「モンスターストライク(以下モンスト)」といえば、「ストライクショット」。
キャラクタ―によって、ド派手な演出や笑える演出まで様々なタイプがあります。一体どのように作られているのか、挙動・演出はどのようにして決まっていくのか。開発の裏側を知りたくなったので、開発・制作に携わるエンジニアとデザイナーによる座談会を実施。フローやチームの雰囲気などモノづくりの現場のリアルを聞いてきました!
写真 左からデザイナー佐々木(ササキ)、デザイナー高橋(タカハシ)、エンジニア米田(コメダ) エンジニア角(カク)
━━━━本日はよろしくお願いいたします。まずは、ストライクショットの制作フローを教えてください。
米田 ストライクショット制作の基本的な流れとしては、まず「どういう遊びを実現したいか」の部分から。「こういうのを作りたい」という企画からの要望に対して、主にデザイナーが「そういう効果であれば、ユーザーが理解しやすいように、こう表現したほうがいいよね」とか「モンストの中でも新しい概念だから、既存の概念と区別できるようイチから考えないといけないね」などイメージを肉付けしていく。そしてクライアント開発で「では、こういう風に実装を進めるのがよさそうですね」と、それぞれのやりたいことをまとめ、実際の制作作業に移行していくような形ですね。
佐々木 企画の要望は、「キャラをショットして画面中を走り回った後に停止し、近くの敵にとどめを刺す」とか「プラスで敵を状態異常にさせたい」とかざっくりしたものが多いです。
高橋 そうですね。「過去に作ったストライクショットみたいな雰囲気で、だけど見た目とか細かい挙動はお任せ」とか。演出面に対して具体的な指示がある場合もありますが、ないケースもありますので、そのストライクショットが搭載されるキャラが決まっているような場合は、自分はキャラ絵を見て、多少ニュアンスや色味とかを取り入れたりしています。
佐々木 ストライクショットを作るときに、このキャラに積む予定だから作ってほしいという要望と、まだ特定のキャラに積む予定はないけれどとりあえず新しいものを作ってほしい、という2パターンの要望があるんですよね。ときには、デザインのとっかかりが何も無い状態から作ってほしいというときもあって…。
高橋 結構困惑しますよね。
米田 頭をすごく捻って「これどう表現する?」みたいな(笑)。
佐々木 でもまぁ、僕らできるんでね(笑)。
米田 6年もやってますからね。
一同 (笑)
米田 基本的には企画の要望から始まって作る流れですが、逆にエンジニアやデザイナーから「こういうのは面白いんじゃないか?」という案をゼロから提案することもあります。立ち話で「こんな遊ばせ方や動きを考えてるんですよね」みたいな話をして、企画に「こういうのちょっと作ってみたんですけど、どうですか?」みたいな。僕の場合は、イメージが湧きやすいようにある程度動くものを作ってから見せて提案して、OKの判断が出た場合、次のバージョンのリリースに合わせて、最後の詰めを仕上げるということも一例としてありますね。
━━━━提案するケースも多いのですね。ものによると思いますが、一つのストライクショットを制作するのには、どれくらいの期間がかかっているんですか?
高橋 早いものだと、1~2日ぐらい?。
佐々木 普通なら2~3日とか。
高橋 そうですね。他の作業と並行しながらだと、2~3日ですかね。仕様も新しくて見た目もイチから作るという場合だと、ちょっと時間かかってしまいます。
佐々木 それでも3~4日ですよね。
高橋 そうですね。
米田 デザインの制作とシステムの実装を平行して進行するとそれぐらいのイメージですね。いざ実装して動かしてみると、担当者間で「ちょっと違う」「もっとこうしたら良くなる」という議論が交わされることもあるので、そういう調整時間を含めるともう少し時間がかかります。
佐々木 一人ひとりが同時に色々な案件を抱えているので、ケースバイケースにはなりますが、だいたいそれぐらいですね。
━━━━なるほど。案件の割り振りはどういう風にしていますか?
佐々木 デザインは立候補制ですよね?
高橋 そうですね。
佐々木 「このキャラ好きなんで、私、やりたいです!」というのは結構あります。
角 熱量の高い人が作る方が、良いものができるので。
米田 コラボ案件でも、担当者がその作品やキャラをどれだけ好きかという気持ちが、最終的にユーザーを唸らせる細部の表現に生きてきますから。
佐々木 キャラに対する愛だよね。
米田 「そんな細かいことまで気づく?」というのも、ファンだからこその視点。実際にリリースしてみると「さすがわかってる」とユーザーから声が届いたり。
角 そのキャラはこうじゃない、と許せないんだよね(笑)。
佐々木 もしやりたい人が多数いた場合は、それぞれにプレゼンしてもらうしかないですね。「俺の方が好きだ!」という熱意を見せ合ってもらう。コラボが決まって、キャラも決まったという段階で、先に予約されるときもありますね。
一同 笑。
佐々木 エンジニア側はどうですか?
