「THE METHOD」は、ミクシィのさまざまなプロダクトにおいて実践されているノウハウやメソッド惜しみなく共有するオンラインイベントです。
※過去の実施内容はコチラ
▼THE METHOD #0
“メソッド”が学べるオンラインセミナー「THE METHOD」が始動。その内容は?
▼THE METHOD #1
モンストのキャラクターはどのような工程で作られているのか?
▼THE METHOD #2
モンストのステージはどのように制作されているのか?
▼THE METHOD #3
モンストのキャンペーン施策はどのように制作されているのか?
▼THE METHOD #4
モンストのUIはどのように制作されているのか?
▼THE METHOD #5
モンスト好きが集まる最大級イベント『XFLAG PARK』の作り方
▼THE METHOD #6
モンストのエンジニアが自身のキャリアを振り返ってみた。
今回の「THE METHOD」では、『モンスターストライク(以下、モンスト)』のサウンドデザインについて。
そもそも“サウンドデザインって何?”“『モンスト』でいうと、どの部分?”など、ゲームサウンドに詳しくない方でも楽しんでいただけるよう、徹底解剖していきます。本記事では、「THE METHOD #7」のダイジェストをお届けします。
登壇者の紹介
登壇者は、サウンドデザインチームでリーダーを務める戸田。
司会はモンスト事業本部・事業支援室の三瓶が担当しました。
“サウンドデザイン”は、「体験」デザインの一環
━━早速ですが…“サウンドデザイン”について教えてください。
「サウンドデザイン」という言葉は、映画やゲーム、アトラクションなどさまざまな分野で定義されていて、それぞれで解釈されているんですよね。だから、逆に広すぎて分かりにくい言葉なんです。狭義ではコンテンツ内の効果音を作る人とされるケースが多いですし、広義ではサウンド全体の設計を指す場合もあります。
━━なるほど。では、『モンスト』におけるサウンドデザインとは?
僕たちは、「体験」デザインの一環である、と定義づけしています。ゲームは、シナリオ、ゲームデザイン、アート、VFXデザイナー、サウンド…あらゆる要素の集合体で作られている。『モンスト』を通じて得られる「ユーザーの体験」をサウンドで支える役割だと捉えています。
SE・BGMなど、ゲーム内における音づくり
━━次に、サウンドデザインチームが手がけている業務について教えてください。
サウンドデザインチームが担当する業務領域は、シンプルにいうと「ゲーム内のサウンドデータの制作」です。具体的には、大きく3つに分けられます。
【1】効果音(以下、SE)の制作
【2】BGMデータの制作
【3】ボイスデータの制作
他には、『モンスト』に紐づくゲーム外コンテンツにも携わっています。たとえばYouTubeでの動画配信などで必要となるサウンドの準備や監修などがそれに当たりますね。
『モンスト』のサウンド、どうやって作られる?
━━少しずつイメージがわいてきましたが、もう少し具体的な「サウンド制作」を知りたいです。
そうですよね。「SEの制作」「BGMデータの制作」「ボイスデータの制作」と並べてみましたが、音の話をテキストで説明しても伝わりにくい…。そこで、ここからは、実際の音を聴いてもらいながら、どうやってサウンドをデザインしているのかを説明していきたいと思います。
■ サウンドデザインの実例(SE編)
今回実例に取り上げるのは、TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』とのコラボで作成したストライクショット(以下、SS)のSEです。このSE制作時にサウンドデザイナーが重視していたポイントは3つあります。
ポイント1:原作の再現
今回は、TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』ですが、コラボごとにそれぞれの原作があるので、原作のニュアンスを再現するのが重要なポイント。VFXデザイナーと共に詳細にこだわり、どう音づけしていくかが腕の見せ所でもあります。
ポイント2:SS演出の意図の理解
2つ目は、このSS演出で、ユーザーに「どのように感じさせたいのか?見せたいのか?」を深く理解する点です。原作のファンの方が喜んでもらえるような演出が大事になってくるので、サウンドデザイナーも、何度も原作を見て、“ここがカッコイイんだな”とか“ここを見せたいんだな”を理解してから、音作りに入っていきます。
ポイント3:ピークはどこか
3つ目は、設計された“演出の山場”に合わせて、ピークを作っていく点。ある瞬間が来た時、ユーザーにカッコイイと感じてもらえるよう、サウンドをデザインしていきます。
では、実際に制作された音を聴いてみてください。
レムSSのサウンド
※再生ボタンを押下するとサウンドが流れますので音量にご注意ください。
