ミクシルでは、入社して1年が経った新卒スタッフの成長を辿る「新卒1年目 成長の軌跡」をシリーズでお伝えしています。今回は、彼らのその後の活躍を追うシリーズがスタート。どのような成功体験や失敗体験を経験し、どんな風に成長したのか?スキルやマインドの成長に大きく役立ったターニングポイントとは?について迫ります。
記念すべき第1回目は、2019年4月に入社した舟久保が登場。彼は現在、株式会社千葉ジェッツふなばしに出向し、マーケティング部にてマーケティングの戦略立案に携わる部長を務めています。初となるチームやプロジェクトのマネジメントをはじめ、千葉ジェッツのリブランディングという大きなミッションに挑み、得たものとは?について語ってもらいました。
リーダーだからといって正しいことを言えるわけではない
━━まず舟久保さんの経歴を教えてください。
私は新規事業の立ち上げに興味を持ち、ライブエクスペリエンス事業本部LX開発室(現ライブエクスペリエンス事業本部システム部イベントシステム開発グループ)に配属となりました。ここで手掛けていたのは、LIVEイベント「XFLAG PARK」のチケッティング業務。その後、株式会社千葉ジェッツふなばしに出向となり、2020年にリーダー職へ。ちょうど上長であるリーダーが他部署へ異動となるタイミングでした。
━━初めてリーダー職に就いた感触はいかがでしたか?
上に立つ人間という意識はほぼなかったです。メンバーや上司、関係部署とのコミュニケーションを円滑に進め、メンバーが判断に迷ったことを決断する役割だと認識していました。リーダーとはあくまで役割であって、役職があるからといって正しいことを言えるわけではないなと。チームメンバーは自分より年齢が上でしたし、色々知恵をもらいながら、フラットな関係でチーム運営ができたかなと思っています。
━━なるほど。その後はどんな仕事を手掛けていましたか?
チケッティング業務に限らず、試合日のイベント企画や全体調整など幅広く仕事を手掛けていたのですが、業務自体がメンバーだけで回るようになってきたので、toC領域全般のマーケティングを考える仕事を任されるようになりました。
発足10年の節目を機に、チームロゴをリニューアル
━━印象深い仕事について教えてください。
千葉ジェッツのリブランディングプロジェクトです。私がプロジェクトに携わったのは後半からなのですが、千葉ジェッツは発足して10年。チームの立ち上げからリーグ上位に食い込むまでの成長期を経て、第2フェーズを迎えていたんです。第1から第2フェーズへ切り替わるきっかけや、さらに新規ファンを増やしていくターニングポイントが絶対に必要でしたし、ミクシィグループへのジョイン、今後新しいアリーナが誕生するという変化の中で、旗印となるロゴのリニューアルに踏み切りました。
━━リブランディングに着手すると決まったとき、どんな気持ちでしたか?
正直なところ、不安な気持ちが大きかったですね。スポーツチームのリブランディングはファンから批判を受けることが多いですし、リブランディングしたことで、何が変わるんだろう、事業に対してどのように跳ね返ってくるのか?ということも分からなかった。先が見えない怖さがありました。
━━手探りで進めなくてはいけない難しさがありそうですね。リブランディングを進める上でこだわったポイントは?