角 熱意による立候補制もありますが、以前似たような機能の実装を担当した人に任せることも結構ありますね。そのほうが仕様の勝手が分かっているので、やりやすいというか。
佐々木 近い仕様のものが過去に作ってあって、そのコードをベースにして作れば早く終わる。クライアント開発側からも「以前似たような処理を作ったので、じゃあ担当は角さんでお願いします」という感じです。
角 こういう系の挙動や状態異常は角さん、というように割り振りされることが多いですね。
米田 類似した処理に詳しい人が担当した方が、作業の効率化も見込めるし、事前に危ない箇所などに鼻が利いて不具合のリスクも減らせる。大枠についてはできるだけ手早くかつ正確に仕上げられた方が、クオリティに影響する本質的な部分に集中して手間をかけられます。
佐々木 基本的にはデザイナーとエンジニアの2名体制で、完成まで最後まで責任を持って作ります。コンビは案件によって変わることが多いですね。
高橋 何度も一緒に仕事をしているので、ツーカーで仕事ができるのがありがたいです。「あれのあの部分のあの感じで」みたいな(笑)。ボヤっとした説明でも受け取ってもらえる関係性があるので。
米田 まぁでも「あれ」が通じないことも、ときとしてありますよね(笑)。
佐々木 新しく入られた方はその辺のコミュニケーションを結構気にされていて、「早く共通言語を覚えなきゃ」という姿勢なので、こっちの方も「分からなければどんどん聞いてください!」とコミュニケーションしています。作業効率を上げるためなのでそこは快く教えますし、覚えてほしいなというところですね。
━━━━なるほど。ツーカーの関係性があるからこそ、スピーディーなんですね。普段みなさんは、どんな気持ちで制作していますか?
佐々木 スケジュールは大変なこともあるけど、仕事自体は楽しいです。
高橋 作ってるときは楽しいですよ。
角 自分たちが楽しくないと、やっぱりゲームが楽しくならないですよね。
高橋 エンジニアが、「この方がもっと面白くないですか?」とかデザインについてアイデアをくれるのも新鮮です。
米田 「こうしたらもっと良くなるよね」というアイデアって、デザイナー、エンジニア、企画、お互いにそれぞれの業務領域にも若干踏み込む必要があるケースって多いと思うんですよね。「こういう見た目のほうがもっとカッコいい」とか「プレイしていて気持ちいいからもうちょっと仕様を変えてみたい」とか。なので、自分たちが感じたことを企画やデザイナーに提案することはよくあります。
高橋 これまでの私の体験上すごく面白いなと思うのは、「この方がもっとユーザーが喜ぶと思うんですよね」とか「もっとカッコよくなると思うんですよね」みたいなことを企画の人に提案したら、仕様を変えてくれることも多いところです。
米田 そうですね。そこは本当に大らかに意図を汲み取って頂いてますよね。
高橋 これまでの経験的に企画の仕様を変えるというのは、あまりないはず。でもモンストの開発現場は「この方が良いと思う」と話せば、理解してくれる。むしろ「カッコいい方が良いじゃん」ということを言ってくれたりもして。もちろんそれが逆にユーザーにとって不利益になる要素があったらダメですけど。でもやっぱり、制作側からの提案を受け入れてくれたり、相談できる環境というのはすごく良いところなんじゃないかなと思います。知り合いにそういう話をしたら、結構驚かれるんですよ。
米田 企画通りの仕様を黙々と作るほうが効率が良い部分もあると思います。ただ、作り手が互いに提案し合い、より良いものを作ろうとリアルタイムに試行錯誤を重ねられる雰囲気が、モンストチームのいいところですよね。
佐々木 デザインだからデザイナーに口は出さないとか、エンジニアに対してコードの口出しはしないとか。企画も然りでそれぞれが自分の範囲だけという意識ではなくて、垣根を越えてツッコムとこはツッコムし、改善した方が良いとこはもう全然お互いに言い合えるような環境ではあるので、それが最終的に良いものがどんどんできるというグッドスパイラルを生んでいると思います。
業務中、モンストをプレイ。これも立派な仕事の一つ。
━━━━そういった関係性は、どのように築いてきたんですか?