みなさんだったらどんな音をつけますか?そんな風に考えながらゲームをしてみると、また面白い楽しみ方ができると思います。
■ サウンドデザインの実例(BGM編)
次に、BGMについてもお話をしていきます。BGMの場合は「どんな曲を作るか」はもちろん大事なのですが、実装の際に「どれぐらいの音量で聴かせるか」も非常に重要な要素なんですよね。
たとえば、テレビドラマや映画のBGMを思い出してみてください。特別な出来事がない場面は、とても小さな音です。そして、クライマックスに向けて音がどんどんと大きくなっていく。そして、ユーザーの緊張や興奮の高まりに連動していれば、音が大きくなっても、うるさいと感じる経験はほとんどありませんよね。むしろ演出において「音量の変化」はごく自然なことで、効果的な演出になるんです。
━━最後に、サウンドデザインを手がける上で大切な考え方を教えてください。
最も大事にしているのは「ユーザーサプライズファースト」の考えです。
僕らは、ユーザーに驚いてもらって、“これはすごい”と感動してくれるような音作りを探し続けています。
そして、ミクシィの場合、それはサウンドデザイナーに限った話ではありません。プランナーも、VFXデザイナーも、エンジニアも…ゲーム開発に携わる全員が同じ気持ちを持っているんですよね。全部署が“ユーザーにサプライズ体験”を届けたいと考えている。だから、サウンドデザイナーもただ音作りをしていれば良いわけではなくて、たくさんある部門と連携し、施策を形にしていく必要がある。
実際に音を聴いては、ゲーム開発に携わるメンバーと議論を繰り返し、幾度となく修正をかけています。意図した音にまとまらなければ、修正ではなく、全部作り直すこともありますから。「ユーザーサプライズファースト」を実現するためのサウンドデザイン。そんな考え方がとても求められると思いますね。
最後は、質疑応答です。視聴者のみなさんから寄せられた質問にもリアルタイムで回答しました。
Q.サウンドデザイナーを目指していますが、専門学校や音楽学校に行くのが一般的な道ですか?
「作曲」の意味では、専門学校や音楽学校で身に付ける知識は大事かもしれません。ですが、「効果音の制作」「演出の制作」の意味では、原理原則を体系立てて学ぶよりも、自分が感じたままに音作りをするほうが学びがあると思います。
今は、iPhoneがあれば手軽に音作りができるでしょう?そういうツールもたくさんありますし。だから、まずは手を動かして自分で音作りをしてみるといいのかもしれません。たとえば、映画を見たら、ある場面を切り取って、自分ならどういう効果音を付けるかなと考えてみる。音作りを楽しんでみると良いと思います。
ちなみに私はもともと東京藝大にいたのですが、退学してしまった。だから、音楽学校に行って辞めている私もサウンドデザイナーになれたよ、と伝えたいですね(笑)
Q.現在はリモートワーク?出社と比べて、どっちがやりやすいですか?
現在は、リモートワークと出社の組み合わせですね。
仕事の観点からみると、制作に集中する日はリモートワークのメリットは大きいように思います。ただ、セミナーでもお伝えしたように、ミクシィのサウンドデザイナーは他部門とのやり取りも大事にしています。企画やVFXデザイナーとの打ち合わせも多くありますから、その時は、顔をあわせて議論したほうが効率的ですね。
Q.サウンドデザイナーとして、仕事のやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?
間違いなく、ユーザーから“カッコイイ”“感動した”と、嬉しい声をいただいたときですね。苦労して制作したSSだったら、なおのこと。
携わった施策がリリースされると、Twitterはめちゃくちゃチェックしています(笑)。
Q.ゲーム開発を学んでいますが、上手く行かず落ち込みます。戸田さんは失敗をどのように乗り越えていますか?
「失敗」の考え方次第かな、と思っています。仕事で失敗していない人は誰もいません。その時点で、気楽に考えていただいていいのではないかと思います(笑)。失敗したときに大事なのは、失敗の要因特定です。そこができれば、失敗は決してネガティブなものではありません。むしろ、学びのほうが大きい。失敗を糧に頑張れると良いと思います!頑張ってください。
今回ご紹介したのは、サウンドデザイナーが手がける「音作りの舞台裏」。具体的な仕事が分からずにいた方も、楽しんでいただけたのではないでしょうか。どうやって作っているのか?を理解すると、より『モンスト』を楽しめますし、サウンドデザイナーになりたい方にもキャリアのヒントが見つかると思います。
オンラインセミナー「THE METHOD」は、今後も開催予定。様々な“メソッド”に焦点を当てながら、開発・制作のノウハウなどをお届けしていきます。次回もお楽しみに!
>>>次回以降の開催情報はこちらのページで確認できます