MAU1億人超の“次世代遊び場”の創出は、ミクシィだけが狙える。と、DE事業本部が考えるワケ。

MAU1億人超の“次世代遊び場”の創出は、ミクシィだけが狙える。と、DE事業本部が考えるワケ。

『コトダマン』をはじめとするプロダクトの運営との新規事業開発を手掛ける、デジタルエンターテインメント事業本部(以下DE事業本部)。ゲームアプリのプロダクト・サービス開発がメインの部署だと思われている方も多いと思います。しかしそれにとどまらず、将来に壮大なミッションを掲げています。今回事業部の本部長である安藤へのインタビューを通じて、DE事業本部が見据える未来とは?に迫りました。 

 

ゲームはコミュニケーションサービスとしての側面を持ち始めている 

━━DE事業本部は、ゲーム開発を手掛ける部署ですよね? 

安藤 傍から見るとそう思われるかもしれませんね。実際に『コトダマン』をはじめとするゲームプロダクトを中心とした新規事業開発をしている部署ではあるのですが、単にゲーム開発を手掛けているわけではありません。 

━━というと? 

安藤 DE事業本部が目指しているのは、“次世代コミュニケーションプラットフォームの創出”です。私たちが主戦場としているインタラクティブ&エンターテインメントの市場は、年間10%以上で継続的に成長しているマーケット。成長を牽引しているのはモバイル向けのゲームです。

━━背景をどのように分析しているのでしょうか。
安藤 なぜこれほど成長しているかというと、ゲーマー層が拡大し続けているから。ゲーマー層というのは、これまでは家庭用ゲーム機で遊ぶ層でしたが、モバイルでカジュアルに遊ぶ層、またソーシャルゲームが出てきたことで友達に誘われてプレイする層まで取り込んで大規模化しています。結果として、昨今ではMAU1億人を超えるゲームも複数出現しています。

━━確かに新しいデバイスの出現と、遊び方、楽しみ方の変化がありますね。

安藤 ゲームの楽しみ方はプレイ以外にも広がっている中で、今後は現状のプレイヤー層以外にも裾野が広がり、MAU規模はさらに巨大化していくでしょう。ゲームコンテンツ自体がコミュニケーションサービスとしての側面を持ち始めているんです。ゲームを進化させること、つまり次世代コミュニケーションプラットフォームを作ることが、我々の掲げるミッションです。

 

━━次世代コミュニケーションプラットフォームですか…。 

安藤 今までのインターネットというのは、テキストや動画などの情報に触れたり、自分で投稿するという側面が強く、体験としてはリアルと比べると薄いものでした。我々が目指す次世代コミュニケーションプラットフォームというのはバーチャル空間にアバターなどを使ってログインし、この中で自分や友達がリアルに匹敵する体験をする、もしくは、リアルに体験できないことを体験できる場のこと。つまり“体験”のインターネットと呼ばれるものです。

━━ネットの世界とリアルの世界の境界線が無くなるイメージでしょうか。

安藤 そうですね。このインターネット空間では、ゲームコンテンツをプレイすることもできれば、映画のような映像コンテンツも楽しめる。カラオケで歌ったり、友達の歌を聞いたりもできる。このインターネット空間そのものがコミュニケーションプラットフォームであり、エンターテインメントプラットフォームでもあるわけです。 

 

ミクシィだからこそ生み出せるプロダクトがある 

━━なるほど。全く新しいインターネット空間のことなんですね。でもこの市場で勝つというのは、なかなかハードルが高そうですが。 

安藤 仰る通りハードルは高いです。参入している企業が増えてきているのも事実です。しかし、ミクシィならではの知見を活かすことで勝ち筋はあると考えています。私たちの強みは、リアルな友達と遊んで楽しいという体験を創出し、それをサービスとして提供し続けていけるところです。これは、SNS『mixi』をはじめ、リアルグラフ*を軸に友達や親しい人とのコミュニケーションにこだわってプロダクトを作ってきたミクシィだからこそできることだと自信を持っています。

*リアルソーシャルグラフのこと。SNSなどにおけるユーザー間の関係の中でも、現実世界の知人などに基づく関係を指す

 

━━一般的な”ゲーム”とは何が異なる点になるのでしょうか。
例えば、特別なアイテムを手に入れたり、ボスを倒す、レベルをあげるといった目的を達成するためのゲームプレイやギルドプレイとは異なります。ゲームをプレイすることが目的ではなくて、友達と楽しく過ごす、コミュニケーションを取るということが目的になるようなプロダクトです。例えば、サービス開始3ヶ月で800万DLを突破した『コトダマン』は、ミクシィにジョイン後、友達と遊ぶ価値を最大化していくことによって更に価値を伸ばすことに成功しています。このようにリアルグラフの知見をもとにインタラクティブなプロダクトを作っているプレイヤーというのは、世界を見てもほぼいないんです。 

━━リアルグラフの概念をプロダクトに組み込むわけですね。 

安藤 今までのコミュニケーションプラットフォームにおいて、日本のプロダクトは不利な部分がありました。それは、文化や言語の壁があったから。この壁があったから、世界で戦えるプロダクトを生み出すのが難しい側面もあった。しかし、ゲームコンテンツは文化や言語を超えて世界で受け入れられています。むしろゲーム市場というのは、日本勢が切り開いてきたものなので、これをフックに巨大化していける可能性を秘めているんです。私たちが言語や文化の壁で勝ちきれなかったところも、コンテンツの面白さで突き抜けられれば勝ち筋があると考えています。 