佐々木 企画、デザイン、クライアント、お互い長い付き合いの中で共通言語が生まれてツーカー的な関係性、関係値ができあがってきたんだと思うんですよね。
高橋 コミュニケーションは普段からとるようにしていますよね。雑談というか…。
角 仕事に関係ない話もたくさんします。
佐々木 仕事をサボってモンストやったり、他のアプリを触ったりとかね。まぁサボって、じゃないか(笑)。
高橋 仕事の一環として(笑)。
佐々木 そう。演出の勉強として。ときにはみんなでマルチプレイをすることもありますよ。
米田 みんな、いちユーザーとしてもモンストが好きなので、業務上でも意見や提案を交わしやすいというのもあるかもしれないですね。みんな「モンストをよくしたい」という方向では一致してる安心感というか。
高橋 あとガチャを引く時は必ず見せてもらってます(笑)。
角 確かに!みんな、他の人が引くガチャを見るの好きですよね(笑)。
佐々木 世の中の全ての買い物をガチャ換算する人もいます(笑)。高橋さんは去年、テレビを買ったんですが、ええと…テレビはガチャ何連分でしたっけ?
高橋 多分200連分ぐらい(笑)。
佐々木 テレビ1台が200連分と思う感覚(笑)。
高橋 そうです(笑)。6万円と聞いたら、「あぁ200連かぁ」って思っちゃうんですよね。
米田 ちょっと惜しくなるんですね、そっちが(笑)。
高橋 そうそう。「200連出来るのか」って思っちゃうんですよ。
ユーザーの“プレイ感”が肝心。
━━━━みなさんがモンストを愛していることが良く分かるエピソードですね(笑)。普段からどんなことを心掛けて仕事をしていますか?
高橋 実際に自分がゲームをプレイしたときに、その挙動でユーザーがどう感じるかを気にしながら制作しています。そもそも見た目の印象としてユーザーがプラスになると受け取るのか、マイナスになると受け取るのか。カッコよさなどだけではなく、ゲーム内での効果とあわさったときでも納得感があるのかなど、“プレイ感”を踏まえて作ることが大事だと思っています。
佐々木 例えばストライクショットで爆発の演出が企画から出されたとして、爆発のダメージを受けるのは一つのターゲットだけで、その周りに雑魚キャラがいたとしても、その雑魚キャラは爆発の影響を受けないという仕様があったとします。爆発では一つのターゲットにだけダメージが入るはずなのに、爆発範囲の絵がデカすぎて周りの雑魚キャラも巻き込んだような見え方になった場合、実際にダメージは食らってないけど、見た目的にはダメージ受けてるように見える。そうなると、ユーザーは勘違いするんじゃないの?ということですね。
高橋 企画の内容に合ったイメージのものだけを作ろうとすると、ユーザー視点がおざなりになりますよね。見た目としては機能しているけれど、ユーザーに納得感を持たせるというのは、表現としてまた別だなと思うことはありました。
米田 エンジニア側では、できるだけお互いの開発内容を共有し合うようにしています。「今回はこういう特別なケースで開発しました」「それってこれまでの流れ的におかしいのでは?」「このコードを参考したほうがいいのでは?」と自分の気づかなかったところを指摘してもらえるので。みんなもそれを聞いて、自分の次の開発に生かすことができる。定期的にコミュニケーション取る機会を設けるようにしています。モンストを不具合なく快適に遊んでいただけるよう、チームとして安定した機能を持続的に実装し続けるために、大事だと考えています。
佐々木 そうですね。
米田 あとはコラボにおいては、ファンが期待していないような悪い意味での意外性を持たせないように注意していますよね。コラボは原作が存在していて、もうすでに完成された世界観やキャラ像があります。それらの魅力をモンストというゲームの中でいかにギュッと表現するかというところが勝負なので。まずは原作の世界観やキャラそのものが持つ魅力を素直に表現しないと、ファンは納得してくれません。その上で「そこまでやってくるか!」と、ユーザーに喜んでもらうためしっかり手間をかけるべきところはかける、という感じですね。
佐々木 もちろん再現はするんだけども、そのキャラがモンストの世界に来たらどうなるんだろう?というのを体現するのが僕らの役目だと思っているので、ユーザーが操作して「あぁ、なるほどな」という風に思ってもらえたら勝ちかな、とは思っています。
米田 うん。
佐々木 動きも仕様もエフェクトも全部。IPとモンストが上手くハマるところを探すことが大事ですよね。
ユーザーの反応が、仕事の原動力。
━━━━仕事の中で、一番テンションの上がる瞬間はいつですか?