それは、綿密なコミュニケーションです。ロゴ刷新にあたって、まず選手や社員の思いを一人ひとりヒアリングしました。チームに対してどんな思いを持っているのかを形にして、ファンに伝えることが大事だと思ったからです。その上で、自分たちの思いを整理し、新しいコンセプトを決定しました。どんな意図でリニューアルするのかを社員一人ひとりと会話し、同じ認識を持つことにこだわりました。このプロジェクトを進める上で、誰一人としてコミュニケーションを取っていない社員はいません。
━━本当に慎重かつ丁寧に進められたんですね。
はい。新たな転換期を迎える上で、社員一人ひとりが理解できていないと団結力も生まれないですし、同じ方向を見て進んでいくことができないと思っていたので、本当に何度も会話や対話を重ねました。そしてもちろん、ファンのみなさんの思いをしっかりロゴに反映させていくためにチームのイメージや今の価値観、大切にしていることなどのご意見をファンの方々にヒアリングしました。
━━なるほど。
そしてファンの方への「伝え方」にもこだわりました。このプロジェクトが走っている最中は、千葉ジェッツがリーグタイトルを獲得する前の段階だったので、「まだまだ頂点を目指してチャレンジする」という文脈で発表を考えていたんです。しかし、ちょうど2020-2021シーズンでチーム初のリーグ優勝を手にすることができたので、内容を変更することに。現状維持では意味がない、優勝したことを打ち消す形で「より高みを目指す」という内容にしました。自分たちは強いチームだと自覚した上で伝えるのか、それともまだまだチャレンジしていくという姿勢を伝えるのか。この二つには大きな違いがあるので、ギリギリまで悩みましたね。
━━確かにどんな文脈で伝えるかによって、受ける印象が変わりますね。最終的にどんなロゴが出来上がったんでしょうか?
私たちが掲げる「千葉県をバスケットボール王国にする」というビジョンのもと、全世代のファンに親しみやすいもの、浸透しやすいものを作り上げました。今の時代に合ったシンプルなデザインになり、これから100年続くチームになっていくために、『ブースター』(チームのファンのこと)、『地域・パートナー』、『チーム』が一緒になってチャレンジしていこうというメッセージをより体現できる形に変えることができたと思っています。
━━新ロゴリリース前の社内の様子はどうでしたか?
どう変わるのかなとみんな心配していましたが、結構ゾクゾクしていたと思います。
━━ゾクゾクですか(笑)。
楽しみ、というと他人事のような感じがして…。「ファンの方にどう受け入れられるんだろう?」というゾクゾク感、ヒリヒリ感があったと思います。
━━不安と期待と緊張が混ざった雰囲気ですね。リブランディングの成功を実感したのはいつですか?
最初から最後までずっと不安で、安堵するタイミングはなかったですね。でもロゴの発表後にファンのみなさんが、SNSで好意的に受け取ってくださっている投稿を見て、ようやく少し安心できました。ずっと不安ではありましたが、プロジェクトメンバー全員、「できることはやったぞ」という自信というか、色々な声に耳を傾けた上で作り上げた実感があったので、やり切った達成感はありました。ただ、リブランディングは発表して終わりというわけではなく、むしろその後しっかりと浸透していけるか、築き上げていけるかといった運用の部分の重要性が高いのでこれからが本当の挑戦だなと思っています。
━━舟久保さんがこのプロジェクトから学んだこととは?
一つ目が、コミュニケーションの重要性です。ファンをはじめ、社内メンバー、選手など、みんなと同じ思いを共有するためには、相手を理解するためのコミュニケーションが欠かせないと実感しました。そしてもう一つが、人の期待を超えること。ファンからの要望をそのまま実現するのではなく、ファンの潜在的な気持ちを汲み取って、いかに自分たちが期待を超えるアイデアを提案していくかにこだわっていきたいと思っていました。コミュニケーションを重ねた上で、どうアウトプットすべきか熟考し、提案する。それがファンに受け入れられたという経験は、大きな収穫になりましたね。
━━ファンから求められているものを外さないだけでなく、プラスアルファの提案をするということですね。
千葉ジェッツは小さい組織だからこそ、社員一人ひとりの裁量権も大きく、いい意味でも悪い意味でも自分の仕事の成果が跳ね返ってきます。スピードもあるのでPDCAサイクルが回しやすく、豊富な経験を積みやすいのもありがたい環境だなと思います。
2024年のアリーナ誕生に向けた戦略立案を任される
━━その後はどんな仕事を?
