研修の背景を語る
Part.2:ダイジェストレポート
Part.3:研修を終えて
Part.1:羽生直剛 × 柳本修平 研修の背景を語る
羽生 直剛(写真左)
FC東京 クラブナビゲーター / 株式会社Ambition22 代表取締役
1979年12月22日生まれ。千葉県出身。2002年に筑波大学からジェフに加入し、オシム監督に重用されてレギュラーに定着。2006年に日本代表に初招集され、2008年までに国際Aマッチ17試合に出場。その後、FC東京、甲府でプレーしたのち、2017年にジェフに復帰。翌年に引退し、FC東京の強化部スカウトを経て、現在は自身が立ち上げた会社「Ambition22」の代表を務める。Twitter / Instagram
柳本 修平(写真右)
東京フットボールクラブ株式会社 常務取締役
株式会社NTTドコモを経て、2008年MIXIに入社。SNS mixiのサービス企画、経営企画、アドテクスタジオなどを経験。2016年7月XFLAGスタジオ本部 人事戦略室の室長に就任。2018年4月、執行役員人事領域担当。2020年4月 執行役員 人事本部長就任。2022年2月 FC東京の常務に就任。
━━まず「ストレングスファインダー」とは何か、教えてください。
羽生 ストレングスファインダーとは、自分の強みをみつける“ツール”のことです。全部で177問の質問に答えることで、34の資質の中から自分の才能をみつけることができます。
━━今回「ストレングスファインダー研修」を開催したのはなぜですか?
柳本 FC東京のスタッフは、真面目で一生懸命な人が多く、みんなで頑張る一体感も持ち合わせています。しかし一方で、「一人ひとりが自分を磨き切る」というところはちょっと弱いように感じていたんですよね。そんななかで、FC東京のクラブフィロソフィーを改めて見直すことになり、“多様性”や“可能性”をキーワードにFC東京としてのバリューを定めました。
多様性とは「お互いの違いを受け容れる」というニュアンスと思われがちですが、前提として「一人ひとりの個性が輝いていること」だと私は思っていて、一人ひとりが卓越した何かを持っているからこそ、そこに多様性が生まれるものなんですよね。違いを受け容れるのも大事だけど、それ以前に違いが生まれるくらい尖らなきゃいけない。そうなったときに一人ひとりがどうやって自分を磨くべきなのか?というのが、私の課題としてありました。
━━柳本さんがストレングスファインダーを知ったきっかけとは?
柳本 私はもともとMIXIでさまざまな人材系の研修を企画・実施する側だったので、ストレングスファインダーについても知っていたんです。なかなかいいツールだし、いつかFC東京で活用したいなと思っていたんですよね。
そんなある日、FC東京のクラブコミュニケーターの石川直宏さんが開催するワークショップに参加していた羽生さんと会話をしていると、実は羽生さんが「GALLUP認定ストレングスコーチ」の資格を持っていることが判明したんです。「こんなに身近に、その道のプロがいるとは!」と驚いて(笑)、ぜひ講師として研修を開いてほしいとお願いしました。
羽生 僕は以前FC東京でプレーしていたこともあるので、FC東京が積み上げてきたことを大事にするマインドも理解していましたし、MIXIが掲げる“日本の首都を代表する偉大なクラブをつくる”という目標に対しても、何か貢献できないかと思っていました。クラブのために一人ひとりが強みを持って目標に向かうというチームビルディングが必要なのでは?と漠然と思っていたときに、柳本さんから声がけをもらったという経緯です。偶然なのですが、タイミングがとても良かったと思います。
━━今回のストレングスファインダー研修は、どのように設計されたのでしょうか?プロセスについて教えてください。
羽生 まず目標としていたのは、MIXIのメンバーとFC東京のビジネススタッフのチームビルディングについて、自分を知ってお互いを知ることで、新たなクラブフィロソフィーに向かうために何をするべきかを個人やチームが認識し、活用していくということ。研修の組み立て方としては、まず個人の資質を理解し、徐々にグループワークを通じてみんなの違いを理解するという設計にしました。
柳本 このタイプの研修は初めての取り組みになるので、トライアルで2チームに参加してもらい、検証していこうという流れでしたね。
━━今回の研修で特に気を配ったポイントはありますか?