━━これまで、バーチャル空間を提供するサービスはあったかと思いますが、ことごとくうまくいかないことが多いという印象があります…。 

安藤 その理由はとても単純で、バーチャルな空間を用意するだけで、「誰と」「何を」して楽しめばいいのかまで設計できていないから。コンテンツとして面白いもの作るだけでなく、さらにコミュニケーションサービスとして設計できるという2つを両立することは、実はとてもハードルが高い。 この領域はGAFAも狙っていますが、資本力だけで参入できるほど簡単な市場ではないと考えています。 

 

世界規模でコミュニケーションスタイルが大きく変化した2020年 

━━「心をつかみ、世界を熱狂させる」というDE事業本部にあるミッションにも、そういった思いが込められているんでしょうか。 

安藤 エンタメ領域で勝負するには、ユーザーの期待値を超えることで驚きを生み、驚きを持ってユーザーの心をつかむことが何よりもまず必要だと考えています。その上で、さらに次世代のコミュニケーションプラットフォームを目指すなら世界目線で戦わないと勝てない、という思いからこのミッションに辿り着きました。正直に言うと、このミッションや今後の目標を発表した当初はピンときていないメンバーも多くいたとは思うのですが(苦笑)、世の中の変化は着実に起きているということを言い続けてきた結果、「このミッションが腑に落ちてきた」「世界が見えてきた」と話してくれるメンバーが最近増えてきています。大きなトレンドが改めて自分の肌感として分かるようになってきたんだと思います。そういう意味でも大胆なミッションと目標を最初に設定しておいてよかったと考えています。

━━それはなぜですか? 

安藤 一番の大きな要因は、新型コロナウイルスの感染拡大でしょうね。これによって一番変わったのは、ユーザーの行動です。オンラインでリアルな友達や親しい人とコミュニケーションを取ったり、ゲームをプレイするのが当たり前の世界になりました。本来、オンラインでコミュニケーションを取るというのは、普及するまで時間がかかったはずなんです。なぜなら、対面のほうが圧倒的に楽だから。ただ多くの人が強制的にリモートでオンラインを通じたやりとりを経験した結果、変化のスピードが速まった。この変化は不可逆だと思っていて、ライブや映画鑑賞、カラオケなどの遊び方においても新しい体験として再定義されるようになり、今後はリアルとオンラインが混在するようになるでしょう。シーンによっては友達と遊ぶときにオンラインでの体験が選ばれることも多いだろうと。 

━━なるほど。世界規模で大きな変化がもたらされていますよね。だからこそ、世界を見据えたプロダクト作りをしているんですか。 

安藤 そうですね。日本市場だけで通用するプロダクトは作らない、というのを明確に決めています。世界市場は日本市場の延長線上にあるわけではありません。日本でスマッシュヒットしたからといって、世界で流行るわけではない。日本国内の市場はソーシャルゲームの領域を引きずりすぎていて、そこにフォーカスしたプロダクトでは世界で勝てないと思っています。なので、基本的に日本市場ではなく、視座を広く持ってグローバルに受け入れられるプロダクトを作ろう、と。ただ日本市場を捨てるわけではなくて、日本市場も一市場として取りに行こうと考えています。 

━━ではどのような戦略を描いているのでしょうか。

安藤 世界で戦うためには、尖ったプロダクトでなければ勝てません。『コトダマン』をはじめとする既存コンテンツの運営をもとに、プロダクトを成長させるノウハウを蓄積し、そこで得た知見をもとに新規サービスの開発へとつなげています。誰でも挑戦できるわけではなくて、伸びる市場か、尖っているプロダクトか、成長していけるチームかどうかを見て、新規サービスの開発に集中してもらう。チームとして伸びていきながら、新しいチャンスを作り上げていくスタイルです。 

━━新規サービスに関わる専門チームを立ち上げるわけではなく、既存プロダクトが動いている隣で新規サービスを生み出していく、循環型にするわけですね。

安藤 ユーザーの行動変容が顕著になった頃には、プロダクトを出していないと遅い。そのため、時代の変化を敏感に感じ取りながら、スピーディーに新規サービスを生み出していく組織体制が必要だと考え、こういったスタイルになりました。   

━━このスタイルを実現するには現場のカルチャーも大きな要因になりそうです。

安藤 部署のカルチャーとして、大きく分けて2つのタイプが混ざり合っています。一つはコンテンツとして面白いプロダクトを作るというカルチャー。もう一つはコミュニケーションサービスとして面白いプロダクトにするというカルチャー。それぞれコンテンツに主軸を置いているか、サービスに主軸を置いているかという違いはあるのですが、お互いに理解しあってお互いの強みを認識し、高めあえるチームです。どちらか一方のカルチャーだけではないからこそ、実現性があると信じています。

━━最後に今後の目標を教えてください。 

安藤 現在、いくつかプロダクト開発が進行しているので、きちんとリリースし、MAU1億を狙える大規模サービスへと育て上げていくことが目標です。今後も成長が見込まれるこの市場で、全力でバットを振りに行きたいですね。そしてチーム一丸となって、圧倒的なスピードで、「心をつかみ、世界を熱狂させる」を実現させていきます。

デジタルエンターテインメント事業本部 本部長 安藤 拓道(あんどう ひろみち)
東北大学工学部を卒業後、東京大学公共政策大学院に進学。大学院在学中から、プロント創業者と共に教育系ITスタートアップを立ち上げ、取締役に就任。教育事業の立ち上げに従事。2011年に独立しCompath Me Inc を創業。2016年にミクシィに事業を売却しグループ入り。現在、デジタルエンターテインメント事業本部の本部長に就任し、新規事業開発や投資に関わる。
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