佐々木 やっぱり、ユーザーの反応ですよね。
一同 おぉ!
米田 「あのストライクショットかっこいい」とか言われると嬉しいですよね、やっぱり。
高橋 そうなんですよ。「ガチャ回す」とか「課金してでも欲しい」とコメントしてくれてる人がいたら、「あっ、そこまで気に入ってくれたんだ!」と嬉しくなります。
佐々木 ユーザーの反応や感想をツイートとかで見ると、「よっしゃ!」ってなりますね。
米田 「こんなの誰が気付くの」みたいな、細部の愛とかに気付いてくれたファンを見つけると嬉しいですよね。例えば、「このキャラってこの描写が最高にカッコいいんでエフェクトとして足してみましょうよ」と担当者間でやいやい言いながら作ったものが世に出る。わかる人にしかわからないような細かいこだわりにも関わらず、しっかり気付いて興奮してくれてるユーザーを見つけて、担当者と一緒に興奮したりとか。
一同 笑。
佐々木 結構エゴサーチしますよね。
高橋 「キャラ名 ストライクショット」検索、みたいな(笑)。
米田 リアルタイム検索をすると、ダーッと感想が出てくるので。まぁ良い内容のものだけ見ているかな(笑)。
一同 笑。
角 いや、もちろん、悪い所もちゃんと見てます(笑)。
米田 高橋さん、この前ユーザーの声を受けて直したところありますよね。
高橋 4方向に細い線がレーザーみたいに飛ぶ友情コンボが、見た目として分かりづらいということが書かれていたので直しましたね。見た目が長く残るように印象を調整したりとか。一番凹んだのは、あるコラボでコメントを見るとみんな喜んでくれていたのですが、一部の熱いファンからの書き込みに「特定の部分がダサい」って書かれていて。確かに言われてみるとそうかもしれないと思い、担当のエンジニアさんと話し合って、「直しますか」と。
佐々木 ユーザーの期待値を超えることが僕らのミッションなので、必要であれば適宜改善もしていますよね。
高橋 たくさんのユーザーさんがいるから、リアルな反応を目にする機会も多くあるのがありがたいです。ユーザーが少ないと、リアクションってないんですよね。そうなると、やり甲斐を感じにくいかもですが。モンストはユーザーのリアクションがはっきり出るので、やり甲斐はすごくあると思うんですね。自分が作ったものに対するユーザーの感情をダイレクトに受け取れるっていうのは、すごいなと思います。
No.1アプリであり続けるというプライド。
━━━━最後に。モンストチームで働く面白さって何だと思いますか?
高橋 コミュニケーションを通じてコンセンサスを取りつつ、色々挑戦させていただけるところでしょうか。もちろん作ってもすぐにゲームに反映されないケースもありますが。自分たちでもモンストをプレイをしているので、そこで不満を感じたりすると、改善したくなる。ストライクショットだけでなく、UIを含めて、操作感のストレスを解決するための提案など、前向きなチャレンジができていると思います。
角 例えば、これまでモンストには滑らかに動かす機能がなかったんですよ。やるとしたら、とても時間と手間がかかってしまい現実的ではなかった。。ですが、クオリティを上げるためにはどうしても必要だと思い、世の中に出回っている技術を参考にしながら新規に機能を実装しました。限られたリソースの中で、そういう「こういうのあったらいいですよね」というところを、自由に作ることができるのは面白いです。
佐々木 モンストチームには現状に甘んじている人間が一人もいないですよね。常に危機感と一定の緊張感を持って仕事をしています。もちろん期限内に完成させるというのは当たり前。その上で、“No.1アプリであり続ける”というところに対してのプライドもみんなが持っているので。できないならできないで良い、という考えの人間は誰もいないかな。
米田 それこそ期待して頂いているユーザーがたくさんいるから、半端なものを届けられない、という気持ちがあったりしますよね。
一同 うん。
角 ユーザーは目が肥えているというか、触る側の愛がすごいから。それに負けてしまうとダメですね。
佐々木 手前味噌かもしれませんが、モンスターストライクのコラボは一定のクオリティがある、とユーザーに思っていただけていると思うので、その期待を裏切られないというか…。期待以上の驚きを与えなければいけないからこそ、毎回毎回どんどんハードルが上がっていきますが、それに応えられるような人間が揃っていると思っています。
米田 確かに。しかもただただプレッシャーを感じているわけではなくて、プレッシャーを糧にして、結果的にはみんなで一丸となってワイワイと楽しくモノづくりができるというのが、すごく良いところだなと思います。