羽生 まず1回目を実施して改善し、2回目、3回目……をよりよいものにしていけば、クラブ内で広げていけるというのが僕の理想とするところでした。
柳本 そうですね。1回目の振り返りを次回に活かしていこうというのは、私と羽生さんの認識にありました。また、MIXIの本社(渋谷)で開催したのも意味があるのかなと。
羽生 スタッフたちにとって、渋谷のど真ん中にあるMIXI本社ビルに足を運ぶのは大きな刺激になったと思います。「僕らは東京を本拠地に置くクラブなんだ」と実感し、「東京を代表するクラブになりたい」と強く思ってくれたら嬉しいですね。
柳本 それはありますね。FC東京は東京全域をホームタウンとしているので、東京すべてを見渡せるこの場所で会話することが、首都・東京を代表するクラブとして何をすべきかと考えるきっかけになってくれたらいいなと思います。
Part.2:ダイジェストレポート
ここから、2023年1月に行なわれた第1回目のストレングスファインダー研修の様子をダイジェストでお伝えします。
まず始めに、羽生氏とストレングスファインダーとの出会いについての話がありました。羽生氏が現役選手として活躍していた頃、イビチャ・オシム氏(元日本代表監督)が目指した“強みを掛け合わせてチームを作る”というチームビルディングに感銘を受けたのだとか。
「自分はアスリートとして体格に恵まれたわけではないが、それでも日本代表選手となり、現役を長く続けられたのは、自分の強みを自覚し、周りに主張し、理解されることで、活かしてもらえたから。」と語る羽生氏。その経験にもとづいた想いが、今回の研修に反映されていました。
「個人の本質的な強みがチームとして発揮されるためには、まず自分の強みを理解し、お互いを知る、そしてお互いの強みを組み合わせ、組織やチームの勝利につなげることを意識する必要があります」と語る、講師の山田氏。
次に、参加者の自己紹介を実施。その後、お互いの性格に触れるような簡単な質問がありました。
例えば…
など。当てはまるものに手を挙げ、それぞれがエピソードトークを展開しました。実はこの質問が、後々のワークに関わっていました。
参加者は事前にストレングスファインダーの質問に答えており、それぞれの才能のTOP10が導き出されていました。しかし、才能の持ち主の名前が伏せられており、先ほどのエピソードトークと照らし合わせながら、誰がどの人なのかを当てていきます。参加者のみなさんは悩みながらも、なんと全員一致させることができ大盛り上がり!
「才能とは自分の“鼻”。自分では見えそうで見えないけれど、人からは丸見え。才能は自分から見えず、他人からは良く見えるものです」と語る山田氏と羽生氏。だからこそ、人の才能に気づいたらフィードバックすることも重要とのこと。
他にも、たくさんある絵の中から直感で一枚を選び、どういう才能があるから選んだのか?をお互いに話し合うワークや、自身の資質から導き出された形容詞や名詞をもとに自分の長所をキャッチコピー化するワークなどを通じ、参加者は自分の強みについて理解を深めていました。また、自己理解だけでなく、他人の才能を発見し、フィードバックをするというディスカッションも行なわれました。
普段、あまり言語化することのない自分や相手の才能。お互いに真剣にディスカッションを行ない、気づけばあっという間に3時間が経過。ストレングスファインダー研修にてさまざまなワークを体験した、参加者からの声を一部ご紹介します。
【参加者の声】
「自分の強みをなんとなく認識していたけれど、ワークを通じて言語化されて具体的に知れたのが良かった。その強みや特徴をチームに理解してもらって、自分はこういう人なんだと認識してもらい、仕事を一緒に進めていくためにはどうしたらいいのか?という会話をしてみたい」
「僕は自分の資質が良く分かり、自信があることにはさらに自信を持っていいかなと思えました。ワークを通じて他人と自分の違いを実感できたので、違いを認識して仕事に活かしたいと思います」
「自分のことは何となく分かっているつもりでしたが、改めて再認識できました。参加者のみなさんの才能についてこれまでの自分の認識と合っていたところもあるし、こういうところが違うんだなという気づきがあったので、認識していいアプローチができればと思います」
「自分が認識している強みはあまりズレがありませんでした。いろんな特徴を持っている人がいて、そのバランスが面白いと思いました」
Part.3:研修を終えて
私は研修を通じてクラブに貢献しないと意味がないので、今後はさらに価値ある内容にブラッシュアップしていきたいと思っています。サッカー選手は試合に勝利することがゴールです。チームとしての勝利という感覚もあるし、試合に勝ったらみんなで喜ぶし、負けたらみんなで反省する。「それは自分には関係ない」というメンバーがいるチームは勝てないからこそ、一人でも多くの人に自分の資質を理解してもらい、チームの勝利に貢献できるよう目を向けてもらうかが自分の課題だと捉えています。
まだまだクラブが勝つために自分の強みとどうつながってくるのか理解できていない人が多いと思うので、どうしたら伝えられるだろう?というのは日々考えています。「僕はこれで貢献するけど、君は何で貢献する?」というチームになるかどうかは、僕次第なのかなと。一体感を持ちながら、個人の強みの集合体になることは、僕自身も探っていきたいですし、そこに貢献できるように頑張りたいですね。僕のふるまいでみなさん一人ひとりに刺激が入ったらいいなと思っています。
研修の効果で言うと、まず参加者がみんな話題にしているのが良かったなと思います。参加者がお互いに話題にもしているし、受講してない人たちにも話が広がり、「自分の資質を知りたい」と言っているスタッフもいるみたいです。話題になっているということは、その会話を通して相互理解が進んでいるということ。それは研修の場だけに限らず、いい効果が生まれているのではないかと思います。
今の感覚としては何回か研修を重ねるなかで、組織編制でチームが新しくなったり、新しい社員が入社したときなど、ストレングスファインダー研修を効果的に使えるシチュエーションが見えてくると思っているので、継続して実施していきたいと考えています。
「良い会社、良いクラブになっているか?」という問いに対する答えは、働く人、選手、サポーターのみなさんが持っているもの。私からはそれに向けてチャレンジし続けたり、変え続けることしかできないんですね。FC東京がMIXI GROUPになり、この1年、いろんなことにチャレンジしてきました。これを積み重ねていくことで、きっといい方向に進むだろうと信じています。もし悪い方に変化してしまったとしても、良い方向に方向転換もできるので、変化し続ける、試し続けるという姿勢は大切にしていきたいと思っています。