その後は社長室、そしてマーケティング部に異動しました。マーケティング領域は変わっていませんが、これまでは「今年はどのように集客しようか」「今年はどんなコミュニケーションを取ろうか」ということを考える仕事だったのですが、社長室に移って以降は今年の話ではなく2~3年後を見据えた戦略を考えるようになりました。全社的な話になるので、コミュニケーションを取る部署も、営業や管理、アリーナの部署など多岐にわたります。
━━そして2022年7月に部長職に抜擢されたと。
2024年に収容1万人規模のアリーナが誕生するという流れを受けて、そこに向けた座組でどうしていかなければいけないのかを考えるポジションを任されるようになりました。
━━より裁量権が大きくなって仕事の難易度も上がったかと思いますが、仕事をする上で参考にしている人はいますか?
社長の田村さんと、上長の大崎さんです。田村さんはもともと営業出身ということもあって、人を巻き込んでいくのが上手い方。大崎さんはロジカルに物事を組み立てていくことが得意。この二人はタイプが両極端に違うので、参考にさせていただくことが多いです。
━━お手本となる先輩が近くにいるのはありがたいですよね。ちなみに舟久保さんは入社当時、どんなキャリアイメージを持っていましたか?
入社当時は、ミクシィの柱になるような大きな事業を作りたいと思っていました。ミクシィではコミュニケーションサービスという軸を持ちながら、手段としてITを活用することが多かったので、ITのスキルを身に付けて新規事業や事業全体を見られる人になりたいと思っていたんです。マネジメントについても挑戦したいという気持ちがありました。というのも、事業を統括するというのは、いわば“小さい社長”。社長に必要なスキルは何だろうと考えたときに、多くの人を束ねて一つのことを成す能力は必須だと思っていたからです。
━━その考えは今も変わっていませんか?
そうですね、変わらないです。一つ変わったところがあるとすれば、ITの事業ドメインにこだわりがなくなったということです。
━━というと?
千葉ジェッツに出向してからオフラインの熱量や体験の価値を実感するようになったので、事業ドメインを選ばずに、自分の裁量や影響範囲を広げられるような経験を積みたいと思っています。
ジェネラリストのスペシャリストを目指し、新たな事業にも挑戦したい
━━今後の課題やトライしてみたいことについて聞かせてください。
前回のインタビューでは、問題解決能力の向上と、スムーズな問題提起をするために抽象化して上長に報告する力を磨きたいという話をしました。今後も引き続き磨いていきたいポイントではあるのですが、部長という役職に就いたことで新たな課題も見えてきました。以前は上司への報告だけが課題でしたが、今はチームの責任者としてメンバーを見ているので、上司とメンバーへの伝え方を磨かなければいけないと感じています。抽象的に伝えすぎると解決策がぼやけますし、かといって具体的に伝えると逆に選択肢が狭まってしまう。そのバランスがすごく難しいと思っていて。状況や相手によっても伝え方は違ってくるので、その点は新たな課題として追加されました。
━━他にもありますか?
もう一つは、判断力を磨くということです。部長を任されたことで、自分が判断する機会が増えたのですが、その案がいいのか悪いのか、自分の決裁で決めていいことなのか…瞬時に判断できる力を磨きたいなと。というのも、決断は早いに越したことはないからです。影響範囲がかなり大きくなってきたので、自分が考える時間が長いと、他の人の手を全部止めてしまう。なので、しっかり動いて前に進んでいるかどうかを意識するようになりました。
━━舟久保さんが見据える未来の目標は?
私が目指しているのは、“ジェネラリストのスペシャリスト”。自分が強みとする分野を持ちつつ幅広い知見を身に付け、プロジェクトや事業、ひいては会社を見ることができるように成長したいと思っています。そしていつか事業を立ち上げるためにも、より大きな裁量を持って上のポジションを目指し、統括できる範囲を増やしていきたい。やれることを増やして、色んな人を巻き込んで、見える景色を広げていきたいです。
━━具体的な時期は見えていますか?
次のターニングポイントとなる出来事は、2024年のアリーナ完成だと思っています。完成して終わりではなく、アリーナを満員にすることで自分の役目を一つ全うできるかなと思っているので、しっかり目標を達成するまでやり切るつもりです。ジェネラリストのスペシャリストを目指しながら、また新しく楽しそうだなと思えるものにコミットしていきたいと考えています。